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望まれない番は秘密の白狼 の小説カバー

望まれない番は秘密の白狼

無力なオメガを装い十年間、葉月は強大な白狼の力を封印して生きてきた。全ては愛娘・美月を敵から守るため。だが、美月が掴み取った評議会インターンの席を巡り、一族のアルファの娘・麗奈による残酷な暴行が始まる。運命の番であるはずの夫・蓮に助けを求めるも、彼は冷酷にも葉月を他人と突き放し、愛人の亜矢子を番として遇する道を選んだ。蓮の命により銀の鞭で打ち据えられ、絶体絶命の危機に陥る葉月。しかし、彼らは大きな見落としをしていた。美月に託した護り石と、葉月が隠し持つ古の誓約の存在を。最後の一撃が振り下ろされた瞬間、封印されていた真の力が覚醒する。上空を軍用ヘリが包囲し、最高評議会の精鋭たちが次々と現場へ降下。かつてない衝撃が走る中、隊長は跪き、一族を震撼させるその名を叫んだ。「ルナ・葉月様、お迎えに上がりました」。裏切りに染まった偽りの平穏は終わりを告げ、封印を解いた白狼による苛烈な反撃が幕を開ける。正体を知り愕然とする蓮たちを余所に、葉月は娘を救うため、真の支配者としての威厳を現していく。
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1

十年もの間、私は力なきオメガとして生きてきた。唯一の喜びは、聡明な娘、美月の存在だけ。一族の敵から彼女を守るため、私は自身の本当の姿――強大な力を持つ白狼――を封印した。美月が誰もが羨む国際超常存在評議会でのインターンシップを勝ち取った時、私たちの静かな生活はようやく安泰だと思った。

だが、その一週間後。私は学校の片隅で、ぐったりと倒れている娘を見つけた。彼女の肌を焼く銀のロープで、手足を縛られて。彼女の夢は、私たちの一族のアルファの娘、麗奈によって無残に引き裂かれようとしていた。

「この雑魚が、私の席を奪えると思ったわけ?」

麗奈は嘲笑う。

「アルファである父様が、私のために確保してくださったインターンの席をね」

私の世界は、音を立てて崩れ落ちた。そのアルファとは、私の夫、蓮――十年来の運命の番。聖なる絆を通じて彼に助けを求めたが、彼は甘い嘘で私のパニックをあしらった。麗奈たちが私たちの子供を遊び半分に拷問しているのを、ただ見ているというのに。

決定的な裏切りは、彼の愛人、亜矢子が「アルファの番」のカード――蓮が彼女に与えた「私」のカード――を見せびらかした時に訪れた。彼は現れるや否や、皆の前で私のことなど知らないと言い放った。その罪は、私たちの絆を粉々に砕け散らせた。彼は私を侵入者と呼び、配下の戦士たちに罰を与えるよう命じた。彼らが私を膝まずかせ、銀で打ち据える間、彼はただそこに立って見ていた。

だが、彼らは皆、私を侮っていた。私が娘に渡した護り石のことも、そこに秘められた古の力のことも知らなかった。最後の一撃が振り下ろされた時、私は隠された通信経路である名前を囁き、一族が数世代前に交わした誓約を発動させた。数秒後、軍用ヘリが建物を包囲し、最高評議会直属護衛隊が部屋になだれ込み、私に頭を垂れた。

「ルナ・葉月様」

隊長が宣言した。

「最高評議会直属護衛隊、ただいま馳せ参じました」

第1章

葉月 POV:

「お母さん、やったよ!本当に受かったの!私、選ばれたんだよ!」

頭の中に響いたその声は、純粋で、何のフィルターもかかっていない歓喜そのものだった。それは何マイルも離れた場所にいる私たちを繋ぐ、娘の魂の声。母と子の間にだけ与えられた月の女神の贈り物、精神感応(マインドリンク)だ。

