フォローする
共有
モラハラ元夫からのグロテスクな求愛は着信拒否で。私は新恋人の腹筋を眺めます の小説カバー

モラハラ元夫からのグロテスクな求愛は着信拒否で。私は新恋人の腹筋を眺めます

長瀬詩織と牧野雄介は、10年来の幼馴染でありながら3年間の結婚生活で破綻を迎えた。夫の裏切りや実兄たちの無関心に晒された詩織は、病に蝕まれた体を引きずり、すべてを捨てる決意を固める。胃がんの中期という過酷な現実を前に、彼女は不屈の精神で這い上がり、平社員からテクノロジー業界の頂点へと登り詰めた。離婚の熟慮期間が終わると同時に夫を出し抜き、鮮やかに自由を手にする。かつて高圧的だった雄介は、立場が逆転すると豹変し「自分の胃をあげるから離婚はしない」と涙ながらに懇願。困窮した兄たちも掌を返して金銭を求めてすがりつくが、今の彼女に彼らを受け入れる余地はない。そんな詩織の背後から、一人の男が力強く歩み寄る。彼は自らの肉体美を誇示しながら、過去に縛られるなと彼女を鼓舞する。遅すぎた愛情や後悔など、路傍の草ほどの価値もない。詩織はかつての執着を完全に断ち切り、新たなパートナーと共に未来を見据えていた。
共有

2

長瀬詩織は自分のデスクに戻った後、書類を机の上に置き、スマホを取り出して離婚協議書の写真を撮った。

義母の牧野智子に送信した。

癌の告知を受けた翌日には、彼女はすでに牧野智子に離婚の相談を持ちかけていた。

智子からすれば、息子の雄介が詩織と離婚してくれるなら願ったり叶ったりだ。そうすれば息子は長瀬家の令嬢と結ばれ、権力にすがって安泰に過ごせるからだ。

その上、詩織は不治の病に冒されており、余命も定かではない。なおさら牧野家に置いておくわけにはいかない。

だからこそ智子は、雄介に離婚協議書にサインさせれば、慰謝料として6億を支払うと約束した。

相手からは、ほぼ秒で返信が来た。「受け取りました」

再診の予約票と離婚協議書をバッグにしまい、詩織は引き出しを開けた。中には、数日前に書いてプリントアウトしておいた辞表が入っている。

去ると決めたからには、未練がましく引きずるべきではない。スパッと断ち切らなければ。

彼女は辞表とサイン済みの書類の束を手に取り、立ち上がって財務部長のオフィスに向かった。

財務部長は、眼鏡をかけた温和そうな中年男性だ。

詩織が差し出した辞表を見ると、目を丸くし、途端に慌てふためいた。

「長瀬主任、辞めるつもりなのか?」

詩織の能力はずば抜けており、ここ数年は彼の右腕として活躍している。彼女がいるからこそ、自分の財務部長という地位も安泰なのだ。

もし詩織が辞めてしまったら、自分はどうすればいいのか!

詩織は頷いた。「ええ、部長にはこの数年間、本当にお世話になりました」

彼女と雄介の結婚は公にされておらず、二人が夫婦であることを知る者はごく僅かだ。

財務部長は詩織の腕を軽く引き留めた。「給料に不満があるのか?なら昇進と昇給を上に掛け合ってやるから!」

詩織は思わず笑みをこぼした。「それとは関係ありません」

「本当に決心したのか?」

「はい、決めました」

雄介という人すらもう手放すのだ。当然、彼の会社にこれ以上とどまることなどできない。

詩織の揺るぎない口調に、部長は言葉を呑み込んだ。

彼は大きなため息をつき、ペンを取り出して離職届に署名した。

ペンをしまいながら、部長は一つ尋ねた。「退職の理由は何なんだ?」

詩織は正直に答えた。「病気になりました。仕事と命なら、やはり命の方が大切ですから」

部長の顔に驚きの色が走り、それ以上何も言わなくなった。

退職手続きに一ヶ月。そして、離婚のための手続きも約一ヶ月。

一ヶ月後、彼女は完全に自由になれる。

退社して帰宅すると、詩織は昨日買ってきた昔ながらの日めくりカレンダーの1ページ目を破り取り、丸めてゴミ箱に放り込んだ。

真新しいカレンダーには、鮮やかな赤字が印字されている。今日は7月1日。あと1ヶ月後の8月1日には、彼女はこの家を完全に去ることになる。

家政婦の栗林さんがフルーツの乗った皿を運んでくると、ローテーブルの上のカレンダーを見て訝しげに詩織に尋ねた。「奥様、そのカレンダーを買われたのには、何か特別なご事情でもおありですか?」

