フォローする
共有
婚約破棄された私とIT社長の愛 の小説カバー

婚約破棄された私とIT社長の愛

婚姻届を提出するはずだった当日、市役所で待つ私の元に届いたのは、婚約者からのあまりに身勝手な欠席連絡だった。「妹が寂しがっている」という理由で放置された私は、心血を注いでリノベーションした新居のタワーマンションさえも、ストーカー被害を自作自演する義妹に奪われてしまう。彼に抗議しても返ってきたのは冷酷な嘲笑だけだった。長年「都合のいい女」として扱われてきたことに絶望した私は、即座に関係を断ち切り、自分を想い続けてくれていた幼馴染のIT社長と結婚する道を選ぶ。その後、義妹の嘘が露呈して全財産を失い、事故で右腕まで欠損した元婚約者が「お前しかいない」と泣きついてくるが、私の心はもう動かない。私の傍には、命がけで自分を守ってくれる献身的な夫と、愛らしい双子の子供たちがいる。かつての裏切り者が絶望に打ちひしがれ、廃人のように崩れ落ちる姿を、私は幸せな家庭の中から冷ややかに見下ろすのだった。自業自得な末路を辿る彼に、向ける言葉など何一つ残っていない。
共有

2

藤巻光恵 POV:

タクシーのシートに深く沈み込み, 私は即座にスマホを取り出した. 震える指で, 両親に電話をかける.

「お父さん, お母さん. 私, 正弘さんと別れることにした」

電話口の向こうで, 両親は驚き, 困惑しているのが分かった. 無理もない. 入籍日だというのに.

「実は, 笹本晴司さんのことを考えているの」

私の言葉に, 今度は両親が沈黙した. 晴司は, 私の幼馴染で, 昔から私を密かに想ってくれていたことを, 両親は知っていた. 私と正弘の交際が決まってからは, 彼も距離を置いていたけれど.

数時間後, 実家に着くと, 両親は心配そうな顔で私を出迎えた.

「みっちゃん, 本当にそれでいいのかい? 」

父が尋ねた.

「ええ. もう, 限界だった」

私はぽつりと言った.

母は私の手を握り, 静かに頷いてくれた.

「晴司さんの方には, 父さんが連絡してみるよ. 彼はきっと喜ぶだろうね」

母のその言葉に, 胸の奥が少し温かくなる.

晴司は, 今や急成長中のIT企業のCEOだ. 幼い頃から頭が良くて, いつも私を気遣ってくれた. 海外留学で数年日本を離れていたけれど, 帰国してからも時々連絡を取り合っていた. 私と正弘が婚約した時も, 彼は「おめでとう」とだけ言って, それ以上は何も言わなかった. 彼の気持ちを, 私は知っていたから, その優しさが胸に刺さった.

もう一度, 誰かを信じられるだろうか.

正弘との関係で, 私は自分が「都合のいい女」になっていたことに気づいた. 彼の言いなりになり, 彼の家族の言いなりになり, 自分の感情を押し殺してきた.

晴司からのメッセージが, 翌日, 私のスマホに届いた.

「みっちゃん, お父さんから聞いたよ. もしよかったら, 一度会えないかな? 」

私は, すぐに返信した.

「ええ, 喜んで」

正弘との関係は, もう完全に切り離す.

彼の私物は全て段ボールに詰め, きっちりガムテープで封をした. 彼の歯ブラシも, シャンプーも, 全てゴミ箱に捨てた. 彼の匂いが残っているもの全てを, 私の空間から排除したかった.

その数日後, 萌葉のSNSが更新されているのを, 共通の友人の投稿で知った.

新しいマンションのリビングで, 高価なシャンパンを片手に微笑む萌葉.

「お兄ちゃんと同棲♡」

そんなキャプションが付けられていた.

私が心血を注いでリノベーションした, あのタワーマンション.

私たちの新居として購入したばかりのあの場所だ.

正弘が萌葉に鍵を渡したのだろう.

「萌葉が怖がっているから一時避難させる」

そう言っていた彼の言葉を思い出す.

一時避難? まるで, 私が設計した夢の城が, 彼女の遊び場になったかのようだった.

私は怒りに震えた.

私の心は, ナイフで切り裂かれたように痛んだ.

「あんた, 私を馬鹿にしてるの? 」

私は正弘にメッセージを送った.

すぐに彼から返信があった.

