フォローする
共有
婚約破棄された私とIT社長の愛 の小説カバー

婚約破棄された私とIT社長の愛

婚姻届を提出するはずだった当日、市役所で待つ私の元に届いたのは、婚約者からのあまりに身勝手な欠席連絡だった。「妹が寂しがっている」という理由で放置された私は、心血を注いでリノベーションした新居のタワーマンションさえも、ストーカー被害を自作自演する義妹に奪われてしまう。彼に抗議しても返ってきたのは冷酷な嘲笑だけだった。長年「都合のいい女」として扱われてきたことに絶望した私は、即座に関係を断ち切り、自分を想い続けてくれていた幼馴染のIT社長と結婚する道を選ぶ。その後、義妹の嘘が露呈して全財産を失い、事故で右腕まで欠損した元婚約者が「お前しかいない」と泣きついてくるが、私の心はもう動かない。私の傍には、命がけで自分を守ってくれる献身的な夫と、愛らしい双子の子供たちがいる。かつての裏切り者が絶望に打ちひしがれ、廃人のように崩れ落ちる姿を、私は幸せな家庭の中から冷ややかに見下ろすのだった。自業自得な末路を辿る彼に、向ける言葉など何一つ残っていない。
共有

3

藤巻光恵 POV:

正弘との慰謝料とマンションの件は, 弁護士を立てて粛々と進めた. 彼からの電話やメッセージは全て着信拒否にし, 私の生活から完全に彼を排除した. まるで, 彼が存在しなかったかのように.

数週間後, 正弘から非通知で電話がかかってきた.

「みっちゃん, お願いだ. もう一度話してくれ. 萌葉が, 今度は本当に大変なんだ」

彼の声には焦りがにじんでいた.

「今度は何? 」

私の声は, 感情を一切含まない無機質なものだった.

「萌葉が, その, 妊娠したって言い出して. でも, 相手が誰だか分からないって... . 俺は, 彼女を放っておけないんだ」

彼の言葉に, 私の心は微塵も揺らがなかった. むしろ, 呆れと嫌悪感が込み上げた.

「それが, 私と何の関係があるの? 」

私は冷たく言い放った.

「みっちゃん, 頼む. 俺のそばにいてくれ. お前しかいないんだ」

彼の声は, 懇願に変わっていた.

「今更, そんなことを言われても困るわ. あなたは, いつも萌葉ちゃんを優先した. 私を, 何番目だと思っていたの? 」

私の言葉に, 正弘は何も言えなくなった.

「萌葉ちゃんは, あなたの妹でしょう? あなたが守ってあげたらいい. 私は, もうあなたとは関係ない」

私は一方的に電話を切った.

電話を切った後も, 彼の声が耳の奥でこだましていた.

「お前しかいない」?

そんな都合のいい言葉に, もう騙されない.

彼の言葉は, 私を捕まえるための甘い罠だ.

私は, もう二度と, その罠にはかからない.

私は, 正弘との思い出の品を全て処分し始めた.

彼がくれたブランドバッグ. 二人で選んだペアカップ.

全てが, 私の視界に入ると吐き気がした.

ゴミ袋に詰め込み, まとめて玄関の外に出した.

婚約指輪も, その一つだ.

キラキラと輝くダイヤモンドは, 私と正弘の「永遠の愛」を象徴していたはずだ.

だが, 今となっては, ただの重い石でしかない.

私はそれを, 躊躇なく引き出しの奥にしまい込んだ.

いつか, 質屋にでも持って行こう.

作業中, 身体に異変を感じた.

吐き気と, 激しい目眩.

無理もない. この数週間, 私はまともに食事も睡眠もとっていなかった.

正弘との決別は, 思った以上に私の心と身体を蝕んでいたようだ.

私は, 床にへたり込んだ.

「大丈夫, 大丈夫」

自分に言い聞かせたが, 震えが止まらない.

意識が遠のいていくのを感じた.

次に目を覚ました時, 私は病院のベッドにいた.

見慣れない天井. 点滴のチューブ.

「みっちゃん! 目が覚めたか! 」

隣にいたのは, 正弘だった.

どうして彼がここに? 意識が朦朧としていた私の頭は, 状況を理解できなかった.

「何で, あなたがここにいるの? 」

私の声は, 掠れていた.

「俺が救急車を呼んだんだ. 連絡が取れないから心配になって, 家に行ったんだよ. そしたら, お前が意識を失って倒れてて…」

彼の目は, 心底心配しているように見えた.

「大丈夫だよ. もう, 何も心配いらないから」

彼は私の手を握ろうとした.

私は, その手を強く振り払った.

「触らないで」

私の言葉に, 彼の顔から血の気が引いた.

