
魂が見た真実——裏切りの家
章 3
私の母は、常州の名家である常氏の嫡女。その祖先はかつて皇帝に従って戦地に赴き、武将軍の位を賜ったほどの家柄である。
天下が泰平の世となると祖先は官職を辞して故郷へ戻ったが、皇室からの恩寵は絶えることがなかった。
それにひきかえ父は、当時官職もない一介の書生に過ぎなかった。母が身分を落として嫁いできたのだ。
半日も経たぬうちに、弟の荷物はすべて私の部屋へと運び込まれた。
「風華、姉さんに教えてちょうだい。どうして学堂で何度も揉め事を起こすの?」
弟はおずおずと私を見上げ、ぽつりと答えた。「楚泰が……あいつ、いつも人をけしかけて僕をいじめるんだ。それに、姉さんはもうすぐ死ぬ、なんて……」
楚泰。継母の息子である。
母が世を去って間もなく、継母は子を連れて楚家に嫁いできた。前の夫が亡くなってから、五年以上が過ぎていたという。
都合の良いことに、彼女の父親がかつて楚家に恩を売ったことがあったため、父は彼女を後妻に迎えた。家事を取り仕切り、私達姉弟の面倒を見るため――というのは、あくまで名目上の話だ。
魂が体から離れていた時、私は聞いてしまったのだ。楚玫と継母の会話を。――あの二人は、父の実の子であると。
もし二人が本当に父の子だというのなら、母の死も、そして継母の夫の死も、単なる偶然では片付けられない。
楚玫は私より二つ年下で、楚泰は弟と同い年だ。
父よ、あなたが母を裏切り、あまつさえその死に関わっていたなどと、この私に突き止めさせないでほしいものだ。
「姉さん、学堂へ行くよ。もうあいつとは喧嘩しないから」 弟はもともと素直で芯の強い子だ。継母の元でどれほど歪んだ教育を受けても、その心根は変わらない。
「我慢することはないわ」 私は母の形見である玉のかんざしにそっと触れた。「お前こそが楚家の若君。あの子はただの継子、言うなれば使用人と同じ。お前と肩を並べられる存在ではないわ」
「良一、若君に護衛を二人付けなさい。ちょっかいを出す者がいれば、容赦は無用です」
「わかったよ、姉さん!あいつをぎゃふんと言わせてやる!」 弟は目を輝かせて答えた。
弟が学堂に戻った初日、早速楚泰と一悶着あった。いや、正確に言えば、弟と護衛が楚泰とその取り巻きを一方的に打ちのめしたのだ。
家に逃げ帰った楚泰は、泣き喚きながら父と継母に、弟を罰するよう訴え出た。
だが、私が広間に姿を現すことまでは、想定していなかったようだ。
「これはどういうことかしら。私が意識を失っている間、継母は王泰が弟をいじめるのを、ただ見て見ぬふりをしていたとでも?」 私はあえて「王泰」と呼んだ。彼が楚家の一門ではなく、血の繋がりもない赤の他人であることを知らしめるために。
継母は虚を突かれたように固まり、慌てて楚泰を床に跪かせた。「今日はまた何があったのです?なぜ殴られたのですか?」 弟に非があるようにと、巧みに話を誘導しようとする。
楚泰は声を限りに事の経緯をまくし立てた。
父は苦々しげに眉をひそめ、私を問い詰めた。「お前が風華に護衛を付け、楚泰を殴らせたというのか?」
「王泰、です。あの子は継子。楚家の祠堂に入ることも、楚の姓を名乗ることも許されぬ身」 私は冷笑を浮かべて父を見据える。「そうでしょう、父上?」
「あの子が幾度となく風華を辱め、嘲笑っていたことを、父上はご存じなかったと?それとも、知らぬふりをなさっていたのですか?」 私の声には、隠しきれない棘があった。
私の剣幕に、継母は血相を変えて王泰に頭を下げさせた。「なんて聞き分けのない子でしょう!」 そして、なだめるように私に言った。「子供同士の些細な喧嘩ですわ、憶柳さん。どうかお気を鎮めて。お体に障ります」
「私を呪っておいでなの?」私はすっと立ち上がり、刃のような視線を投げかける。「今後、この楚家で、あの子を楚泰と呼ぶことは誰であろうと許しません」
父は黙り込み、ただじっと私を見つめていた。
その視線が、私を通り越して亡き母の面影を追っていることに、私は気づいていた。
私と母は、容姿だけでなく気性までそっくりなのだ。
その夜、王泰は罰として祠堂で夜通し跪かされた。
継母もたいした食わせ者だ。こうすることで、「私が義理の弟を虐げている」という噂が、見事に広まることになるのだから。
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