
あなたとではない、私の結婚式
章 3
霧島 怜奈 POV:
結婚式前の週末を過ごすはずだった沖縄へのフライトは、凍てつくような沈黙に包まれていた。私は窓際に座り、ノイズキャンセリングヘッドホンをつけて、果てしなく広がる雲をただ見つめていた。それは、隣に座る男に対する、目に見える障壁であり、盾だった。
櫂は落ち着きがなかった。座席で身じろぎし、肘掛けを指で叩き、ほとんど滑稽なくらい不安げな表情で、何度も私をちらりと見た。彼は私の許しと、最終的な降伏に慣れきっていた。私の沈黙は彼が理解できない言語であり、それが彼を苛立たせていた。
「いい天気だな、上は」彼は少し大きすぎる声で話しかけてきた。
私は動かなかった。
彼は咳払いをした。「客室乗務員が言ってたけど、定刻に着陸するらしい。遅れはないって」
私は視線を水平線に固定したまま、流れてもいない音楽のせいで聞こえないふりをした。
「怜奈」彼の声は苛立ちで鋭くなった。彼は手を伸ばし、私の耳からヘッドホンを一つ引き抜いた。「聞いてるのか?」
私はゆっくりと彼の方を向いた。私の表情は、何の感情も映さない壁だった。「聞こえてるわ」
彼は私の冷たく、死んだような声のトーンにたじろぎ、びくりとした。彼は座席に深く沈み込み、首筋が赤く染まっていく。「わかったよ。好きにしろ」
私たちが再び口を開いたのは、タクシーに乗り、信じられないほどお洒落な南部のビーチエリアに向かっている時だった。この週末のすべては彼の演出であり、私はただ出席することを期待されているだけの観客だった。
「それで」その言葉が、張り詰めた静寂を切り裂いた。「結婚式の計画は、すべて最終決定したの?」
それはテストだった。最後の最後に、彼が告白するかもしれないという、最後の、揺らめく希望。私たちが築き上げるはずだった人生に対して、彼が一片でも敬意を示すかもしれないという、淡い期待。
彼は私の目を避け、無理に明るい笑顔を作った。「すべて手配済みだよ。こういうことは、君の判断を信頼してるって知ってるだろ、ハニー。君は建築家で、マスタープランナーなんだから」
その嘘はあまりにも見え透いていて、あまりにも侮辱的で、息が詰まった。彼は、自分が密かに解体した計画、私から盗んだ結婚式の手柄を、私に帰しているのだ。私が惜しみなく与えた信頼は、武器として使われた。彼が私の公然の屈辱を準備している間、私の服従を確実にするための道具として。
私の手は、膝の上で固く握りしめられた。冷たく、硬い決意が骨の髄まで染み渡り、私の心のひび割れを固めていった。これを終わらせなければならない。
彼は私の内面の変化を感じ取ったのだろう、不安の影が彼の顔をよぎった。彼は私が会場の変更を知ったと思ったのかもしれない。おそらく彼はすでに言い訳を練習し、後で大げさで空虚なジェスチャーでどうやって事を丸く収めるかを計画しているのだろう。私が、そんなことのはるか先に行ってしまったことなど、彼は知る由もなかった。
最初の目的地は、高級ケーキの試食ブティックだった。空気は砂糖とバタークリームの香りで満ちていた。部屋の中央の台座には、見本のケーキが飾られていた。白いフォンダンと、繊細な手作りのシュガーフラワーの見事な作品。軽井沢の白樺の花。私の胃がねじれた。
シャンパン風味のケーキの試食を口に運ぼうとしたその時、聞き覚えのある、甘ったるい声が空気を切り裂いた。
「櫂! 怜奈さん! すごい偶然!」
振り返る必要もなかった。愛理の声は、今や私の悪夢の定番となっていた。彼女は、ベテラン女優のような手際の良さで驚いたふりをしながら、こちらに婀娜っぽく歩いてきた。
「ちょうどこの辺にいたの! 櫂、覚えてる? あのギャラリーオープンの後、ここに来たこと。ここのレッドベルベットケーキ、死ぬほど美味しいって言ってたじゃない」
私の手は、空中で凍りついた。また一つ、秘密の逢瀬。また一つ、彼らの隠された生活のかけらが、私の人生の真ん中に、手榴弾のように無造作に投げ込まれた。
「怜奈さん、ハニー、パッショングアバを試さなきゃ」愛理は私の硬直した態度を完全に無視して、甲高い声で言った。「ビーチウェディングには最高よ」
私は手を引っ込め、フォークを置いた。「結構です」
「あら、遠慮しないで」彼女はそう言って、さらに一歩近づいてきた。
私は意図的に一歩後ろに下がった。「もう、決めましたから」
愛理の笑顔が揺らいだ。彼女は胸に手を当て、目にワニの涙を浮かべた。「あら…ごめんなさい。ただ、手伝いたかっただけなの。私…帰るわ」
彼女が一歩も踏み出す前に、櫂の腕が伸び、その手が彼女の手首を掴んだ。「馬鹿なこと言うなよ、愛理。どこにも行かせない」
