フォローする
共有
婚約者を断捨離しよう!~馬鹿な子ほど可愛いとは言いますけれど、我慢の限界です~ の小説カバー

婚約者を断捨離しよう!~馬鹿な子ほど可愛いとは言いますけれど、我慢の限界です~

王家と公爵家の結びつきを強めるための政略結婚。その重要性を理解せず、些細な理由で何度も婚約破棄を突きつけてくる婚約者に、私はほとほと困り果てていました。国家間の契約が個人の我が儘で解消できるはずもないと説得を続けてきましたが、彼は一向に態度を改めようとしません。どれほど愚かな振る舞いを繰り返されても、根は素直な人なのだと自分に言い聞かせ、親から厳しく叱責される姿を不憫に思っては、これまで懸命に耐え忍んできました。しかし、あろうことか今度は別の女性との浮気が発覚したのです。身勝手な言動を繰り返す彼に対し、注いできた慈悲も、積み重ねてきた忍耐も、ついに限界を迎えました。これ以上、この無意味な関係を維持する必要はありません。バカな子ほど可愛いなどという言葉では到底許容できない裏切りを機に、私はついに決断を下します。これまで大切に守ってきた婚約という名の鎖を自らの手で断ち切り、自分勝手な婚約者を人生から「断捨離」することを。我慢の袋の緒が切れた令嬢による、毅然とした反撃が今ここから始まります。
共有

2

改めまして、私はセレーネ・カタストロフ。今年で15歳になりましたわ。

 これでもそれなりに公爵令嬢として有名なんですのよ?

 母親譲りの蜂蜜色の髪はいつでも艶やかであるように手入れし、異国の珍しい花の香油をつけていますのでほんのり甘い香りがします。父親譲りのマリンダークブルーの瞳もミステリアスな輝きで素敵だとよく言われますわ。

 現在学園に通っていまして成績も上位3位以内には必ず入っております。

 第三とはいえ王子を入婿に迎えるならばその妻となる私もそれなりの評判を手にいれていなければいけませんもの。でないとどこの誰に足元をすくわれるかわからない。それがドロドロとした貴族社会の闇ですわ。

 オスカー殿下はなんというか昔からあの通りの方でしたので、そのぶん私がしっかりしていなければなりませんでしたので。

 え?オスカー殿下の成績?……あの方は、顔はまぁまぁ良いと思いますけれど好きな事だけ全力疾走する方なので察してくださいませ。あぁ、でもあのプラチナブロンドの髪と吸い込まれそうなスカイブルーの瞳だけはとても素敵だと思います。だけはね。

 でも中身は残念な方なんです。

 今日だって、せっかくの休日だったのに突然呼び出されたと思ったらアレでしたからね……。

 私は死んだ魚のような目のままお父様の部屋に乗り込みすべての事情を話しました。あ、ちゃんと仕事の合間の休憩時間ですわよ?公爵として領地の仕事をこなすお父様の邪魔はいたしません。でも休憩時間は潰してしまいますが一刻を争いますのでご了承下さいませ。

「マジで?」

 お父様、言葉遣いが乱れてますわ、落ち着ついて下さい。

「こんなことで嘘をついてどうしますの?私はそんなに暇ではありませんわよ。ちなみに今まで婚約破棄だと言われた時の理由は全て記録しております。アンナ、カモンですわ!」

 アンナとは私専属の侍女ですわ。アンナは分厚い手帳を取り出し今まであのバカ王子が発言した言葉を読み上げました。

「まず初めての婚約破棄宣言が7歳の春……セレーネお嬢様が一緒に食べようとお持ちしたおやつにチョコチップクッキーが入ってなかったことにご立腹されてなされました」

 そうですね、初めては7歳の時でしたわ。婚約をした3歳から6歳の時までは仲良くしていましたもの。

 あの頃の私が愛犬のルドルフを撫でていたら「ぼくも」と言うので小枝を投げてとってこいを(殿下に)覚えさせ、三回まわってわんと(殿下に)鳴かせ、あと木に(お尻を木の枝で押して)登らせたら降りれなくなって(殿下が)泣いていましたわね。最初はルドルフより下手でしたけれど根気よくちょうきょ……ゲフンゲフン。根気よく教えたらとっても上手にできるようになったので「殿下は犬がお好きなのね」と頭を撫でてあげたんです。(殿下は)喜んでおりましたよ?

