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凍える山に消えた私の愛 の小説カバー

凍える山に消えた私の愛

極寒の冬山で、私は婚約者の真弘と彼の愛人である綾に裏切られ、崖から突き落とされた。頼みの綱である最新鋭の防寒具やGPSは細工されたかのように故障し、私はお腹に宿した新しい命と共に、冷たい雪の中で息絶えた。しかし、肉体が滅んでも私の魂はその場に留まり、二人の醜悪な本性を目撃することになる。救助を待つふりをしながら、私の死を「迷惑だ」と吐き捨てる真弘。悲劇のヒロインを演じつつ、裏でほくそ笑む綾。かつて私が絶望から救い、心から愛した男にとって、私と我が子の命はその程度の価値しかなかったのか。怒りと悲しみに震える幽霊の私が見守る中、事態は思わぬ方向へ動き出す。私が死の間際に必死で掴み取った決定的な「証拠」の存在。そして、異変に気づいた私の母と真弘の姉が、この偽装工作の裏に隠された真実を暴くために動き始めたのだ。愛する者に殺された女の執念が、逃げ場のない地獄へと二人を追い詰めていく。これは、雪山に消えた命が巻き起こす、凄惨な復讐劇の幕開けである。
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倉田恵美 POV:

「お前は, 俺の邪魔をするな! 」

真弘は, そう叫びながら, 私の腕を強く掴んだ. 彼の目には, 怒りの炎が燃え上がっていた. 私は, 彼の腕を振り払おうとしたが, 彼の力には敵わなかった.

真弘は, 私を突き飛ばした. 私の体は, コントロールを失い, 近くにあった鋭利な角に激しく打ち付けられた. 激痛が全身を貫き, 視界が真っ白になった. 今でも, その時の傷跡は私の腕に残っている. 彼が私を傷つけた証拠だ.

「二度と, 俺の邪魔をするな. さもなければ, 次はどうなるか分からないぞ」

真弘は, 冷たい声で私に警告した. 彼の目には, 何の反省の色もなかった. 彼は, 私を傷つけたことに何の罪悪感も抱いていないようだった.

あの時, 私は愚かにも, 自分が悪いのだと思ってしまった. 私が真弘を怒らせたから, 彼が私を傷つけたのだと. 私は, 彼に嫌われたくなくて, 彼に愛されたくて, 自分を責め続けていた.

だが, 今なら分かる. 愛は, そんなものではない. 愛は, 相手を傷つけるものではない. ただ, 愛があるか, ないか. それだけなのだ. 真弘には, 私への愛がなかった. ただそれだけだった.

私の愛は, 一方的なものだった. 私が彼に与えるばかりで, 彼は私から何も受け取ろうとはしなかった. 私は, 彼にとって, ただの都合の良い存在だったのだろう. そして, 私はその中で, 完全に敗北したのだ.

突然, ゴォォォォォォォォォォォォ!  という耳をつんざくような激しい爆発音が, 私の耳に響いた. 私は, あまりの音の大きさに, 思わず耳を塞いだ. 何が起こったのか, 理解できなかった.

私は, 恐怖で叫び声を上げた. 何が起こったのか分からず, ただ空を見上げた. そこには, 信じられない光景が広がっていた.

私たちの乗っていた熱気球が, 炎に包まれていた. 火の手は, あっという間に全体を覆い尽くし, 真っ赤な炎が空に舞い上がっていく. 熱気球は, 燃え盛る炎の中で, みるみるうちに高度を下げていった.

「真弘!  熱気球が燃えてる!  助けて! 」

私は, 必死に真弘に電話をかけた. もう, 彼しか頼る者がいなかった.

「恵美, また何か言ってるのか?  俺は今, 忙しいんだ. お前が燃やしたとでも言いたいのか? 」

真弘は, 私の言葉を遮るように言った. 彼は, 私の言葉を信じようとしなかった. いや, 彼は聞こうともしなかった.

「違うの!  本当に燃えてるの!  早く来て! 」

私は, 必死で真実を伝えようとした. だが, 真弘は私の言葉を信じようとしなかった. 彼は, 私を信じるよりも, 綾を信じる方を選んだ.

「綾が今, 体調を崩して病院にいるんだ. お前なんかに構ってる暇はない」

真弘は, そう言い放つと, 一方的に電話を切った. 私の心は, 絶望の淵に突き落とされた.

私と真弘の関係は, 常に彼が主導権を握っていた. 私は, 彼の言葉に逆らうことはできなかった. 彼の言葉は, 私にとって絶対だった. だが, もう, そんな時代は終わったのだ.

その時, 私の携帯電話に再び通知が来た. 綾からのSNS投稿だ.

綾は, 真弘と一緒に, 高空飛行を楽しんでいる写真を投稿していた. 彼らは, 病院にいるはずの綾が, どうしてこんなことを?  私の心は, 激しく動揺した.