私は微笑み、目を閉じてオフィスの冷たい窓ガラスに寄りかかった。眼下にはきらびやかな光の絨毯のように街が広がっていたが、私の目に映るのは美月の輝く笑顔だけだった。

「あなたならできると信じてたわ、私の賢い狼。本当に誇りに思う」

「異種族間の青少年交流に関する私の企画案が、インターン応募者の中では過去最高に詳細だって言われたの。私、国際超常存在評議会に行くんだよ!信じられる?」

信じられた。私は数えきれないほどの夜を、彼女がその企画案を練り上げるのを手伝って過ごした。彼女が一つ一つの言葉に心を注ぎ込むのを見てきた。彼女は聡明で、意志が強く、そして自分が思っているよりもずっと強い子だ。

それは一週間前のこと。まるで遠い昔のことのようだ。

今、冷たい恐怖が、胃の底から這い上がってくる。私は手の中のタブレットを見つめ、画面上で点滅する一つの光点を睨みつけた。それは私が美月に渡した護り石の追跡装置だった。銀月の一族の古の紋章が刻まれた、銀のロケット。

それは彼女のお守りのはずだった。今では、私の膨れ上がるパニックの灯台と化している。

光点は動かない。もう一時間も、ずっと。

場所は彼女が通う名門校の、アルファの評議会室。彼女がいるはずのない場所だ。

私の中で十年もの間、鎖に繋がれ沈黙していた狼が、落ち着きなく歩き回り始めた。十年前、私の血筋が作った敵から美月を守るため、私は悪魔と契約を交わした。蓮の儀式に同意し、私の白狼を封印し、彼の平和の約束と引き換えに力を手放した。彼が今、破ろうとしている約束を。

エレベーターを使う気にもなれなかった。誰かに見られていれば、私の本当の姿がばれてしまうほどの速さで、一族の屋敷を駆け抜けた。数分後には車に乗り込み、エンジンが唸りを上げていた。

アカデミーは静まり返り、夜の授業はとうに終わっていた。私は通用口から、夕闇に紛れて影のように忍び込んだ。評議会室に近づくにつれて、古い木材とチョークの粉、そして何か……金属的で、鼻を突くような匂いがした。

恐怖。空気がそれで満ちていた。

重厚な樫の扉には鍵がかかっていた。私は躊躇しなかった。長い間抑え込んできた力が肩にみなぎり、木の扉に激しくぶつかった。古い錠前が鋭い音を立てて砕け散る。

中の光景に、血の気が引いた。

私の娘、私の聡明な美月が、部屋の隅でぐったりと倒れていた。彼女の手首と足首は、太く黒いロープで縛られていた。薄暗い光の下で、ぬらぬらと光るロープ。

銀。銀を溶かした液体に浸されたロープだ。

戸口からでも、彼女の肌にできた怒ったような赤い火傷が見えた。彼女の体が衰弱と痛みで震えているのがわかった。銀は私たち一族にとって毒であり、肉を焼き、腐食させ、治癒能力を妨げる物質だ。

「あら、どこのどなたかと思えば」

嘲るような声がした。

ゆっくりと顔を向ける。安っぽいメッシュに厚化粧の女が、腕を組んで立っていた。麗奈だ。彼女の後ろには、見覚えのある加部という教師が、満足げな表情で成り行きを見守っている。