彼は私の方を向き、その目は硬かった。「どうしたんだ、怜奈? 彼女はただ提案してくれただけじゃないか」
そして、まるで最後の一撃を加えるかのように、彼は付け加えた。「それに、彼女がいることに慣れておいた方がいい。言い忘れてた。彼女に、ブライズメイドをお願いしたんだ」
世界が傾いた。ブライズメイド。私の結婚式で。私の幸せを、私の未来を、組織的に破壊した女が、私の隣に立って、私が彼女から盗まれた男に人生を誓うのを見届けるというのか。彼は私に尋ねなかった。ただ、決めたのだ。いつものように。
「ブライズメイド」私は繰り返した。その言葉は灰のような味がした。
「素晴らしいアイデアね」私は、不気味なほど穏やかな声で言った。
櫂と愛理は、私のあっさりとした同意に驚いて、二人とも私をじっと見つめた。
愛理は、いつものように女優として、その役を演じた。「ああ、櫂、でも、やりすぎじゃないかしら。私、邪魔したくないの…」彼女は彼に寄りかかり、その手は彼の胸の上でひらひらと動いた。
櫂の腕は、所有欲をむき出しにして彼女をきつく抱きしめた。彼は彼女の額にキスをした。その仕草はあまりにも親密で、公然としていて、私は物理的に吐き気を催した。
「馬鹿なこと言うなよ」彼は彼女に囁き、そして私を睨みつけた。「ほらな、怜奈? そんなに難しいことじゃなかっただろ? 最近のお前は、機嫌が悪くて、本当に扱いにくい。疲れるよ」
愛理は彼の腕を撫でた。「しーっ、ダーリン。怒らないで。彼女、ただのマリッジブルーよ」
「マリッジブルー以上だ」櫂はついに我慢の限界に達し、声を荒げた。「もううんざりだ。お前の繊細な感情に気を遣って、腫れ物に触るように接するのはもう疲れた」彼は軽蔑の表情で顔を歪め、大げさに身振りをした。「いつになったら、そのことを手放すんだ? 分かったよ、お前は俺を救った。だからって、いつまでも悲劇のヒロインを演じ続ける必要はないだろ!」
沈黙。馬鹿みたいに陽気な小さな店に、重く、息苦しい沈黙が落ちた。
世界の輪郭が白く霞んでいく。私の犠牲。私の痛み。私の感覚の、永久的な変化。彼にとって、それは私が使うただのカードだった。一つの役柄。悲劇のヒロイン。
彼が私の痛みを何度も無視したことを思い出した。私が恐ろしい盲点とともに目覚めた日、緊急の神経眼科の予約に私を連れて行くことよりも、愛理の犬をトリミングサロンから引き取ることを優先した日。私は一人で、恐怖に震えながらタクシーに乗らなければならなかった。彼は私たちの五年目の記念日、本当の記念日である事故の日を忘れていたが、愛理の半年の誕生日には豪華なサプライズパーティーを開いた。
私は、本当に、本当に疲れていた。骨の髄まで染み渡るほどの、深い疲労感が私を押しつぶしていた。私はすでに死んでいる愛のために戦い、死体を蘇生させようとしていたのだ。
もう、手放す時だ。
私は一言も言わずに振り返り、店を出た。彼らを、彼らの毒々しい小さな世界の中に、絡み合ったまま置き去りにして。
櫂は、私が出て行くのを見て、呆然と立ち尽くしていた。そして、彼は店のオーナーの方を向き、無理に笑いを作った。「女って、大変ですよね? 結婚式前のナーバスなやつですよ」
彼は愛理の肩に腕を回したまま、彼女をさらに引き寄せ、その唇は彼女の髪に触れた。私が歩き去る時、店の窓に映るそのすべてが見えた。
手の中のスマホが震えた。櫂からの、長くてとりとめのないメッセージが表示された。
怜奈、戻ってこい。馬鹿げてる。きつく言い過ぎたなら謝る。でも、俺がどれだけのプレッシャーにさらされているか、理解してくれ。俺は人生で最も重要な二人の女性を、なんとかうまくやろうと努力してるんだ。君は、穏やかで、支えになる方でいてくれなきゃ困る。頼むから、俺の妻になるんだ。妻らしく振る舞ってくれ。
私は歩くのをやめた。メッセージをもう一度読んだ。その言葉は、彼の自己中心的でナルシストな世界観の完璧な結晶だった。
俺は人生で最も重要な二人の女性を、なんとかうまくやろうと努力してるんだ。
ゆっくりとした、冷たい笑みが私の顔に広がった。
あなたの負担を軽くしてあげるわ、櫂。私は思った。方程式から、女性の一人を消してあげる。
私はメッセージを削除し、歩き続けた。奇妙なほどの軽やかさが、胸に満ちていく。五年ぶりに、私は彼から歩き去っていた。そして、私は、絶対的な確信を持って知っていた。二度と、戻ることはないと。
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