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愛を殺した、彼の後悔 の小説カバー

愛を殺した、彼の後悔

体に時限爆弾を仕掛けられた私は、絶望の中で恋人の法医学者・久我修二に助けを求めた。しかし彼は、幼馴染の落とし物を探すことを優先し、私の必死の訴えを狂言だと切り捨てて電話を断つ。その数分後、私はお腹の子供と共に爆死した。皮肉にも、変わり果てた私の遺体を解剖したのは修二だった。彼は目の前の焼死体がかつての恋人であることに気づかず、私が大切にしていた彼からの贈り物を「身元不明者の安物」と蔑み、証拠品袋へ投げ入れる。両親の捜索願すら家出だと嘲笑う彼が真実を知ったのは、数日後のことだった。誘拐犯から「お前が解剖したのは自分の女と子供だ」と告げられ、修二は奈落の底へ突き落とされる。さらに一年後、事件の黒幕が、あの日優先した幼馴染だったことを突き止めた彼は、ある凄惨な復讐を決意する。二人の結婚式の打ち合わせの場で、修二は微笑みを浮かべながら彼女を椅子に拘束した。その胸元には、かつて私を奪ったものと同じ爆弾がセットされていた。
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奈緒 POV:

轟音と共に, 世界は燃え上がった.

肉体は瞬く間に炎に包まれ, 原型を留めないほどに砕け散る.

それでも, 私の意識は途切れることはなかった.

私は, 自分の体が爆発し, 燃え盛る光景を, 宙を漂いながら冷静に見下ろしていた.

不思議と悲しみはなかった.

あるのは, とうに限界を超えていた心からの解放感.

ああ, 終わったんだ, と.

やっと, 修二から解放された.

そう思うと, 心が少しだけ軽くなった気がした.

私は, 自分の焼死体が警察署の解剖室に運ばれるのを待った.

知っていた.

久我修二が, それを解剖するだろうと.

私をここまで追い詰めた男が, 私の死体を目の当たりにする.

それは, 私にとって, 最後の, そして最大の復讐だったのかもしれない.

救急車のサイレンが遠くから聞こえてきた.

数時間後, 久我と警察官たちが廃工場に到着した.

久我は眉間に皺を寄せ, 疲れた顔で現場を見渡している.

警察官の一人が焦げ付いた爆弾の残骸を指差し, 身元不明の遺体が見つかったことを報告した.

「損傷が激しく, 身元確認は困難かと」

久我は無表情で私の遺骸に目を向けた.

私は, 幽体となって, 久我の隣に立っていた.

彼の顔をじっと見つめる.

あの, 一瞬でもいい.

彼が私の死を察し, 後悔の念に駆られることを, どこかで期待していたのかもしれない.

しかし, 彼の表情は動かない.

ただ, 冷静に法医学者の目で, 私の遺体を見つめているだけだ.

久我はすぐに立ち上がった.

「遺体は女性. 年齢は20代から30代前半. 死因は爆発による多発性外傷と焼死. 身元不明者として処理し, 失踪者リストと照合. 法医解剖は私が担当する」

彼の声は機械のように冷徹で, 何の感情も込められていなかった.

私の魂は, 絶望の淵に突き落とされた.

彼は, 私が死んだことさえ知らない.

いや, 知ろうともしない.

修二は, 私を一度たりとも, 気にしたことなどなかったのだ.

私の遺体は, 久我の指示で警察署へと運ばれていく.

私は, 彼の車に乗り込んだ.

助手席には, 彼の同僚であり親友でもある刑事が座っている.

私は後部座席にそっと座り, 彼らの会話に耳を傾けた.

「久我, お前の携帯, 着信履歴がすごいことになってるぞ. 白川奈緒って人からだ. もう20件以上だ」

刑事が久我に携帯を差し出した.

久我は眉間に深く皺を寄せ, 不快そうに携帯を受け取った.

「ああ, 彼女か. また面倒なことを言ってくるんだろう」

まるで, 私が迷惑な存在であるかのように.

「奈緒ちゃんも心配してるんじゃないか? お前がこんな時間まで働いてるんだから」

刑事は気遣うように言った.

しかし, 久我は冷笑した.

「心配? 彼女はただ, 俺の気を引きたいだけだ. いつもそうだ. 恵梨子のことになると特に」

彼の言葉が, 私の魂を締め付ける.

息が, できない.

私の心臓は, もう動かないはずなのに, なぜこんなにも痛いのだろう.

久我は携帯を操作し, 私からの着信履歴をスクロールする.

そして, 最後に送ったメッセージに目が留まった.

「修二, さようなら. この世界で, あなたと二度と会いたくない」

彼はそれを読み, フン, と鼻で笑った.

「またか. どうせ, 俺を試しているだけだ. 本気でこんなことをするはずがない. どうせ, 数日経てば泣いて俺のところに戻ってくるさ」

彼はそう呟き, メッセージに返信することなく, 携帯をポケットに放り込んだ.

私の最後の言葉は, 彼にとって, ただの駄々っ子の戯言だった.

私の遺言は, 最愛の男には届かない.

絶望が, 再び私の心を覆い尽くした.

車は警察署の地下駐車場に滑り込んだ.

私の遺体は, リフトに乗せられ, 解剖室へと運ばれていく.

私は, 修二と共に解剖室に入った.

この後, 彼は自分の手で, 私を解剖する.

そして, 自分が殺した女だと, 最後まで気づかないのだろう.

これ以上の残酷が, この世にあるだろうか.

私は, 震えながら, 彼がメスを握るのを待った.

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