 そんなにルドルフの真似がしたかったなんて、と驚きましたわ。でもルドルフに触ろうとしたのでお仕置きもしましたけど。ルドルフは人見知りが激しいので慣れない人に触られると噛みついてしまいますから。殿下なんかに噛みついたせいでルドルフが処罰されたらどうしますの?

 でもそんな私とオスカー殿下の姿を見た侍女から「お嬢様はオスカー様のどんなところがお好きなんですか?」と聞かれて思わず「バカな子ほど可愛いと言いますでしょ?」と返事をしたのを覚えています。

 だって最初はなにをやっても下手でしたわ。あんなに下手なお座りとお手なんてルドルフだってしませんもの。でも私は諦めませんでした。殿下は根気よく教えたらちゃんと出来る子だったんです。……あの頃は。

 あの頃の感情があったからこそ婚約破棄宣言が始まってからも我慢できていたんですわ。ちゃんと最後まで面倒みなくてはという使命感ですかね。でも7歳を過ぎてからどんどん酷くなり、何を言っても無駄感が半端なかったですわ。あれが反抗期というやつかしらと〈犬の躾〉という本を読んだりしましたけれど、もう諦めました。

「…………さらに加えて本日は堂々と浮気相手がいらっしゃることを名言なさり、101回目の婚約破棄宣言となりました」

あら、考え事をしている間にアンナが手帳を読み終えましたわ。お父様が私と同じ死んだ魚のような目になってますから、同じ事を思っていらっしゃるでしょうね。

「……マジで?」

現実逃避しないでください。

「オスカー殿下は私の見た目も性格もお気に召さないそうですわ。いつだったかしらこの髪と瞳のこともさんざん言われましたもの」

「57回目の時です、お嬢様。突然お嬢様の髪を掴んだと思ったら『お前の髪は虫がよってきそうな甘ったるい髪だな!』と暴言を吐き、そのあと瞳を覗き込んで『お前の瞳はまるで提灯アンコウが泳いでいそうだな!』と高笑いなされました。そして『俺の言葉を喜ばないと婚約破棄だぞ!』と」

 ……あぁ、思い出しました。さすがにあれは家に帰ってからちょっと泣きましたわ。一応おしゃれしてたつもりでしたし、両親譲りの髪と瞳をあそこまでバカにされたのも初めてでしたので。

「……」

 お父様がとうとう言葉をなくしてしまいましたわね。最初にアンナに読み聞かせられた時は「見た目を蔑んだあげくの婚約破棄宣言」だと聞かされた内容がこの髪と瞳だっから余計にショックだったのかもしれません。お父様は私のことをとても自慢に思ってますから。

なんでも私と面会した後はいつも殿下の機嫌がとても良かったらしいです。だから仲良くしていたのだと思っていたらしいですわね。でも今、事実を突きつけられて魂抜けそうになってますけれど。

