
蛇の接吻 ~ 妻の復讐
章 2
二日後、玄関のチャイムが鳴った。
三兄弟の中でも特に感受性の強い芸術家の湊が、ソファから飛び上がらんばかりの勢いでドアに向かった。
「来たぞ!」
彼の声は、興奮で明るく弾んでいた。
私は窓際の肘掛け椅子に座り、本を読んでいるふりをしていた。しかし、私の目はドアに釘付けになり、胃は冷たく硬い塊のようにねじれていた。
入ってきた少女は、私の記憶と寸分違わなかった。
石川結菜。
彼女は、奨学生という身分を強調するかのような、質素で少し着古したワンピースを着ていた。髪は控えめなポニーテールに結われ、その顔は甘く、大きく見開かれた瞳で無垢を完璧に装っていた。
自分の幸運が信じられない、貧しく、感謝に満ちた少女。そのものだった。
そして、私が知る限り、最も冷酷で、野心的な蛇でもあった。
「蓮さん!翔さん!湊さん!」
彼女の声は、柔らかく、メロディーのようだった。
「結菜!よく来たな!」
蓮が彼女を迎え、その笑顔は、私に向けられたどんなものよりも広く、心からのものだった。
「知らせを聞いて、すぐに来たんです!」
彼女は言い、その瞳には涙が浮かんでいた。彼女は小さな、光り輝く物体を掲げた。
「勝ちました!全国学生テクノロジー・インキュベーター・コンペで!私のプロジェクトが、一位になったんです!」
彼女の顔は、喜びに満ちた信じられないという表情で完璧に彩られていた。
私は椅子から、三人の兄たちが彼女に夢中になる様を眺めていた。
何年もの間、彼らが私に囁いた誓いの言葉を思い出す。
「俺がずっと、美咲を守るから」
「お前の夢は、俺の夢だ」
「お前より大切なものなんて、誰もいない」
今、その誓いは、別の女に捧げられていた。
「すごいじゃないか、結菜!」
翔が彼女の肩を叩きながら言った。
「お前ならやれるって、俺たちは信じてたぞ!」
「見せてみろ」
湊が、普段は貴重な美術品にしか向けないような敬虔さで、彼女の手から金メダルを受け取った。
「美しいな。君みたいだ」
結菜は頬を染め、繊細なピンク色が彼女の頬を彩った。
「皆さんのサポートがなければ、私にはできませんでした。財団から奨学金をいただいて、皆さんが励ましてくれて…」
彼女の声は途切れ、一粒の完璧な涙が頬を伝った。
「おい、泣くなよ」
蓮が即座に、低く、慰めるような声で言った。彼は彼女を優しく抱きしめた。
「これはお前が勝ち取ったものだ。お前は天才だよ」
その光景は、吐き気を催すほど見慣れたものだった。
彼らが私に浴びせてきた称賛の数々は、すべて練習だったのだ。彼女のための、練習。
私のものだと思っていた愛は、ただ貸し出されていただけ。本当の持ち主が現れるのを、待っていただけだった。
結菜は蓮から身を離し、涙を拭うと、私の方を向いた。彼女の笑顔は甘かったが、その瞳には勝利の輝きが宿っていた。
「美咲さん、最初に知らせたかったんです。あなたはいつも、私にとても親切にしてくれましたから」
彼女は歩み寄り、メダルを差し出した。
「これを、あなたに。お礼として」
私の目は、彼女の手の中のメダルに落ちた。刻印が見える。
『全国学生テクノロジー・インキュベーター・コンペ - 優勝』
そのコンテストはよく知っていた。私自身も、プロジェクトを提出していたからだ。
私の視線はメダルを通り越し、その背後にある小さく折り畳まれた証明書にちらりと移った。
『受賞プロジェクト:『AURA』 - 社会福祉配分のための予測AI』
『デザイナー:石川結菜』
だが、デザイナーは石川結菜ではない。
デザイナーは、私だ。
『AURA』は私の卒業論文であり、一年以上心血を注いだプロジェクトだった。先月、最終提案書を蓮に見せたばかりで、自分の作品をとても誇りに思っていた。彼は、とても励ましてくれた。
