間違えた初夜。不能のはずのケダモノ富豪に骨の髄まで愛され尽くす。 の小説カバー

間違えた初夜。不能のはずのケダモノ富豪に骨の髄まで愛され尽くす。

8.2 / 10.0
家政婦の娘として育ち、不遇な環境で耐え忍んできた桜井玲奈。彼女は結婚式当日、西園寺家の令嬢・美雪の身代わりとして、顔に傷があり不能と噂される大富豪、九条龍一のもとへ嫁がされる。周囲が二人の不幸を嘲笑うなか、玲奈は隠されていた圧倒的な才能を次々と開花させていく。ジュエリー制作や金融、医学といった多岐にわたる分野で権威たちを驚愕させ、彼女こそが西園寺家の血を引く「真の令嬢」であった事実が判明する。手のひらを返して擦り寄る西園寺家や元婚約者を余所に、それまで正体を隠していた龍一が、本来の端正な素顔と強大な権力を現世に知らしめる。彼は世間に対し、玲奈との間に第二子を授かっていることを堂々と宣言し、愛する妻を奪おうとする者たちを力強く退けるのだった。虐げられてきた孤独な二人が、真実の愛と絆で結ばれ、運命を劇的に塗り替えていく大逆転シンデレラストーリー。

間違えた初夜。不能のはずのケダモノ富豪に骨の髄まで愛され尽くす。 第1章

今日、西園寺家の屋敷の内外は華やかに飾り付けられていた。

一人娘である西園寺美雪と、使用人の娘である桜井玲奈が、同じ日に嫁ぐことになったのだ。

美雪が両親と涙ながらの別れを交わしている。

一方、純白のウェディングドレスに身を包んだ玲奈は、少し離れた場所にぽつんと立っていた。整った顔立ちと美しい容姿を際立たせている。

すぐ横には、実の母であり西園寺家の使用人でもある桜井恵子がいる。 しかし、恵子の目は娘ではなく、涙ぐむ美雪に釘付けだ。慈愛に満ちたその眼差しは、まるで我が子を見るようだった。

今日は彼女の花嫁の日であるけれど、誰一人として気にかけていない。

玲奈の口元が、自嘲気味にゆがんだ。

「玲奈、お嬢様はもうすぐ出発されるわ。これからは以前のように、お嬢様のお世話をすることはできないのよ。早く跪いて、お嬢様にお別れを言いなさい!」母親の恵子は玲奈を見つめ、命令口調で言った。

玲奈の表情が曇る。

母親は幼い頃から自分には厳しく、その一方で美雪には手厚く尽くしてきた。

西園寺家が仕事を与えてくれたのだから、美雪の世話に全力を尽くすのは当然だと、母親はいつも言っていた。 玲奈に対しても、下働き同然に美雪に仕えるよう強いた。美雪が少しでも不機嫌になると、母親は玲奈に手を上げた。

幼い頃、玲奈には抵抗する力がなかった。だが今は違う。経済的にも自立し、どうにかして母を西園寺家から連れ出したいと考えている。しかし、母親はどうしても首を縦に振らず、相変わらず西園寺家の人々、特に美雪の世話に尽力していた。

まさか、自分の結婚式の日に、母親が美雪に跪けと命じるなど、玲奈は夢にも思わなかった。

玲奈が当然のように拒否すると、恵子はすぐに大声で罵り始めた。「玲奈、忘れたの?西園寺家がなければ、今のあなたはないのよ!結婚したからって、あなたは永遠に西園寺家の使用人なの! 西園寺のお嬢様は一生の恩人よ。あんたは一生、犬のように仕えなさい!」

周囲の招待客が、一斉に奇異な視線を向けてくる。

玲奈は血が頭に上るのを感じ、言いようのない屈辱と恥ずかしさに襲われた。

美雪は無言のまま立ち尽くし、何の反応も見せなかった。だが、その瞳の奥には、憎悪と妬みの色が、ちらりと揺らめいていた。

本来、使用人の娘に過ぎない玲奈を、お嬢様である美雪が気にする理由などない。しかし、玲奈は幼い頃から何事においても優秀で、美雪の輝きを幾度となく奪ってきた。

だからこそ、美雪の玲奈への憎しみは、とっくに骨髄にまで染み渡っていたのだ。

「お母さん、本当に私の実の母親なの?」 玲奈は恵子を見つめ、その瞳は失望に満ちていた。

恵子の目に一瞬、後ろめたさがよぎったが、声はさらに鋭く尖らせた。「私が苦労して産んだ子よ。何?玲奈、今さらお母さんが使用人だからって見下すつもり? えーん、皆さん見てちょうだい。私が長年育ててきた娘が、今や私をこんな風に扱うのよ!」

恵子は人前で泣きわめき、見事に全員の注目を集めた。

西園寺家の当主はこれ以上聞いていられず、低い声で叱責した。「今日はめでたい日だ、静かにしろ、そんな騒ぎで縁起を悪くするな!」

玲奈はこれ以上母親と口論する気にもなれず、踵を返して迎えのウェディングカーに乗り込んだ。

彼女は目を閉じ、心のざわめきを鎮めようと努める。

もうすぐ、藤原輝明に会える。​せめて彼の前では、笑顔で向き合いたい。

輝明のことを思うと、玲奈は少しだけ心が軽くなった。

二人は大学で知り合った。当時恋愛に興味がなかった玲奈を、輝明は熱心に、そして粘り強く口説いた。ついにその誠意に負け、付き合うことを決めたのだった。

その時、もう一台のウェディングカーが玲奈の車の傍らを通り過ぎた。

玲奈は目を開け、美雪を乗せたその車を見つめ、複雑な表情を浮かべた。

西園寺家はこれまで美雪を溺愛してきたが、今回に限っては、彼女を政略結婚させることに同意した。結婚相手は、この街なら知らぬ者のない名家――伊東家の三男だ。

かつてはその名を聞くだけで戦慄を覚えるほどの傑物だったが、一年前の交通事故で顔に深い傷を負い、性格も残忍で気難しくなったという。さらに、男としての能力も失ったと囁かれている。

この結婚には式も挙げられず、伊東家が花嫁を直接送り届けることだけを要求した。

玲奈は、西園寺家が何としてでも美雪のためにこの縁談を破棄するだろうと思っていた。

それなのに、彼らは本当に、美雪が虎穴に入るのを黙って見ていた。

しかし、もうその全ては自分には関係のないことだ。

今日から、自分と西園寺家、そして西園寺美雪との間に、いかなる関わりもなくなるのだから。

昨夜はほとんど眠れなかったせいか、玲奈はすぐにうとうとと眠りに落ちた。

どれほどの時間が経っただろうか。玲奈が目を覚ますと、そこは薄暗い部屋の中だった。微かな光を通して、部屋の装飾が非常に豪華絢爛であることがぼんやりと見て取れる。

玲奈は困惑した。ここは輝明の家なのだろうか?

それよりまず、式場に行くはずでは?

まさか、輝明がサプライズを仕掛けてくれたのだろうか?

玲奈が疑問に思っていると、突然ドアが開いた。

一人の男が入ってくる。

薄暗い光の中、男の顔は見えない。だが、長身で屈強なその体格から放たれる、危険なオーラだけははっきりと感じた。

「あなたは誰?」玲奈はすぐに警戒して尋ねた。

相手は答えず、その長身の影が直接彼女をベッドに押し倒した。熱い吐息が耳元にかかり、身震いが走る。

反射的に押し返そうとする手を、男はいとも容易く掴んだ。

「伊東涼馬」

――伊東家の三男???

涼馬はそう言うと、彼女の唇に口づけを落とした。

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