詩織は微笑んで答えた。「私の誕生日がもうすぐでしょう?自分へのリマインダー代わりよ」

栗林さんは少し首を傾げた。

誕生日のリマインダーならスマホがあるというのに。

今どき誰がそんな昔のカレンダーを使うというのか?

心の中では疑念を抱きつつも、栗林さんはそれ以上何も聞かず、フルーツを置くとそそくさとキッチンへ戻って作業を続けた。

「ああ、そうだわ」キッチンの入り口で、栗林さんは振り返り、躊躇いがちに詩織に言った。「奥様、先ほど旦那様にお電話したのですが、今夜は接待があるから夕食は家では食べないとおっしゃっていました」

詩織はブドウを一粒つまんで口に放り込み、少しモゴモゴとしながら言った。「ええ、わかったわ」

栗林さんは少し驚いた。

これまでなら、旦那様が接待で帰らないと聞くたび、奥様はいつも疑ってかかり、何十回も電話をかけて行動を逐一確認していたものだった。

どんな些細なことでも、すべてを把握しようとしていた。

一番ひどかった時は、旦那様のスマホに追跡アプリまでインストールしたほどだ。

その後、何があったのかは知らないが、奥様は手首を切って自殺を図り、集中治療室に運ばれた。

今日の奥様はどうにも様子がおかしい。こんなに静かで、騒ぎ立てもしないなんて。

おかしなことの裏には必ず何かあるに違いない。

ローテーブルに置かれたスマホが鳴った。詩織がちらりと見ると、従兄の長瀬直樹からの着信だ。

通話ボタンをスワイプすると、電話の向こうから直樹の探るような声が聞こえてきた。『詩織、もう仕事終わった?今忙しい?』

詩織は手に持ったリンゴの欠片に目を落とした。『忙しくないよ。ちょうど仕事から帰ったところ。何か用?』

直樹は少し言葉を選ぶようにして口を開いた。『実はさ、俺、昇進して給料が上がったんだよ。それに、父さんたちもお前にずっと会ってないからって、一緒に夕食でもどうかって誘っててさ』

『わかった』彼女は承諾した。

『迎えに行くよ』

電話を切ったら、詩織は立ち上がった。

栗林さんに外へ出かけること、夕食は家で食べないことを伝えると、彼女は別荘を後にした。

栗林さんは奥様の背中を見つめ、何かを言いかけて、結局やめた。

やっぱりだ。 奥様の旦那様に対する病的な執着が、こんなに静かなままで終わるはずがなかったのだ。

きっと、裏でとんでもないことを企んでいるに違いない!

……

詩織は歩きながら、直樹から送られてきたばかりのメッセージを見た。

「ごめん、車のガソリン切れちまったから、ちょっと待ってて」

詩織は返信した。「わかった」

直樹は詩織の叔父の息子で、彼女より三歳年上だ。今年二十七歳になるというのに未だに彼女の気配がなく、両親をいつもヤキモキさせている。

結婚を急かされるたび、直樹はどこ吹く風で、彼女を作る気などさらさらないようだ。

詩織は長瀬家の本家とはほとんど付き合いがなかったが、叔父一家とは親しくしている。娘を持つ夢が叶わなかった叔父と叔母は、詩織を本当の娘のように可愛がってくれたのだ。

