フォローする
共有
婚約者を断捨離しよう!~馬鹿な子ほど可愛いとは言いますけれど、我慢の限界です~ の小説カバー

婚約者を断捨離しよう!~馬鹿な子ほど可愛いとは言いますけれど、我慢の限界です~

王家と公爵家の結びつきを強めるための政略結婚。その重要性を理解せず、些細な理由で何度も婚約破棄を突きつけてくる婚約者に、私はほとほと困り果てていました。国家間の契約が個人の我が儘で解消できるはずもないと説得を続けてきましたが、彼は一向に態度を改めようとしません。どれほど愚かな振る舞いを繰り返されても、根は素直な人なのだと自分に言い聞かせ、親から厳しく叱責される姿を不憫に思っては、これまで懸命に耐え忍んできました。しかし、あろうことか今度は別の女性との浮気が発覚したのです。身勝手な言動を繰り返す彼に対し、注いできた慈悲も、積み重ねてきた忍耐も、ついに限界を迎えました。これ以上、この無意味な関係を維持する必要はありません。バカな子ほど可愛いなどという言葉では到底許容できない裏切りを機に、私はついに決断を下します。これまで大切に守ってきた婚約という名の鎖を自らの手で断ち切り、自分勝手な婚約者を人生から「断捨離」することを。我慢の袋の緒が切れた令嬢による、毅然とした反撃が今ここから始まります。
共有

3

〈断捨離〉とは、不要な物を〈断ち〉〈捨て〉、物への執着から〈離れる〉ことである。

「ですから私、オスカー殿下を断捨離しようと思いますの」

「……断捨離ですか」

 オスカー殿下の浮気発覚からの婚約破棄宣言の翌日、本当なら今日は学園へ行かねばならないのですが特別にお休みを貰いました。1日くらい休んでも勉学に支障はありませんわ。授業の先の先くらいまでならとっくに習っておりますので。学園での授業は私にとっての復習ですわね。

「ええ、頑張って調教したのに覚えた芸も忘れて他所のメスに尻尾を振り噛み付いてくる婚約者などもう不要だと判断し、捨てることに致しました。公爵家に王家の血を入れたがっていたお父様たちには申し訳ないのですがオスカー殿下を跡取りにという執着から離れていただくことにしたんですの」

「貴女はそれでいいんですか?カタストロフ公爵令嬢。3歳からの婚約者だったし、アレ は見た目だけは女性に人気があると聞きましたが」

 私の目の前にいる男性は優雅な所作でティーカップを口に運びます。流れるような手の動きは完璧ですわね。これがオスカー殿下だったらお茶をがぶ飲みしていますもの。

 え?誰とお茶会しているのかって?

 オスカー殿下の兄上……第二王子ハルベルト殿下ですが、なにか?

 実は私、第二王子とはお茶友達ですの。本日は我が公爵家の客間でお茶会を致してますわ。もちろん各々が信頼している侍女や執事も待機してるのでふたりっきりではありません。

 ハルベルト殿下は私より2歳上で、とても博識です。落ち着いていらっしゃるので大人っぽい雰囲気な殿方ですわ。学園では最上学年ですので先輩でもありますわね。ちなみにハルベルト殿下はとても優秀で、すでに卒業までの単位を取得されております。ですので私に付き合ってお休みしても支障はないと、こうしてお茶会をしてくださってるのですわ。ありがたいですわね。

「確かに見た目だけは人気がおありですわよ?私もたくさんの女性から嫉妬され嫌がらせされましたもの。この間も見知らぬ令嬢がわざわざ目の前にやって来てわざと転んで私が転ばせたと言いがかりをつけてきたり古臭いことをやっておりましたわ。『あんたみたいな性悪女にあんなイケメンはもったいない!』と言われたましたわ」