「そうゆうことですので、是非、最後にオスカー殿下のお望みを叶えて差し上げたいと思いますのよ。婚約破棄を認めてくださいまし」

「いや、でもこれは王命で……陛下がなんというか……」

 国王陛下とは仲がよいお父様は、王命というよりは陛下がショックを受けることを心配なさってますが、だからこそここまで私が我慢していたこともわかっていただきたいです。

「お父様、今すぐ行けですわ」

 にっこりと。それはもうにーっこりとお父様に微笑みかけました。ついでに立てた親指を逆さにして首の前で真横に動かす動作も忘れません。

「い、今すぐ陛下のところにいってきますぅぅぅぅぅ!!」

 私の本気度がやっとわかったのかお父様は真っ青な顔をして飛び出していきました。勇気を出して懇願したかいがありましたわ。

「アンナ、お茶を入れてちょうだい」

「畏まりました、お嬢様」

 長年我慢していたことを出来たからか、ちょっとだけスッキリした気分になることが出来ました。

でもあの殿下のことです、自分の望みがかなってもきっといちゃもんをつけてくるに決まってますわ。

 公爵令嬢たるもの、バカにされたままではいけません。ちゃーんとお仕置きして差し上げなくてはいけませんわよね?

おすすめの作品

アルファの偽りの番、オメガの静かなる戦い の小説カバー
8.7
最下層のオメガである私は、アルファのカイネと「運命の番」として結ばれ、幸せな物語の中にいた。彼の世継ぎを身籠って八ヶ月、その愛を疑うことなどなかった。しかし、偶然見つけた羊皮紙がすべてを覆す。彼は一年前、別の女のために世継ぎを成せぬ体となる儀式を済ませていたのだ。私との日々は、彼とその部下たちが仕組んだ残酷なゲームに過ぎなかった。お腹の子の父親が誰かを賭けの対象にされ、寒い夜には慰みものとして嘲笑われる。さらに彼は私に薬を盛り、最愛の女性であるセイラに私の膨らんだ腹を蹴らせ、意識を失った私の体を部下たちへの褒美として差し出した。信じていた未来は、吐き気を催すほど歪んだ娯楽として踏みにじられた。心も体も無残に引き裂かれた私は、絶望の淵でただ壊れたわけではない。その心は氷のように凍てつき、復讐の炎を宿した。私は禁忌の薬草を煽り、自らの手で胎内の命を断つ。これは絶望による幕引きではない。私を弄んだ者たちすべてを地獄へ引きずり戻すための、孤独で苛烈な戦争の始まりなのだ。
Death Real ~現実での女子高生は憂鬱すぎるので、ゲームの世界でPKしまくります!~ の小説カバー
8.7
革新的なオリジナリティを追求し、世界中から熱い視線を浴びる最新のVRMMORPG「Beyond Ideal Online」。通称「BIO」と呼ばれるこの仮想現実の世界に、突如として正体不明の最凶プレイヤーが姿を現した。その人物は、情け容赦のないプレイヤキラー(PK)として瞬く間に悪名を轟かせ、全ユーザーを恐怖に陥れていく。本名はおろか、その素顔や目的さえも一切が謎のベールに包まれており、プレイヤーたちの間では様々な憶測が飛び交っていた。しかし、血も涙もない残虐なプレイスタイルを貫くその正体は、現実世界では誰もが羨むような完璧な美貌を持つ17歳の女子高生、柏崎葵であった。清楚な外見からは想像もつかないが、彼女は日々の鬱屈した現実を忘れるかのように、ゲーム内での殺戮行為に歪んだ悦びを見出していたのだ。「キルたのちい」と独りごちながら、彼女は今日も仮想世界で獲物を狩り続ける。美しき女子高生による狂気的なPKライフが、今幕を開ける。
エリュフィシア・ヒストリオ の小説カバー
9.1
