
魂が見た真実——裏切りの家
章 2
腹黒い一家が去った後、私は部屋の隅でうつむく少年に視線を注いだ。私のただ一人の弟、楚風華である。
母の死後、私自身も心を閉ざし、病の床に伏せりがちだったこともあり、弟を気遣う余裕がなかった。
継母の穏やかな仮面を信じ、弟の養育を任せきりにしていたのだ。
今思えば、なんと愚かな過ちであったことか。
弟が家で反抗を繰り返し、学堂で揉め事を起こしてばかりいたのも、今となってはすべて合点がいく。弟を廃人にするための、あの継母の周到な企みだったのだ。
「皆、下がりなさい」 私が命じると、部屋にいた使用人たちは静かに退出していった。
母が亡くなった後も、生前から仕える忠実な者たちがこの離れを守ってくれている。
父が後妻を迎えようと、その継母が偽善者であろうと、私の暮らしは表面上、何一つ変わらなかった。
だからこそ、奴らは表立って私を害することができず、ゆっくりと命を蝕み、病死に見せかけようとしていたのだ。
「風華、これからは私の部屋で暮らしなさい」
弟は顔を上げ、その瞳には大粒の涙が浮かんでいた。 「姉さん……あの人たちは、悪い人たちだ」彼はしゃくりあげながら言った。
私はそっとその頭を撫でる。
「わかっている。もう心配いらないわ。姉が必ずあなたを守る」
昏睡の淵をさまよったあの日々、私は全てを知った。継母が献身的な看病を装い、私の薬湯に密かに手を加えていたことを。それは毒薬ではない。でなければ、私の薬師が見抜かぬはずがない。
極上の滋養強壮薬――しかし、長年病に苦しむ私にとって、それは死を早める毒薬も同然であった。
継妹はといえば、私が歯牙にもかけないあの婚約者と密会を重ね、陰で「あの女はいつ死ぬのか」と囁き合っている始末。
私が死ななければ婚約は破棄できず、かといって彼の方から破談を切り出す度胸もないくせに。
だが、何よりも私を絶望させたのは、父である。継母や継妹など所詮は他人。彼女たちの仕打ちに心を痛めたりはしない。しかし、父だけは違った。幼い頃から、母の次に私を慈しんでくれた、ただ一人の父が……。
その父が、継母が私を害し、弟を歪ませ、虐げるのを、ただ黙って見ていたとは。
私は、手元にあった薬湯を床に叩きつけた。
――お前たちが非情に徹するならば、こちらも容赦はしない。この命が尽きるまで、決して。
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