「相変わらず、女性を惑わす弟ですね」

 少し複雑そうに笑うハルベルト殿下は、ご自分の見た目にコンプレックスを抱いていらっしゃいます。

 灰色がかった銀髪も紺色に近い濃いアクアブルーの瞳も『くすんだ色、濁った色』だと自虐し、なによりご自分の顔にそばかすがあることを気にしていらっしゃるのです。

 確かにオスカー殿下は“美しい輝きの王子”、ハルベルト殿下は“くすんだ地味王子”なんて揶揄している愚かな輩がいることも事実ですが……。

 私はハルベルト殿下のその色味、とても落ち着くので好きなんですけれど。お顔のそばかすだって元々肌が弱くていらっしゃるのに領地に赴いて日焼けしてしまったせいですわ。強い陽射しを浴びすぎると火傷したようになってしまう体質なんてかわいそうですわ。

「実際に惑わされているのはオスカー殿下ですわ。ご自分がモテているからと自慢ばかりなさって、男の価値は付き合った女(メス)の数だなんて本気で思っているのなら家畜の小屋にでも放り込んでやればいいのです」

「相変わらず手厳しいですね」

 ふふふ、と静かに微笑むハルベルト殿下。やっぱりハルベルト殿下は笑ってらっしゃる方がいいですわ。

 しかし「あっ」とあることを思い出しました。こんな風に私とハルベルト殿下がお茶会をするのはいつものことなので気が付くのが遅れましたわ。

「そういえば、ハルベルト殿下は先日婚約者が決まったのではなかったですか?確か隣国の王女だとか」

 私たちの関係を知ってる方々は今さら気にしてませんが、その婚約者の方から見たら自分の知らない女性と会ってるなんて嫌だと思いますわ。

「あぁ、それなら破談になりました。王女が僕の顔を見た途端に怒って嫌がり、なんでもオスカーに一目惚れしたからオスカーが良いと言い出しましたので白紙になったのです」

 別段気にする様子もなくハルベルト殿下はおっしゃりますが、私は見たこともないその隣国の王女に怒りを感じました。

「その王女も見る目がありませんわね。ハルベルト殿下ほど優秀で素敵な方なんてそうそうおりませんのに」

 私だって、婿養子をとらねばならない立場でなければ……なんて考えてしまいます。だってハルベルト殿下は私の初恋なんですもの。内緒ですけれどね。

「そう言ってくれるのは、貴女くらいですよ」

 そう言って微笑むハルベルト殿下。この方の妻となられる方は絶対幸せになれますわ。未来のその方が羨ましいです。私がこっそりそんなことを考えていると、ハルベルト殿下は「あぁ、そういえば」とため息をつかれました。

「たぶんですが、貴女の前でわざと転んだり暴言を言ってきた見知らぬ令嬢はその王女ですよ。オスカーから貴女のことを色々聞き出していましたし、オスカーと仲良くなりたいからと無理矢理学園に転入してましたから」

「あら、どうりで見たことない方だと思いました」

 あのちゃらんぽらんのアホ王子に何を吹き込まれたのか知りませんけれど、国同士の政略結婚を蹴り飛ばしてその時点では婚約者のいるオスカー殿下を略奪しようなんて浅はかですわね。

「そういえば、私の髪や瞳のことを蔑んできましたわね。どこかで聞いたフレーズだと思ったらオスカー殿下からの受け売りでしたのね」

「貴女の髪と瞳を?」

「ええ、昔、オスカー殿下から言われた言葉と同じでしたわ」

 私が昔『お前の髪は虫がよってきそうな甘ったるい髪だな!』とか『お前の瞳はまるで提灯アンコウが泳いでいそうだな!』などと蔑まれた事があると伝えると、ハルベルト殿下の纏う空気が一瞬凍りついた気がしました。

「ハルベルト殿下?」

 不思議に思った私が首を傾げるが、ハルベルト殿下はすぐにいつも通りに戻っていました。なんだったのかしら?

