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さようなら、私の愛した冷酷なあなた の小説カバー

さようなら、私の愛した冷酷なあなた

謎の「システム」によって強制的に物語の世界へと送り込まれた私は、生き残るためにある過酷な条件を突きつけられる。それは、この世界の中心人物である「彼」の愛を勝ち取ること。もし攻略に失敗すれば、私の肉体は跡形もなく腐り果て、最後には一滴の血水となって消滅するという凄惨な死が待っているのだ。刻一刻と死の期限が迫る中、追い詰められた私はついに彼へ真実を打ち明ける。「もうすぐ私の命は尽きる。だから、少しの間だけでいいから私を愛してほしい」と。しかし、冷徹な彼は私の悲痛な願いを「勝手に死ねばいい」と無慈悲に切り捨てた。彼の心を得られぬまま、私は絶望の中で約束された破滅の日を迎える。ところが、いざ私が本当に命を落とそうとしたその瞬間、あんなに冷酷だった彼の態度は一変した。彼は激しく涙を流し、なりふり構わず私に生きてほしいと縋り付いてきたのだ。死の淵で交錯する二人の運命と、あまりにも遅すぎた彼の後悔。システムが支配する非情な世界で、私たちの歪な恋はどこへ向かうのか。
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2

【1】

温久言の大好物であるイチゴのショートケーキを手に、彼との新居に戻った。

ドアを開ける前、その隙間からリビングに女性の姿を認めた。

その顔をはっきりと認めた瞬間、足から力が抜け、私は壁に無力にもたれかかった。

蘇月月――温久言の、元恋人だった。

蘇月月とは一度も会ったことはない。ただ、温久言のスマートフォンで写真を見たことと、彼の友人たちから噂を聞いただけだ。

話によれば、二人は大学時代から交際していたらしい。だが、温久言の母親が蘇月月を快く思わず、三年前、無理やり引き裂いたのだという。

それ以来、温久言はふさぎ込み、酒に溺れる日々が続いた。

温久言と結婚した初夜。彼はひどく酔っていて、私の体を貪るように求めながら、蘇月月の名を呼んだ。

行為の後、彼は避妊薬を投げつけ、冷たく言い放った。「飲め」

薬の箱を握りしめ、込み上げるものをこらえながら問いかけた。「久言、私たちは夫婦なのに、どうして……。赤ちゃんは、欲しくないのですか?」

シャツのボタンを留めかけていた彼の手が止まる。振り返りざま、憎悪に満ちた手で私の顎を掴んだ。

「許渺然、己の立場をわきまえろ。俺の子を産むだと?笑わせるな」

「いいか、よく聞け。俺がお前を娶ったのは、愛しているからじゃない。都合のいい性欲のはけ口が、ちょうど必要だっただけだ」

「今後、俺たちの間にあるのは体の関係だけだ。余計な期待はするな。もし分をわきまえなければ、容赦はしない」

温久言の冷え切った表情と、感情のこもらぬ言葉に、息が詰まるような感覚に襲われた。

彼の心の中では、私は添い寝相手以上の価値もない、取るに足らない存在だったのだ。

なぜ彼がそこまで私を拒絶するのか、その時の私には分からなかった。

その理由が分かったのは、結婚から一ヶ月が経った頃。あの日も彼はひどく酔い、夜半まで私を求めてきた。

彼が寝入った後、私はこっそりと彼のスマートフォンを覗き見た。

フォトアルバムに並んでいたのは、1314枚にも及ぶ、蘇月月の写真ばかりだった。

頭が真っ白になり、涙が堰を切ったように溢れ出す。体は痺れ、震えが止まらなかった。

毎晩私を抱く夫の心に、深く愛する別の女性が棲み着いている。その事実が、どうしても信じられなかった。

【2】

結婚して一年。温久言の口から、蘇月月の名が出たことは一度もなかった。

それなのに今、彼はその女を、私たちの“家”に連れ込んだのだ。

「あなたが……許渺然さん?」

蘇月月の声に、私ははっと我に返った。

いつの間に現れたのか、彼女は私の目の前に立ち、侮蔑の色を隠そうともせず、私を頭のてっぺんからつま先まで品定めするように見つめていた。

「あら、ケーキまで。久言の誕生日を祝いに来たのね?さあ、どうぞ入って」

蘇月月は私の手からケーキを受け取ると、丁寧な素振りで私を招き入れた。

その立ち居振る舞いは、まるで彼女こそがこの家の主で、私の方がただの客であるかのように錯覚させた。

「久言ったら、本当に」 蘇月月は言葉を続ける。「あなたが病院にいて今夜は戻らないから、代わりに泊まりに来てくれって、彼が言うものだから」

その背中を見つめ、悔しさに目が赤く充血する。けれど、以前のように涙がこぼれることはなかった。

温久言がどれほど自分を大切に想っているか、私に見せつけているのだ。

悲しいはずなのに、不思議と、心が少しも動かなかった。

エプロン姿の温久言が、焼き魚の皿を手にキッチンから現れた、その時までは。その光景を目にした瞬間、私の内なる世界は音を立てて崩れ落ちた。

彼とこれほど長く一緒にいて、料理をする姿など一度も見たことがなかった。

彼がキッチンに立つ姿を幾度となく夢想してきた。だが、いざその光景を目の当たりにしても、喜びなど微塵も湧いてこなかった。

彼の料理は、私のためではない。彼が心から愛する、蘇月月のために作られたものだからだ。

なんて滑稽なのだろう。私が渇望してやまないものを、この女はいとも容易く手に入れる。

なぜ蘇月月をこの家に連れてきたのかと、温久言を問い詰めたかった。

だが、蘇月月に向けられる、見たこともないほど優しい彼の微笑みを目にして、全ての言葉を飲み込んだ。

私たち三人の中では、どう考えても私の方が邪魔者だ。彼を責める資格など、どこにもないように思えた。

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