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狂犬令嬢の極上ざまぁ の小説カバー

狂犬令嬢の極上ざまぁ

国家が極秘裏に育成した最高傑作であり、圧倒的な武力を誇る天才少女・藤原涼音。七年間の任務を終え、最愛の双子の妹と再会するために故郷へ帰還した彼女を待っていたのは、あまりにも残酷な現実だった。亡き両親の遺産を強奪した強欲な叔母によって、妹は犬小屋で家畜同然の扱いを受けていたのだ。静かな怒りを爆発させた涼音は、冷徹な手腕で叔母の会社を瞬時に崩壊させ、妹を虐げる者たちを次々と地獄へ突き落とす。学園の陰湿なイジメには、妹になりすまして潜入し、暴力には圧倒的な暴力で対抗。加害者の醜態を全世界に晒し上げ、徹底的な復讐を遂行していく。正体を隠し「一般人」を装う彼女だが、その背後には名門旧家の継承権と国家機関という最強の後盾が控えていた。そんな涼音の前に現れたのは、冷酷無比と恐れられる謎の名家当主・北村凌也。血生臭い噂の絶えない彼だが、涼音に対してだけは執着に満ちた熱い視線を向ける。ビジネス上の協力関係だったはずが、凌也は強引に彼女を追い詰め、その唇を奪う。「まだ他人行儀か?」――最強の狂犬令嬢と孤独な支配者、二人の危険な恋と復讐劇が幕を開ける。
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3

「愛莉!」高橋惠美は心配でたまらず、高橋愛莉を支え起こした。怒りに顔を歪め、突然現れた男を睨みつける。「あなた、誰?涼音の愛人ってわけ?」

男は何も答えなかった。深い眉と目には感情が一片もなく、まるで遥か深海のように、静まり返っていて危険だった。

彼は惠美に向かって、一歩、また一歩と近づいてくる。革靴が床板を踏むたび、鈍い音が響いた。

惠美は心臓をぎゅっと掴まれたようで、息ができなかった。

直感した、この男は、相手にしてはいけない。

「涼音!家に戻りたいなら、さっさと戻ってきて謝りなさい。でなきゃ、あんたたちみたいな孤児の姉妹、もう二度と置いてやらないから!」 惠美は吐き捨てるように言い放ち、愛莉の手を引いて背を向けた。

(置いてやった? ふざけるな!あの別荘は元々私の家だ!)

涼音は男の手元に一瞬見えた拳銃が、腰のあたりへ隠されるのを見て、目つきが鋭くなった。

(この男はいったい何者?)

男はそのとき振り返り、涼音の視線とぶつかった。涼音は男の顔をはっきりと目にした。これまで見たこともないほどの絶世の美貌。彫りの深い、鋭い輪郭の整った顔立ち。双眸は氷のように冷たく、何事も彼の心を揺らせないかのようだった。

けれど彼の周囲に漂う気配は、涼音が今まで感じたことのない恐怖と危険そのものだった。

惠美が逃げ出したのも無理はない。

「藤原涼音」男はゆっくりと唇を開き、彼女の名前を呼んだ。低く磁力のある声なのに、ひどく冷たく骨身に沁みる。

涼音は男を見つめた。「あなたが……妹の費用を払ってくれた人?」

「察しがいいな」 男の声は冷酷で、感情の起伏がない。「支度をしろ、俺の家に行く」

涼音は眉をひそめた。

(何この変な人)

そのとき、そばにいた別の男が近づいてきて説明した。「藤原さん、はじめまして。こちらは北村様です。北村様のお父様と、あなたのお父様は戦友でした。ご当主が亡くなる前に、北村様に“あなたたち姉妹の面倒を見るように”と、特別に言い残されまして。北村様はつい先日、軍をご退官になり、やっとご姉妹のもとへたどり着いた次第です」

なるほど、彼の気配があれほど恐ろしく感じるわけだ。

涼音には分かった。男は冷酷ではあるが、自分に悪意はない。

涼音は淡々と言った。「あなたのお父様が、私の父の戦友だって、それを証明できるものはあるんですか?」

北村凌也は一枚の写真を取り出した。

写真はおそらく戦場で撮られたものだった。背景は荒れ果て、写っているのは涼音の父と、見知らぬ男。見知らぬ男の眉や目元は、確かに目の前の男とどこか似ていた。

涼音は考え込んだ。「少し考えさせてください」

「わかった、 連絡先を交換しろ」凌也は必要最低限の言葉だけで言った。

涼音は彼の連絡先を追加した。彼のアイコンは真っ黒な画像だった。

涼音のアイコンも同じく真っ黒。

なんだか妙な感じがした。

続いて助手も涼音の連絡先を追加しながら名乗った。「藤原さん、私は北村様のアシスタント、今井大翔と申します。何かあればいつでもご連絡ください」

「わかりました」

二人はそのまま立ち去った。

涼音は妹の病室へ戻った。

しばらくすると、病室の前にボディーガードが二人立っていた。

考えるまでもなく、あの男の手配だ。

涼音は自分の手で妹の服を着替えさせ、髪も洗ってやった。枯れ草みたいだった髪が、少しだけなめらかになった。

だが、彼女の体に大小さまざまな傷口があり、煙草の火で押し付けられた痕まであるのを見ると、涼音の目の縁はまた赤くなった。

こらえて、こらえて、涼音は妹に、自分が開発した軟膏を塗ってやり、それから持ち歩いているノートパソコンを開いた。

自分がいなかったこの数年、妹が何を経験してきたのか、それを知りたかった。

涼音は別荘区の監視カメラシステムに侵入した。

その映像を見た瞬間、涼音の体は少しずつ硬直していった。

自分が出て行って間もなく、妹は寝室から追い出され、庭の犬小屋で寝かされるようになっていた。

かつて太陽みたいに明るかった妹の顔からは、もう笑顔が消えていた。

妹はバイトを始めた。だが職場ではセクハラに遭った。

必死に勉強して一番いい大学に合格したのに、大学の最初の学期で骨折した。 妹は舞踊科の学生だ。骨折は、もうまともに踊れないことを意味した。

愛莉の姉・高橋柚希は妹と同じクラスで、涼音は、妹の骨折が柚希と無関係だとはどうしても思えなかった。

それ以降、妹は家に縛りつけられ、毎日家政婦のように働かされ、寝るのは犬小屋。人間扱いもされない、家畜同然の暮らしを強いられていた。

けれど妹が彼女に送ってくるメッセージは、いつもこうだった。「お姉ちゃん、心配しないで。私は家で元気にしてるよ。お姉ちゃんも向こうで元気でいてね」

涼音の視界はにじんで、目の前がぼやけた。

妹はこんなにも惨めな思いをしているのに、叔母一家は万邦興業との提携を足がかりに、会社を少しずつ大きくしていった。

中学で退学した従妹の愛莉はインフルエンサーになり、柚希は大学で幅を利かせ、叔母は富裕層の奥様たちの輪に入り込み、叔父もビジネス界で注目の人物になっていた。

「ドン!」

涼音は拳で机を叩きつけた。痛みなどまるで感じない。あるのは、底なしの後悔だけ。

(もっと目を配っていれば、杏奈がこんな目に遭うことはなかったのに……! 今まで積み重ねてきた努力は、結局、あの一家の踏み台にされてしまった!)

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