「いえ……貴女の髪は芳醇な香りのする魅惑の花の蜜のように美しいし、その瞳も深海の神秘のような美しさなのに、オスカーの目は節穴ですね」

「まぁ、お上手ですわ。でも例えお世辞でもそんな風に言われると嬉しいですわね」

 やっぱりハルベルト殿下はお優しいです。誉め言葉もお上手だし、オスカー殿下 (馬鹿)とは雲泥の差……いえ、ダイヤモンドと砂埃ですわね。

 ハルベルト殿下が再びにっこりと微笑むと灰色がかった銀髪がさらりと揺れました。あ、この角度、素敵ですわ。

「では例の件ですが……カタストロフ公爵令嬢のご要望は必ず叶えて見せましょう。お任せください」

「ありがとうございます」

 このお茶会のメインは私がハルベルト殿下にあるお願いをしたかったからなんですの。まぁ、ハルベルト殿下とお茶会をして癒されたかったのも事実ですけれど、そんなこと言えませんし。

 こうして端から見れば終始穏やかなお茶会は幕を閉めました。

 断捨離とは、あと腐れなくバッサリやるべし。と、どこかの誰かも言っていましたし徹底的にやることにしましたのよ。ふふふ。

続けて視聴する!
物語はいよいよ佳境へ!アプリに切り替えて続きを読む
全エピソードをロック解除
全編を読むには、moboreaderで「95RCL」を検索してください。
コードをコピーし、Moboreaderアプリで検索して続きをお楽しみください。
95RCL
コピー
公式サイトを開く

