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100年越しの月下美人 の小説カバー

100年越しの月下美人

古くから続く陰陽師の名門に生まれた御子柴聖は、幼少期から類いまれなる才覚を発揮し、一族の期待を一身に背負っていた。しかし七歳の頃、伝説の大妖怪・八岐大蛇が一家を襲撃。一族は無残に惨殺され、聖自身も右脚を失うという悲劇に見舞われる。さらに彼女の身には、持ち主の命を糧として吸い尽くす「月下美人の呪い」が刻まれてしまった。絶望の淵に立たされながらも、聖は生き延びるために過酷な運命と対峙し続ける。惨劇から十年の月日が流れ、十七歳へと成長した彼女は、自らの命を蝕む呪縛を解き放つため、そして一族の仇を討つために、再び立ち上がることを決意する。彼女の前に立ちはだかるのは、闇夜を跋扈する恐るべき百鬼夜行の軍勢。失われた右脚と呪いの痛みを抱えながら、聖は凄絶な戦いの中へと身を投じていく。死と隣り合わせの激闘を繰り広げる彼女を待ち受けているのは、果たして救済か、それともさらなる絶望か。命を削る月下美人が咲き誇る時、宿命の歯車が大きく動き出す。
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3

二○○X年 四月四日 午後23時25分。

長い廊下を走っていると八岐大蛇にやられてしまった陰陽師の無惨な死体が転がっていた。

 血の生臭い匂いが充満しているせいで吐き気がする。

「お嬢。大丈夫ですか?」

シロが心配そうな顔をして見てきた。

 「だ、大丈夫…。」

「はぁぁぁぁ!!!」

 庭からお婆様の声が聞こえた。

 廊下を抜け庭に出てみると。

 そこには悲惨な光景が広がっていた。

 白い石に囲まれた庭地が血と人間の血肉で汚れていた。

 横に転がっている死体の数を数えた。

 御子柴家の陰陽師がほぼやられていた。

 「これだけの陰陽師が居ても止められなかったって事?」

 「聖!!!」

札を持ったお父さんがあたし達の方に向かって来た。

「良く来てくれた。状況は…見ての通りだ。陽毬様に結界師を張り俺達は援護をする。蓮は聖の事を死んででも守れ。」

「御意。」

 蓮がお父さんに頭を下げた。

 お婆様の周りには沢山の式神が居た。

「急急如律令!!!」

お婆様は札を八岐大蛇の周りに貼り光の玉を放った。

「あははははははは!老ぼれの攻撃が我に通用すると思ったか!!!」

そう言って光の玉を八頭の口が開き光の玉を飲み込んだ。

そして八頭の口から紫のオーラを放った。

 「結果戦線(けっかいせんせん)!!」

あたしはそう言って指で横に線を書いた。

 お婆様の前に黄色のオーラが壁を作り攻撃を弾いた。

「何だ?我の攻撃を防いだのか?」 八岐大蛇がゆっくりと振り向いた。

 「お嬢。下がってください。」

 蓮はそう言ってあたしを後ろに下がらせた。

 「小僧に用は無いぞ。」

 「式神破軍。」

蓮は式神を召喚させた。

「妾の主人に文句か?」

白い大きな狐が八岐大蛇を威嚇する。

「小白(こはく)。行くぞ。」 蓮は刀を抜き八岐大蛇に向かって走って行った。

「聖!!大西!!準備をするのじゃ!!封印をするぞ!!」

 あたしとお父さんはお婆様の横に並び封印の札を八岐大蛇の周りに配置させた。

「行くぞ!!」

お婆様の言葉に続き素早く手を動かした。

蓮が八岐大蛇を引き付けている間に早く!!

蓮は小白の背中に乗り札から炎を出し八岐大蛇の体を焼き尽くす。

「はぁぁぁ!!」

小白の背中から飛び降り蓮は八岐大蛇の体を斬りつけた。

「グァァァ!!!」

 蓮は地面に着地し直ぐに刀を構え斬りかかった。 「「「急急如律令!!!」」」

 3人の声を合わせて唱えた。

 札から光の玉が現れ八岐大蛇の体に浴びさせた。 「あはははは!面白い!!」

 笑っている…?

