フォローする
共有
黄金カップルは今日、壊れた の小説カバー

黄金カップルは今日、壊れた

サッカー部のエース・仁科駆と、ダンス部の花形・藤崎花。中学時代から「学園の黄金カップル」として周囲の羨望を一身に浴びてきた二人は、誰もが同じ名門大学へ進学し、幸せな未来を歩むものだと信じて疑わなかった。しかし、駆にとって花の献身的な愛は、いつしか何をしても許される「安全ネット」へと成り下がっていた。転校生の水野百合が足首の捻挫を装って甘えると、駆は花の晴れ舞台であるダンス大会の決勝戦を欠席し、彼女を病院へ送ることを優先する。空席の客席を前に花が受け取ったのは、身勝手な謝罪の一言だけだった。駆は、これまでのように自分の不誠実も花なら受け入れると過信していたが、ついに彼が百合へ告白すると噂が広まる。友人たちは花がどれほど傷つき、泣き叫ぶかを面白半分に予想し、この残酷な破局劇を格好の娯楽として消費しようとしていた。長年築き上げた「完璧な関係」が音を立てて崩れ去るなか、二人の運命は決定的な瞬間を迎えようとしている。
共有

3

「うん」私はおとなしく毛布にくるまり、頷いた。

けれど、ついまた視線が運転に集中している彼へと向かう。

無表情なときの陸は、いつも冷たくて近寄りがたく見える。

学校では彼を好きな子がたくさんいたけど、誰も告白なんてできなかった。

彼は駆と同じ寮のルームメイトだった。

私はよく駆を訪ねてその寮へ行っていたけれど、行くたびに陸は私をうっとうしそうに見ていた。

そして今も、迎えに来てくれたのに、態度はやっぱり冷たいまま。

さっき車に押し込まれたときは、手加減なんて一切なくて——手首にはまだ赤い跡が残っているし、ひりひりと痛んでいた。

どう見ても、彼がずっと密かに私のことを想っていた、なんて信じられない。

私はそっとまつげを伏せた。

夢の中で見たことは、今のところ、すべて現実になっている。

でも——私が動き出したことで、少しずつ変わりはじめたこともある。

じゃあ、陸の気持ちも……変わってしまったのだろうか。

それとも、最初から私のことなんて、何とも思ってなかったのか。もしそうなら、私の行動は彼に迷惑をかけているだけじゃないか……。

「寮に戻るか?」

突然、陸が横目で私を見て、問いかけてきた。

私の心臓がどきりと跳ねた。気づけば、口をついて出た言葉は——

「うん、あなたの寮に戻る」

陸はハンドルを握ったまま、鼻で笑うように嗤った。「駆は今夜、戻ってこないぞ」

「知ってる」

私は毛布の端を握って、ぎゅっ、ぎゅっと指先に力を込めていく。

「別に、彼に会いたいわけじゃない」

次の瞬間、車が急ブレーキをかけて、路肩に停まった。

陸がこちらに振り返る。その瞳の奥にある冷たい霜のような色が、胸の奥をずしんと打った。

「花、俺をお前らの茶番に巻き込むな」

「ちがう、そんなつもりじゃ……」

彼は私をじっと見つめたまま、スマホを手に取った。

「タクシー呼んでやる。自分で帰れ」

「……陸」

私は唇をきつく噛みしめて、思わず彼のスマホを奪い取った。

「花」

彼は私を見つめたが、その目には怒りや嫌悪はなかった。

ただ、深く澄んだその瞳には、無数の感情が渦巻いていた。

私は突然、言葉にならない悲しさが溢れてきた。

「……陸、帰りたくない。寮に戻ったら、みんな笑うの」

「家にも帰れないの」

「ねえ……あなたの寮で、一晩だけ過ごさせてもらえない?」

私は彼のスマホを背中に隠しながら、声をだんだん小さくしていった。

「もちろん、もし本当に……私のことが嫌で、顔も見たくないって言うなら……いい。諦める」

その言葉が静かに落ちると同時に、涙がぽろり、と目から零れ落ちた。

ひと粒ずつ、静かに、音もなく。

陸は何も言わなかった。

だけど、彼は黙ってエンジンをかけ、車を再び走らせた。

向かったのは学校。そして車は、彼の寮の建物の前で止まった。

