
アルファの偽りの番、オメガの静かなる戦い
章 2
エララ POV:
その夜遅く、私が放り込まれた狭く冷たい客室の扉が、きしむ音を立てて開いた。
カイネがそこに立っていた。廊下の松明の光に、そのシルエットが浮かび上がっている。
彼の手には、湯気の立つ椀があった。
「これを飲め」彼は言った。それは要求ではなかった。アルファの命令が、重く、抑圧的に彼の声に宿っていた。「呪術師からの滋養強壮の薬だ。腹の子を養うためのな」
「子」という言葉が、彼の舌の上で一滴の毒のように響いた。
私は、その黒く濁った液体を見つめた。胃がむかつく。
「いらない」私はかすれた声で囁いた。
彼の端正な顔に、苛立ちの光がよぎった。
彼は部屋に大股で入ってきた。松と嵐の香りが狭い空間を満たし、私を窒息させる。
かつて私が愛した香り、安全と故郷を意味した香り。
今では、ただ嘘の匂いがするだけだった。
「飲めと言ったんだ」
彼は私の顎を掴んだ。その握力は鉄のようだ。
顔を背けようとしたが、彼はあまりにも強かった。
彼は私の頭を後ろに傾け、椀の縁を私の唇に無理やり押し付けた。
熱く、苦い液体が口の中に流れ込み、舌を火傷させる。
彼が中身をすべて喉に流し込むと、私はむせび、反射的に飲み込んでしまった。
彼は私を解放し、私は咳き込みながら、薄いマットレスの上に崩れ落ちた。
「いい子だ」彼の声には、私の肌を粟立たせるような満足感が滲んでいた。
彼は空の椀を床に置き、一言も言わずに去っていった。
奇妙で重たい眠気が、ほとんどすぐに私の手足にまとわりつき始めた。
思考はぼやけ、まぶたは信じられないほど重くなる。
それに抗おうとしたが、薬の効き目はあまりにも強力だった。
彼が入ってくる前に、マットレスの端に小さな平たい記憶水晶を隠すことができたのは、幸いだった。それが、私の最後の意識的な思考だった。
次に目を開けたとき、部屋の唯一の、鉄格子のはまった窓から、青白い朝の光が差し込んでいた。
体は、深く、馴染みのない痛みで軋んでいた。
身を起こすと、冷たい恐怖が胃の腑に沈殿した。
震える手でマットレスの下に手を伸ばし、記憶水晶を取り出す。
それは魔法をかけられた水晶で、周囲の光景や音を吸収し、再生することができる。
スパイや猜疑心の強い領主が使う道具。
今、それが私の唯一の証人だった。
私はそれを手のひらに握りしめ、目を閉じ、意識を集中させた。
映像が、私の心に洪水のように流れ込んできた。
ベッドで眠る私自身の姿が見える。
扉が開き、カイネが、そしてセイラが入ってくるのが見えた。
彼女はベッドの脇に滑るように近づき、残酷な笑みを唇に浮かべていた。
「完全に落ちてる?」セイラの声は、甘く、毒を含んだ蜜のようだった。
「戦士一人を倒せるほどの量だ」カイネが、巨大な胸の前で腕を組みながら断言した。彼は、完全な侮蔑の眼差しで私を見下ろしていた。「何も感じない。何も覚えていないだろう」
彼はセイラに身を寄せ、共謀者のように声を潜めた。「これはお前のためのものだ、愛しい人よ。こいつがお前にしたことへの報いだ。お前を故郷から追い出したことへのな」
私の心は絶叫した。「違う!彼女は自分から出て行ったのに!」
「こいつには、この私生児を産むまで孕ませておく」カイネは続けた。彼の計画が、冷たく静かな部屋で明らかにされていく。「そして出産した時、血統の審判を要求する。群れの全員が、この子が俺の子ではないことを知るだろう。皆が、こいつが浮気者の売女だと知るのだ。その時、俺はこいつをローグとして追放し、お前が俺の隣、俺のルナとして、正当な場所を取り戻す」
セイラの笑みが広がった。
彼女は手を伸ばし、私の膨らんだお腹を、悪意に満ちた侮蔑的な一撃で蹴りつけた。
眠っている私の体がびくりと震えるのが見えたが、私は目覚めなかった。
「こいつは、私のものになるはずだった人生を奪った」セイラは、低く、毒に満ちた声で吐き捨てた。「その報いを受けさせてやる。でも、息はさせておいて。ゲームが早く終わりすぎたらつまらないもの」
カイネはそれから、扉に向かって手を振った。
私がぼんやりと見覚えのある、下級の戦士が部屋に忍び込んできた。その目は、恐怖と欲望が入り混じった色で大きく見開かれていた。
彼はアルファと、ベッドで意識を失っている私の姿を交互に見た。
「一時間、こいつはお前のものだ」カイネは平坦な声で言った。「お前の忠誠への褒美だ」
映像は、そこで終わった。
私の体は、声にならない、暴力的な嗚咽で震えた。
それは悲しみの音ではなかった。
純粋で、希釈されていない怒りの音だった。
体の痛み、この陵辱……すべてが、現実だった。
記憶水晶が、私の痺れた指から滑り落ち、床にカタリと音を立てた。
涙が、熱く、激しく顔を伝う。
それは失われた愛への悲しみの涙ではなかった。
私がどれほど愚かだったかに対する、怒りの涙だった。
私の手は、袖に隠していた小さな革袋を探り当てた。
私はそれを、着実で、意図的な動きで取り出した。
震える手で巾着の紐を解き、月影草の黒く砕かれた葉を手のひらにこぼした。
私はためらわなかった。
苦い薬草を口に放り込み、ベッドのそばの水差しから古くなった水を一すくいすると、それを飲み下した。
鋭く、即座の痙攣の波が、私の腹部を襲った。
私は悲鳴を上げないように唇を噛みしめ、自分の血の鉄錆びた味が口の中に広がった。
これは絶望の果ての行動ではない。
私の戦争の、始まりの合図だ。
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