ピチャッ 頬に何かが跳ねた感触がした。

「お嬢!!!離れて!!」

蓮が慌てた様子であたしの所に向かって来る。

 振り返るとそこに居たのは、紫色の長髪を後ろに立たせ赤い目の鬼が立っていた。

右手にはお父さんの頭を持っていた。

 パタンッ!!

頭の無いお父さんの体が地面に倒れ千切れた所から血が流れ落ちる。

「お、お父さん…、う、嘘…。」

「大西!?お、お前は…まさか!?」

 あたしはお父さんから目が離せなかった。

 「酒呑童子(しゅてんどうじ)!?」

大妖怪と呼ばれている妖怪で八岐大蛇の仲間でもある。

「お前は大阪に封じられて居ただろう!?どうやって此処に来たんだ!?」

お婆様が酒呑童子に尋ねた。

 「あ?何だこの婆さん。おい!大蛇、殺しても良いよなぁ?」

左手に持っていた徳利の酒を飲みながら八岐大蛇に尋ねていた。

 「構わん。」

そう言うと酒呑童子が不敵な笑みを浮かべた。 「婆さん。俺とやろうぜ?」

「ふん。この糞妖怪!!」

 酒呑童子は右手を鳴らした。

 すると酒呑童子の周りに金棒を持った小さな鬼が四体現れお婆様の元に向かって行った。

 「式神破軍。」

巨大な象と朱雀が現れ四体の鬼に向かって行った。 お婆様は刀を構えて酒呑童子に斬りかかった。 「お嬢!!怪我は…?」

 蓮があたしの体を優しく触る。

「へ、平気だけど…。お、お父さんが…。」

 乱暴に投げ捨てられたお父さんの頭を見つめた。 声を上げる暇すら無くて一瞬の出来事だった。 「お嬢。僕が付いています。」

「蓮…。」

「カハッ!!」

 ボタボタボタ…。

「「!?」」

あたしと蓮はその光景を疑った。

 酒呑童子の右腕がお婆様の体を突き抜けていた。 「お婆様!!?」

「な…んだ…と…っ。」

「御子柴家も大した事ねぇじゃん?ん?そのガキ…もしかして?」

酒呑童子があたしを見つめた。

シロとクロが威嚇をする。

キィィィン!

 蓮が酒呑童子に斬りかかった。

「お嬢に近寄るな妖怪。」

「お前…案外やるんじゃねぇの?」

蓮は札を酒呑童子の周りにばら撒き素早く手を動かした。

「音爆螺旋(おんばくらせん)。」

札から光の鎖が現れ酒呑童子を拘束した。 「ッ!?耳が痛てぇ…。」

音波先螺旋とは妖怪の動きを拘束し、妖怪の聴覚を刺激する技。

 その音は妖怪にしか効かないし聞こえない。

「お前を封じ込める。」

蓮が素早く封印の札を出そうとした。

すると酒呑童子の後ろから八岐大蛇が蓮に向かって攻撃をしてきた。

 「蓮!!」

 ドンッ!!!

あたしは蓮を突き飛ばした。

「っ!?お嬢!!?」

ブジャァァァァ!!!

 あたしの視界がグラッと揺れた。

 な、何が起きたの…。

意識が朦朧とする。

「お嬢!!!ってめぇ!」

「よっと。」

バキバキバキッ。

酒呑童子が鎖を引きちぎり蓮を殴り飛ばした。

その衝撃に近くにあった大きな岩に蓮が背中を強く強打した。

バキッ!!

 「ガハッ!!」

骨の折れる音と蓮が口から血を吐いていた。

体が熱くてドクドクと脈を打つ。

 酒呑童子が蓮に近寄ろうとしていた。

 「目的は済んだ。」

八岐大蛇の声が耳に響いた。

 誰かがあたしの前に膝を付いた。

 だ、誰…? 「ようやく見つけた。」

血に染まった手であたしの頬に触れる。

「100越しの月下美人の器を。」  真っ赤に染まった満月がボヤけた視線に焼き付く。

男があたしの口の中に丸い物を入れた。

 ゴクンッ。

抵抗しようにも体に力が入らなかった。

何か…飲まされた…?

「行くぞ、酒呑童子。」

「はいよー。」

空から飛乗物(とびのりもの)が現れた。

八岐大蛇達は飛乗物に乗り空に消えて行った。

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