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復讐の契りと、車椅子の君 の小説カバー

復讐の契りと、車椅子の君

安田真紗は長年、宮新隼人を一途に愛し続けていたが、結婚して三年の月日が流れた末に待っていたのは、亡き母の遺産を奪われ、夫に捨てられるという残酷な裏切りだった。隼人の心には常に「理想の初恋相手」が居座り、真紗の献身が報われることはなかった。絶望の淵で彼女の命を救ったのは、かつて真紗が隼人のために深く傷つけ、裏切ってしまった男・中村陽だった。三年ぶりに再会した中村は、かつての面影を残しながらも車椅子に座る姿へと変わっていた。もはや愛に溺れることをやめた真紗は、冷徹な決意を胸に彼へと取引を持ちかける。「中村会長、あなたの足を治す代わりに、私の復讐に手を貸してくれませんか?」利害の一致から始まった歪な協力関係。しかし、復讐のために心を捨てたはずの真紗に対し、中村はなぜか真っ直ぐな視線を向け続ける。亡き母の遺産を取り戻すための闘いと、車椅子の男が抱える秘められた想い。過去の因縁と未来への渇望が複雑に絡み合い、二人の感情は静かに、しかし激しく燃え上がっていく。これは、裏切りに沈んだ女と孤独な男が紡ぐ、再生と報復の物語である。
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海を渡る橋の上で

今まさに、二台の車が命を賭けて激しく追いすがっていた。まるで生きるか死ぬかのスリリングな映画のワンシーンのようだった。

安田真紗は、腹部を刺すような鋭い痛みに必死で耐えながら、ハンドルをぎゅっと握りしめた。そして、もう一度アクセルを思いきり踏み込む。

バックミラーに映る黒い車。――あの誘拐犯の車が、じわじわと彼女に追いついてきている。

すぐにも、ぶつけてこようとしているのがわかる。

三時間前、彼女と勝田成子は同時に誘拐された。安田真紗は全身全霊で逃げ道を切り開き、ようやく勝田を連れて脱出することができた。

だが予想に反し、相手は蛇のように執拗に彼女たちを追い詰めてくる。

助手席では勝田成子が恐怖に顔を強張らせていた。「真紗、もし私に何かあったら、宮新隼人は絶対に君を許さないから!」

安田真紗は氷のような視線を彼女に向ける。「黙って」

彼女はアクセルを踏み込みながら、頭の中で両車の距離を暗算していた。

「ドアを開けて、いつでも飛び降りられるようにして」

そう言いながら、自分の側のドアはすでに開けていた。

勝田は声を震わせた。「怖いよ……そんなの、無理……」

安田真紗の目が鋭く光る。「飛び降りなきゃ、死ぬだけよ!」

車はすでに橋の上にさしかかり、まもなくトンネルの入り口に入る。

「今よ、跳んで!」

そう言うなり、安田真紗はアクセルから足を離し、ためらうことなく車から飛び降りた。勝田成子もその指示に従う。

元々、極めて危険な場所だった。彼女たちの突然の行動に、後ろを追っていた車は反応しきれなかった。

「ドンッ!」

二台の車が、瞬時にして激しく衝突する。

安田真紗は地面を何度も転がり、ようやく止まった。

その身には、まるで全身の骨が砕けたかのような激痛が走っていた。

次の瞬間、車が突然爆発した。猛烈な火の波と衝撃が、再び安田真紗の体を吹き飛ばす。

彼女は胸元を必死に押さえ、喉に込み上げる鉄の味をどうにか抑え込んだ。

――そのとき、背後から突然、エンジン音が響く。

安田真紗は顔を上げ、その音の先を見た。希望と喜びが、その瞳にかすかに浮かぶ。

宮新隼人だった。

黒のスーツに身を包み、急ぎ足でこちらへ向かってくる。その顔には、彼女がこれまで一度も見たことのないほどの焦りが滲んでいた。

安田真紗は、よろめきながらも身を起こし、か細い声で言った。「…隼人…」

ふらつきながら、彼のもとへ歩み寄る。

――だが。

彼は彼女を一瞥すらせず、そのまま通り過ぎた。そして、勝田成子をしっかりと抱きしめた。

安田真紗の瞳孔がきゅっと縮まる。――やっぱり、こうなるのか。

心にざっくりと裂け目が入ったような痛みが走る。そこから冷たい風が容赦なく吹き抜けて、心まで凍えるようだった。

宮新隼人は、彼女の夫だったはずなのに――。

けれど、いつだって彼が最優先するのは、勝田成子なのだ。

彼女が命からがら助かったというのに、彼が駆け寄ったのは自分ではなく、勝田成子のほうだった。

宮新隼人の表情には、失ったものをようやく取り戻したような安堵と喜びがにじんでいた。そして、その目はただ一心に勝田成子を見つめている。

「成子、大丈夫か?」

勝田成子は涙で滲んだ瞳を震わせながら首を振り、か弱く彼の肩にもたれかかる。「…間に合ってよかった。もう少し遅れてたら、安田真紗に殺されてたかもしれない」

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