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籍ごと追い出されたら、裏アカが世界株を爆買い の小説カバー

籍ごと追い出されたら、裏アカが世界株を爆買い

結婚三周年の記念日、織田七海は丹精込めたディナーを用意して夫の帰りを待っていた。しかし、戻ってきた夫が口にしたのは「妊娠中の恋人がいる」というあまりに非情な離婚宣告だった。元カノのために捨てられた彼女は世間の嘲笑の的にされるが、離婚を機に隠された本性を現していく。次々と明かされる裏の顔が世界を驚愕させ、彼女は圧倒的な存在へと変貌を遂げた。かつての妻の輝きを目の当たりにした元夫は、特大のダイヤを手に土下座で復縁を迫るが、もはや手遅れだった。冷徹に拒絶する七海の傍らには、彼女を独占しようとする実力者・高田宗紀の姿があった。宗紀は執着心を隠さず、馴れ馴れしく縋りつく元夫を容赦なく排除するよう命じる。愛に裏切られた女が自らの価値で世界を屈服させ、真に自分を愛する男と共に新たな人生を歩み出す。クズな元夫への痛快な復讐と、億万長者との情熱的なロマンスが交錯する現代ドラマチックな物語。
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ナゾバー。

七海は分厚い黒縁の眼鏡を外し、指先でそっとテーブルに置いた。 その瞬間、まるで封印が解かれたかのように、彼女の瞳に生き生きとした悪戯っぽい光が宿る。

艶やかなウェーブのかかった黒髪、燃えるような赤を引いた唇。

その一つ一つが相まって、蠱惑的な色香を放っていた。 家での地味で退屈な姿の欠片もなく、そこにいたのは全くの別人だった。

「そういえば、来週の射撃大会、行かない?」愛理が持ちかける。

七海は考えるまでもなく首を横に振った。 「行かない。 ブランクが長すぎて、勘も鈍ってる」

「勘なんてどうでもいいじゃない。 気分転換よ」愛理は悪戯っぽく笑いかける。 「あのクソ野郎、西永良陽を的に見立てて、心ゆくまで撃ち抜いてやればいいのよ!」 七海はワインを一口含んだ。

「その提案、悪くないわね」 「でしょ!」愛理は身を乗り出す。

「それにね、四年前、アンタをあと一歩まで追い詰めたライバル『L』も来るらしいわよ。 アンタが引退してから、奴は連覇中。 ここでアンタが返り咲けば、最高のショーになるじゃない!」

興奮冷めやらぬ様子で、愛理はとどめの一撃を放つ。 「今年の優勝賞品、知ってる?世界に一台しかない、特注のブガッティですって!」

彼女はそう言って、大会要項が表示されたスマートフォンの画面を七海に向けた。

七海はそれにざっと目を通す。 この大会には豪華な賞品以外に、もう一つ、観客を沸かせる仕掛けがあった。

参加者全員が仮面をつけ、コードネームで競い合うこと。 そして、優勝者だけが、敗者一人を指名して仮面を外させる権利を持つこと。

「今回参加するなら、 絶対にLの仮面を剥がしてよ。 アンタをあと一歩で倒しそうになった奴がどんな顔してるのか、 すごく気になるの」 と愛理が言った。

「ええ」 七海は赤ワインのグラスを揺らし、口元に微かな笑みを浮かべた。 「やるなら、派手に遊んであげる」

「どう遊ぶつもり?」愛理の好奇心が掻き立てられる。

七海は不敵な笑みを深めた。 「情報を流して。 優勝者は、神医キンの治療を一度受けられる、とね。 神医キンのルールにさえ従えば、いつでも有効だって」

愛理は即座に目を見開いた。 「そんなビッグニュース流したら、参加者が殺到するわ!刺激的すぎる!」

「少し席を外すわ」 七海はそう言って立ち上がった。

トイレへ向かうその僅かな空間を、数人の男たちが壁のように塞ぐ。

「ねーちゃん、一杯どう?」

下卑た笑みを浮かべ、男たちの粘つくような視線が彼女を頭のてっぺんから爪先まで舐め回す。

七海は氷のような表情で、温度のない声を投げつけた。 「失せろ」

「威勢がいいねぇ! ハハッ、 俺好みだ。 そういう女を屈服させるのが好きなんだよ」

「駄犬は道を空けなさい」七海は無表情に言い放つ。

男の一人が口笛を吹き、嘲るように伸ばした手が、七海の胸元を掴もうとした、その刹那――。

七海の堪忍袋の緒が、音もなく切れた。 閃光のような手刀が、男の腕を正確に捉える。

「ぎゃああ!」 手首を砕かれた男が、豚の断末魔のような悲鳴を上げた。

仲間が「てめえ……!」と続く間もなく、七海のしなやかな蹴りが、次々と男たちの体を宙に舞わせる。

ほんの数呼吸の間に、屈強な男たちは床に叩きつけられ、呻き声一つ上げることさえできずに沈黙した。

その一部始終を、二階のボックス席から見下ろす一団がいた。

「うわっ、あの女すげえな。 綺麗だし、俺のタイプだ」

友人の軽薄な声を聞き流し、良陽は階下の女へ何気なく視線を落とした。 大きく波打つ髪、華やかな出で立ち。 だが、その横顔のライン、ふとした瞬間の仕草に、既視感が胸をざわつかせる。 ――まさか。あの地味で退屈だった元妻、七海だというのか?

良陽は深悠を病院へ送った後、彼女の気晴らしに付き合ってこのバーへ来ていた。 こんな場所で、最も会いたくない人間に再会するとは。

「あれ……織田、お姉さん?」隣で深悠が驚きの声を上げた。

「はあ? あれが織田七海? 冗談だろ。 あんなイイ女が、あの所帯じみた主婦のわけない」

良陽の友人たちは、改めて女の姿を凝視し、その立ち振る舞いから放たれる艶めかしい雰囲気が、記憶の中の元妻と重なった瞬間、言葉を失った。

「ふん」良陽の妹、恵瑠が鼻で笑う。 「あんなふしだらな格好、まともな女のすることじゃないわ。 お兄ちゃんに捨てられた途端、男漁り?体を売るしか能がないのよ」

恵瑠の言葉を皮切りに、周りの男たちも嘲りの声を重ねる。

「ビッチってのはこれだからな。 男なしじゃ生きていけないんだろ」

「お前の兄貴が離婚して正解だったな。 ああいう色目を使う女は、平気で亭主を裏切る」

「男に寄生するしか能がないんだ。 一生売女でもやってろってんだ」

下卑た笑い声が飛び交う中、良陽のこめかみに青筋が浮かぶ。 彼は低く、しかし有無を言わせぬ声で一喝した。 「黙れ!」

鋭い視線で一同を黙らせると、良陽は足早に席を立ち、七海のもとへと向かった。

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