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秘めたる想いの代償 の小説カバー

秘めたる想いの代償

六年前、愛する藤澤涼介を救うために私は彼を裏切り、その手で破滅へと追いやった。そして今、復讐に燃える彼が弁護士として私の前に再び現れる。白血病に侵され余命僅かな私に残された唯一の希望は、愛娘の希と過ごす時間だけだった。しかし、亡き夫の姉から法外な慰謝料と親権を巡る訴訟を起こされ、その代理人を務める涼介は、冷徹な眼差しで私を母親失格だと糾弾する。彼は希が自分の実の娘であることも、私の命が尽きようとしていることも知らない。かつて私を愛した面影を消し去り、私を破滅させた一族の女と新たな家庭を築く彼は、ただ憎しみだけを糧に私からすべてを奪おうとしていた。娘を守るため、私は自らの治療費を投げ打って彼女を遠くへ逃がし、孤独な病室で最期の時を迎える。涼介が新しい命の誕生を祝うその裏で、私は息を引き取った。だが、死の淵で私は彼に一通の手紙を託す。それは、彼が築き上げた完璧な偽りの世界をすべて焼き尽くし、残酷な真実を突きつけるための、最期の代償だった。
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結城恵梨 POV:

私は冷たいタイルの上を這うように指を動かし、散らばった錠剤を必死にかき集めて瓶に戻した。彼の鋭い視線からラベルを隠しながら。私の秘密の恥、時を刻む時計が、魂のない会議室の床に晒されている。

「あなたには関係ないことよ」

私は声を詰まらせた。唇が震え、すべてをバッグに詰め込む。彼に見られまいと、私の目の中の恐怖を悟られまいと、私は彼から顔を背けた。

涼介の顎の筋肉がぴくりと動いた。一瞬、昔の涼介の面影が見えた。私の考えをすべて読み取ることができた、あの頃の彼。だがすぐに、冷酷な無表情の仮面が元に戻った。彼は一言も言わずに背を向け、息苦しい沈黙の中に私を置き去りにして歩き去った。

ようやく外に出ると、従姉妹の沙織が廊下で待っていた。腕の中では、眠っている希がすやすやと揺れている。希の小さな顔は安らかで、黒いまつげが頬に影を落としていた。彼女は、驚くほど彼に似ていた。

「あの女、化け物よ」沙織は怒りに目を光らせながら吐き捨てた。「それに涼介…信じられない。彼女の弁護士ですって?あれだけのことがあったのに?」彼女は信じられないというように首を振った。「あなたが付き合い始めた頃、彼、あなたが風邪をひいたってだけで、五時間も吹雪の中を運転して、あなたのお気に入りのホットチョコレートを一杯届けに来たのよ」

その記憶は、鋭く痛みを伴う棘のようだった。

「昔のことよ、沙織。人は変わるの」

「そんなに変われるはずないわ」彼女は言い張った。「恵梨、彼に言わなきゃ。希が彼の子だって。彼が自分の子供を、あのハイエナみたいな女に取られるのを黙って見てるはずがない」

吐き気がこみ上げてきた。

「言えない」

「どうして?」

「彼は結婚してるの、沙織」その言葉は毒のような味がした。「奥さんがいて、息子もいて、もうすぐ二人目の赤ちゃんも生まれる。彼はもう、前を向いてるの」

私は希の無垢な顔を見下ろした。どうして彼女をそんな人生に放り込めるだろう?父親が別の女性、それも私たちの家族を破滅させた女と結ばれている人生に。彼が心底軽蔑している過去を、絶えず思い出させる存在としての人生に。彼女は、彼が憎む女の娘として、彼の新しい完璧な家族の影で生きていくことになる。

「彼は私を憎んでる」私は囁いた。その真実が、冷たく重い石のように胃の底に沈んだ。「彼は希を望まないわ。私から生まれた子なんて。彼の新しい奥さん…彼女が希に優しくするはずがない。娘は一生、私の『罪』を償わされることになる」