私は黙って陸について寮の中へ入った。

彼はクローゼットからきれいなスウェットを一着取り出して、私に差し出した。「風呂、あっち」

陸は背が高いから、渡されたスウェットは私にはぶかぶかで、膝まで届くその丈は、まるでワンピースみたいだった。

シャワーを浴びたあと、そのままスウェットを着て、素足のまま部屋に出る。

陸は私をちらりと一瞥したが、すぐに目をそらした。

私は駆のベッドの横を通り過ぎて、陸のベッドの端にそっと腰を下ろす。

濡れた髪の先から水滴が落ちて、シーツにしみをつくった。

私の体にふんわりと残る香りは、陸が使っているシャンプーとボディソープのものだった。

狭いこの空間に、彼と同じ匂いがほんのりと漂いはじめる。

それは、言葉にできないけれど、どこか曖昧で、静かに芽生えるなにかだった。

陸はタバコの箱を手に取り、軽く咳払いをして言った。「ちょっとタバコ吸ってくる」

そして、バルコニーへと出ていった。

私は少しだけ興味をそそられて、陸のベッドを見回す。

淡いグレーのシーツと布団は、きちんと整えられていて清潔そのもの。

机の上にはパソコンと数冊の本が置かれ、無駄のない整った印象だった。

なんとなく、彼の机の置物にも目を向けようとした、そのとき——

突然、携帯が鳴った。

画面に表示されていた名前は、仁科 駆だった。

続けて視聴する!
物語はいよいよ佳境へ!アプリに切り替えて続きを読む
全エピソードをロック解除
公式サイトを開く

おすすめの作品

嘲笑された妻の再出発 の小説カバー
8.4
結婚5周年という節目、高級レストランで夫を待ち続ける麻衣子の元に届いたのは、最悪の裏切りだった。夫が大学時代の憧れの女性と箱根の温泉で過ごす親密な姿がSNSに投稿されていたのだ。謝罪どころか「どうせ泣きついてくる」と見下す夫の音声。さらに追い打ちをかけるように、共通の友人たちが麻衣子を「楽器も弾けない無能な専業主婦」と嘲笑する動画まで送られてくる。その中で夫が放った「一人で生きる勇気などない」という冷酷な言葉が、彼女の心を完全に打ち砕いた。かつてオーケストラへの道を捨て、全てを捧げて尽くしてきた愛が、単なる思い込みに過ぎなかったと悟った麻衣子。絶望の淵で彼女は静かに離婚届に署名をし、夫の数々の悪行を記録したUSBメモリをテーブルに残して去る決意をする。それは自分を侮辱し、踏みにじった者たちへ贈る、彼女からの最後で最大の報復だった。全てを失った元演奏家の、誇りを取り戻すための再出発が今、幕を開ける。
アルファが誤って私を拒絶した の小説カバー
7.8
アルファである玲央の「運命の番」として過ごした三年間、私は常に孤独だった。彼の心は別の女性、一条薔薇に占められており、私は彼女が迎え入れられるまでの仮初めの存在に過ぎなかったのだ。ある夜、死の淵に立つ父を救うため、私は約束されていた薬を届けてほしいと玲央に懇願した。しかし、薔薇と共にいた彼は「くだらないことで煩わせるな」と吐き捨て、番の精神的繋がりを一方的に断ち切った。さらに薔薇の策略によって父の治癒師たちも奪われ、玲央が彼女と婚礼の準備に勤しむ裏で、父は帰らぬ人となった。最愛の父の命を軽んじ、間接的に死へと追いやった玲央への絶望。だが、彼はまだ気づいていない。数日前、彼が薔薇との電話に夢中になっている隙に、私はある書類を忍ばせていた。中身も確認せず彼が署名したその紙は、魂の絆を永遠に解消する「離縁の儀」の誓約書だったのだ。自らの手で番の関係を終わらせたとも知らず、彼は今も残酷な執着を続けている。
彼の裏切りに消えた妻、復讐は百倍返しで の小説カバー
8.1
