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病に堕ちたアルファの哀願 の小説カバー

病に堕ちたアルファの哀願

銀毒症という不治の病に侵されたアルファ。かつては誰もが畏怖し、崇拝の対象であった彼の威厳はもはや見る影もない。そんな彼に対し、伴侶である私は冷酷に決別を突きつける。月光石の婚約指輪を粉々に砕き、伴侶契約の解除申請書をその顔へ叩きつけたのだ。もはや彼を伴侶として認めるつもりはないという私の宣告に、内なる狼は歓喜の声を上げる。病の苦痛に喘ぎ、血走った目で膝をつく彼は、自らの愚かさを詫びながら必死に私に縋り付いた。醜い姿にはならない、決して負担はかけないと涙ながらに訴え、犬のように卑屈な態度で私を繋ぎ止めようと懇願する。しかし、私はその哀願に耳を貸すことなく、彼を乱暴に引きずって月の女神像の前へと向かった。もし彼が契約解除を拒むのであれば、私は女神に直接、彼に授けられた祝福をすべて取り消すよう願い出るつもりだ。かつての強者が地に伏し、愛を乞う無惨な姿を晒しても、私の決意が揺らぐことは決してないのである。
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3

期待に胸を膨らませて顔を上げた先にいたのは、障がいを持つ私の妹だった。

アンディに親しげに頭を撫でられながら、妹は虚ろな表情で私を指差す。

「お姉ちゃんは悪魔憑きなんかじゃないよ。ただ男の人が好きなだけ。何人かのアルファに慰めてもらえば、きっとよくなる」

その言葉に、場の空気は再び凍りついた。

「なんだと?」 ニックが妹の腕を乱暴に掴む。

妹はきょとんとした顔で彼を見上げた。

「ニックがアルファを用意してあげれば、お姉ちゃんはどこにも行かないよ」

妹がこんなふうに私を貶めたのは、これが初めてではない。

妹はニックのことが好きだった。かつて自ら服を脱ぎ捨て、ならず者の狼に抱きつきながら、

助けを求めるときにはこう叫んだのだ。「お姉ちゃん、もうニックとは話さないから!許して!」と。

ニックの気を引くためのその行為は、彼が私を責めるようになってから、さらにエスカレートしていった。

ニックとの初夜でさえ、事が終わる前に裸で彼の腕の中に滑り込んできたこともあった。

私が怒ると、妹はすぐにひざまずいて罰しないでと懇願する。

そんな彼女の姿を見て、ニックは私が妹を虐待しているのだと思い込み、何度も私と口論になった。

妹のために、私を罰することさえあった。

妹にはとっくに失望しきっていたが、

それでも彼女の言葉は、私の心を鋭く抉った。

私は歯を食いしばり、妹に問いかける。

「……誰にそんなことを教わったの?」

しかし、妹が口を開くより先に、ニックの父親であるダグが私の頬を激しく張り飛ばした。

「この娘の知能は六歳児程度だぞ!嘘がつけるわけなかろうが!」

アンディも横から口を挟む。

「どうりで部族の薬が減るわけだ。お前がずっと、心の繋がりを阻害する薬を盗んでいたんだな!」

その言葉を聞いたニックは、全身から力が抜けたように秘書に支えられ、かろうじて立っているのがやっとだった。

彼が何かを言う前に、周りの者たちが一斉に私を非難し始める。

「こんな卑しいオメガに、ルナの資格はない!」

「ならず者を連れ込んで首領を裏切った売女だ!相応の罰を与えろ!」

一族の罵声を浴びる中、ニックはゆっくりと私の前にひざまずくと、赤く充血した目で私の喉を締め上げた。

「ティリー、俺がお前に触れることさえためらっていたというのに……お前は外で好き勝手に男と寝ていたのか?」

私は冷え切った目で彼を見つめ、嘲りを込めて言い放つ。

「ニック、あなたを見くびっていたわ。本当に頭の悪い、愚かな人ね!」

ニックは私を睨みつけ、氷のような声で言った。

「ああ、確かに愚か者だ。お前のような女に騙されていたのだからな」

「裏切りが好きだというのなら、その望みを叶えてやろう!」

そう言うと、彼は秘書に兵士を数人連れてくるよう命じた。

信じられない思いで、私は彼を見つめる。

「気でも狂ったの!? この者たちに私を触れさせるつもり?そんなことをしたら、絶対に許さないから!」

ニックの目は血走り、明らかに理性を失っていた。

彼は憎悪に満ちた目で私を値踏みするように見下す。

「お前がそれほど安っぽい女なら、相手がアルファだろうがベータだろうが、何も変わりはないだろう」

言うが早いか、彼は背後の兵士たちに命じた。

「やれ」

誰も彼を止めようとはしない。誰もが、ルナに裏切られた哀れなアルファだと同情しているのだ。

命令を聞いた数人の狼男が、獣のように私に飛びかかり、服を破り始めた。

必死に抵抗し、一人の男の手に噛みついて血を流させたが、それがかえって彼らを興奮させるだけだった。

私がもがいている間、妹とアンディが何やら言葉を交わしていた。

やがて妹が近づいてきて、私に跨るベータに指示を出す。

「違うよ。お姉ちゃんは、立ったまま真ん中に挟まれるのが好きなんだよ」

その言葉に、ニックの呼吸が荒くなる。

彼は私の耳元に拳を叩きつけ、殺さんばかりの視線で私を射抜いた。

「……妹の前で、そんな真似までしていたのか?」

折られた指の激痛に、意識が遠のきそうになる。

周囲の好奇と侮蔑に満ちた視線が、屈辱となって突き刺さる。

肌が空気に晒されるのを感じ、私は喉の奥から叫び声を上げた。

「私はライカンを統べる王の娘よ!私に指一本でも触れたら、ライカンがお前たちを皆殺しにするわ!」

私の上にいたベータが、その言葉を遮るように何度も平手打ちを食らわせる。

頭が割れるように痛む中、アンディの嘲笑が聞こえた。

「賭博狂いの父親がライカンだとでも?それとも、あの卑しい母親がか?」

ニックの友人たちも、腹を抱えて笑い出した。

「馬鹿馬鹿しい! ライカンに会ったことのある狼などいやしないのに、自分がその王の娘だと?」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、再び強烈な平手打ちが二度、私の頬を襲った。

今度は、ニックの手だった。

彼は冷酷な瞳で私を見下ろし、何かを決意したように告げる。

「契約は破棄しない。お前にも、俺と同じ苦しみを永遠に味わわせてやる」

そして、再び秘書に命じた。

「メディアを呼べ。明日のニュースを、こいつの写真で埋め尽くしてやれ」

無数のフラッシュが焚かれる中、私はすべての抵抗をやめ、絶望に身を委ねた。

最後の布切れが引き裂かれる、その瞬間――。何者かが、私に群がる狼たちを蹴り飛ばした。

「こいつに指一本でも触れてみろ!!」

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