
秘めたる想いの代償
章 2
結城恵梨 POV:
私は冷たいタイルの上を這うように指を動かし、散らばった錠剤を必死にかき集めて瓶に戻した。彼の鋭い視線からラベルを隠しながら。私の秘密の恥、時を刻む時計が、魂のない会議室の床に晒されている。
「あなたには関係ないことよ」
私は声を詰まらせた。唇が震え、すべてをバッグに詰め込む。彼に見られまいと、私の目の中の恐怖を悟られまいと、私は彼から顔を背けた。
涼介の顎の筋肉がぴくりと動いた。一瞬、昔の涼介の面影が見えた。私の考えをすべて読み取ることができた、あの頃の彼。だがすぐに、冷酷な無表情の仮面が元に戻った。彼は一言も言わずに背を向け、息苦しい沈黙の中に私を置き去りにして歩き去った。
ようやく外に出ると、従姉妹の沙織が廊下で待っていた。腕の中では、眠っている希がすやすやと揺れている。希の小さな顔は安らかで、黒いまつげが頬に影を落としていた。彼女は、驚くほど彼に似ていた。
「あの女、化け物よ」沙織は怒りに目を光らせながら吐き捨てた。「それに涼介…信じられない。彼女の弁護士ですって?あれだけのことがあったのに?」彼女は信じられないというように首を振った。「あなたが付き合い始めた頃、彼、あなたが風邪をひいたってだけで、五時間も吹雪の中を運転して、あなたのお気に入りのホットチョコレートを一杯届けに来たのよ」
その記憶は、鋭く痛みを伴う棘のようだった。
「昔のことよ、沙織。人は変わるの」
「そんなに変われるはずないわ」彼女は言い張った。「恵梨、彼に言わなきゃ。希が彼の子だって。彼が自分の子供を、あのハイエナみたいな女に取られるのを黙って見てるはずがない」
吐き気がこみ上げてきた。
「言えない」
「どうして?」
「彼は結婚してるの、沙織」その言葉は毒のような味がした。「奥さんがいて、息子もいて、もうすぐ二人目の赤ちゃんも生まれる。彼はもう、前を向いてるの」
私は希の無垢な顔を見下ろした。どうして彼女をそんな人生に放り込めるだろう?父親が別の女性、それも私たちの家族を破滅させた女と結ばれている人生に。彼が心底軽蔑している過去を、絶えず思い出させる存在としての人生に。彼女は、彼が憎む女の娘として、彼の新しい完璧な家族の影で生きていくことになる。
「彼は私を憎んでる」私は囁いた。その真実が、冷たく重い石のように胃の底に沈んだ。「彼は希を望まないわ。私から生まれた子なんて。彼の新しい奥さん…彼女が希に優しくするはずがない。娘は一生、私の『罪』を償わされることになる」
絶対に嫌だ。そんな目に遭わせるくらいなら、死んだ方がましだ。
突然、胃に鋭い痛みが走り、口の中に鉄の味が広がった。世界が傾き、廊下がベージュと白の渦にぼやけていく。沙織の目が驚愕に見開かれるのが見えた。彼女が私の名前を呼ぶ声が聞こえ、そして、すべてが暗転した。
目を覚ますと、消毒液の匂いと、心電図モニターの規則正しいビープ音がした。沙織がベッドの横の椅子で眠っている。その顔には心配の色が刻まれていた。体が痛む。骨の芯から響いてくるような、深い痛みだった。
突然、病室の外の廊下から騒ぎが聞こえた。子供の泣き声――甲高く、恐怖に満ちた叫び声が、私の疲れた意識を切り裂いた。
希だ。
灼けるような痛みを無視して、私は薄い病院の毛布を跳ね除け、腕から点滴を引き抜いた。
「恵梨、何してるの!」沙織が飛び起きた。「先生は安静にしてなきゃダメだって!希はすぐ外にいるわ、看護師さんが一緒に…」
だが、私はもうドアの外にいた。裸足がリノリウムの床を叩く。彼女のすすり泣く声を頼りに、小さな待合室へと向かった。そこには人だかりができていた。その中心に、私の娘がいた。顔は涙で濡れ、小さな体は震えていた。
「あの子、嘘つきよ!私のお母さんを押したんだ!」小さな男の子が、希を指差して叫んだ。
「私、見ました!あの子が妊婦さんに突進したのを!」群衆の中の女性が、非難に満ちた声で付け加えた。
私は野次馬を押し分け、胸を激しく打ち鳴らしながら進んだ。
「希!」
私は跪き、彼女を腕の中に引き寄せ、固く抱きしめた。
「大丈夫よ、ベイビー。ママがここにいるから」
「押してない」希は私の肩に顔を埋めて泣きじゃくった。「転んじゃったの、ママ。ただ、転んじゃっただけなの」
聞き覚えのある、冷たい声が騒ぎを遮った。
「何があった?」
見上げると、血の気が引いた。涼介がそこに立っていた。彼の腕には、青白い顔で弱々しく寄り添う新山愛莉がいた。彼女が、あの妊婦だった。
「涼介さん、あなた」愛莉は彼に重くもたれかかりながら、か細い声で言った。「あの子が…私に突進してきたの。赤ちゃんが心配だわ」
私の視線が、愛莉の完璧にセットされた髪越しに、涼介の視線と交わった。彼は私を見ていた。その表情は読み取れない。そして彼の目は、私の腕の中で小さく泣きじゃくる少女へと移った。
希へ。
そして初めて、彼は本当に彼女を見た。
彼女の目の形、黒い髪のカール、小さな顎の頑固なライン。彼は、自分自身を見た。
衝撃と、徐々に広がる認識の光が、彼の顔をよぎった。
私は無意識に希をさらに強く引き寄せ、彼の視線から、突然、恐ろしいほど彼の顔に浮かび上がった真実から、彼女を庇った。
「防犯カメラを確認すればいいわ」私は震えながらも、毅然とした声で言った。「私の娘は嘘つきじゃない」
愛莉の目が見開かれた。彼女が私を見たとき、脆さの仮面が滑り落ちた。純粋な毒気と、もう一つ、何かが見えた。
認識。
「あなた」彼女は、不信と憎しみに満ちた声で息を飲んだ。「結城恵梨。そうだったのね」
彼女は群衆に向き直り、芝居がかったパニックの声で叫んだ。
「この人よ!有毒な建材を売った男の娘!私のおじ様を殺した男の!私たちの家族を破滅させて、今度はまた戻ってきた!私たちを再び傷つけるために!」
群衆がざわめき始めた。彼らの視線、彼らの非難が、私に突き刺さるのを感じた。私は希の耳を塞ぎ、毒から彼女を守ろうとした。
愛莉は泣き崩れ、涼介の腕にしがみついた。
「わざとよ、涼介さん!復讐しようとしてるの!自分の娘に、私たちの赤ちゃんを傷つけさせたのよ!」
おすすめの作品