当時、母親が無一文で家を出る覚悟で離婚し、長瀬家から離れた時も、この叔父一家が頻繁に母娘を援助してくれた。

叔父一家は、彼女たち母娘にとっての大恩人だ。

マンションのゲートを出て数分も待たないうちに、直樹から電話がかかってきた。

『詩織、今帰宅ラッシュの時間帯でさ。ちょうどお前の家の近くを通りかかる友達がいるから、そいつに迎えに行ってもらうように頼んだんだ』

言葉が終わるか終わらないかのうちに、一台の黒いベントレーが彼女の目の前に停まった。詩織が反応する間もなく、乗っている人物が車の窓を下ろした。

視界に飛び込んできたのは、見覚えはあるのに、どこか懐かしいような顔だ。

スマホを握りしめたまま、詩織はなんとか声を絞り出した。『たぶん……その人、今目の前にいるわ』

その男は彫りの深い整った顔立ちをしている。黒いシャツの袖を無造作に捲り上げ、引き締まった腕を覗かせている。

新井怜は詩織に目をやり、五年前の記憶に思いを馳せた。

あの頃、この小さな女の子はいつも専門書を抱えて彼の後ろを追いかけ、「お兄ちゃん」と呼んでは本の内容を教えてほしいとせがんでいたものだ。

数年ぶりに会った彼女は、当時のあどけなさを潜め、少し大人の女性の魅力を漂わせている。

スモーキーパープルのタイトなワンピースに身を包み、髪は高い位置でポニーテールに結ばれている。その瞳には微かな怯えの色が浮かんでおり、華奢で小さな体は、以前よりもずいぶん痩せたように見えた。

