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兄嫁に囚われた人を愛した九年 の小説カバー

兄嫁に囚われた人を愛した九年

彼女は999回目となる膝立ちで彼の両脚の間に身を寄せ、ぎこちない唇と舌で“世話”をしていた。 情が高まったその時、彼は彼女を突き放し、車椅子を揺らしながら浴室へと入っていった。 口の中で彼はかすかに呟いた。「お義姉さん……」 彼女はもう慣れきっていて、そのまま湯薬を取りに向かう。 9年間追い続けてきた相手――冷ややかな性格であることは重々承知していた。 薬を運んできたとき、寝室の扉が半端に開いているのに気づく。 入口には車椅子が置かれ、そこには誰もいない。 中では、彼がひとりの女を胸に押しつけ、目を潤ませながら耳元で囁いていた。 「君は僕のものだ。最初から僕のものであるべきだった!」 「互いに支え合ってきたからこそ今がある!」 「結ばれないために、ずっと車椅子に座り続けていたんだ。僕の気持ちにまだ気づかないのか!?」 彼女は呆然とし、頭の中で何かが炸裂する。 その女は――彼の兄嫁。 彼より2歳年上で、豊かな胸とくびれを持ち、10年間も未亡人として過ごしてきた人だった。
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2

その晩、温晴は自室で荷物をまとめた。

陸靳野は元より彼女に冷淡であり、想い人である商琴雅のために身の潔白を守りたいとさえ思っている。

ならばと、温晴は潔く客室へ移ることにした。商琴雅のために「場所を空けてやる」ためである。

陸靳野は書斎で仕事中だった。眉間を揉み、ため息をつく。

ふと顔を上げると、大小の荷物を抱えた温晴が目に入った。

「どうした」彼の声は瞬時に冷え切り、不機嫌を隠そうともしない。「晴、破片を拾わせたくらいで、実家に帰るつもりか?」

その言葉に、温晴の肩が震えた。

「場所を空ける」という言葉が喉に詰まって出てこない。

九年間も愛し続けた陸靳野が、目の前にいる……。

しばしの沈黙の後、彼女はようやく口を開いた。「最近よく眠れないの。客室の方が落ち着いて眠れるから」

温晴の冷淡な態度は、確かにいつもと違っていた。

普段なら彼ともう一言二言交わそうと必死になるはずだ。だが、陸靳野は深く考えなかった。

温晴はあれほど自分を愛しており、交友関係も狭い。何か問題が起こるはずもなかった。

そこで彼は態度を軟化させ、彼女の手を取ってキスを落とした。

「晴晴、義姉さんはこれまでずっと苦労してきた。俺はそれを間近で見てきたんだ。だから、いい子だ。

彼女には譲ってやってくれ」

以前の陸靳野もいつもこうだった。優しく彼女をなだめ、商琴雅に譲るよう促す。そのたびに温晴は好機とばかりに彼の胸に飛び込み、従順に頷いたものだ。

だが今は、無数の矢に心を射抜かれるような痛みしか感じない。

温晴は黙って手を振りほどくと、そのまま背を向けて歩き去った。

陸靳野は不快そうに眉をひそめ、彼女の背中を見送りながら首を振った。

(まったく、お嬢様はわがままなもんだ……)

温晴がようやく荷物を客室に運び終えた、その時だった。ドアが乱暴に開け放たれる。

車椅子に乗った陸靳野が、険しい顔でそこにいた。その瞳は暗く淀んでいる。

温晴は戸惑った。彼の方から自分を訪ねてくるなど、滅多にないことだ。

だが、彼の背後に商琴雅の姿を認めると、すべて合点がいった。

「靳野、もういいのよ。晴が腹いせに持っていったとしても、私は構わないわ」 商琴雅はわざと寛大なふりをする。

陸靳野は顔をこわばらせた。「晴晴、少し調子に乗りすぎだぞ。さっさと義姉さんの嫁入りの腕輪を返すんだ!」

温晴は呆然とした。

商琴雅の部屋など一度も入ったことがないし、彼女が腕輪を持っていること自体、初耳だった。

「靳野、何かの間違いよ。 私、あの人の腕輪なんて盗ってない」 潔白を証明しようと、温晴は服のポケットをすべてひっくり返して見せた。

陸靳野がためらうのを見て、商琴雅がすぐさま前に出た。

「晴、私は見たのよ。あなたが私のバッグを探って、それを取り出すところを。

それに、私はここまで我慢してさしあげたのに、まだ嘘を重ねるつもり?」

その瞬間、温晴は彼女の目に宿る、毒を塗ったような悪意をはっきりと読み取った。

「晴、お願いだから返して。それは私の大切な身内の形見なの。あなたが私を嫌っているのは知ってる、でも……」言葉より先に涙がこぼれ落ちる。顔を青白くさせ、これ以上ないほど不当な扱いを受けた、という風情だった。

陸靳野は奥歯をギリ、と噛みしめた。言葉が歯の隙間から絞り出される。「晴晴、素直に白状しないというなら、メイドに部屋を捜させるぞ!」

温晴は陸靳野を見つめ、唇をわななかせた。

「靳野、あなたまで是非の区別がつかなくなったの?」

彼は苛立たしげに顔をそむけると、手で合図を送った。すぐに二人のメイドが入ってくる。

メイドたちは手際よく、彼女がまとめたばかりの荷物を引きずり出し、

部屋は一瞬にして凄惨な状態となった。

「絶対に晴が隠してるんだわ!」商琴雅は涙ながらに温晴を指差す。「晴、お願いだから出してちょうだい。お姉さんが悪かった。私があなたを疑ったりしなければ……」

商琴雅は陸靳野の腕にすがりついた。「靳野、晴がここまで私を嫌うなら、私、やっぱりここを出ていくわ」

その言葉に、陸靳野の身体が瞬時に強張る。彼の瞳に焦りの色が浮かんだ。

「怖がるな。俺がいる」異常なほど低い声で商琴雅をなだめると、彼は顔を上げた。

「外で跪け。いつそれを差し出すか。それまで立つことは許さん」

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