裏社会に君臨する男は、財閥の令嬢を十年もの間、密かに想い続けてきた。彼女の生家が破綻した日、男はついに彼女を妻として迎え入れる。結婚生活が始まると、彼は至れり尽くせりの献身で彼女を甘やかし、彼女もまた自分が最高の幸福の中にいると信じて疑わなかった。しかし、結婚五年目に予期せぬ妊娠が判明したことで、平穏な日常は崩壊する。慈愛に満ちていたはずの夫は、冷酷にも子供を諦めるよう迫ったのだ。その裏には、別の女性の存在があった。偶然にも夫の不貞を知った彼女は、さらに衝撃的な真実に直面する。実家の破産も最愛の両親の死も、すべては彼が仕組んだ残酷な罠だったのだ。絶望の淵に立たされた彼女は、国外に潜む夫の宿敵と結託し、自らの死を偽装して姿を消す。愛する妻を失ったと信じ込み、男は涙ながらに再会を乞うが、もはや後悔しても遅すぎる。彼女が受けた底知れぬ苦しみと裏切りの代償は、これから何倍もの復讐劇となって彼に突きつけられることになる。
サレ妻の逆襲:夫の愛人の父と再婚しました の小説カバー
9.2
実の母親が毒蛇に噛まれるという悲劇に見舞われた主人公。その蛇の飼い主は、夫であるニコ・ロッシがかつてから想いを寄せていた女性、ジェニファー・ウォーカーだった。動転した主人公は、藁にもすがる思いでニコに電話をかけ、母の命が危険な状態であることを訴えて助けを求める。しかし、ハワイでジェニファーとのバカンスを謳歌していたニコは、精神的に不安定な彼女を優先すべきだと言い放ち、妻の切実な願いを冷酷に切り捨てて電話を切ってしまう。最愛の夫に裏切られ、あまりの無慈悲さに絶望の淵へと突き落とされた彼女。そんな極限状態のなか、目の前に一人の男が立ちはだかる。それは、ジェニファーの父親であり、裏社会で残忍かつ冷酷なマフィアのボスとして恐れられているサミュエル・ウォーカーだった。行き場を失った彼女は、唯一の希望としてこの男の裾にすがりつく。不実な夫への復讐と、マフィアの首領との予期せぬ関係がここから動き出す。愛と裏切りが交錯する、衝撃のリベンジ・ロマンスが幕を開ける。
クズ大統領に捨てられた瞬間、世界最強のシスコン王族に溺愛されました の小説カバー
8.5
結婚から3年、安田和希は良妻として尽くしたが、夫の長谷川景行から突きつけられたのは非情な離婚届だった。家柄を蔑む夫、不妊を責める姑、そして身ごもった姿で現れた宿敵。耐え忍ぶ日々に別れを告げた和希だったが、離婚した瞬間に彼女の運命は劇変する。実は彼女、高貴な血を引く王族の令嬢だったのだ。王宮へ帰還した和希を待っていたのは、次期女王の座と、規格外な力を持つ3人の兄たちによる過剰なまでの溺愛だった。武器商人の長兄は無限の富を与え、天才外科医の次兄は彼女を傷つけた者に制裁を誓い、アクションスターの三兄は元夫の元へ殴り込みをかける。一方、和希を失って初めてその価値に気づいた元夫は、必死に復縁を乞うがもはや手遅れ。「これからは私を女王陛下と呼びなさい」と突き放す彼女の傍らには、王室が選んだ完璧な王配が控えていた。どん底の離婚劇から一転、最強の家族に守られながら、元夫を後悔の淵に突き落とす華麗なる逆転劇が今、幕を開ける。
彼の嘘と愛に消された の小説カバー
9.0
夫・尊の成功を信じ、MBA取得の支援から起業資金のための遺品売却まで、10年間すべてを捧げてきた亜利沙。しかし、会社の株式公開を目前に控えた尊から突きつけられたのは、17回目となる離婚届だった。ビジネス上の体裁だと嘘をつく彼は、テレビ番組で投資家の姫川玲奈を「最愛の人」と呼び、献身的に支えた亜利沙の存在を世間から抹消する。尊の冷酷さは加速し、見知らぬ女として突き放すだけでなく、重度の閉所恐怖症である彼女を暗い地下室に監禁し、精神的に追い詰めていく。決定的な破滅は誘拐事件で訪れた。犯人から玲奈か亜利沙かの選択を迫られた尊は、躊躇なく玲奈を救い、椅子に縛られたままの妻を拷問の場に置き去りにしたのだ。心身ともに破壊され、絶望の淵に立たされた亜利沙は、5年間絶っていた連絡をついに再開する。電話の相手は、ニューヨークで畏怖される敏腕弁護士、英玲奈。最強の味方を得た彼女は、プライベートジェットで迎えに来るという叔母の言葉を背に、自分を裏切り踏みにじった者たちへの反撃を開始する。