「オメガの母親じゃない」

麗奈は侮蔑に満ちた声で言った。

「その哀れな娘を回収しに来たわけ?」

「何をしたの?」

私の声は、低い唸り声になった。

「ただ、身の程を教えてやっただけよ」

麗奈は得意げに一歩前に出た。

「この雑魚が、評議会の私の席を盗もうとしたの。アルファである父様が、私のために確保してくださったインターンの席をね」

世界がぐらりと揺れた。「彼女のアルファである父」。

この学校にいるアルファは一人だけ。評議会での地位を確保できる影響力を持つアルファも、一人だけ。

私の夫。蓮。

私が十年愛した男。私の子供の父親。私の運命の番。

裏切りは物理的な打撃となって、私の肺から空気を奪った。

私は私たちの魂を繋ぐ聖なる絆、番だけの特別な精神感応で彼に手を伸ばした。

『蓮、何が起きているの?』

彼の声はすぐに返ってきた。蜂蜜のように温かく滑らかで、十年もの間私の不安を和らげてくれた声。

『葉月、愛しい人。どうしたんだ?苦しそうだね』

『美月が…怪我をさせられてる。麗奈っていう女の子が…彼女のアルファの父親がって…』

『しー、僕の月の光』

彼は私のささくれた神経を癒す軟膏のような声で囁いた。

『学校での些細なイザコザだよ。心配しないで。僕たちが初めて会った時のこと、覚えてる?あの香り…雨に濡れた森と、月の光の香り。僕は狂おしいほど惹かれた。今でもそうだ。僕たちの間に割り込めるものなんて何もない』

一瞬、彼の言葉は昔ながらの魔法をかけた。彼は私の番。月の女神が私のために選んでくれた人。彼が…そんなことするはずが…

その時、私は美月を見た。銀のロープが擦れて生々しく黒ずんだ肉を見た。娘の瞳に浮かぶ痛みが、蓮の作り出した幻想を打ち砕いた。

私は麗奈たちの忍び笑いを無視して、彼女のそばに跪いた。

「大丈夫よ、すぐにここから出してあげる」

結び目に指を触れる。灼熱の痛みが腕を駆け上り、銀が私の皮膚を蝕んだ。私は息を呑み、手を引いた。爪はすでに黒く変色していた。

「あら、困ってるの、オメガ?」

麗奈が嘲笑した。

「噛みちぎれば?あんたみたいな犬にはお似合いよ」

彼女の友人たちがスマートフォンを取り出し、その画面が彼らの残酷な顔を照らし、録画を始めた。

私は美月の涙に濡れた顔を見た。痛みなんてどうでもよかった。屈辱なんてどうでもよかった。

私は身をかがめ、銀の染み込んだロープに牙を立てた。

金属的で不快な味がした。顎に広がる灼熱の痛みは強烈だったが、私の狼、私の中の原始的な部分は、一瞬なら耐えられた。私は嘲笑もスマートフォンのフラッシュも無視して、噛み、引き裂いた。

ロープがぷつりと切れた。

次のロープに取り掛かっていると、麗奈が前に進み出た。彼女の手には、学校のマスコット犬の、泥だらけで半分噛み砕かれた骨があった。彼女は手首をひねってそれを投げた。骨は美月の顔面に直撃し、頬に泥の跡を残した。

私の中で、何かがぷつりと切れた。

十年感じたことのなかった、冷たい白い炎が血管の中で燃え上がった。銀月の一族の力、真の白狼の力が、私の中を駆け巡った。

私はゆっくりと立ち上がった。

麗奈が私の目の変化に気づく前に、私の手が飛んだ。平手打ちの乾いた破裂音が、静かな部屋に銃声のように響き渡った。麗奈は悲鳴を上げ、よろめきながら後ずさりし、今やありえない角度に曲がり、大量の血を噴き出している鼻を押さえた。

私は彼女を一瞥もせず、美月の首にかかったままの銀月の護り石に目をやった。それはただの追跡装置ではない。命綱だ。私は母に教わった順序で古の紋章を押し、両親がその遺産を託した唯一の人物に、必死の祈りを捧げた。

安全な接続が、通常のあらゆる経路を迂回して私の心の中で開かれた。

『龍岡櫂だ』

静かで、深い声が応えた。

「櫂」

私の声は氷のように冷たく、安定していた。

「私よ、葉月。誓いを果たしてもらう。最高の治癒師を連れてきて。今すぐに」

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