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完璧な家族、偽りの愛の終焉 の小説カバー

完璧な家族、偽りの愛の終焉

システムから課された任務を遂行するため、孤独なIT社長・広瀬恭平の心を癒やし、妻となった私。愛する息子・弾にも恵まれ、誰もが羨む幸福で完璧な家庭を築き上げたはずだった。しかし結婚七周年という記念すべき日に、残酷な真実が露呈する。夫は秘書の芽生と不倫関係にあり、あろうことか実の息子までもがその裏切りに加担していたのだ。絶望が決定定的となったのは、家族で雪崩に遭遇した瞬間だった。夫と息子は、窮地に陥った私を置き去りにし、迷わず芽生を救うことを選んだ。十年に及ぶ献身と命懸けの愛情を無残に踏みにじられた私は、現世への未練をすべて断ち切り、本来いた世界へと帰還して新たな人生を歩み始める。一方、取り返しのつかない過ちに気づき、激しい後悔に苛まれた恭平と弾は、私を連れ戻すべく異世界へと足を踏み入れる。彼らに許された猶予はたったの二十四時間。もし私が再度の拒絶を突きつければ、二人は永遠に解けない苦しみの呪縛を背負い続けることになる。裏切りの果てに待つ、偽りの愛の終焉と報いのちの選択の選択の行方。
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堀井彩矢 POV:

あのネックレス. 恭平が私に贈ったエメラルドのネックレスは, 芽生の手首にはめられたブレスレットと全く同じデザインだった. 恭平は, 全く同じデザインの宝石を, 私と芽生に与えていたのだ. 私の唇に, 乾いた嘲笑が浮かんだ.

数日後, 偶然を装って芽生と会った時, 私はわざと, 恭平が私に贈ったネックレスの話をした.

「恭平はね, 私を世界で一番大切にしてるって言ってるの. 信じられないくらい愛されてるって, 毎日実感するわ」

芽生はにこやかに微笑んだ.

「ええ, 知っていますわ. 広瀬社長は, 私にも『君は僕にとって, かけがえのない存在だ』と仰っていましたもの. まるで, 彩矢さんのように, 私を寵愛してくださるの」

恭平は, 私と芽生に, 全く同じ言葉を囁いていた. 彼は, 二人の女に, 同じ宝石を贈り, 同じ愛の言葉を囁いていたのだ. 私の心臓が, 冷たい氷でできた手で握り潰されるようだった.

恭平と弾は, 私たちのやり取りを不安げな顔で見ていた. 彼らは, 自分たちの秘密が暴かれるのではないかと, 怯えているようだった. 私はわざとらしく咳をした. 恭平はすぐにコートを脱いで私に羽織らせ, 温かい紅茶を差し出した. 弾も私の首にマフラーを巻きつけながら, 心配そうに言った.

「ママ, 風邪引かないようにね」

彼らの行動に, 私は心底吐き気がした. 芽生の香水が染み付いたコートも, 弾の偽善的な優しさも, 全てが私を苛立たせた. 私は彼らに向かって言った.

「体がだるいから, ホテルで休ませてもらうわ」

恭平と弾は顔を見合わせ, 戸惑った表情を浮かべた. しかし, 私がホテルに行くことに異論を唱えることはなかった. 彼らは私をホテルまで送り届け, 恭平は私を抱きしめ, 弾は私の頬にキスをした.

その日の夕方, 恭平の携帯が震えた. 彼は慌ててマナーモードに切り替えた. 恭平は私が目を閉じたのを確認すると, ほっとしたように息を吐いた. 携帯の画面には, 「芽生」という文字が何度も点滅していた. 弾が恭平の袖を引っ張り, 小さな声で言った.

「パパ, 芽生ちゃんに会いたい」

恭平は弾を制止し, 静かに部屋を出て行った. 私は彼らが部屋を出たのを確認すると, 部屋を出て後を追った.

恭平と弾は, 芽生の部屋の前に立っていた. ドアが開くと, 芽生は恭平の胸に飛び込んだ.

「恭平さん! ずっと会いたかったわ! 彩矢さんが目を覚ましたって聞いて, 私, 不安で... 」

芽生は涙ながらに恭平にしがみつき, 彼に寄り添うことを求めた. 恭平は芽生の涙に心を動かされたように, 彼女を強く抱きしめ, 囁いた.

「大丈夫だ, 芽生. 僕がそばにいるから」

弾は得意げに言った.

「ママが寝たから, 僕たち, 芽生ちゃんのところに来たんだよ! 」

芽生は一瞬感動したような表情を浮かべたが, すぐに顔を曇らせた.

「でも, 彩矢さんが恭平さんを独り占めしてるみたいで, 私, 寂しいの」

弾は芽生の手を握りしめ, 言った.

「芽生ちゃん, 僕が温めてあげる! 」

恭平は芽生の鼻先に軽く触れ, ふざけたように言った.

「嫉妬してるのかい? 君のために, この場所を選んだんだよ」

芽生は微笑んで, 恭平の唇にキスをした. 恭平は芽生を強く抱きしめ, 二人は深く口づけを交わした. 弾は目を覆い,

「もう! 僕, 電球になりたくないよ! 」

と叫んだ. 恭平は芽生から離れず, 言った.

「弾は昔から, こういうのよく見てるからな. 慣れてるだろ? 」

恭平は芽生を抱き寄せ, 弾の手を引いて部屋の中に入っていった. ドアが閉まる音だけが, 廊下に響いた.

私は柱の陰から, その光景を全て見ていた. 頬を伝う涙が, 冷たい水のように感じられた. 恭平と弾の甘い言葉が, 私の耳元でこだまする. 彼らは, 私の誕生日を祝うふりをして, 芽生と過ごすための舞台を演出していたのだ. 私は胸を押さえ, その場に蹲り込んだ.

「もう, あなたたちとは, 終わりよ」

私の心は, 完全に決壊した.

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