絶対に嫌だ。そんな目に遭わせるくらいなら、死んだ方がましだ。

突然、胃に鋭い痛みが走り、口の中に鉄の味が広がった。世界が傾き、廊下がベージュと白の渦にぼやけていく。沙織の目が驚愕に見開かれるのが見えた。彼女が私の名前を呼ぶ声が聞こえ、そして、すべてが暗転した。

目を覚ますと、消毒液の匂いと、心電図モニターの規則正しいビープ音がした。沙織がベッドの横の椅子で眠っている。その顔には心配の色が刻まれていた。体が痛む。骨の芯から響いてくるような、深い痛みだった。

突然、病室の外の廊下から騒ぎが聞こえた。子供の泣き声――甲高く、恐怖に満ちた叫び声が、私の疲れた意識を切り裂いた。

希だ。

灼けるような痛みを無視して、私は薄い病院の毛布を跳ね除け、腕から点滴を引き抜いた。

「恵梨、何してるの!」沙織が飛び起きた。「先生は安静にしてなきゃダメだって!希はすぐ外にいるわ、看護師さんが一緒に…」

だが、私はもうドアの外にいた。裸足がリノリウムの床を叩く。彼女のすすり泣く声を頼りに、小さな待合室へと向かった。そこには人だかりができていた。その中心に、私の娘がいた。顔は涙で濡れ、小さな体は震えていた。

「あの子、嘘つきよ!私のお母さんを押したんだ!」小さな男の子が、希を指差して叫んだ。

「私、見ました!あの子が妊婦さんに突進したのを!」群衆の中の女性が、非難に満ちた声で付け加えた。

私は野次馬を押し分け、胸を激しく打ち鳴らしながら進んだ。

「希!」

私は跪き、彼女を腕の中に引き寄せ、固く抱きしめた。

「大丈夫よ、ベイビー。ママがここにいるから」

「押してない」希は私の肩に顔を埋めて泣きじゃくった。「転んじゃったの、ママ。ただ、転んじゃっただけなの」

聞き覚えのある、冷たい声が騒ぎを遮った。

「何があった?」

見上げると、血の気が引いた。涼介がそこに立っていた。彼の腕には、青白い顔で弱々しく寄り添う新山愛莉がいた。彼女が、あの妊婦だった。

「涼介さん、あなた」愛莉は彼に重くもたれかかりながら、か細い声で言った。「あの子が…私に突進してきたの。赤ちゃんが心配だわ」

私の視線が、愛莉の完璧にセットされた髪越しに、涼介の視線と交わった。彼は私を見ていた。その表情は読み取れない。そして彼の目は、私の腕の中で小さく泣きじゃくる少女へと移った。

希へ。

そして初めて、彼は本当に彼女を見た。

彼女の目の形、黒い髪のカール、小さな顎の頑固なライン。彼は、自分自身を見た。

衝撃と、徐々に広がる認識の光が、彼の顔をよぎった。

私は無意識に希をさらに強く引き寄せ、彼の視線から、突然、恐ろしいほど彼の顔に浮かび上がった真実から、彼女を庇った。

「防犯カメラを確認すればいいわ」私は震えながらも、毅然とした声で言った。「私の娘は嘘つきじゃない」

愛莉の目が見開かれた。彼女が私を見たとき、脆さの仮面が滑り落ちた。純粋な毒気と、もう一つ、何かが見えた。

認識。

「あなた」彼女は、不信と憎しみに満ちた声で息を飲んだ。「結城恵梨。そうだったのね」

彼女は群衆に向き直り、芝居がかったパニックの声で叫んだ。

「この人よ!有毒な建材を売った男の娘!私のおじ様を殺した男の!私たちの家族を破滅させて、今度はまた戻ってきた!私たちを再び傷つけるために!」

群衆がざわめき始めた。彼らの視線、彼らの非難が、私に突き刺さるのを感じた。私は希の耳を塞ぎ、毒から彼女を守ろうとした。

愛莉は泣き崩れ、涼介の腕にしがみついた。

「わざとよ、涼介さん!復讐しようとしてるの!自分の娘に、私たちの赤ちゃんを傷つけさせたのよ!」

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