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婚約破棄された私とIT社長の愛 の小説カバー

婚約破棄された私とIT社長の愛

婚姻届を提出するはずだった当日、市役所で待つ私の元に届いたのは、婚約者からのあまりに身勝手な欠席連絡だった。「妹が寂しがっている」という理由で放置された私は、心血を注いでリノベーションした新居のタワーマンションさえも、ストーカー被害を自作自演する義妹に奪われてしまう。彼に抗議しても返ってきたのは冷酷な嘲笑だけだった。長年「都合のいい女」として扱われてきたことに絶望した私は、即座に関係を断ち切り、自分を想い続けてくれていた幼馴染のIT社長と結婚する道を選ぶ。その後、義妹の嘘が露呈して全財産を失い、事故で右腕まで欠損した元婚約者が「お前しかいない」と泣きついてくるが、私の心はもう動かない。私の傍には、命がけで自分を守ってくれる献身的な夫と、愛らしい双子の子供たちがいる。かつての裏切り者が絶望に打ちひしがれ、廃人のように崩れ落ちる姿を、私は幸せな家庭の中から冷ややかに見下ろすのだった。自業自得な末路を辿る彼に、向ける言葉など何一つ残っていない。
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藤巻光恵 POV:

正弘との慰謝料とマンションの件は, 弁護士を立てて粛々と進めた. 彼からの電話やメッセージは全て着信拒否にし, 私の生活から完全に彼を排除した. まるで, 彼が存在しなかったかのように.

数週間後, 正弘から非通知で電話がかかってきた.

「みっちゃん, お願いだ. もう一度話してくれ. 萌葉が, 今度は本当に大変なんだ」

彼の声には焦りがにじんでいた.

「今度は何? 」

私の声は, 感情を一切含まない無機質なものだった.

「萌葉が, その, 妊娠したって言い出して. でも, 相手が誰だか分からないって... . 俺は, 彼女を放っておけないんだ」

彼の言葉に, 私の心は微塵も揺らがなかった. むしろ, 呆れと嫌悪感が込み上げた.

「それが, 私と何の関係があるの? 」

私は冷たく言い放った.

「みっちゃん, 頼む. 俺のそばにいてくれ. お前しかいないんだ」

彼の声は, 懇願に変わっていた.

「今更, そんなことを言われても困るわ. あなたは, いつも萌葉ちゃんを優先した. 私を, 何番目だと思っていたの? 」

私の言葉に, 正弘は何も言えなくなった.

「萌葉ちゃんは, あなたの妹でしょう? あなたが守ってあげたらいい. 私は, もうあなたとは関係ない」

私は一方的に電話を切った.

電話を切った後も, 彼の声が耳の奥でこだましていた.

「お前しかいない」?

そんな都合のいい言葉に, もう騙されない.

彼の言葉は, 私を捕まえるための甘い罠だ.

私は, もう二度と, その罠にはかからない.

私は, 正弘との思い出の品を全て処分し始めた.

彼がくれたブランドバッグ. 二人で選んだペアカップ.

全てが, 私の視界に入ると吐き気がした.

ゴミ袋に詰め込み, まとめて玄関の外に出した.

婚約指輪も, その一つだ.

キラキラと輝くダイヤモンドは, 私と正弘の「永遠の愛」を象徴していたはずだ.

だが, 今となっては, ただの重い石でしかない.

私はそれを, 躊躇なく引き出しの奥にしまい込んだ.

いつか, 質屋にでも持って行こう.

作業中, 身体に異変を感じた.

吐き気と, 激しい目眩.

無理もない. この数週間, 私はまともに食事も睡眠もとっていなかった.

正弘との決別は, 思った以上に私の心と身体を蝕んでいたようだ.

私は, 床にへたり込んだ.

「大丈夫, 大丈夫」

自分に言い聞かせたが, 震えが止まらない.

意識が遠のいていくのを感じた.

次に目を覚ました時, 私は病院のベッドにいた.

見慣れない天井. 点滴のチューブ.

「みっちゃん! 目が覚めたか! 」

隣にいたのは, 正弘だった.

どうして彼がここに? 意識が朦朧としていた私の頭は, 状況を理解できなかった.

「何で, あなたがここにいるの? 」

私の声は, 掠れていた.

「俺が救急車を呼んだんだ. 連絡が取れないから心配になって, 家に行ったんだよ. そしたら, お前が意識を失って倒れてて…」

彼の目は, 心底心配しているように見えた.

「大丈夫だよ. もう, 何も心配いらないから」

彼は私の手を握ろうとした.

私は, その手を強く振り払った.

「触らないで」

私の言葉に, 彼の顔から血の気が引いた.

「どうして, 私が倒れた時に, あなたは萌葉ちゃんのところにいたの? もし, 私があのまま死んでいたら, あなたは萌葉ちゃんのことを優先したままで, 私を見つけることさえなかったでしょう? 」

私の問いに, 彼は何も答えられなかった.

「俺は, ただ…」

彼は言葉を探しているようだった.

「言い訳はいらない. あなたが, どれだけ私を軽視していたか, よく分かったわ」

その時, 病室のドアが開き, 萌葉が顔を出した.

「お兄ちゃん, 遅いよー. 萌葉, 寂しかったんだから! 」

彼女は, 正弘の姿を見つけると, 甘えた声で駆け寄ってきた.

正弘は, 一瞬怯んだように見えたが, すぐに私の視線を避けて, 萌葉の方を向いた.

「萌葉, 心配かけたな. 大丈夫か? 」

彼は, 萌葉の頭を優しく撫でた.

その光景を見て, 私の心は完全に冷え切った.

もう, 何の感情も湧き上がってこない.

「正弘, 出て行って. あなたの顔なんて, 二度と見たくない」

私の言葉は, 病室に響き渡った.

正弘は, 驚いた顔で私を見た.

萌葉は, 勝利を確信したような表情で, 私のことを見下ろしている.

「みっちゃん, そんなこと言うなよ. 俺は, お前を心配して…」

「嘘つき. あなたは, 私のことなんて一度も心配したことない. あなたが心配するのは, いつも自分と, 萌葉ちゃんだけだ」

私は, 限界だった.

「お兄ちゃん, 早く行こうよ. 萌葉, お腹空いた」

萌葉が, 正弘の腕を引っ張る.

正弘は, 私に振り返ることなく, 萌葉と一緒に病室を出て行った.

彼の背中は, 私から遠ざかるほど, 小さく, そして情けなく見えた.

病室に一人残された私は, 深く息を吐いた.

苦しい.

しかし, これで本当に終わりだ.

もう, 二度と, 彼らのために私の感情を揺さぶられることはない.

私の心は, 完全に自由になった.

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