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望まれない番は秘密の白狼 の小説カバー

望まれない番は秘密の白狼

無力なオメガを装い十年間、葉月は強大な白狼の力を封印して生きてきた。全ては愛娘・美月を敵から守るため。だが、美月が掴み取った評議会インターンの席を巡り、一族のアルファの娘・麗奈による残酷な暴行が始まる。運命の番であるはずの夫・蓮に助けを求めるも、彼は冷酷にも葉月を他人と突き放し、愛人の亜矢子を番として遇する道を選んだ。蓮の命により銀の鞭で打ち据えられ、絶体絶命の危機に陥る葉月。しかし、彼らは大きな見落としをしていた。美月に託した護り石と、葉月が隠し持つ古の誓約の存在を。最後の一撃が振り下ろされた瞬間、封印されていた真の力が覚醒する。上空を軍用ヘリが包囲し、最高評議会の精鋭たちが次々と現場へ降下。かつてない衝撃が走る中、隊長は跪き、一族を震撼させるその名を叫んだ。「ルナ・葉月様、お迎えに上がりました」。裏切りに染まった偽りの平穏は終わりを告げ、封印を解いた白狼による苛烈な反撃が幕を開ける。正体を知り愕然とする蓮たちを余所に、葉月は娘を救うため、真の支配者としての威厳を現していく。
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葉月 POV:

亜矢子の笑みは勝ち誇ったもので、自分が勝ったと信じきっていた。彼女は完璧に手入れされた爪でこめかみをトントンと叩き、得意げな表情を浮かべた。

「私のアルファ、ダーリン、ちょっとしたオメガがここで騒ぎを起こしているの。あなたが来て対処すべきよ」

彼女の精神感応の送信の波紋を感じた。それは私が蓮と共有する親密な繋がりと比べると、粗野で公然とした放送だった。まるで図書館で誰かが叫んでいるのを聞くようだった。

そして、その応答を感じた。馴染みのある存在が、近づいてくる。私の番。

重厚な樫の扉が開いた。

私の十年間の夫であり、黒森の一族のアルファである蓮が、戸口にシルエットで立っていた。彼は出会った日と同じくらいハンサムで、その広い肩が戸口を埋め尽くし、その存在感は空気をピリピリさせるほどの力を放っていた。

彼の目は部屋を見渡し、ほんの一瞬、私の目と合った。私はその奥に衝撃が、一瞬の、無防備なパニックがよぎるのを見た。彼は私を見た。彼は傷つき、震えている美月を見た。

そして、それは消えた。冷たい無関心の仮面が、恐ろしいほど完璧に下ろされた。彼は私を、自分の娘を、まるで全くの他人であるかのように見た。

「蓮、ダーリン!」

亜矢子は叫び、彼のそばに駆け寄って腕にしがみついた。

「この狂った女が、私たちの麗奈を襲ったの!鼻を折ったのよ!」

麗奈は、完璧に役を演じきり、彼の高価なスーツのジャケットに顔をうずめて泣きじゃくった。

「パパ、彼女、自分があなたの番だって言ったの!頭がおかしいんだわ!」

部屋にいた他の親たちは、自分たちのアルファを見て、すぐに騒ぎ始めた。

「彼女は狂人です、アルファ!」

「ここに無理やり押し入ってきたんです!」

「滅びた一族の者だと名乗っています!」

蓮は、石のような仮面をかぶった顔で聞いていた。彼は私を見て、口を開いた時の声は、判決を下す裁判官の声だった。それは彼が私たちのプライベートなチャンネルで使う、温かく愛情のこもった口調ではなかった。私に向けられたことのない声だった。

「君が誰だか知らない」

彼は言った。一つ一つの言葉が、私の心臓を突き刺す氷の破片のようだった。

これは公然の否認。運命の番の掟を冒涜する行為。他人の前で自分の番を否定することは、最大の罪の一つであり、どんな物理的な打撃よりも深く魂を切り裂く傷だ。私は私たちの聖なる絆が震え、ひび割れるのを感じた。灼熱の痛みが魂を貫いた。

「彼女に膝まずいて謝らせて、パパ!」

麗奈は私を指さして要求した。

蓮は私を見ようともしなかった。彼は、彼に従ってきた二人の一族の戦士に、ほとんど気づかれないほどのわずかな頷きをした。

「侵入者を罰しろ」

それはアルファの命令だった。彼の声に潜む力の底流は否定できず、下位の狼に従順を強いる力だった。

しかし、私は普通の狼ではなかった。私の血に流れる白狼、月の女神自身にまで遡るアルファとルナの血が、その命令に逆らった。私はそれに抵抗できた。

だが、私は彼らを来させた。

二人の屈強な戦士が私の腕を掴み、その握力は鉄のようだった。彼らは私を冷たく硬い床に膝まずかせた。屈辱は物理的なもので、重いマントのように私にのしかかった。

麗奈は教師の机から重い木製の定規をひったくった。それは古く、装飾的なもので、装飾のために細い銀の線がはめ込まれていた。

彼女の目は悪意に輝いていた。

「これは私に触った罰よ」

彼女は唸った。

彼女は定規を高く振り上げ、私の背中に振り下ろした。

純粋な炎の線が私の皮膚に走った。銀の象嵌は、それを単なる打撃以上のもの、拷問にしていた。もう一撃、そしてもう一撃。それぞれが私に激痛の衝撃を送り、私自身の焼ける肉の匂いが鼻を満たした。

部屋の向こうで、蓮は無表情で立って見ていた。しかし、私には見えた。握りしめられた彼の拳に浮かび上がる血管が見えた。彼の顎で跳ねる筋肉が見えた。傷ついた私たちの絆を通して、私の痛みの残響が彼の中で響いているのを感じることができた。番の絆は双方向なのだ。私の苦しみは、彼の苦しみでもあった。

それでも、彼は何もしなかった。彼は、自分が仕組んだ計画のために、自分の番が打ちのめされるのを、ただ立って見ていた。

私は咳き込み、血と唾の飛沫が磨かれた床に落ちた。私は頭を上げ、汗で顔に張り付いた髪を払い、彼の目を見つめた。

私は彼に、血まみれの、打ちひしがれた笑みを向けた。

「ルナを拒絶したこと、後悔するわ」

私は弱々しいがはっきりとした声で、かすれた声で言った。

その言葉が私の唇から離れると同時に、新しい音が空気を満たした。低く、深い、急速に大きくなる鼓動音。それは重いローターが空気を服従させる音だった。

ドッドッドッ。

誰もが凍りつき、大きな窓の方を見た。

三機の軍用ヘリコプターが外にホバリングし、そのサーチライトが部屋をまばゆい白い光で満たした。開いたドアからロープが下ろされ、黒い戦術装備に身を包んだ人物たちが、恐ろしいほどの速さと正確さで降下してきた。

窓が内側に砕け散った。人狼最高評議会の記章を身につけ、武装した兵士たちが部屋に流れ込み、数秒で制圧した。

彼らのリーダーである、髪に銀の筋が入った厳格な顔つきの将校が、まっすぐ私に向かって歩いてきた。彼はアルファも、いじめっ子たちも、誰もかも無視した。彼は私の膝まずく姿の前に立ち止まり、古代の狼の忠誠の仕草である、低く正式なお辞儀をした。

「ルナ・葉月様」

彼は権威に満ちた声で言った。

「銀月の誓約は果たされました。最高評議会直属護衛隊、ただいま馳せ参じました」

部屋全体が死んだように静まり返った。力の均衡が、今、覆ったのだ。

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