男のもともと鋭い瞳がさらに陰り、薄い唇から低く一言だけ紡ぎ出した。「乗れ」

おすすめの作品

実は俺、超絶御曹司でした の小説カバー
8.4
極貧の家庭に育った俺は、大学進学の夢を諦めず、深夜までバイトに明け暮れ自力で学費を稼ぎ出した。念願のキャンパスライフが始まり、俺はクラスで誰からも愛される清純な美少女に恋をする。分不相応だと自覚しながらも勇気を出して告白すると、予想外に彼女は交際を承諾。幸せの絶頂にいたが、彼女から最初のプレゼントに高価なスマートフォンを要求される。俺はさらに身を削って働き、同級生の洗濯まで引き受けて必死に金を貯めた。ようやく購入資金が揃ったその日、俺は最悪の光景を目の当たりにする。彼女がバスケ部の主将と浮気をしていたのだ。貧乏人だと嘲笑われ、力でねじ伏せられた俺は、金がないだけで虐げられる理不尽な現実に絶望し、己の境遇を激しく呪った。しかし、寮に戻った俺に父から衝撃の事実が告げられる。「実はうち、とんでもない大富豪なんだ」。その日を境に、貧しさに喘いでいた俺の人生は一変する。かつて最も憎んでいた存在、すなわち世界屈指の資産を持つ超絶御曹司としての逆転劇が、ここから幕を開ける。
ベータに振られたので、彼の王を奪い取った。 の小説カバー
8.9
群れのベータである蓮との番いの儀式。その神聖な祭壇で、私は最悪の裏切りに遭った。蓮は、自らが保護したか弱い野良の女・真理奈が自殺を図ったという嘘を信じ、私を一人置き去りにして森へ駆け出したのだ。あろうことか彼は、この騒動の責任を私に押し付け、絶対的権力者であるアルファの王・大雅への謝罪まで命じてきた。六年間の愛と永遠の誓いを踏みにじられ、大陸中の笑いものにされた屈辱。深い悲しみに暮れる夜、私はバーで偶然にも大雅と対峙する。ウイスキーに酔い、失恋の痛みに突き動かされた私は、無謀にも彼を誘った。「アルファ様、今夜、私が欲しいですか?」と。驚くべきことに、王は私の問いに頷き、その腕の中で私は衝撃の真実を知ることになる。元婚約者の叔父であるこの男こそが、私の真の『運命の番』だったのだ。愛を捨てた男への復讐劇が、今、幕を開ける。
どん底令嬢の逆転シンデレラ・リベンジ の小説カバー
8.4
結婚式という人生最良の日に、小林綾乃は妹の卑劣な罠によって殺人未遂の濡れ衣を着せられ、奈落の底へと突き落とされました。婚約者に裏切られ、高台から突き落とされた彼女を待っていたのは、三年に及ぶ過酷な獄中生活と非人道的な拷問の日々でした。出獄後も、悪辣な妹は母親の命を盾に、綾乃を老いた男へ捧げようと画策します。しかし、絶体絶命の窮地で彼女を救い出したのは、冷酷非道な帝王として畏怖される竹田安律でした。決して女を寄せ付けない彼が、傷ついた綾乃だけは慈しみ、掌中の珠として執着します。最強の庇護者を得た彼女は、もはや虐げられるだけの令嬢ではありません。清純を装う妹を叩きのめし、冷酷な継母に報いを受けさせ、かつての敵たちを次々と翻弄していきます。後悔に震え許しを乞う妹や、復縁を迫る元婚約者を前に、安律は冷徹に言い放ちました。「失せろ。貴様の叔母に対して、二度とその口を開くな」。覇道を行く夫の腕に抱かれ、どん底からの華麗なる逆転劇が今、幕を開けます。
彼は私が黙して耐えると思っていた の小説カバー
8.9
結婚5周年という節目に私が手にしたのは、夫が隠し持っていたUSBメモリだった。そこに設定されていたのは私の誕生日ではなく、彼の初恋の相手の生年月日。フォルダの中には、私と出会う前の彼が彼女に捧げた想い出が、あまりにも几帳面に記録されていた。検索をかけても私の名前は一度も現れず、5年間の夫婦生活が単なる「身代わり」に過ぎなかった事実を突きつけられる。さらに夫は彼女を自社に招き入れ、私が心血を注いできた大切なプロジェクトを彼女に譲り渡した。会社の記念パーティーで、彼は彼女を新たなリーダーとして紹介し、彼女が仕組んだ狂言の転倒に惑わされて私を冷酷に睨みつける。夫は、私がこの屈辱に黙って耐え忍ぶと信じ込んでいたのだ。しかし、私の反応は彼の予想を裏切るものだった。私は手にしたシャンパングラスを握りしめ、同僚たちの視線が集まる中で彼のもとへ歩み寄る。そして、一滴も口をつけていない黄金の液体を、傲慢な夫の頭上から容赦なくぶちまけた。これは、静かな忍耐を捨てた私の決別の儀式である。
彼の無謀な愛、彼女の砕かれた人生 の小説カバー
8.3
母の癌治療費を工面するため、わずか十六歳で城之内家に身を売り、自由を奪われた主人公。それから十二年もの間、彼女の人生は常にIT財閥の御曹司である城之内湊を中心に回っていた。最初は付き人として、やがて秘書として彼を支え続け、最終的には恋人という立場にまで至る。しかし、湊にとって彼女は真に人生を共にする相手ではなかった。ある日、彼の幼馴染である佳純が帰郷したことをきっかけに、二人の関係は冷酷な終わりを迎える。湊は佳純と結婚することを淡々と告げ、長年尽くしてきた彼女に対して、別れの代償として数億円の手切れ金を提示したのだ。少女時代から大人になるまでのすべてを湊に捧げ、彼の影として生きてきた十二年間。多額の金銭と引き換えに突きつけられたあまりにも一方的な別れは、彼女のこれまでの歩みと尊厳を無慈悲に打ち砕いていく。愛と献身の果てに待ち受けていたのは、金で清算される孤独な現実だった。持てるすべてを失った彼女の、空白の人生がここからっぽのまま残される。
身代わりの私、偽りの愛に捧げた三年 の小説カバー
9.6
政治家一族の御曹司である市田礼司。彼の輝かしい前途を守るためなら、私はどんな犠牲も厭わず、泥を被る役目さえ喜んで引き受けてきました。しかし、献身的に尽くした三年間がすべて、彼の本命である婚約者を世間の目から隠すための「身代わり」に過ぎなかったという衝撃の事実を耳にします。私の苦悩や献身は、彼のキャリアを彩るための「自作自演のショー」であり、実績作りの道具でしかありませんでした。用済みとなった私に対し、礼司は「利用価値があっただけ」と冷酷に言い放つばかりか、口封じのために「事故」を装って排除する計画まで企てていたのです。信じていた愛がすべて偽りだったと知った絶望の淵で、私は彼との決別を決意しました。差し伸べられた幼馴染との縁談を受け入れ、私は地獄から這い上がることを誓います。これは、偽りの愛に人生を捧げた女が、冷徹な裏切り者に報いを受けさせ、真実の幸せを掴み取るまでの鮮烈な復讐の物語です。