「何のこと? ああ, 萌葉の部屋を使わせてやったんだ. ストーカー怖いって言うからさ. みっちゃん, そんなことくらいで怒るなよ. どうせ住むのは俺たちなんだから, 少しの間くらい我慢してくれよ」

彼の言葉は, まるで私の存在そのものを否定するかのようだった.

私の心は, 燃え盛る炎のように熱くなり, 同時に冷え切った氷のように硬くなった.

「我慢? 私がどれだけ我慢してきたか, あなたは知らないでしょう? 」

指が震え, 入力する文字が乱れる.

「そんな大げさな. たかがマンションだろ? いくらでも買うよ. それより, みっちゃんが変なこと言うから, 萌葉が勘違いしてるじゃないか」

彼の言葉は, まるで熱した鉄の棒で私の心を焼くようだった.

私は, もう彼に何も期待しない. 何も与えない.

私は彼に慰謝料を請求し, マンションの権利を放棄すると告げた. それが, 私に残された最後の尊厳だった.

そして, 彼との連絡を一切絶った.

正弘は最初, 私の要求を信じなかった.

「光恵がそんなことするはずがない」

そう思っていたのだろう.

彼は, 私がいつも彼の言うことを聞き, 彼の都合のいいように動くことを当然だと思っていた.

私は, もう彼には何の未練もない.

私の心は, 深い海の底に沈んだように静かだった.

彼への連絡を絶った後, 私の世界は再び動き出した.

友人たちは, 私の突然の破談に驚き, 心配してくれた.

「みっちゃん, 大丈夫? 」「何かあったの? 」

私はただ, 「色々とね」とだけ答えた.

具体的な出来事を話す気力もなかったし, 話せば話すほど, 自分が情けなくなる気がした.

世間体も, 周囲の評判も, もうどうでもいい.

私はこれまで, 「良い女」でいようと努めてきた.

正弘の家族にも尽くし, 彼の友人たちにも愛想よく振る舞った.

だが, その結果がこれだ.

自分の価値を, 他人に委ねてしまっていた.

晴司からの連絡は, 私の荒んだ心に, 一筋の光を差し込んだ.

私は, 今度こそ, 自分を大切にしてくれる人を選びたい.

自分を, 愛してくれる人.

もう, 「都合のいい女」にはならない.

私の人生は, 私のものだ.

