夫と親友に裏切られた私 の小説カバー

夫と親友に裏切られた私

9.7 / 10.0
結婚記念日の祝宴は、最悪の裏切りによって地獄へと変貌した。夫の雅明が私の幼なじみである小春に愛を誓い、あろうことか彼の受賞作が私の考案したデザインを盗用したものだと発覚したのだ。盗作を指摘した私に対し、二人は結託して私を悪者に仕立て上げ、冷酷な嘲笑を浴びせる。その際のもみ合いで私は階段から転落し、お腹に宿っていた新しい命を失ってしまった。絶望の淵にある病院で流産の処置を受けている最中も、雅明はかすり傷程度の小春に付き添い、妻である私を顧みることは一度もなかった。さらに電話越しに響く小春の勝ち誇ったような嘲笑が、私の心に残っていたわずかな情を完全に凍りつかせた。愛する夫と信じていた親友に、キャリアも子供も、そして尊厳さえも無惨に踏みにじられたのだ。もはや悲しむ段階は終わった。私からすべてを奪い去ったあの二人に、この手で必ず相応の報いを受けさせ、地獄の底へと叩き落としてやる。冷徹な復讐の決意を胸に、私は静かに立ち上がる。

夫と親友に裏切られた私 第1章

結婚記念日のパーティーで, 夫の雅明が私の幼なじみである小春に愛を告白した. しかも, 彼がコンペで大賞を受賞したデザインは, 私が考えたものだった.

私がアイデアを盗まれたと訴えると, 雅明と小春は結託して私を悪者に仕立て上げ, 嘲笑した.

「凛花, 気分が悪いなら控え室に戻れ. こんな騒ぎを起こすな」

冷たく突き放され, もみ合いになった末に階段から転落. お腹の子どもは, あっけなくこの世を去った.

病院で流産の処置を受けている間, 夫は擦り傷を負っただけの小春に付きっきりで, 私には目もくれなかった.

「凛花さんなんてどうでもいいって, 雅明さんは言っていましたから」

電話越しに聞こえた小春の嘲笑が, 私の心を完全に凍らせた.

この時, 私は誓った. 私からすべてを奪ったあの二人を, 必ず地獄の底に叩き落としてやると.

第1章

凛花POV:

結婚記念日のパーティーで, 夫の雅明が私の幼なじみである小春に設計コンペのトロフィーを渡し, 愛を告白する場面を目撃した. 私の心臓は, 氷の滝壺に突き落とされたように凍りついた.

西園寺雅明と結婚して五年.

今日は私たち夫婦の結婚五周年の記念パーティーだった.

豪華なホテルの一室には, 建築業界の著名人や, 雅明の共同経営者, そして友人たちが集まっていた.

シャンパンの泡が弾ける音と, 楽しげな会話が, 私の耳には遠いざわめきのように聞こえる.

妊娠初期の私は, つわりで体調が優れなかった.

それでも, 雅明の晴れ舞台だからと, 無理をして笑顔を作っていた.

雅明が今年の設計コンペで大賞を受賞したことは, 私にとって何よりの喜びだった.

私は彼の成功を心から願い, いつも影で支えてきた.

しかし, その喜びは, 一瞬にして打ち砕かれることになる.

雅明の隣には, 彼の秘書であり, 私たち夫婦の幼なじみでもある浜崎小春が立っていた.

小春は, いつも私に友好的で, 雅明の仕事も献身的にサポートしてくれていた.

だからこそ, この光景は信じがたかった.

雅明は, スポットライトの下で, 大賞のトロフィーを掲げた.

客席からは盛大な拍手と歓声が上がった.

雅明は満面の笑みでそれに応え, そして, ゆっくりと小春の方を向いた.

彼の視線は, 熱く, そして深く, 小春に注がれていた.

私の心臓が, 嫌な予感でドクンと跳ねる.

「この栄誉は, 僕一人だけのものではありません. 僕を支え, 僕にインスピレーションを与え続けてくれた, 大切な人への感謝を伝えたい」

雅明の声が, マイクを通して会場に響き渡る.

雅明は, 小春の手を取り, その手にトロフィーを渡した.

小春は, はにかんだように微笑んだ.

その瞬間, 私の頭の中に, 雅明がコンペに出したデザイン案がフラッシュバックした.

それは, 私が夜なべをして考え, 雅明に「これだ! 」と絶賛された, 私自身のアイデアだった.

雅明は, それを自分のものとして発表したのか?

「小春, 君がいてくれたから, 僕はここまで来られた. 君の存在そのものが, 僕の最高のミューズだ」

雅明は, 小春の顔を両手で包み込み, そして, 唇を重ねた.

会場には, 一瞬の静寂が訪れ, その後にざわめきが広がった.

私は, その光景をただ呆然と見つめるしかなかった.

私の胃の中で, 鉛の塊が転がるような感覚に襲われた.

吐き気がこみ上げる.

「何, あれ... 」

隣にいた友人の一人が, 小さな声で呟いた.

