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部室感染 の小説カバー

部室感染

静まり返った放課後の校舎、その一角にある部室という閉鎖空間から、平穏な日常を根底から覆すような異変が静かに、しかし確実に始まりを告げる。かつては生徒たちの笑い声が絶えなかった憩いの場所は、いつしか正体不明の怪異が蠢く底知れぬ恐怖の深淵へと変貌を遂げていた。壁の向こう側から聞こえてくる不可解な物音、そして影に潜む何者かの気配。誰もいないはずの空間で、目に見えない脅威がまるでウイルスのように次々と伝播し、学校全体を底なしの絶望へと引きずり込んでいく。この場所に一体何が起きているのか。逃げ場のない校内で、生徒たちは正体不明の怪異がもたらす極限の恐怖に直面することになる。それは、決して逃れることのできない呪縛の始まりに過ぎなかった。学校という日常の舞台に突如として現れた異形なる存在。その真実を解き明かす術はあるのか。静寂を切り裂く悲鳴とともに、想像を絶する怪異の全貌が今、白日の下にさらされようとしている。青春の輝きは、抗いようのない闇に飲み込まれ、校舎はかつてない戦慄に包まれていく。
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「見たって・・・」

 雅人も半信半疑だった。何でも無いと言った筈だが、京次は先ほどまで雅人と同意見だったようだ。

 眼前の女を二人で見ていた・・・?

