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最後の別れ、心に刻むもの の小説カバー

最後の別れ、心に刻むもの

原因不明の体調不良に半年も苦しみながら、私は痛みを隠し続けてきた。一流建築家として活躍する夫・桐谷涼介の理想的な妻であり続けることが、私のすべてだったからだ。しかし、二人の関係が終わりを迎えた夜、夫は私の電話を無視し、代わりに彼の若い愛弟子から親密な二人の写真が届く。裏切りを問い詰めても、涼介は私をヒステリックだと突き放し、妊娠した愛人を選んだ。絶望し、母に助けを求めたが、母さえも「彼は良い人」だと夫を擁護し、私を突き放した。愛の誓いも家族の絆も、私が最も弱っている時にすべて崩れ去ったのだ。そんな折、私に下された診断は末期の脳腫瘍、余命わずか数ヶ月という残酷な現実だった。だが、死の宣告を受けた瞬間、不思議と悲しみは消えた。ただの犠牲者として生涯を終えるつもりはない。残された時間は自分のためだけに使い、裏切った彼には、その代償として一生消えない後悔を刻みつけてやる。自らの尊厳を取り戻すための、最後の数ヶ月が始まる。私は静かに決意を固めた。
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有栖川莉緒 POV:

メッセージを送りながら、指が震えていた。怒りと吐き気が混ざり合ったものが、胃の中で渦巻いている。私は有栖川莉緒。カオスから美を生み出すグラフィックデザイナーであり、愛と信頼の上に人生を築いてきた妻。夫の愛人と、深夜にこんな汚らわしいメッセージのやり取りをするような女ではなかった。そんな女になるなんて、思ってもみなかった。

佳織のチャット画面の三つの点が消え、また現れる。彼女は返信を練っている。おそらく、設計図を描くのと同じ精度で、言葉を選んでいるのだろう。

やがて、メッセージが現れた。それはシンプルで、ぞっとするほど直接的だった。

`佳織:自分で見に来れば?`

続いて住所が送られてきた。都心の高級マンションだ。涼介が最近、建築雑誌で絶賛していた、超近代的なガラス張りのタワーマンションの一つだった。

心臓が肋骨を激しく打つ。これは挑戦だ。投げつけられた決闘の申し込みだ。

考える間もなく、私はよろめきながら立ち上がった。急な動きにめまいがして、ソファの背もたれを掴んで体を支えなければならなかった。痛む体の抗議を無視し、寝室に駆け込み、手近にあったジーンズとセーターを身につける。化粧なんてしなかった。鏡に映る、青白く、こけた目の女は、どうせ見知らぬ他人だったから。

夜明け前の薄闇の中、濡れた路面と滲む信号機の光をぼんやりと眺めながら、都心へと車を走らせた。頭の中は、疑問の嵐が吹き荒れていた。何を言おう?どうしよう?私の中の理性的で疲れた部分が、引き返せ、尊厳を持ってこの事態に対処しろ、涼介が帰ってきて、彼がでっち上げた哀れな言い訳を聞くまで待て、と叫んでいた。

しかし、傷ついた部分、一連の画像データで自分の人生が燃え尽きるのを見たばかりの部分は、放火犯の顔を見る必要があった。

無機質で威圧的な建物の来客用駐車場に車を停める。ロビーに向かって歩いていると、滑らかな黒塗りのハイヤーが歩道に停まった。後部座席のドアが開き、涼介が降りてきた。

彼は一人ではなかった。

続いて、若々しいエネルギーの塊のような北川佳織が現れた。彼女はスリムな体型を強調する仕立ての良いコートを着て、絹のような黒髪が歩くたびに弾んでいた。彼女は輝き、健康で、生命力に満ちていた――今の私が感じているものとは、すべてが正反対だった。

彼が何か言うと、彼女は笑った。明るく、屈託のないその声は、風に乗ってまっすぐ私の元へ届いた。涼介は微笑み返した。それは、ここしばらく私に向けられたことのない、本物の、無防備な笑顔だった。彼は手を伸ばし、彼女の顔にかかった髪を一筋払う。その指先が、ほんの一瞬、長すぎるほど彼女の肌に留まった。

その何気ない親密な仕草は、物理的な一撃のようだった。どんな写真よりも、それは雄弁に罪を物語っていた。

脳が判断を下すより先に、私の足は動き出していた。

「涼介!」

私の声はかすれ、冷たい空気の中でひび割れていた。

二人は凍りつき、声のした方へ振り返った。涼介の笑顔は消え、驚き、そして紛れもない苛立ちの仮面に変わった。佳織の表情は読み取りにくかったが、彼女の目が私を捉えた瞬間、何か勝ち誇ったような、計算された勝利の輝きがその奥に宿った。

「莉緒?なんでここにいるんだ?」涼介の声は硬く、冷たかった。彼は半歩前に出て、さりげなく私と佳織の間に身を置いた。守護者。ただ、私の、ではなかった。

「私がなんでここにいるのかって?」私は信じられないという気持ちで繰り返した。「それはこっちのセリフよ、涼介。一晩中電話してたのよ。何かあったんじゃないかって、心配で」

