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視力と命を奪われた妻の復讐 の小説カバー

視力と命を奪われた妻の復讐

夫である潤治の身代わりとなり、事故で視力のほとんどを失った私。不自由な体になっても夫への愛を信じていたが、現実はあまりに残酷だった。彼は秘書の栞音と不倫関係にあり、私の視力を「濁った目」と嘲笑っていたのだ。裏切りを知り離婚を決意した矢先、私の中に新しい命が宿っていることが判明する。しかし、その小さな希望さえも、逆上した栞音によって階段から突き落とされ、無残に奪われてしまった。愛する夫の裏切り、そして最愛の我が子の死。すべてを失った私の心に宿ったのは、二人に対する底知れない憎悪だけだった。形だけの謝罪を繰り返す潤治と、私の幸せを蹂躙した栞音。地獄の底に突き落とされた女の絶望は、やがて冷徹な殺意へと変わっていく。あなたたちが手にした地位も名誉も幸福も、そのすべてをこの手で徹底的に叩き潰してやる。人生のすべてを懸けて挑む、孤独で壮絶な復讐劇が幕を開ける。もう二度と、あの頃のような慈悲など持ち合わせてはいない。
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奈津美 POV:

胸の痛みが全身に広がり, 視界がぼやけていく. 次の瞬間, 私は意識を失った.

次に目覚めた時, 目に飛び込んできたのは刺すような病院の照明だった. 鼻腔を突く消毒液の匂いが, 私がどこにいるかを教えてくれる.

「奈津美, 目が覚めたのね! 」千春の声が聞こえた.

千春は私の唯一の親友だ. 彼女は優しく私の体を起こしてくれた.

「気分はどう? どこか痛いところはない? 」彼女の声には, 心配と同時に, どこか戸惑いのようなものが含まれていた.

私はその違和感に気づき, 問いかけた. 「私に何があったの? 」

千春は複雑な表情で私を見つめ, 深くため息をついた.

「奈津美…あなたは, 妊娠しているわ」

その言葉は, 雷に打たれたような衝撃だった. 妊娠? 不妊治療を何年も続けて, 諦めかけていたのに. この皮肉な運命に, 私はただ呆然とするしかなかった.

「潤治と, 何があったの? 」千春が, 私の言葉を待つように見つめた.

「道で倒れているあなたを見つけて, 病院に運んだのよ」千春が続けた.

私はぼんやりと, 昨夜の出来事を思い出す. 潤治の裏切り, 彼の残酷な言葉, 栞音との情事.

「潤治が, 浮気をしていたの」私は掠れた声で告げた.

千春は, 怒りに震えながら立ち上がった. 「あの男, なんてことを! 許さない! 私が潤治を…」

私は千春の手を強く掴んだ. 「もう, あの男とは関わりたくない」

家に帰りたかった. 潤治の家だが, そこには私の荷物がある.

あの家に残された荷物を引き取り, この関係を完全に清算する. そして, この子を産むことはできない.

千春に時計を見てもらう. 潤治はまだ会社にいるはずだった. 私は荷物をまとめ, この家を出ていくつもりだった.

千春と一緒に, 家に帰った. しかし, 家の中は私が最後に見た時よりもきれいに片付いていた.

潤治がこの家を私たちの新婚の家として選んだ時, 彼は「奈津美, 君を世界一幸せにする」と誓った. あの言葉は, 今となっては空虚な響きでしかない.

私は茫然と, 見慣れたリビングを見回した.

突然, 長い悲鳴が聞こえた. それは, 二階の寝室からだ. 歓喜と苦痛が混じり合ったような, 聞き覚えのある声.

心臓の音が, 耳元ではっきりと聞こえる. それは徐々に加速し, 私の胸の中で何かが爆発したかのように広がった. 恐怖が, 全身を硬直させる.

私は震える足で, 一歩一歩階段を上った.

寝室のドアを開けると, そこには二つの馴染み深い人影があった. 栞音が潤治に甘えた声で囁くのが聞こえる. 「ねえ, 私とあの奥さん, どっちがいい? 」

天井の照明が点滅し, 潤治の顔を照らした. その顔には, 欲望が露わになっていた. 栞音が彼の腰に跨り, 何度も彼の唇にキスをしていた.

それは, 地獄絵図だった. 胃がひどく不快感を覚え, 吐き気を催す. 私は必死でそれをこらえた.

潤治は, 私がそこにいることすら気づいていないようだった. 彼は栞音の髪を優しく撫で, 満足げな笑みを浮かべている. その顔に, 罪悪感の影は見当たらない.

「俺は, 君だけがいればいい」潤治は掠れた声で, 栞音に囁いた.

その言葉は, 私の心を完全に打ち砕いた. 私の希望も, 愛も, 思い出も, すべてが灰となり, 燃え尽きた. 残ったのは, 燃え盛る憎悪と, 無限の絶望だけだった.

栞音が私に気づき, 得意げな笑みを浮かべた. その目には, 憐憫と嘲笑が宿っている.

「あら, 奥さん. こんなところで何してるんですか? 」栞音の声は, 私をさらに深く傷つけた.

「潤治さんは, 私に夢中なのよ. あなたなんか, もう邪魔なだけ」

その言葉は, ガラスの破片のように私の耳膜を突き刺した. 私は震える唇を固く噛み締め, 怒りの炎が目に宿る.

涙はもう枯れ果てていた. 残っているのは, ただ純粋な怒りだけだ.

私はゆっくりと, ドアの枠に身を預けた. 冷めた眼差しで, その二人を見つめる. 私の心は, 本当に死んでしまったようだった.

「随分と, ご盛況ね」私の声は, ひどく乾いていた.

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