「どうして, 私が倒れた時に, あなたは萌葉ちゃんのところにいたの? もし, 私があのまま死んでいたら, あなたは萌葉ちゃんのことを優先したままで, 私を見つけることさえなかったでしょう? 」

私の問いに, 彼は何も答えられなかった.

「俺は, ただ…」

彼は言葉を探しているようだった.

「言い訳はいらない. あなたが, どれだけ私を軽視していたか, よく分かったわ」

その時, 病室のドアが開き, 萌葉が顔を出した.

「お兄ちゃん, 遅いよー. 萌葉, 寂しかったんだから! 」

彼女は, 正弘の姿を見つけると, 甘えた声で駆け寄ってきた.

正弘は, 一瞬怯んだように見えたが, すぐに私の視線を避けて, 萌葉の方を向いた.

「萌葉, 心配かけたな. 大丈夫か? 」

彼は, 萌葉の頭を優しく撫でた.

その光景を見て, 私の心は完全に冷え切った.

もう, 何の感情も湧き上がってこない.

「正弘, 出て行って. あなたの顔なんて, 二度と見たくない」

私の言葉は, 病室に響き渡った.

正弘は, 驚いた顔で私を見た.

萌葉は, 勝利を確信したような表情で, 私のことを見下ろしている.

「みっちゃん, そんなこと言うなよ. 俺は, お前を心配して…」

「嘘つき. あなたは, 私のことなんて一度も心配したことない. あなたが心配するのは, いつも自分と, 萌葉ちゃんだけだ」

私は, 限界だった.

「お兄ちゃん, 早く行こうよ. 萌葉, お腹空いた」

萌葉が, 正弘の腕を引っ張る.

正弘は, 私に振り返ることなく, 萌葉と一緒に病室を出て行った.

彼の背中は, 私から遠ざかるほど, 小さく, そして情けなく見えた.

病室に一人残された私は, 深く息を吐いた.

苦しい.

しかし, これで本当に終わりだ.

もう, 二度と, 彼らのために私の感情を揺さぶられることはない.

私の心は, 完全に自由になった.