彼が、彼女に渡したに違いない。
本のひだに隠された私の手は、携帯電話を強く握りしめていた。指の関節が白くなっていた。
「そのメダルは…」
私の声は、危険なほど静かだった。
「私のものよ」
私の言葉は、石のように部屋に落ちた。
メダルは、突然力を失った結菜の指から滑り落ちた。大理石の床にカシャンと音を立ててぶつかり、側面が小さく欠けた。
結菜は壊れたメダルを見つめ、その顔は歪んだ。
「美咲さん…私…私、分かりません」
彼女は、傷ついた声でどもった。
「ただ、私の喜びを分かち合いたかっただけなんです。もし…もし気に入らないなら、そんなことしなくても…」
「結菜、やめろ」
蓮が彼女のそばに駆け寄り、床に落ちた壊れた賞品から彼女を引き離した。
「拾おうとするな。怪我をするぞ」
「ただのくだらないメダルだろ」
翔が、私を睨みつけながら言った。
「そんなもの、百個でも買ってやるよ、結菜」
湊が彼女を腕の中に抱き上げた。
「大丈夫だ。お前がどれだけ頑張ったか、俺たちは知ってる。お前は俺たちが知る中で、一番才能がある」
彼は、純粋な憎悪の視線を私に向けた。
「美咲、お前、一体どうしたんだ?結菜がいい知らせを伝えに来たのに、子供みたいに癇癪を起こして」
湊の腕の中に抱かれた結菜は、涙ぐんだ感謝の目で彼らを見上げた。一瞬、勝利の笑みが彼女の唇に浮かんだが、すぐに彼の肩に顔を埋めた。
私は自分の家で、まるで部外者のように感じた。
彼らの完璧なラブストーリーの、侵入者のように。
彼らは私がただ嫉妬しているだけだと思っていた。何も分かっていなかった。
私のプロジェクトを盗んだのは、結菜ではない。彼女にそんな頭はない。
奴らだ。蓮に違いない。彼だけが、アクセス権と、彼女の名前で再提出するための技術知識を持っていた。奴らは私の作品を、私の夢を盗み、銀の皿に乗せて彼女に差し出したのだ。
「結菜に謝れ」
蓮の声が、彼が本気で怒っている時に使う、低く、脅すようなトーンに変わった。
「今すぐだ」
彼は私に向かって一歩踏み出した。
「もし謝らないなら、美咲、お前と俺はもう終わりだ」
前の人生の私なら、崩れ落ちていただろう。彼の愛を失うことを恐れて、泣きじゃくり、許しを乞うていただろう。
平穏を保つためだけに、犯してもいない罪を謝罪しただろう。
あの少女を、私は覚えている。彼女の弱さを、覚えている。
彼女は、死んだ。
「嫌よ」
私は、彼の怒りに満ちた視線を、怯むことなく受け止めて言った。
兄たちは皆、私を見つめていた。その衝撃は、手に取るように分かった。私は人生で一度も、蓮に逆らったことがなかった。
結菜が湊の肩越しに顔を覗かせた。一瞬、彼女の演技が剥がれた。彼女は心底驚いているようだった。
そしてすぐに立ち直り、再び声を震わせた。
「私のせいです」
彼女は彼らの袖を引きながら、囁いた。
「私が来るべきじゃなかったんです。私はただの奨学生の貧しい娘です。私は…私はあなたたちの一員じゃない。あなたたちの優しさに、値しない人間なんです」
それは、見事な演技だった。
「そんなこと言うな!」
翔が即座に言った。
「お前は誰よりも価値があるよ、結菜」
湊が、彼女をさらに強く抱きしめながら付け加えた。
蓮の目は、彼女を見ると和らぎ、そして再び私に向き直ると硬くなった。
胸の痛みは、鈍く、慣れ親しんだ疼きだった。
私の十八歳の誕生日を思い出す。私は初めて、大きなデザイン賞を受賞した。彼らは私のために盛大なパーティーを開いてくれた。
「お前は天才だよ、美咲」
蓮は、花火の下で私にキスをしながら言った。
「俺たちの、天才だ」
今、彼らの天才は、他の誰かになっていた。
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