彼は一瞬、恥じ入るように視線をアスファルトに落とした。「スマホの充電が切れたんだ。新しいプロジェクトが決まって、チームで祝ってたんだよ。長丁場だった」

「チーム?」私は佳織に視線を投げた。彼女はまるで面白い芝居でも見る観客のように、冷めた好奇心でこの光景を眺めている。「彼女が『チーム』?」

佳織は、甘ったるい小さな笑みを浮かべた。「莉緒さん、ですよね?涼介さんからお話は伺ってます」

その声に含まれた見下すような響きは、息が詰まるほどだった。

涼介はなだめるように彼女の腕に手を置いた。「佳織、先に上に行っててくれないか」。彼は彼女を下がらせようとしていたが、それはまるで、私の厄介で不都合な感情から彼女を守り、庇っているように感じられた。

「いいえ」私の声には、切羽詰まったような荒々しさが混じっていた。「彼女もここにいて。何が起こってるのか知りたいの。今、ここで」

「莉緒、みっともない真似はよせ」彼は声を潜め、まるでパパラッチでも現れるかのように、人気のない通りをキョロキョロと見回した。彼の世間体。それがいつも最優先事項だった。

「みっともない?」私の笑い声は、もろく、乾いていた。「夫が一晩中姿をくらまして、その…愛弟子との写真を送りつけられて、みっともないのは私のほうなの?」

佳織の無垢な仮面がひび割れた。彼女は繊細で、芝居がかったため息をついた。「涼介、あなたが対処して。彼女…なんだか、普通じゃないみたい」

その言葉――普通じゃない――が、私の最後の理性を焼き尽くした。

「私の健康状態について、あなたに口出しされたくない」私は唸るように言い、一歩近づいた。

涼介は私の胸に手を当てた。優しくではなく、強く、私を押し戻すように。「もうやめろ、莉緒。ヒステリックになってる。家に帰れ。後で話す」

彼に押された力で、私はよろめいた。その不正義――かつては私の安全な港だった彼の手が、今や彼女を優先して私を突き放すために使われている――に、何かがぷつりと切れた。私は彼を押し返した。私の手のひらが、彼の硬い胸板にぶつかる。「私に触らないで!二度と!」

彼はよろめき、顔には驚きと怒りが入り混じっていた。「一体どうしたんだ?頭がおかしいぞ」

「おかしい?」私は叫んだ。その言葉が喉から引き裂かれるように飛び出した。「私を捨てて、嘘をついて、彼女と一緒にここに立っていて、おかしいのは私のほうなの?」

彼は答えなかった。ただ、冷たい拒絶の表情を浮かべて私を見つめるだけだった。彼は私に背を向け、佳織の肩に優しく手を置いた。「行こう。これは俺が何とかする」

その最後の行動、彼がこれほど決定的に彼女を選んだという事実が、私を打ちのめした。彼は一度も振り返ることなく、彼女を光り輝くロビーへと導き、私を冷たい濡れた路上に一人置き去りにした。

ガラスのドア越しに、佳織が肩越しに振り返るのが見えた。彼女はもう笑っていなかった。ただ、冷たく値踏みするような目で私を見ていた。まるで、すでに解決済みの問題を見るかのように。

建物の黒いガラスに映る自分の姿を見た。そこにいたのは幽霊だった――青白く、やつれ、狂気じみた目をして、頬には涙の跡が汚れていた。普通じゃない。もしかしたら、彼らの言う通りなのかもしれない。

家までの運転は、悲しみの霧に包まれていた。交通量も道順も覚えていない。ただ、車を停め、静まり返った私たちのアパートに入ったことだけを覚えている。

彼はまだ帰っていなかった。

鈍い痛みだった体中の痛みが、今やズキズキとした激痛に変わっていた。ソファに沈み込むと、コーヒーテーブルの上の鉢植えの蘭が目に入った。花びらは茶色くしなびれ、茎は悲しげに垂れ下がっている。水をやるのを忘れていた。二人とも。

何年も前に、涼介がこれをくれた時のことを思い出した。「莉緒みたいだ」彼はそう言って、繊細な花びらのカーブを指でなぞった。「優雅で、美しい。でも、本当に美しく咲くには、少し特別な手入れが必要なんだ」

今、それは枯れかけていた。他のすべてと同じように。

慰めを求める、絶望的で原始的な欲求が私を襲った。ママが必要だった。すべて大丈夫になると言ってほしかった。抱きしめて、ほんの一瞬でも世界が痛むのを止めてほしかった。

震える手で、母の番号をダイヤルした。

「莉緒?もしもし、どうしたの?こんなに早く」

「ママ」私は嗚咽した。その言葉はかろうじて聞き取れる程度だった。「今から…そっちに行ってもいい?少しだけ」

電話の向こうで間があった。ためらいが聞こえた。

「涼介さんのこと?」彼女の声は柔らかくなったが、そこには聞き慣れた疲労感が滲んでいた。「また喧嘩でもしたの?」

「それ以上なの、ママ。これは…」

「莉緒、よく聞いて」彼女は優しく遮った。「涼介さんはいい人よ。素晴らしい稼ぎのある人。どんな結婚にも、うまくいかない時期はあるものよ。あなたはもっと理解してあげないと。彼は仕事で大変なプレッシャーを抱えているの。わがままを言わないの。家に帰って、少し休みなさい。そうすれば朝には気分も良くなってるわ」

彼女の言葉は慰めではなかった。それは拒絶だった。彼女は私の痛みを聞いているのではなく、私の期待を管理し、娘の成功した結婚という完璧なイメージを保つために、ひび割れを繕っているだけだった。

「でも、ママ――」

「もう行かないと、あなた。お父さんと朝早くからゴルフなの。また後で話しましょう。いい子にしてなさい」

電話は切れた。私は一人だった。完全に、まったくの一人。最も私を愛してくれるはずの二人の人間に、見捨てられたのだ。

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