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神は僕と彼女の琴線に触れる の小説カバー

神は僕と彼女の琴線に触れる

社会の荒波に揉まれ、日々の業務に追われる会社員の去来川唯生。ある日、彼は職場で上司との深刻な意見の対立に直面してしまう。仕事上の衝突から生じた大きな挫折感に打ちひしがれ、将来への希望を見失いかけた唯生は、深い絶望の淵に立たされていた。しかし、そんな彼の人生が大きく動き出す出来事が訪れる。心身ともに疲れ果てた唯生の前に、現実のものとは思えないほど幻想的で不思議な雰囲気を纏った一人の少女が姿を現したのだ。その少女の身体は向こう側が透けて見えるほど半透明で、彼女の背中には、夜空を彩るオーロラのように美しく輝く、神秘的な色彩を放つ羽が備わっていた。この奇跡のような出会いが、絶望の中にいた唯生の運命をどのように変えていくのか。現代を舞台に、孤独な青年と人ならざる美しき存在が織りなす、幻想的で心揺さぶる物語が幕を開ける。神聖な光を背負った少女との邂逅は、唯生が失いかけていた心の琴線に触れ、止まっていた彼の時間を再び動かし始めることになる。
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「和也くんは、別の人と盛り上がってるみたいだね。ねぇ、二人でいこうよ。明日もお休みだよね?

  てか、今もこのまま二人で抜け出さない?」

 僕は八弥子の言葉に少し驚いて八弥子の目を見た。八弥子の目は潤み、そして八弥子の左手は口の開いたチュニックの首元を弾いて鎖骨が際立った。

 「あ、明日?明日なら空いてるよ!今日はなんかもう酔いが回っているし、また明日会わないかな?」

 僕は少し戸惑いどぎまぎし答えた。

八弥子はちょっと目を細めて辛い顔をし、そしてまたいたずらっぽく微笑み直して

 「うん、明日ね。わかったわ、いいわよ。」

 と言った。

 日曜日、喫茶店に行った。

帰りの車の助手席では、大好きなパンケーキを堪能したあとで満足げに座る八弥子がいた。いっぱいになったお腹に手をあて、嬉しそうに微笑んでいた。行きの車の中と喫茶で散々おしゃべりをした後だったので、今は少しだまって八弥子は僕の心に寄り添うように助手席に身体を委ねていた。

クーラーは心地よく風をあて、8月の車内と二人の距離を快適にしていた。帰り道は来た道と違い、川沿いを通った。(同じ道では退屈でないかな。)喫茶店に行くことしか決めておいてなかった二人のお出かけに僕は心を配った。

 「わぁ、綺麗!」

 河川敷から零れ落ちるくらい一面に黄色の向日葵が咲いていた。

 「ここ、こんな綺麗な向日葵畑があったのね。わざわざわたしに見せるためにここを通ったの?!素敵!!」

 助手席から八重子の歓喜の声と熱い視線が注がれる。

 「ねぇ、ちょっと車を停めて。降りようよ。」

 僕は、静かに車を停めた。二人車からおりると、八弥子は手を空に向けて広げ、思いっきり空気を吸った。そして向日葵の傍に行きうっとりと眺めていた。

 「写真撮る?」

 僕は、何か気を利かせなければと思いスマホを取り出してカメラのレンズを八弥子に向けた。

シャッターを一、二度切ると八弥子は僕の所にやって来て

 「一緒に写ろうよ。」

 と耳打ちした。僕の反応を待たずに僕の腕をとり向日葵畑で僕と隣り合ってカメラのレンズを向けた。

パシャ。

そして、スマホをおろすと僕にさらに近づき、肩が触れ、そして頬と頬が近づきそして八弥子の唇が僕の唇へと近づいてきた。唇が、触れそうになるすんでの所で僕はそっと身体を除けた。

 「?えっ?!」

 八弥子は悲鳴にも似た叫びをあげた。そして何とも言えない少し困った顔をした僕の表情をとらえると、下を向き逃げるように助手席に乗り込んだ。

 それから車の中は地獄だった。八弥子は下を向き今にも泣きだしそうな顔で唇をきゅーっと結んでいた。さらに僕が言った

 「家まで送るよ。」

 という言葉が気に障ったようで、八弥子の目に涙が浮かび両目から涙の筋が流れた。

(ここは、唇をさけては行けなかったんだ、やっぱり。)

僕は悩んだが、他の選択肢を僕は知らない。(お互いの純粋な気持ちを大事にしたかった。)と思い直しても今の状況で言い訳にしかならないようで言えない。(いや、何か言わないと。)

 「ごめん、そんなつもりじゃ…。」

 「いいよ!もういいよ…。」

 八弥子は僕の話を最後まで聞かずに遮った。車は乾いた音を立て住宅街の手前の交差点に差し掛かった。

信号待ちの時に、滑るように八弥子は助手席から出て行き、そして住宅街へ消えていった。

 「女心をきちんとわかってあげられない。」

 電話先で今日の報告を待っていた和也に僕は言うと、和也は言った。

 「性別関係なく男心だってわかんないんじゃない?」

 僕はその返答にぎょっとした。

 「いや、僕は怒ってないよ。

例え唯生(ゆいき)が女だったとしてもきっと男心をつかめないってことだよ。」

 僕は今日の衝撃と和也の言葉のダブルパンチで頭がぼーっとし、僕は和也にも何か悪いことをしたのか、八弥子のことと、和也のことと両方を考え込み始めた。

 「今、僕のことを考えてなかった?違うって。友達としては満点だよ、頼りになるし一緒に居て楽しいし。

そうじゃなくって、えっと、お前といると恋心が浮かばれないっていうのかな。」

 「え?だって僕はまずは人として心…つまり身体を大事にしようと思って。」

 「何、身体って?つまり性欲を先回りさせないようにしようってこと?」

 電話越しで和也が眉間に皺を寄せている様子が想像できた。

 「そうだよ。ただの性欲、以上に、相手…つまり八弥子のことを大事にしてると…。」

 「避けるのが?性欲っていう部類の感情じゃなくったって今、自分の心に触れてほしいっていう気持ちをわかってあげなきゃだめだったんだよ。」

 僕はスマホを耳からはずし空を見上げた。まだ家の車庫にいて外だった。果てのない空は高く、日が落ち始めて暗くなってきていた。

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