異世界エリュフィシアは、本来その地には存在しないはずの異端なる技術「アルコーン」の台頭により、果てなき戦乱の渦へと飲み込まれていった。加速し続ける争いの歴史の中で、小国ウェルギス王国もまた存亡の危機に立たされている。この動乱の時代を背景に、次期国王としての宿命を背負う青年アラステアは、自ら剣を手に取り最前線へと赴く決意を固めた。戦場に吹き荒れるのは、敗者の慟哭、強者の憤怒、そして己の信念を懸けて戦う者たちの誇り。混沌がすべてを支配する過酷な戦場において、彼は何を信じ、何を守り抜くのか。凄惨な戦いの中で、揺るぎない覚悟を胸に秘めた者だけが生き残ることを許される。国家の命運と個人の誇りが複雑に絡み合う中、アラステアは自らの正義を貫くために、終わりなき戦いへとその身を投じていく。これは、異質な技術がもたらした動乱の歴史に抗い、激動の時代を駆け抜ける王子の足跡を描いた壮大なファンタジー戦記である。彼が歩む道の先には、果たしてどのような結末が待ち受けているのだろうか。
幽霊妻、届かぬ愛の叫び の小説カバー
9.6
ガス爆発という悲劇的な事故で命を落としてから4年。幽霊となった私は、愛する娘・結愛を傍らで見守り続けてきた。そんなある日、私たちの前に元夫であり世界的な建築家として名を馳せる高沢遼が姿を現す。彼は私が既にこの世にいないことを知らず、結愛を「自分への復讐のために利用されている道具」だと思い込んでいた。「母親に伝えろ。金目当ての芝居はもうたくさんだ」と冷酷に言い放つ彼は、私を苦しめるためだけに親権を奪い取ろうと裁判を提起する。法廷という公の場で、彼は憎しみを剥き出しにして「あんな女、死んでも構わない」と罵声を浴びせた。その直後、幼稚園の教諭が震える声で衝撃の事実を告げる。「高沢さん、綾乃さんは4年前の事故で亡くなっているんです」と。静まり返る法廷で、これまで傲慢な態度を崩さなかった彼の表情は、絶望とともに脆くも崩れ去った。死してなお娘を想う母の魂と、あまりにも遅すぎた真実を知った男の葛藤が交錯する。
格闘チャンプの異世界無双 〜地球最強の男、異世界で更なる高みを目指して無双する〜 の小説カバー
9.4
地球上で最強の称号をほしいままにしていた格闘家、東堂院力也。彼はある日、居眠り運転のトラックから子供たちを救うために自らの命を投げ出した。しかし、次に彼が目を覚ました場所は、現代日本ではなく見知らぬ深い森の中だった。状況を把握しようとする力也の耳に、突如として女性の悲痛な悲鳴が響き渡る。現場に急行した彼が目にしたのは、卑劣な男たちに組み伏せられ、服を剥ぎ取られようとしている無抵抗な女性の姿だった。武器を一切持たない丸腰の力也に対し、賊たちは「消えろ」と嘲笑を浮かべて脅しをかけるが、彼こそが世界を制した拳の持ち主であることを彼らはまだ知らない。異世界の地で、圧倒的な格闘技術を武器に弱きを助け、さらなる強さを追い求める力也の冒険が幕を開ける。数多の強敵をなぎ倒し、未知なる世界をその拳一つで突き進む、格闘チャンプによる異世界無双譚がいよいよ始まる。
武神の再生 の小説カバー
9.1
現代から古の武道が支配する異世界へと回帰したオースティン。目を覚ました彼が直面したのは、かつての自分よりも遥かに若返った肉体という驚くべき現実だった。しかし、その身体の元の持ち主は、周囲から蔑まれるほどのあまりに無様な愚か者であった。普通ならば絶望するような状況だが、オースティンにとってそんな過去の評価など些細な問題に過ぎない。なぜなら、彼の内側には前世で培った明晰な頭脳と、揺るぎない精神がそのまま健全に宿っているからだ。若く、そして無限の可能性を秘めたこの新しい肉体を駆使し、彼は再び武の道を極めるための歩みを進める。目指すは、並み居る強者たちを圧倒し、武林の頂点に君臨する伝説の「武神」という絶対的な地位だ。あらゆる困難をその力でねじ伏せ、武の世界の全てを支配下に置くための、壮大な冒険と戦いの日々がいま幕を開ける。かつての愚か者が、世界を震撼させる最強の存在へと変貌を遂げていく。