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私は、億万長者の後継者を一晩で手に入れました の小説カバー

私は、億万長者の後継者を一晩で手に入れました

婚約者の拓海に弁当を届けに向かった先で、私が目にしたのは親友の千夕と密通する彼の姿だった。裏切りに絶望した私は、自棄になってバーで出会った見知らぬ男を一夜の相手として買い、鬱憤を晴らす。しかし、その正体は勤務先である航空会社の親会社を統べるCEOだった。彼との情事は終わらず、フライト中の機内という密室で屈辱的な行為を強いられた上、その様子を隠し撮りされてしまう。「清純派CAの機内売春」という事実無根のスキャンダルが社内に拡散され、私は弁明も叶わず無期限の乗務停止処分を下された。愛も友情も失い、三年間心血を注いだ夢の仕事さえも理不尽に奪われた私は、荷物を抱え絶望の中で会社を去ろうとする。そんな私の前に、突如として四人の黒服の男たちが立ちはだかった。彼らは、あの「悪魔」のようなCEOが地下駐車場で待っていると告げる。私の窮地を救う方法があるという彼の真意とは。全てを失ったどん底の地で、新たな運命の歯車が回り始める。
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2

朝の光が厚いカーテンの隙間から差し込み、静の瞼を刺した。

ガンガンと割れるように痛む頭を押さえながら、ゆっくりと目を開ける。

全身が、まるで大型トラックに轢かれたかのように軋んでいた。

自分が裸であることに気づき、静は息を呑んだ。

恐る恐る隣に視線を向けると、彫刻のように美しい男が静かな寝息を立てている。

昨夜の狂ったような記憶が、洪水のように蘇ってきた。

「ひっ……!」

静は悲鳴を押し殺し、自分の口を手で覆った。

音を立てないように、慎重にベッドから抜け出す。

足の間に走る鈍い痛みに耐えながら、床に散らばった自分の服を拾い集めた。

しわくちゃになったワンピースを急いで身につける。

テーブルの上に、昨夜自分が叩きつけた現金が置かれているのが見えた。

羞恥と罪悪感がこみ上げてくる。

静は財布からなけなしの二万円札を取り出し、元々あった金の束の上に重ねて、グラスの下に押し込んだ。

慌ててバッグを掴む。

その拍子に、バッグのストラップに付けていた「コスモウィング航空」の社員証が外れ、ベッドの下の暗がりに滑り落ちた。

静はそれに全く気づかない。

泥棒のように抜き足差し足でドアを開け、廊下へと逃げ出した。

ドアが閉まるかすかなクリック音で、暁は目を覚ました。

隣にはもう誰もいない。

シーツにかすかな温もりが残っているだけだった。

暁は体を起こす。

滑り落ちたシーツの下から、鍛え上げられた胸板が現れた。

彼は、テーブルの上に置かれた侮辱的とも言える金額の札束を冷ややかに見つめ、鼻で笑った。

ベッドから降りると、裸足のつま先が硬いプラスチックの感触を捉えた。

暁は屈んでそれを拾い上げる。

それは一枚の社員証だった。

カードには、客室乗務員の制服を着て、少し緊張した面持ちで微笑む静の写真。

「小林 静」という名前。

暁の口元に危険な笑みが浮かんだ。

彼はスマートフォンを手に取り、特助の林誠に電話をかける。

「コスモウィング航空の小林静という女を調べろ。今すぐだ」

その頃、静は急いで帰宅したアパートでシャワーを浴び、制服に着替えていた。

スーツケースを引きずり、息を切らしながら羽田空港の出発ロビーに駆け込む。

クルー専用の保安検査場へ向かい、バッグに手を入れた。

社員証がない。

静の顔から血の気が引いた。

バッグの中身をすべてひっくり返し、スーツケースのポケットも確認するが、どこにもない。

あのカードがなければ、飛行機に乗ることすらできない。

「お客様、早くどうぞ」

検査官に急かされ、静はパニックに陥った。

会社の規則では、社員証の紛失は重大な服務規程違反にあたる。

解雇されるかもしれない。

絶望感に襲われ、静はその場にうずくまった。

涙が視界を滲ませる。

空港二階のVIPラウンジ。

暁はコーヒーを片手に、マジックミラー越しに階下で泣きそうになっている静を冷たく見下ろしていた。

「社長。調査結果です」

林誠がタブレットを差し出す。

そこには、小林静が入社三年目の客室乗務員であること、そして昨夜婚約者に裏切られたばかりであることが記されていた。

「裏切りか」

暁は眉をひそめた。

昨夜、彼女が泣きながら叫んだ男の名前を思い出す。

胸の奥で燻っていた苛立ちが、不思議と少しだけ和らいだ。

暁はポケットから静の社員証を取り出し、林に放り投げる。

「目立たない清掃員にでも化けさせて、あの馬鹿な女に返してやれ」

林が心得たとばかりに一礼し、ラウンジを出ていく。

暁は、階下で小さくうずくまるそのか細い背中を見つめ続けた。

その目は、獲物を見つけた狩人のようにギラギラと輝いていた。

静が吉田乗務長に電話をかけ、謝罪しようとしたその時だった。

「もし」

肩を叩かれ振り返ると、空港の清掃服を着たおばさんが立っていた。

「これ、あんたのやない?トイレの洗面台に落ちてたで」

関西弁訛りのおばさんが差し出したのは、静が血眼になって探していた社員証だった。

「あ……!ありがとうございます!」

静は何度も頭を下げた。

安堵のあまり、その場に崩れ落ちそうになる。

トイレには行っていないはずだが、と一瞬疑問がよぎる。

しかし、フライト前のブリーフィングの時間が迫っており、深く考える余裕はなかった。

無事に保安検査を通過し、内部の通路を急ぐ。

角を曲がる瞬間、静は二階から突き刺さるような強い視線を感じた。

はっとして見上げるが、そこには光を反射するVIPラウンジの窓があるだけだった。

「気のせい……かな」

二日酔いのせいだろう。

静は首を振り、ブリーフィングルームへと続く廊下の奥に消えていった。

二階のラウンジで、暁は満足そうにコーヒーカップを置いた。

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