周囲の人々の視線が, 雅明と小春, そして私へと向けられる.

好奇の目, 憐憫の目, そして, 嘲笑の目.

私の顔は, きっと真っ青になっていたに違いない.

小春は, 雅明に促されるように, マイクの前に立った.

彼女の顔は赤く染まり, 上気したように見えた.

「雅明さん, ありがとうございます. 私も... 雅明さんのこと, ずっと... 」

小春は, 言葉を詰まらせた.

その仕草は, まさに純真な乙女のようで, 会場の女性たちの何人かは, 「まあ, 可愛いわ」と声を上げていた.

しかし, 私の目には, それは完璧に計算された演技に見えた.

彼女は, ちらりと私の方を見た.

その目に宿る勝利の光と, 嘲りの色が, 私にははっきりと見えた.

雅明は, そんな小春を優しく抱きしめた.

そして, 耳元で何かを囁いた.

小春は, さらに顔を赤くし, 雅明の胸に顔を埋めた.

周囲の人間は, 二人を祝福するかのように拍手を送っていた.

私の胃の不快感は, 限界に達していた.

「雅明, 何をしているの? 」

私の声は, 震えていた.

雅明は, ハッとしたように私の方を見た.

彼の顔には, 一瞬の戸惑いが浮かんだが, すぐに消え失せた.

会場のざわめきが, ぴたりと止まった.

誰もが, 私たち三人に注目している.

雅明は, 小春を抱きしめたまま, 私に冷たい視線を向けた.

「凛花, どうしたんだ. 気分でも悪いのか? 大勢の前で, こんな騒ぎを起こすな」

彼の声には, 私への配慮など微塵も感じられなかった.

「騒ぎ? 騒ぎを起こしているのは, どちらなの? 」

私は, 感情を抑えきれずに叫んだ.

私の視線は, 雅明の手元, 小春に渡されたトロフィーに注がれていた.

「あのデザインは, 私が考えたものよ! あなたは, 私のアイデアを盗んだのね! 」

私の言葉に, 会場は再びざわめいた.

雅明の顔から, 血の気が引いていくのが分かった.

小春は, 雅明の腕の中で, 震えるような仕草を見せた.

「凛花さん, 何を言っているんですか? 雅明さんが, そんなことをするはずないでしょう? 」

彼女の声は, か細く, まるで私が理不尽な言いがかりをつけているかのように聞こえた.

「これは, 雅明さんの努力の結晶です. あなたは, 雅明さんの成功を妬んでいるだけでしょう? 」

小春は, 私の目を真っ直ぐ見据えて言った.

その目に宿る悪意は, もう隠しようがないほどだった.

私は, 雅明に失望した.

そして, 小春に激しい怒りを感じた.

「雅明, 説明して! 」

私は, 雅明に詰め寄った.

しかし, 雅明は私から目を逸らし, 何も答えない.

その沈黙が, 私には何よりも雄弁に, 彼の罪を物語っていた.

「雅明さん, 私, 怖い... 」

小春は, 雅明の背中に隠れるようにして, 私を睨みつけた.

その目に宿るのは, 恐怖ではなく, 冷酷な勝利の笑みだった.

私は, 彼女の策略に嵌められていることを悟った.

彼女は, 私を悪役に仕立て上げようとしている.

「凛花, もうやめろ! 」

雅明が, 私の腕を掴んだ.

彼の指は, 私の腕に食い込むほど強く, 荒々しかった.

「妊娠中の君が, こんなに興奮しては体に悪い. 一旦, 控え室に戻ろう」

雅明は, 私を会場から連れ出そうとした.

しかし, 彼の言葉には, 私への気遣いなど一切感じられなかった.

ただ, この場を収拾したいという, 自己保身の感情だけが見えた.

「離して! 私は, あなたと話すことなんて何もないわ! 」

私は, 雅明の手を振り払った.

その瞬間, 私の体は, バランスを失った.

足元がぐらつき, 後ろによろめく.

会場の壁に飾られた, 私たち夫婦の笑顔の結婚写真が, 私の視界を霞めた.

次の瞬間, 私の背中が, 冷たい空気に触れた.

体が宙に浮き, そして, 階段を転がり落ちていく.

鈍い衝撃が, 幾度となく私を襲った.

お腹に激しい痛みが走る.

頭の中が真っ白になった.

私は, 無意識のうちに, お腹を抱きしめた.

「いや... 私の, 私の子どもが... ! 」

遠ざかる意識の中で, 私は雅明と小春の顔を見た.

二人の顔は, 驚きに固まっていた.

しかし, その目には, 私を心配する色など, どこにも見当たらなかった.

私を突き落としたのは, 雅明なのか, それとも小春なのか.

いや, もうどちらでもいい.

私は, ただ, このお腹の子どもだけが心配だった.

視界が歪み, 世界が反転する.

そして, 真っ暗な闇に吸い込まれていった.

私の意識は, そこで途切れた.

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