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欺瞞の結婚 の小説カバー

欺瞞の結婚

結婚から五年、平穏だと信じていた日常は家畜の競り市で崩れ去った。そこで目にしたのは、死んだはずの従姉妹と、彼女に寄り添い二人の息子を抱く夫の姿だった。すべては私を殺害しようとした女を匿うための、残酷な嘘だったのだ。夫だけでなく、実の祖母までもが結託し、私をアリバイ作りの道具として利用し続けていたという衝撃の事実。愛した日々は完璧に仕組まれた隠蔽工作に過ぎず、私は妻という名の身代わりでしかなかった。裏切りの真相を知ったのは、彼らが息子の誕生日を祝う裏で、私に薬を盛り排除しようと画策していた運命の日。私は一族の莫大な財産をすべて投げ打ち、用意していた離婚届に署名を残して、彼らの前から永遠に姿を消すことを決意した。信じていた絆がすべて欺瞞に満ちていたと悟った時、女としての誇りを懸けた孤独な脱出劇が幕を開ける。この物語は、愛と信頼を奪われた主人公が、自らの意思で偽りの生活に終止符を打ち、過去を断ち切るまでの壮絶な決別を描いた現代ミステリーである。
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MEGUMI'S POV:

帰り道のピックアップトラックの運転席で、蒼大は片手でハンドルを握り、もう片方の手は私たちの間のコンソールに置いていた。彼は私をちらりと見て、わざとらしくさりげない口調で言った。

「恵、あのさ……数日後、真奈の命日だろ」

私は窓の外を眺めていた。見慣れた牧場の風景がぼやけていく。心臓が鉛のように重かった。

「お前にとってはまだ辛いだろうし、思い出したくもないだろうから。お祖母様と二人で、ちょっと墓地に寄ってくるだけにするよ。お前は家でゆっくり休んでろ、な?」

その口調は優しく、見下すようだった。まるで聞き分けのない子供をあやすように。

この五年、彼は毎年同じ口実、同じ口調で、私をその日に家に置き去りにしてきた。そして私は馬鹿みたいに、彼の「思いやり」に感謝していたのだ。

「分かったわ」

私は囁いた。自分の声が、恐ろしいほど穏やかだった。

私の素直な同意に、彼の最後の不安も消え去ったようだった。次の赤信号で、彼は私の方を向き、身を乗り出して額にキスをしようとした。私の従順さに対する、いつものご褒美。

彼の唇が私の肌に触れそうになった瞬間、私は思わず身をすくめてしまった。

彼は凍りついた。

トラックの中の空気が、一瞬にして重く張り詰めた。

「ご、ごめんなさい……ちょっと車酔いしたみたい」

私はどもりながら、手のひらに爪を食い込ませた。その鋭い痛みだけが、私を正気に保ち、叫び出すのを堪えさせていた。

家に戻ると、私はジュースが飲みたいと言い訳をして、彼をキッチンに行かせた。彼が視界から消えた瞬間、私はまっすぐ彼の書斎に向かった。そこは、私がめったに入らない部屋だった。禁じられていたわけではない。ただ、彼はいつもあまりにオープンで、信頼してくれていたから。彼は私に何も隠さず、その透明さが私を安心させていた。

その皮肉が、苦い薬のように喉にこびりついた。

彼のパソコンの電源ボタンを押す。画面が明滅し、一枚の画像が私の網膜に焼き付いた。

蒼大と、真奈と、悠人の写真だった。ひまわり畑の中に立つ三人。蒼大が男の子を抱き、真奈が彼に寄りかかり、肩に頭を乗せている。太陽が彼らの髪と笑顔を金色に照らし出していた。それは、純粋で混じりけのない幸福の肖像画だった。

それが、彼のデスクトップの壁紙だった。

息が止まった。震える指でキーボードに触れ、短い数字の羅列をパスワード欄に打ち込む。悠人の誕生日。

パソコンが軽快な音を立てた。ロックが解除された。

フォトアルバムをクリックする。津波のように押し寄せてくる写真の数々。悠人の生後一ヶ月祝い。蒼大が彼を抱き、その隣で私の祖母、時子お祖母様が満面の笑みを浮かべている。地元の父子幌馬車レースで、蒼大が悠人にポニーの乗り方を辛抱強く教えている。真奈の豪華な牧場で過ごした、数え切れないほどの週末。バーベキュー、プールパーティー、ピクニック。

私の祖母、黒木時子は、そのほとんどの写真に写っていた。悠人を抱く彼女の顔に浮かぶ、純粋で無条件の愛。それは、私が一度として向けられたことのない表情だった。彼女は私の祖母ではなかった。彼らの祖母だったのだ。

去年、蒼大が月刊『牧場経営』のインタビューに答えていたのを思い出した。彼はカメラをまっすぐ見つめ、あの誠実な魅力でこう言った。

「僕は家族を愛しています。家族が、僕のすべてです」

ようやく分かった。彼が語っていた家族に、私は含まれていなかったのだ。

私は彼の革張りの椅子に、虚ろな抜け殻のように座っていた。ポケットの中で携帯が震えるまで。

知らない番号からのメッセージだった。

「久しぶり、恵。蒼大とお祖母様が、私と悠人をどれだけ愛してるか分かった?夢を見るのはやめなさい。黒木牧場のすべては、蒼大も含めて、私のものになるの。ああ、そうそう、明日は私の乗馬牧場の記念パーティーよ。あなたの夫が、本当の家族とどんな時間を過ごしているか、見に来たらどう?」

署名は、真奈。

まさにその瞬間、書斎のドアが開いた。蒼大が、ジュースのグラスを手に、優しい笑みを浮かべて立っていた。

「なあ、ハニー。明日、ちょっと町を離れなきゃいけないかもしれない。北の牧草地をちょっと見に行くだけだから。たぶん、戻るのは遅くなると思う」

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