おすすめの作品

炎の病室、夫の冷酷な瞳 の小説カバー
8.3
炎と煙が渦巻く病室。妊娠中の「私」は、唯一の希望である夫の助けを必死に待っていた。しかし、ようやく姿を見せた夫は、助けを求める私を無情にも無視し、義理の妹である琴璃だけを抱きかかえて救出する。「お腹の子を見殺しにするの?」という私の悲痛な叫びに対し、彼は「本当に僕の子かどうかも分からない」と冷酷な言葉を投げつけた。その言葉を最期に、私は愛する我が子と共に業火に飲み込まれ、命を落としてしまう。幽霊となった私は、自分の死を信じようとしない夫の姿を傍観することになった。彼は私の死さえも自分を惹きつけるための芝居だと決めつけ、さらには私の実の弟との不貞まで疑うという暴挙に出る。しかし、変わり果てた私の遺体と対面した瞬間、夫はついに残酷な真実を知り、絶望のどん底へと突き落とされる。隠されていた嘘がすべて暴かれ、彼は罪を償うために妹と共に自らの命を絶った。死してなお私に許しを請い続ける夫。そんな彼に対し、私は永遠の決別を告げるのだった。
この夏、私は家族の命綱にはならない の小説カバー
8.9
記録的な猛暑が予想される夏、義姉の強引な提案で家族は避暑地へと向かう。異変を察した私は早期帰宅を促すが、義姉と母は聞く耳を持たず、私を罵倒するばかり。現地では理不尽なトラブルに巻き込まれ、支払いを押しつけられた。やがて磁場の乱れにより、避暑地は逃げ場のない灼熱地獄へと変貌する。空港は閉鎖され民泊に孤立する中、外出禁止令を無視して海へ向かった義姉が危機に陥る。その瞬間、兄は義姉を救うための「踏み台」として私を海へ突き落とした。熱湯のような海水にのまれ、命を落とした私。しかし、実の娘を冷酷に見捨てた家族への怒りと絶望の中で意識が途絶えたはずが、次に目を開けると、あの忌まわしい旅行の計画が始まった瞬間に戻っていた。家族の命綱として理不尽に搾取され、最期は生贄にされた前世。今度はもう、身勝手な彼らの盾になるつもりはない。凄惨な死の記憶を糧に、私は自分一人の命を守り抜くため、破滅へと突き進む家族との決別を決意する。運命を塗り替えるための、孤独で熾烈な戦いが幕を開ける。
ムリゲーの世界をバグと乱数調整で切り抜ける の小説カバー
8.4
「初回プレイでの死亡率4000%」という驚愕の数値を叩き出し、ゲーム史上類を見ない理不尽さで知られる超高難易度RPG『ムーンリカバリー』。魔王側の視点からリアリティを追求しすぎた結果、最初の町に辿り着くまでのわずか数歩で、初期レベルでは到底太刀打ちできない強敵と遭遇し、確実に命を落とすという絶望的な仕様が組み込まれていた。開発者は親しみを込めて『ムンリバ』と呼んだが、あまりにも過酷な死の連鎖から、プレイヤーたちからはいつしか『ム・リ』という不名誉な略称で恐れられるようになった。そんな、クリアすることなど到底不可能と思われた「ムリゲー」の異世界に、吉弘鑑理(ナオ)と流川斉子(リュウセイ)の二人は突然放り込まれてしまう。普通に挑めば10万回死んでも終わらない絶望的な状況下で、彼らが生き残るために選んだのは正攻法ではなかった。本作は、ゲームの根幹を揺るがす裏技的なバグや乱数調整という名のチート級のテクニックを駆使し、理不尽な世界の法則を鮮やかに切り抜けていく二人の型破りな冒険譚である。
保険金で殺された女、ただいま復讐中。 の小説カバー
9.7
死亡保険の受取人を夫に変更した直後、私は不審な交通事故で命を落とした。薄れゆく意識の中で突きつけられたのは、あまりにも残酷な真実。すべては愛する夫と、親友だと信じていた女が仕組んだ罠だったのだ。さらに衝撃的だったのは、実の娘だと思っていた子が彼らの不貞の証であり、私の本当の子供は既に彼らの手で消されていたという事実だった。死後、魂となって現世を彷徨う私は、奪った大金で贅沢を極める三人の姿を憎悪と共に凝視し続け、その怨念はいつしか鬼の如き力へと変わっていく。しかし、運命は私に奇跡を与えた。意識を取り戻すと、そこは全ての悲劇が始まる直前、あの受取人指定の日だった。地獄の底から舞い戻った私は、静かに、そして深く冷徹に微笑む。今度こそ、あの忌まわしき一家を一人残らず破滅の淵へと叩き落としてやる。愛と信頼を裏切り、家族を奪った者たちへの、苛烈な復讐劇が幕を開ける。この目的を果たすまで、私は決して止まらない。彼らに相応しい終焉を、私の手で用意してやるのだ。
炎の記憶、裏切り夫を捨てる の小説カバー
9.3
猛火の中から命懸けで夫・古川一を救い出した私。しかし、次に意識を取り戻した時、私は肉体を失い魂だけの存在となっていた。そこで目にしたのは、あまりにも残酷な裏切りの光景だった。夫は私の弟である瑞樹を冷酷に見捨て、愛人の榊原千絵とその娘を迎え入れて、まるで新しい家族のような生活を謳歌していたのだ。適切な治療を受けられなくなった瑞樹は、最期まで私の名を呼び、苦痛の中で孤独に息を引き取った。絶望の淵で、私は火災の最中に夫が囁いた「必ず助ける」という偽りの言葉を信じた自分を激しく呪った。なぜ、愛する弟を犠牲にしてまで、あのような男を助けてしまったのか。激しい後悔に苛まれながら意識を失い、再び目を覚ますと、そこは火災が起きる三日前の見慣れた寝室だった。運命を変えるチャンスを手にした私は、自分を欺き弟の命を奪った夫への復讐と、最愛の弟を守り抜くことを誓う。炎の記憶を胸に、偽りの愛に終止符を打つための逆襲が今始まる。
夜を狩るもの 終末のディストピア[seven deadly sins] の小説カバー
8.0
雪に閉ざされた街、ホワイト・シティ。その象徴ともいえるノブレス・オブリージュ美術館に飾られた一枚の絵画から、ある青年が産み落とされた。現世に降り立った彼は、表向きは平凡な大学生としての日々を過ごしているが、その実体は闇夜に紛れて魂を刈り取る「死神」という宿命を背負っていた。自らの存在意義や世界の真実を深く追求することもなく、ただ盲目的に生を繋いでいた彼だったが、過酷な運命の中で一人の女性と巡り会う。彼女との出会いは、感情を持たぬ死神の心に大きな変化をもたらし、かけがえのない恋人として彼の孤独な人生を照らし始める。しかし、その先には凄惨な暴力や残酷な現実が待ち受けていた。終末の気配が漂うディストピアを舞台に、愛と死の狭間で揺れ動く青年の戦いと葛藤を描いたダークファンタジー。過激な描写を交えながら、過酷な世界で愛を貫こうとする者たちの物語が今、幕を開ける。青年は大切な人を守り抜き、死神としての呪縛から解き放たれることができるのか。