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愛なき結婚の果て の小説カバー

愛なき結婚の果て

結婚して3年、老舗和菓子屋の女将として尽くしてきた私を待っていたのは、夫・浩太の残酷な裏切りだった。彼は私の存在を軽視する一方で、初恋の相手である沢井真子のために心血を注いで新作菓子を作り上げていたのだ。彼にとって自分は無価値なのだと悟った私は、夫の不注意を突き、密かに離婚届へ署名させることに成功する。しかし、提出直後に私は不運にも交通事故に遭ってしまう。生死の境を彷徨い病院で目覚めた時、夫からの連絡は一切なかった。彼はその夜も、離婚直後で情緒不安定な真子の元へ駆けつけ、彼女を優しく抱きしめていたのだ。SNSに投稿された二人の親密な姿を目にした瞬間、私の中で何かが決壊した。3年間の献身も愛情も、すべては虚像に過ぎなかった。この男にとって自分は何だったのか。やがて浩太が妻の失踪と、すでに離婚が成立している事実に気づいたとき、彼は取り返しのつかない喪失を味わうことになるだろう。だが、後悔してももう遅い。私の静かなる復讐劇は、まだ幕を開けたばかりなのだから。
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榊原春菜 POV:

私のパソコンが故障した. 急ぎの書類があったため, 私は浩太の書斎に足を踏み入れた.

「浩太さん, パソコン借りてもいいですか? 」

私の問いかけに, 浩太は顔を上げることなく,

「ああ, 使え. 」

とだけ答えた.

彼のパソコンを開くと, メールの通知が目に飛び込んできた. 差出人は「沢井真子」. 思わずクリックしてしまった.

そこには, 真子の友人からのメールが届いていた.

「真子, 来月のホームパーティー, 浩太くんも誘うんだよね? みんなで会えるの楽しみにしてるよ! 」

私の手は震えていた. ホームパーティー. 浩太は私に, そんな話は一切していなかった.

この結婚は, 戸田屋の跡継ぎ問題と, 浩太が真子に失恋した傷を癒すために, 秘密裏に進められたものだった. 公には, 私たちはまだ結婚していることを発表していない. 彼の家族以外, 誰も知らない, 私と浩太の結婚.

浩太は, 私との結婚を公表するつもりはないのだろうか. いや, きっとそうだろう. 彼は, 私との結婚を, 真子に知られたくないのだ.

私は, 彼がいつか私を選んでくれると信じていた. しかし, それはただの幻想だった.

「春菜, どうしたんだ. 顔色が悪いぞ. 」

不意に, 浩太の声が聞こえた. 私は慌ててメールを閉じ, 平静を装って笑顔を作った.

「ええ, 大丈夫よ. 少し疲れていただけ. 」

私はそう答えた. 浩太は私の顔をじっと見つめていた. 彼の視線が, 私を貫く.

「そうか. 無理はするな. 」

彼の言葉は, 私にとってはもう何も響かなかった.

「浩太さん, 来月のホームパーティー, 私も一緒に行ってもいいかな? 」

私は震える声で尋ねた. 浩太は一瞬, 言葉に詰まった. その沈黙が, 私の心に深く突き刺さる.

「... いや, あれは, 男だけの集まりだから. 」

彼の言葉は, 私を拒絶していた.

「そう. 分かったわ. 」

私は無理に笑顔を作った. 心の中では, もう二度と彼に期待しないと誓った.

浩太は, 真子とのパーティーへと出かけて行った. 私は一人, 部屋に残された.

彼の同僚が, 浩太に真子のことを詰問している声が聞こえる.

「浩太, お前, 真子ちゃんのことどう思ってるんだよ! ? 」

「俺は... 」

浩太の声が, 途切れた.

「真子ちゃんは, お前のこと, ずっと待ってるんだぞ! 」

同僚の声が, さらに感情的になる.

浩太は, 沈黙していた. その沈黙が, 私を深く絶望させた.

真子から, 浩太に連絡が入る.

「浩太くん, 今どこ? 早く来てよ! 」

真子の声は, 懇願するように響いた.

浩太は, 迷うことなく, 真子の元へと駆けつけた.

彼は, 私を選ばなかった. いや, 最初から, 私を選ぶつもりなどなかったのだ.

私は自分の愚かさを自嘲した. それでも, 私は彼を愛していた. 彼の愛を, いつか手に入れられると信じていた.

しかし, もう無理だ. 私の心は, 完全に壊れてしまった.

私は, もう一度離婚届を取り出した. 彼の署名された文字が, 私を嘲笑っているように見えた.

私は立ち上がり, クローゼットを開けた. そこには, 浩太との思い出の品々がしまわれている. 私はそれらを一つ一つ, 丁寧に箱に詰めていった.

「春菜, 何してるんだ? 」

不意に, 浩太の声が聞こえた. 彼はいつの間にか帰ってきていた.

「ああ, 少し模様替えでもしようかと思って. 」

私は平静を装って答えた. 彼は私の手元を見て,

「まさか, 勝手に捨ててないだろうな. 」

そう言った.

「私が捨てたのは, もう必要ないものだけよ. 」

私は淡々と答えた. 彼は気にする様子もなく,

「そうか. 」

とだけ言い, シャワーを浴びに向かった.

私が箱に詰めたのは, 彼が私にくれた, もう二度と使うことのないものばかりだった.

私の心はもう, 何も感じない. 彼の無関心も, 彼の初恋に対する執着も.

私は, もう過去の榊原春菜ではない. あの頃の自分は, 彼の全てを受け入れた. しかし, 今の私は違う. 私は, 私自身の幸せを掴むために, この結婚に終止符を打つことを決意したのだ.

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