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彼女の復讐、彼の破滅 の小説カバー

彼女の復讐、彼の破滅

息子の死は薬物過剰摂取による自殺と断定された。だが鑑識官である私は、自ら検分した遺体が発する「殺人の証拠」を見逃さなかった。真実を求めて七度の再審を請求したが、検事正の榊宗一郎はそのすべてを棄却。二十年尽くした組織は、権力で殺人を隠蔽したのだ。司法に裏切られた私は、法を捨て復讐者となる道を選んだ。榊の娘・麗を拉致し、凄惨な拷問の様子を世界へ配信。かつての恩師や息子の恋人・亜希が説得に現れ、息子の鬱病や遺書を盾に私の正気を疑わせようとする。一時は自責の念に駆られたが、私は遺書に隠された秘密の暗号に気づく。それは幼い頃に愛読した絵本を用いた、息子からの必死の救助信号だった。彼が最後まで抗っていたことを知り、私の迷いは氷解する。神奈川県警の特殊部隊が包囲し、突入の瞬間が迫る中、私は偽りの遺書を拒絶した。息子の叫びを握りつぶした者たちへの怒りを胸に、私は再び麗の肌に鑑識道具を突き立てる。この残酷な儀式は、正義が死んだ世界への、母親としての最期の宣戦布告だった。
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「私の息子は、自殺などしていません」

私の声が、指揮本部の喧騒を切り裂いた。榊宗一郎の顔は青ざめ、汗でぬらぬらと光っている。

「これはあなたの選択です、検事正。私のではありません。娘を救うか、殺人犯を庇い続けるか。残された機会は、あと六回です」

四度目の再審請求のことを思い出す。私は彼の磨き上げられたマホガニーの執務室に立っていた。彼はサインをしている書類から、顔さえ上げなかった。

「遠山さん」

彼の声には、見下すような憐れみが滲んでいた。

「悲しみは、時にありもしないものを見せることがあります。検視官は県内でも最高の人材です。警察も捜査を終了した。あなたはそれを受け入れ、息子さんを安らかに眠らせてあげるべきです」

私は彼のデスクに拳を叩きつけた。

「安らかに眠る?息子は獣のように轢き殺されて、道端に捨てられたのよ!私が提出した証拠に、目を通しはしたんですか!」

「私が見た証拠は」

彼はようやく私と目を合わせた。その視線は氷のように冷たい。

「オピオイドで満たされた毒物検査の結果と、彼の鬱状態に関する恋人からの証言です。あなたの『証拠』は、故人との関係性によって汚染されている。失礼ですが、私にはこの街を運営する仕事がありますので」

あの日、私の弁護士は私をオフィスから引きずり出し、諦めるようにと助言した。

「検察庁には逆らえませんよ、遠山さん。あなたは潰される」

諦められるはずがなかった。目を閉じるたびに、陸が見える。解剖台の上の壊れた体じゃない。ゴールテープを切り、勝利に両腕を突き上げ、空のように明るく開かれた未来に向かって笑う、生命力に満ちた息子の姿が。そんな彼が、すべてを投げ出すはずがない。

ライブ配信の視聴者が息を呑むのがわかった。私が二つ目の道具、止血鉗子を手に取ったからだ。

榊志保は膝から崩れ落ちた。

「お願い、もうやめて。あなた、何とかしなさいよ!彼女の言う通りにして!」

彼女は夫のスーツのジャケットに爪を立てて絶叫した。

「できるわけないだろ!」

彼もまた、冷静さを失って怒鳴り返した。

「報告書には自殺と書いてあるんだ!それ以外の報告書なんて存在しない!」

嘘つき。私は止血鉗子を、麗のもう片方の腕にかざした。

彼の言葉が終わる前に、私はその器具を彼女の繊細な前腕の皮膚に押し付けた。皮膚は破らなかったが、深く、痛々しい痕が残るくらいに強く握りしめた。

少女の小さな体が、診察台の上でびくりと震えた。

「あと六回」

私は死んだような単調な声で繰り返した。

私の無菌室の外の世界は、狂乱状態に陥っていた。警察は必死で私の居場所を特定しようとしている。遠くでサイレンの音が聞こえる。それはあまりにも小さく、遅すぎた哀悼の叫びだった。彼らは私を見つけられない。この配信は、三カ国の十二の暗号化されたサーバーを経由している。私はこれを何ヶ月もかけて計画した。私は鑑識官だ。奴らの手口は、知り尽くしている。

コメント欄は、怒りの川と化していた。

『化け物だ。見つけ出して処分しろ』

『こいつには薬物注射刑がお似合いだ』

『遠山佳織、お前を呪う。あの赤ちゃんにしたことで、地獄に落ちろ』

私は何も感じなかった。呪わせておけばいい。憎ませておけばいい。

「あなたたちの呪いなど、私には何の意味もありません」

私は顔のない群衆に向かって言った。

「私はもう地獄にいる。息子が私から奪われたあの日から、ずっと。息子の汚名をそそぐためにこれが必要なら、どんな代償でも払います」

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