おすすめの作品

覇王の略奪、裏切られた高貴な令嬢を支配する の小説カバー
9.1
After witnessing her fiancé’s betrayal with her cousin, noblewoman Elena is left shattered. In her moment of despair, she encounters Shoma Nakazawa, a ruthless billionaire and her fiancé’s business partner. He seduces her with a dark proposition: to ruin those who hurt her by descending into a world of sin. Despite her family’s ruinous state and her fiancé’s humiliating demands at a yacht party, Elena finds a dangerous ally. As Shoma touches her in secret while her oblivious fiancé bows to him, she decides to stop being a victim. Embracing Shoma’s cold obsession, she resolves to use this devil to drag her enemies into the depths of hell.
福田社長、もう十分です——私は離婚届にサインしました の小説カバー
9.7
結婚から三年の月日が流れても、凛和が夫に注いできた献身的な愛が報われることはなかった。夫である福田社長の心には、常に「初恋の女性」という消えない影が潜んでいたからだ。ついに突きつけられたのは、あまりにも無慈悲な離婚届。絶望の淵に立たされた彼女は、最後の希望を振り絞るようにして「もし私との間に子供ができても、あなたは離婚を選ぶの?」と問いかける。しかし、彼から返ってきたのは、彼女の淡い期待を無残に打ち砕く非情な肯定の言葉だった。すべてを諦め、深く傷ついた凛和は、彼のもとを去る決意を固めて静かに姿を消す。愛を捧げ尽くし、すべてを失った彼女がたどり着いたのは孤独な病室だった。ところが、あんなに冷淡だったはずの夫が、今さらながら彼女の前に現れて縋りつく。「凛和、頼むから離婚しないでくれ」と。かつての傲慢さは消え、必死に許しを請う彼の姿。一度は完全に断ち切ったはずの愛の行方が、再び激しく揺れ動き始める。
離婚寸前、ワンナイトの相手は冷酷な「夫」でした の小説カバー
9.0
結婚から2年、夫の無関心と絶えない女性の噂に耐え続けてきた彼女は、ついに我慢の限界を迎え、怒りとともに離婚を突きつける決意をした。ところが、離婚届が受理される直前、予期せぬアクシデントによって、これまで顔もまともに知らなかったはずの夫と一夜を共にしてしまう。一刻も早く彼との縁を切りたい彼女は、その場から逃げ出すように去るが、運命のいたずらか、離婚予定の夫が突如として彼女の勤務先に現れる。しかも、彼は彼女の直属の上司として着任したのだ。正体が露呈することを恐れながら、昼は有能な上司と知恵比べを繰り広げ、夜は執拗に距離を詰めてくる夫の追及をかわすという、綱渡りのような日々が幕を開ける。しかし、冷酷なはずの夫は、自分の傍にいる秘書が妙に気になる存在であることに気づき始め、やがて彼女が隠し続けていた秘密に辿り着いてしまう。一度は壊れかけた夫婦の絆は、この再会を機にどう変化していくのか。冷徹な夫が再び妻の心を取り戻す日は来るのだろうか。すれ違う二人の波乱に満ちた恋の行方を描く、大人のロマンス。
恋に夢中になる の小説カバー
8.8
幼い頃に実母を自死で亡くしたエミリアは、その後、継母から凄惨な虐待を受けるという過酷な境遇に置かれていた。追い打ちをかけるように、最愛の恋人までもが実の姉に奪われ、彼女の心は絶望に染まってしまう。そんな人生のどん底にいた彼女の前に現れたのが、圧倒的な富を持つ実業家のリューシオンだった。エミリアは、自分を裏切った無慈悲な元恋人への未練を断ち切り、過去を忘れるためだけに、彼との結婚という道を選択する。愛のない形だけの結婚になるだろうと覚悟していた彼女だったが、予想に反してリューシオンは深い慈しみを持って彼女に接し、一途な情熱で彼女を包み込んだ。彼の真摯な献身に触れるうちに、凍てついていたエミリアの心は次第に溶け出し、いつしか二人は本物の愛で結ばれていく。さらに、孤独だった彼女はリューシオンの父親からも温かい父性愛を注がれ、失われていた家族の絆を取り戻していく。これは、深い傷を負った女性が、真実の愛によって救われ、新たな幸せを掴み取るまでの軌跡を描いた現代シンデレラストーリーである。
喪服の純潔と、冷酷上司の重すぎる執着 の小説カバー
9.5
5年前、愛を信じて貧しい恋人と駆け落ちを約束した私は、当日に彼に裏切られ、無残にも捨てられた。街中の笑い者となった私に待ち受けていたのは、重病を患う相手との政略結婚という過酷な運命だった。それから5年が経過し、夫の死によって結婚生活は幕を閉じ、私は行き場を失って嫁ぎ先を追い出されてしまう。絶望の淵にいた私の前に現れたのは、かつて見下されていた過去を拭い去り、ビジネス界の寵児として凱旋したあの時の恋人だった。彼は私の新しい上司として君臨し、冷徹な態度で私を追い詰めていく。過去の傷から彼を避けようとする私に対し、男は執拗なまでに距離を詰め、逃げることを許さない。そんな中、私が別の男性とお見合いをしている場に彼が乱入する。激しい嫉妬に瞳を赤く染めた彼は、私を壁際に押し込み、震える声で問いかけた。「君はまた、俺を見捨てるつもりか?」冷酷な上司へと変貌したかつての恋人による、あまりに重すぎる執着と愛憎の物語が再び動き出す。
籠の中の身重な鳥、冷酷な御曹司の甘い束縛 の小説カバー
9.5
秘書として、そして妻として二年間、三谷美月は冷徹な夫・鷹司彰のために尽くし続けてきた。しかし、彼が心に抱くのは初恋の女性・佐野佳世への想いだけであり、美月の献身が報われることはなかった。佳世の帰国を機に二人は離婚。その半年後、美月は予期せぬ妊娠に気づく。彼女は長年の片思いに終止符を打ち、お腹の子を守るために誰にも告げず遠くへ姿を消した。彰と佳世の幸福な知らせを耳にするたび、美月は静かに彼らの幸せを願っていた。ところが、平穏な日々は出産という人生の転機に一変する。佳世と再婚するはずだった彰が、突如として美月の産室の前に現れたのだ。彼は再び共に歩みたいと切実に訴えかける。美月は「この子はあなたとは無関係」と拒絶するが、彰は「たとえ誰の子であろうと、二度と離さない」と強引なまでの執着を見せる。一度は壊れたはずの絆が、赤ん坊の誕生をきっかけに歪んだ愛へと形を変え、美月を再び甘く冷酷な束縛の中へと引き戻していく。