続けて視聴する!
物語はいよいよ佳境へ!アプリに切り替えて続きを読む
全エピソードをロック解除
公式サイトを開く

おすすめの作品

裏切りの夜に咲く、新たな愛の蕾 の小説カバー
9.5
復縁からわずか一年。グループのデザイン部長として多忙な日々を送る彼女を待っていたのは、あまりに無慈悲な裏切りの再来だった。深夜、疲れ果てて帰宅した邸宅で、使用人たちが階段を塞ぐように立ちはだかる。主人の予期せぬ帰還に動揺し、顔を青ざめさせる彼らの隙間から漏れてきたのは、夫と見知らぬ女が耽る淫らな喘ぎ声と、不在の妻を軽んじる夫の非情な言葉だった。かつて誓い合ったはずの愛は、再び無残に踏みにじられたのだ。取り乱す使用人が夫への報告を提案するなか、彼女は感情を押し殺し、静寂を纏ったまま「お腹が空いたわ。夜食の用意を」と告げる。その場にいた全員が彼女のあまりに冷静な反応に凍りつくが、その凪のような振る舞いの裏には、夫への未練を完全に断ち切ったという冷徹な決意が秘められていた。これは、絶望の夜に終わりを告げ、自らの足で新たな人生へと歩み出す女性の、静かなる決別の物語である。
家政婦と呼ばれた妻の復讐劇 の小説カバー
8.3
結婚記念日の夜、夫の涼太から告げられたのは「お前は家政婦に過ぎない」という非情な言葉だった。絶望に沈む桃は翌朝、夫が実の妹である杏樹に執着し、自分を代理母として利用しようと企んでいる事実を知る。さらに衝撃的なことに、かつて自分を救ったはずの誘拐事件さえも、彼女を支配し利用するために涼太が仕組んだ自作自演だったのだ。すべてが偽りの愛であり、自分は都合のいい道具として扱われていた事実に、桃の心は激しい怒りに燃え上がる。そんな折、世界的ホテル王である養母から「彼らに報いを受けさせましょう」と救いの手が差し伸べられた。桃は強要された体外受精の受精卵を自らの手で叩きつけ、復讐を誓って冷徹に微笑む。愛を奪い、尊厳を蹂躙した夫とその家族に対し、今度は彼女がすべてを奪い返す番だ。豪華絢爛な世界の裏側で、虐げられた妻による凄絶な逆襲劇が幕を開ける。涼太への決別を胸に、彼女は真の支配者へと変貌を遂げていく。
離婚後の私、無敵です。 の小説カバー
8.1
結婚記念日という特別な日に、御曹司の夫・尾崎時生から突きつけられたのは、初恋の女性を選ぶというあまりにも身勝手な裏切りだった。長年の献身を無下にする彼に対し、西森千夏は未練を断ち切り、即座に離婚届を叩きつけて去る。時生は「どうせすぐに戻ってくる」と高を括っていたが、彼女が選んだ道は芸能界への華々しい復帰だった。かつての「か弱い妻」から一転、圧倒的なカリスマ性で無双する千夏は、時生の愛人の本性を暴き、社会的に葬り去っていく。一方、千夏の前には世界的スターやメディア王、大富豪の継承者といった最高峰の男たちが現れ、彼女を巡って熱狂的な求愛を繰り広げる。立場は完全に逆転し、千夏の成功を目の当たりにした時生は、焦燥感からなりふり構わず復縁を迫る。しかし、かつての冷遇を忘れない彼女は、すがりつく元夫を一瞥だにせず冷酷に告げる。「一度捨てた過去を二度と拾うことはない」と。これは、裏切りを糧に覚醒した女性が、かつての夫を絶望の淵へと突き落とし、真の愛と栄光を掴み取る痛快な愛憎劇である。
元夫よ、見てる?私は今、世界一の男と結婚します の小説カバー
9.4
三年に及ぶ冷遇と裏切りに満ちた結婚生活に終止符を打ち、一ノ瀬光は離婚を決意した。過去の未練も愛もすべて断ち切り、彼女は自らの力で新たな道を切り拓いていく。かつての大人しい妻の姿はそこにはない。トップデザイナー、神業を持つ医師、さらには伝説のハッカーや気高き「皇女」として、彼女が隠し持っていた多彩な才能が次々と開花し、世間を驚愕させていく。そんな光が新たな人生のパートナーとして選んだのは、霧島真尋だった。盛大な結婚式の最中、巨大なスクリーンを背にした彼は、世界中が見守る前で堂々と宣言する。「この女は俺の妻だ。誰一人として手を出すことは許さない」と。その圧倒的な存在感と愛を前に、今さら後悔の涙を流す元夫の姿があった。しかし、どんなに嘆こうともう遅い。どん底を味わった彼女は、もはや誰かに選ばれるのを待つだけの存在ではないのだ。自らの意志で最高の幸せを掴み取った光の、華麗なる逆転劇がいま幕を開ける。
彼の裏切りが、彼女の真の力を解き放った の小説カバー
8.5
恋人の浩人を支えるため、私は正体を隠して数百億円規模のソフトウェア「Aura」を開発し、彼をスタープロジェクトリーダーの座へと押し上げた。二人の幸せな未来を信じ、影の設計者として尽くしてきた五年間。しかし、サプライズで彼の転属先を訪れた私を待っていたのは、見知らぬ女性キラと抱き合う彼の姿だった。浩人は彼女を単なる友人だと言い張るが、キラが会社に数億円の損失を与えた際、彼は信じがたい行動に出る。役員たちの前で彼女を庇い、あろうことか全ての責任を私に押し付けたのだ。「プレッシャーに耐えられないなら本社へ帰れ」と、彼は冷酷に私を解雇した。尽くしてきた男の裏切りに絶望し、世界が崩れ去ったその時、エレベーターからCTOが現れる。彼は涙に濡れる私と傲慢な浩人を交互に見据え、静かに、しかし鋭く問いかけた。「君は、この会社のオーナーに対して、そのような口の利き方をするつもりか?」と。裏切られた設計者の真の身分が明かされる時、二人の関係は決定的な破滅を迎える。
社長、その離婚届は受け取りません! の小説カバー
9.6
顔も知らない相手と結婚生活を送るという、異例の事態に直面した男女の愛憎劇が幕を開けます。大企業の社長である夫は、一度も会ったことのない妻に対して「金に執着する強欲な女」という一方的な偏見を抱いていました。彼は一刻も早く縁を切るために、部下へ離婚協議書への署名を命じ、巨額の慰謝料を提示して彼女を追い詰めようと画策します。しかし、そんな夫の冷酷な態度とは裏腹に、妻は頑なに離婚を拒み続けます。「お金なんて一切必要ない」と断言し、提示された大金にも目もくれず、彼女は決して離婚届に判を押そうとはしません。金で解決しようとする傲慢な夫と、無償の意志で関係を維持しようとする妻。二人の間には深い溝と、互いの真意が見えないままの激しい攻防が繰り広げられます。なぜ彼女は頑なに拒絶するのか、そして夫の誤解が解ける日は来るのか。政略結婚の裏に隠された真実と、金銭では動かせない想いが交錯する、スリリングな現代ロマンスがここに誕生しました。二人の関係が辿り着く結末を、ぜひその目で見届けてください。