
十世の恋は血に染まりて
章 3
玄淵は、しばし我を九洲の地に留め置いた。
彼が我のために、新たな肉体を練り上げたのだ。
本来ならば、天命に逆らい、新たな生を得る手助けもできると彼は言った。
だが、二度目の生など望まぬ。この手で葉黎初を屠ること、それこそが我が望み。
この世で、必ず。
九洲の霊気は人を育む。玄淵が我が魔識を拓いたことで、我は、一体の最下級の魔と成り果てた。
彼は言った。「魔となり、世に唾棄される存在となる。そなた、それに甘んじられるか?」
我は静かに双眸を開く。傍らには、かの神剣が横たわっていた。その剣を手に取ると、剣身が共鳴するように、低く嗡り始めた。
今の我は最下級の魔。本来、この神剣を佩く資格などない。
されど、我が執念の深さが故か、神剣は我を主と認めた。
我は冷ややかに言い放つ。「魔が何だ。神が何だという」
「世の者は誰もが神を望むが、その神々は我らを螻蟻と見下し、卑しき者と蔑む」
天を仰ぎ、我は続ける。「ならば見てやろうではないか。九重天に座す神々とやらが、何を以て傲るのかを」
玄淵の瞳は、底の窺えぬ純然たる闇。抗えぬ引力を秘めていた。
「涼歌よ、神が傲慢なのは当然のこと」
言うが早いか、彼が衣の袖を払うと、眼前の光景が逆巻き、玄淵と葉黎初が相争う様へと変じた。
「千年前、我は魔であるという、ただそれだけの理由で奴に命を狙われた」
「だが、奴の腕では我に及ばず、不意打ちという卑劣な手に頼るしかなかったのだ」
幻影の中、葉黎初は玄淵に完全に圧され、その方天画戟は捻じ曲げられていた。まさに命尽きようとした、その刹那――。
突如、いずこからか白衣の女が駆けつけ、手にした剣で玄淵へと斬りかかった。
その剣が放つ白光は、まさしく今、我が手にある神剣のものだった。
二人がかりの猛攻を受け、玄淵は劣勢に立たされ、ついに葉黎初によって封印され、胸を剣で貫かれた。
「憐れなことよ。そのような卑劣な手段を弄しても、奴らは我を滅することはできず、封じるのがやっとであった」
玄淵が再び袖を払うと、三人の姿は掻き消え、すべては現へと戻った。
彼は静かに語り始める。「その神剣の名は落月。魔界の剣だ」
「そして、あの剣を手にしていた女は月嬋《げっせん》。神界における葉黎初の情人よ」
そう言うと、彼は胸の奥からくぐもった笑い声を漏らした。
「己を気高いと偽り、魔界を見下しながら、その実、魔界の剣を奪い、我が物としていたとはな」
「落月剣は、怨念が極めて深き者でなければ扱えぬ。永きにわたり、この神剣が主を認めることはなかった」
彼はそっと、我が髪に触れた。「どうやら、そなたこそが真の縁者であったらしい」
我はすっと眉を上げ、落月の剣身を撫でる。その冷たい感触が、もはや手放しがたい。
「ならば、この神剣にふさわしき使い手となるべく、修練に励むとしよう」
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