「なんだなんだ?俺だけ見てないって?」

 智は二人の言葉交わしが意味わからず、少々苛立ち気味になった。

「・・・早く出た方がいい!」

 雅人は荷物を急いでぐちゃぐちゃに突っ込み、ロッカーの鍵を乱暴に閉めた。京次も既に右に倣えをして既に制服に着替えていた。

「智!そのままでいい!!出るぞ!!」

 京次が怒鳴った。智はまだわけがわからず、二人よりゆっくりながらも荷物を片付け始めた。

「てなこと言うんだよ!わけわかんないって」

 帰り道、智は待っていた女子3人に更衣室での話をして妙に盛り上がっていた。

「ホントだって!何で嘘つく理由あんだよ」

 京次は智に負けじと必死の抵抗をしていた。その賑やかさを他所に雅人は腑に落ちないでいた。

 更衣室の片隅で見た、赤黒い女・・・。あの赤黒さ、間違いなく”血黒さ”と言っても過言ではない。

 しかもあの、目にこびりつくような、歯を全て見せるかのような微笑・・・。肌の青白さと言い、歯の青黒さと言い、あらゆる面に置いて不釣合いである。

 明らかに生きてはいない・・・。

 生きていない?すると不意に雅人は背中をポンと叩かれた。

「元気ねぇぞ!!」

 これに雅人はかなりびっくりし、肩を大げさに竦ませた。

「何びっくりしてんの?」

 そう言われ、雅人は背中を叩きに来た人物を素早く目に入れた。

 肌は青白くない・・・

 歯も黒っぽくない・・・

 服は赤くない・・・

 よかった、普通の人間だ。

「すまんすまん・・・。ちょっとな・・・」

 雅人は平気そうな顔を繕った。

 その相手は御堂翔。男っぽい名前で性格もボーイッシュだが、どちらもこの翔を女であることを否定させている題材だと本人は言う。

 中学一年で雅人と同じクラスになり、二年だけクラスは違ったが三年でも再び同じになり、部活におていも長い付き合いになっている。

 二人の間柄はまだ、部活仲間及びクラスメートといったとこだ。ただそれぞれ友達と言った感覚から抜け切れていないため、それ以上の関係にまだ発展しない。

 二人はよく友達から付き合ってみろと言われても、切欠がないと意見をあしらっていた。

「なら、またな。お疲れ!」

 京次が声を上げた。京次がこう言うとそれぞれ帰路に着くということだ。

「ちょと待て京次」

 智が呼び止めた。

「こんな夜中だ。お前一人で帰って誰かに襲われても知らんけど、女ら一人ずつ行かすわけにいかんだろ?」

 これに京次は即答した。

「よし!二人一組だ!」

 京次の顔が妙にうきうき顔だった。雅人と智にとっては、こんなに表情をほとんど一日崩した京次は初めて見た。

 智の勘は間違いなく当たっているのだろう。

「なら、帰ろっか」

 一人女子が京次の前にステップ気味に進み出て、京次の手を握った。

「お前!!彼女は吉川だったんか!!」

 智が大声を出して狂喜。雅人も思わず噴出した。

「皆に内緒だったのに・・・」

 言葉とは裏腹に、京次は手を繋いだ事を全員の面前で見せ付けた事により若干勝ち誇った顔をしていた。

「ちょっと怖いモン」

 吉川はそう言うも、皆にさよならしてから京次と腕組みをしながら足早に立ち去った。

「雅人、後二人は引き受けた。二人とも家が近いからな」

 智も残った二人の女子を連れて帰っていった。

「残ったな」 

 雅人は少しボーっとしながら翔に話しかけた。

「なら帰ろうじゃん」

 二人は若干ながら距離を開けて住宅街の夜道を歩きながら、色々話をしていた。あのクラスの奴があの子と付き合ってるとかなど、中学生にとってはよくあるような会話である。

「そいやさ、ハンちゃんてさぁ」

 翔がいきなり会話を切り、

「好きなコいてるの?」

 若干いたずらな笑みをして問いかけてきた。

「ん?どうだろな・・・」

 真顔ながら、雅人は返答した。

「あ!いてるじゃん!」

 翔が大声を上げた。

 まるで鬼の首を取ったかでも言うような感じだ。

「よっしゃ、じゃまたね!」

 ちょうど翔の家の前に来ていた。かなり暗くなっており、電柱の街灯が闇夜によって余りにも強調されて光っていた。

「あぁ、またな」

 雅人は翔が玄関の戸を閉めるまで見送った。

 この晩はとても蒸し暑くなっていた。6月ともなれば当然である。帰り道には雨が上がっていたものの、湿気はまだ室内に残っていた。

 雅人は風呂に入ってすぐにベッドに寝転がっていたが、雅人は寝付いてからすぐに目を覚ましていた。

「(なんだったんだ・・・、またかよ!!)」

 ただ何気なく今目覚めたこの状況で、雅人はまだ夢の中だと悟った。指を動かしてみるが、動いているという感覚が感じられなかったからだ。

 ただ、のどの乾きが異常に感じられる。何かが飲みたくなったと思い、上体を起こそうとするが、体が重たい。先ほどまで動いていた指先すら動いていない。

 夢の中だとわかっていたが、指先すら動かせない事に雅人は苛立った。

 のどの乾きもあり声すら出せない。そしてよくよく状況を考えると、眼球すら動かせない。

 夢の中で目覚めてから同じ天井しか見ていない。全身が金縛りにあい、まぶたが開けないという話は聞いた事があるが、まぶたが見開いた状態で眼球が動かせないという話は聞いた事が無い。

 ここで雅人は一抹の不安を感じた。 

 このままどうなる?

 そう思った直後、音が聞こえた。

 何の音なのかはっきりしない。

 ただ、雅人は音だと思い込もうとしていた。

 眼球が動かせず、周囲の状況が確認できないで居たが、あれは、声だと雅人は認識していた。

 物理的な音ではない。有機的で、息づかいで遣われた音である。雅人はこのよくわからない、不安と恐怖が徐々に増大されていく状況の中で、再び眠りに落ちた・・・。

「またかよ。昨日のでびびっちまったか?」

 朝になり、雅人は登校途中で一緒になった智に昨晩の話をした。

 やはりという反応が返ってきた。

「いやぁ、単なる嫌な夢ならよかったんだけど、余りにもリアルだったんでな・・・」

 雅人は昨晩の事が頭から離れられず、かなり深く考え込んでいた。かなり寝ていたにもかかわらず、睡眠不足が感じられ、上まぶたが重く感じられた。

「まあ疲れてんだろ?今日は部活休みだし、休みにはちょうどいいだろ?」

 智は元気付けに雅人の背中を叩いた。

「(まあそうだな・・・。悪い夢だ。考えすぎだ・・・、しっかりしろ自分)」

 昨日京次が発した、無責任な休日宣言で部活は予定通りに休みになった。

「二日連続で一緒に帰るのって初めてだね~」

 今日も雅人は翔と一緒に帰路についていた。

 雅人は正直二日連続も翔と一緒に帰るとは思っていなかった。

 ましてや昨晩のことがあり、余り気持ちが高揚しにくい雅人はこの時だけは何故か浮き足立っていた。

「どっか行く?」

 翔が提案した。

「へ?」

 誘われた。雅人は思ったが、頭の中では一瞬で答えが決まった。否、既にシミュレーションされていてその時の返事はどう答えるかもう決まっていた。

「OK!」

 雅人は承諾した。自身からすれば、初めて誘われたのである。中学生の考えなら、かなり大きく捉えてデートと考える。翔はどういうつもりで誘ったのかはわからないが、とても嬉しい。

 昨晩の事から考えると、かなり逆転している。あれは逆転的な正夢だった。自分が死ぬ夢を見るとそれはかえっていいことが起きるという迷信を聞いた事がある。

 今ならこの迷信でも信じれそうだ。

 昨晩の事はかえって感謝したい。そう思えたのは寝るまでの話だった・・・。

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