綾の投稿には, 真弘と二人で楽しそうに笑っている動画も添えられていた. 彼らは, 病院にいるはずなのに, まるで何も起こっていないかのように, 楽しそうに笑っていた. 私の心は, 絶望に打ちひしがれた.

動画を最後まで見る前に, 炎が私のすぐ傍まで迫っていた. 熱気が, 私の肌を焼く. 私は, 焼死するか, それともこのまま落下して死ぬか, どちらかを選ばなければならなかった.

私は, お腹をそっと撫でた. 涙が, 視界を覆い尽くす. この子だけは, 私と同じ運命を辿らせたくなかった.

「ごめんね, 赤ちゃん. ママは, もうどうすることもできないの」

私は, 震える声でそう告げた. 私の心は, 悲しみでいっぱいだった.

私は, 真弘に最後のメッセージを送った.

「もう, あなたとは終わりにします. どうか, 幸せに」

私は, そうメッセージを送った後, 熱気球から身を投げた.

身体が, 宙を舞う. 落下する感覚が, 私を支配する. 私は, 目を閉じ, 全てを受け入れた.

次の瞬間, 私の魂は, 私の身体から離れた. そして, まるで幽霊のように, 私は病院に立っていた.

真弘と綾が, 親密そうに寄り添っていた. 彼らは, まるで恋人のように, お互いのことを心配し合っていた. 私の心は, さらに深く傷ついた.

「真弘さん, 私, 胸が苦しいわ... 」

綾は, 弱々しい声で真弘に訴えた. 真弘は, 綾を優しく抱きしめ, 額にキスをした.

「恵美さん, どうしてるかしら?  さっき電話があったんだけど, 何があったのかしら」

綾は, 心配しているような顔で言った. だが, 彼女の目には, 冷たい光が宿っていた.

「恵美なら, 大丈夫だろ. いつもそうだ. 俺を困らせるのが好きなんだ」

真弘は, 私のことなどどうでもいいと言いたげな顔で言った. 彼は, 私のことなど, 何も気にしていなかったのだ.

「あの熱気球が燃えたって話だけど, 恵美が何かしたのか?  あいつはいつもそうだ. 俺を困らせる」

真弘は, 私のことを見下すように言った. 彼は, 私が熱気球を燃やしたとでも思っているのだろうか.

「まさか, そんな. でも, 恵美さんなら, やりかねないわ」

綾は, 真弘の言葉に同調するように言った. 彼女の顔には, 冷たい笑みが浮かんでいた.

「恵美は, 昔からああだ. すぐに拗ねるんだ. 放っておけば, 勝手に家に帰ってくるだろ」

真弘は, そう言って, 綾の頭を優しく撫でた. 彼は, 私のことを信じようとしなかった.

「真弘さん, まさか, 恵美さんが... 」

綾は, 心配そうな顔で言った. だが, 彼女の目には, 冷たい光が宿っていた. 彼女は, 私が死んだことを, 心底喜んでいるようだった.

「救助隊からの連絡だと, 熱気球が燃えたのは, 山頂付近だそうだ. 恵美は, あそこにいたからな」

真弘は, そう言って, 綾の目を見た. 彼の目には, 何の感情もなかった. 彼は, 私が死んだことなど, どうでもよかったのだ.

「綾, 君だけは, 俺が守る. 君の命が, 一番大事なんだ」

真弘は, そう言って, 綾を抱きしめた. 彼の目には, 綾への深い愛情が宿っていた. 私の心は, 絶望で粉々に砕け散った.

私の命は, 彼にとって, 何の価値もなかったのだ. 私が二年もの間, 彼に尽くしてきた愛は, 彼の心には届かなかったのだ. 彼の心は, ずっと綾のものだったのだ.

真弘は, 綾のために仕事を休もうとしたが, 上司に厳しく叱責された.

「中島, 君はまた, 綾さんのために仕事を休むのか!  君の仕事は, 山岳ガイドだぞ!  いつまでそんなことをしている! 」

上司は, 真弘を怒鳴りつけた. 真弘は, 上司の言葉に何も言い返すことができなかった.

私は, 真弘の後を追って, 彼の仕事場へと向かった. そこで, 私は信じられない光景を目にした.

「中島!  君はまた, 客を危険な場所に連れて行ったのか!  あの場所は, 遭難事故が多発している場所だぞ! 」

上司は, 真弘を怒鳴りつけた.

「あの場所は, 風が強く, 熱気球の着陸には不向きだ. ましてや, 遭難事故が多発するような場所で, 熱気球を飛ばすなど, 狂気の沙汰だ! 」

上司は, 真弘の行動を厳しく非難した.

「彼女は, 俺の婚約者で, 俺の友達です. それに, 彼女は経験豊富な登山家だ」

真弘は, 上司の言葉に言い訳をした.

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