フォローする
共有
ラストドラゴン の小説カバー

ラストドラゴン

現代社会の片隅で、ただ絶望に染まったまま命を落とした男。しかし、彼が再び目を覚ましたのは、見たこともない異世界の冷たい牢獄の中だった。死んだはずの男は、そこでレイリアと名乗る竜人のシャーマンと運命的な出会いを果たす。彼女と協力して決死の脱獄を果たした男を待ち受けていたのは、あまりにも残酷な世界の真実だった。かつて彼が過ごした地球はすでに滅び去り、今いる場所こそが、人々が恐れる「地獄」そのものであるということ。そして何より、自分自身の正体が戦うために造られた人造人間「ホムンクルス」であるという衝撃の事実。過酷な運命に翻弄されながらも、何も持たなかった男は、滅びゆく世界を救うために立ち上がる。これは、かつて人生に絶望し、すべてを諦めていた一人の男が、異世界の戦乱の中で己の存在意義を見出し、やがて伝説の英雄王へと至るまでの軌跡を描いた壮大なファンタジー戦記である。男の新たな歩みが、今ここから始まる。
共有

3

* * *

 北ヴェストリアーク大陸の北西にその国はある。ハイランド。魔王ルシェールが八英雄に討たれ、雨後の筍のように人類の王国が現れては消えて行ったが、八英雄の一人、ファーディガン王の建国したハイランドは、その厳しい環境にも関わらず、気骨ある騎士たちを生み、エルテナ天帝国に並ぶ版図と、軍事力を持つ大国だった。

 ハイランド歴三四二年――

 気が付くと俺は牢獄の中にいた。みすぼらしいぼろを着て、汚らしい恰好だった。俺は牢獄に入れられているらしく、底冷えするその牢獄の鉄格子越しに周囲を見てみた。衛兵と思われる男が一人、槍を持って立っている。

「槍?」

 この時点で俺はここが天国でも地球でもない、どこかの異世界ではないかと勘繰った。

 俺は天国は知らない。だが、地獄は知っている。

 狂気の最中に見たあの岩と砂漠の荒野。

 それが地獄だ。

 ここに来る前に起きたことはほとんど思い出せず、自分の名前さえ憶えていなかった。

 部屋の中には冷えた食事と木のマグカップがあり、俺はそれを食べると、上着を脱いで左手で持ち、右手には木のマグカップをもってうずくまり喚いた。

「いてえ! 腹が! おいあんた! 医者を呼んでくれ! このままじゃ死んじまう!」

 それを聞きつけた衛兵がこちらに寄って来るのを確認すると、俺はマグカップを左手に持った上着に隠して、衛兵が来るのを待った。

「騒がしいぞ! 医者だと?」

「死んじまう。助けてくれ……後生だ」

「少し待て、水をやる」

 衛兵は迂闊にも鉄格子を開け、同時に俺は寝ている体勢からブレイクダンスのように回って立ち上がり、衛兵の顎をマグカップで殴り、気絶させた。

 寝て暮らしていた俺にはできないはずの芸当だった。

 気絶した衛兵から槍と盾を奪い、鍵束も奪った。気絶した衛兵を部屋の隅に転がし、鍵束で両手の鎖を外す。

 慎重に牢獄を出て、牢内を忍び足で歩くと、ある牢屋の中にいる女が声をかけてきた。

「エディ! 脱出したのね」

 その女はブロンドのショートボブで、しかし当然俺の知らない女だった。

「エディ? お前はだれだ?」

「冗談やってる場合じゃないでしょ? レイリアよ!」

 レイリアと名乗った女はぱっと見人間だったが、耳が尖っていた。エルフだろうか? こっちはまるで状況がわからないし、俺と面識があるらしい女に右手の親指を立てて、俺はさわやかな笑顔で言った。

「君もくるかい?」

続けて視聴する!
物語はいよいよ佳境へ!アプリに切り替えて続きを読む
全エピソードをロック解除
公式サイトを開く

おすすめの作品

Alice の小説カバー
9.3
「ボクを殺したのは誰――?」鏡の向こう側で、運命の歯車が静かに回り始める。ロシア南部のクラスノダール地方に拠点を置く軍部には、最強と謳われる一人の少女がいた。コード・ゼロという名で呼ばれる彼女は、身寄りもなく、過酷な戦場をたった一人で駆け抜けてきた。感情を一切持たず、あらゆる事象に無関心なまま任務を遂行する彼女だったが、潜入捜査で訪れたある洋館で転機を迎える。巨大な鏡に映る自分と目が合った瞬間、鏡の中から白兎の耳を持つ謎の男が現れたのだ。自らを「白兎」と名乗るその男は、彼女に一つの残酷な依頼を告げる。「アリスを殺した犯人を殺してほしい」と。その言葉に導かれるように、少女は未知なる鏡の世界へと足を踏み入れる。それは、戦うことしか知らなかった孤独な兵士が、失われていた感情や「愛」という名の温もりを初めて知っていく物語。異世界の混沌と謎が交錯するなか、彼女は真実に辿り着けるのか。切なくも激しい戦いの幕が今、上がる。
アルファの望まぬオメガの妙薬 の小説カバー
8.5
アルファのカイレンと過ごした三年間、私は彼の「銀毒の呪い」を癒やす唯一の存在として影から彼を支えてきた。二十五歳の誕生日までに運命の番が見つからなければ私を選ぶという彼の約束を信じていたが、その日に彼が連れ帰ったのは別の女、リラだった。カイレンは冷酷にも別れを告げ、これまでの献身を金で片付けようとする。さらに、狡猾なリラが仕組んだ数々の罠によって、私は身に覚えのない罪を着せられていく。かつて私を守ったカイレンはリラの言葉に盲信し、病床の母を脅しの道具に使い、群れの前で私を屈辱に陥れた。呪いが再発した際も、彼は私を強引に求めておきながらリラの前では私を悪女として非難したのだ。愛が憎しみへと変わったその日、私は彼との絆を永遠に断ち切る決意を固める。向かった先は、敵対するライバルの群れ。そこには、六年の時を経て昏睡から目覚めたばかりの幼馴染が待っていた。彼こそが、私にとって真の再会を果たすべき運命の相手だったのだ。裏切りに満ちた過去を捨て、私は新たな運命へと足を踏み出す。
植物状態の夫を治した身代わり妻、もはや正体を隠せない の小説カバー
8.3
水野海月は、ある恩義を返すため身代わりとして藤本家に嫁いだ。植物状態だった夫・藤本暁を二年にわたる献身的な看護で救い出したのは、彼への密かな恋心ゆえだった。しかし、暁の意識が戻り元恋人が現れると、彼女の尽くした日々は否定され、無慈悲な離婚届を突きつけられてしまう。海月は潔く署名し、名門から捨てられた女と世間に嘲笑われながらも独り立ち去った。だが、人々は彼女の真の姿を知らない。サーキットを駆ける伝説のレーサー、世界を魅了するデザイナー、闇を支配する天才ハッカー、そして藤本家を幾度も救った神の手を持つ名医。その正体はすべて海月だったのである。真実を悟り、後悔の念に駆られて復縁を乞う元夫。しかし、そんな彼の前に京の実業界を統べる冷徹な支配者が立ちはだかる。彼は海月を抱き寄せ、「俺の妻に手を出すな」と冷然と言い放った。ただの借金関係だと思っていた男の豹変に、海月は困惑するばかり。多才な素顔を隠し持っていた「身代わり妻」の、華麗なる逆転劇が幕を開ける。
この世界の人類はどうやら俺だけのようです。 の小説カバー
8.2
学校の教室の扉を開けた瞬間、主人公の視界に飛び込んできたのは見知らぬ異世界の光景だった。突然の事態に困惑する彼には、行く当てもなければこの世界の言葉を読み解く術もない。途方に暮れ、絶望に飲み込まれそうになっていたその時、一人の美しいハーフエルフの女性が彼に救いの手を差し伸べる。彼女の助けを借りてこの世界の現状を知った主人公は、驚愕の事実に直面することになる。なんと、かつてこの地に繁栄していたはずの「人類」という種族は、数年前に忽然と姿を消してしまったというのだ。なぜ自分以外の人間は絶滅してしまったのか、そしてなぜ自分だけがこの世界に迷い込んでしまったのか。広大な異世界を舞台に、人類消失に隠された巨大な謎を解き明かすための冒険が幕を開ける。元の世界にある我が家へと帰還するため、彼はハーフエルフの女性と共に、失われた種族の足跡を辿り、世界の真実へと迫っていく。孤独な最後の一人となった少年の、運命に抗う旅が今始まる。
私のアルファの新しいルナ:奪われた人生、見捨てられたメイト の小説カバー
9.3
五年の長きにわたる呪いの眠りから覚めた私が目にしたのは、最愛の番でありアルファである海斗が、見知らぬオメガと口づけを交わす姿だった。彼は否定したが、真実は残酷だった。記録によれば私は三年前、両親の同意と海斗の執行により法的に死亡したと見なされ、彼はすでにその女を新たなルナに据えていたのだ。実の息子からさえも「死んだままでいればよかった」と拒絶され、絶望の淵に立たされた私をさらなる悲劇が襲う。新ルナの策略で崖から突き落とされた際、海斗が救いの手を差し伸べたのは私ではなく彼女の方だった。瀕死の状態で運ばれた病院でも、海斗はアルファの権限を行使し、彼女を救うための輸血台として私の命を使い果たすよう命じる。愛する夫も、両親も、息子も、全員が彼女のベッドを囲んで幸せを享受する光景を見せつけられ、私はついに悟った。この世界に私の居場所など最初からなかったのだ。彼らの前から永遠に姿を消し、二度と見つからない亡霊になること。それが、すべてを奪われた私に残された最後の願いだった。
夜を狩るもの 終末のディストピア[seven deadly sins] の小説カバー
8.0
雪に閉ざされた街、ホワイト・シティ。その象徴ともいえるノブレス・オブリージュ美術館に飾られた一枚の絵画から、ある青年が産み落とされた。現世に降り立った彼は、表向きは平凡な大学生としての日々を過ごしているが、その実体は闇夜に紛れて魂を刈り取る「死神」という宿命を背負っていた。自らの存在意義や世界の真実を深く追求することもなく、ただ盲目的に生を繋いでいた彼だったが、過酷な運命の中で一人の女性と巡り会う。彼女との出会いは、感情を持たぬ死神の心に大きな変化をもたらし、かけがえのない恋人として彼の孤独な人生を照らし始める。しかし、その先には凄惨な暴力や残酷な現実が待ち受けていた。終末の気配が漂うディストピアを舞台に、愛と死の狭間で揺れ動く青年の戦いと葛藤を描いたダークファンタジー。過激な描写を交えながら、過酷な世界で愛を貫こうとする者たちの物語が今、幕を開ける。青年は大切な人を守り抜き、死神としての呪縛から解き放たれることができるのか。