
愛の任務ー元妻の復讐
章 3
「奪う? 彼はそもそも私のものなんだから、奪ってなんかいないわ」 ジーンはクスクス笑った。 「3年前、テレンスの会社は破産寸前だった。 そんな男とは結婚なんてできないでしょ?だからあなたのワインに薬をいれたのよ。 この3年間、彼はあなたに触れることさえしなかったそうね。 ジュリア、私の男を守ってくれてどうもありがとう」
ジーンは目を輝かせた。
突然、ジュリアは記憶が次々と湧きあがり、 まるですべてのパズルのピースがようやく合わさったかのようであった。
ジュリアは、その晩自分がどれほど理性を失っていたかを思い出した。 そしてまさにその翌日、ジーンは二人の浮気をベットで取り押さえた。
彼女は妹の婚約者と寝てしまったのは自分が飲みすぎたせいだと思っていたが、結局妹にはめられたのだ!
ジュリアは、ジーンがドアを開けたときに浮かべた皮肉な笑みすらも思い出した。 今ようやくその理由を知ったのだ。
まさか、この三年間彼女が背負ってきた罪悪感はすべて無駄だった。
「それで、ようやくわかった?」 ジーンは意地悪に微笑んだ。 「心配しなくてもいいわ、ジュリア。 テレンスはけちな人じゃないから、 離婚に同意さえすれば、多額の慰謝料がもらえるわ。 そうすれば、あなたの人生は、芸能界でしがない女優になるより、はるかに過ごしやすくなるはずよ」
「私にとっては慰謝料よりも チェン夫人のほうがいいわ」 ジュリアは手のひらが傷つくほど強く手を握りしめた。
「私が彼と離婚しない限り、あなたは一生愛人のままだよ」 ジュリアは冷たく笑い、 「心配しないで、 私が死ぬまで離婚なんてしないわ」と語った。
「あなたを愛していない男と一緒にいる意味なんてあるの?」 ジーンは尋ねた。
「もちろんよ。 離婚しない限りあなたは恥知らずな愛人よ。それが見れるだけでも、とっても価値があるじゃない」 ジュリアはほほ笑むと、そう言った。
ジーンは鼻で笑い 「姉さん、後悔させてやるわ」と言った。
「後悔?」 ジュリアはこの二文字を繰り返して、笑った 「今、私が後悔しているのは、母があなたを生んだ時すぐに首を絞めなかったことだけよ」
それ以上一言も話さず、ジュリアは身をひるがえし去った。
彼女は、夫の浮気現場を捕らえるためにいそいそとここに来たが、その相手が妹だとは夢にも思わなかった。 目と鼻の先で何年も騙されていた自分が馬鹿みたいだと感じた。
ジュリアがホテルを出ると、コンスエラから電話があった。 「今どこにいるの? パーティーがもう始まるわ」 と彼女は尋ねた。
「すぐに行くわ」 瞬く間に、彼女は夫と家族を失ったのだ。 これ以上仕事も失うわけにはいかなかった。 ジュリアは背筋をまっすぐのばし、ホールに入った。
テレンスのことは、後でなんとかする。
その夜、彼女は3年間のキャリアの中で最大の賞である最優秀新人女優賞を受賞した。 アシスタントであるアビーは、受賞を祝うべきだと言ったが、コンスエラは彼女を止めた。
「彼女はもう疲れているだろうし、 みんな家に帰って明日祝いましょう」 そう言うとコンスエラはジュリアを車に乗せた。 彼女は泣いてはいなかったが、コンスエラはまだその視線から悲しみを感じることができた。
「彼と別れるように言ったけど、あなた聞かなかったわよね」 コンスエラはジュリアのそばに座り、 「今、分かったでしょ、 もう潮時なのよ」と語った。
コンスエラは彼女を抱きしめた。ジュリアは抑えていた感情があふれ出し、コンスエラの腕の中ですすり泣いた。
しかし、家に着いた頃には、 まるで何のこともなかったようにジュリアはすぐに背筋を伸ばし涙をぬぐった。 彼女は自分の弱みを他人に見せたくないのだ。
そんなジュリアを見て、コンスエラは唇を噛み、ためらいながら言った。 「今夜一緒にいようか?」
「いいえ、大丈夫よ」ジュリアは返事した。 これは彼女自身の問題なのだ。 ジュリアは静かに家に戻り、赤ワインのボトルを開けた。
この別荘は彼らの結婚後の住居となるはずだったが、 日が経ち、週が経つにつれて、彼女はそれが自分を閉じ込める鳥かごであることに気づいた。
そこはいつも空っぽだった。
彼女は今夜一人で過ごすことになると思っていたが、なんと深夜にテレンスが戻ってきた。
彼女は驚いて目を瞬いた。
「おなかは減ってない?」 ジュリアはすぐによろめきながらソファから立ち上がった。
冷蔵庫のドアを開けると、そこに何もなかったが、「宅配で何か呼ぼうか、それとも...」
しかし、テレンスはどちらも気分ではなかった。 彼は足を踏み鳴らし彼女に向っていき、彼女を床に押し付けた。 「どうしてこんなことができるんだ」 彼は唸った。 「ジーンが一体何をした? どうして彼女にこんな目に遭わせた?」
「何を言ってるの?」 ジュリアは眉をひそめた。 ジュリアが去ったとき、ジーンは何の問題もなかった。
「とぼけるな!」 彼の怒鳴り声は別荘全体に響き渡った。 「お前を見損なったようだ。 ここまで邪悪な女だとは。 お前を見ていると吐きそうだ」
彼は彼女を見下ろし、離婚協定を投げつけた。 「署名しろ。 これ以上おまえに会いたくない」
これまでテレンスが離婚をほのめかすことは何度もあったが、実際に離婚届けを突き付けたのはこれが初めてだった。
ジュリアは心がナイフでえぐられるかのような気持ちだった。
「あなたは... そんなに彼女と一緒にいたいのね?」 ジュリアはどもった。
こんなことを聞きたくはなかった。彼の返事が怖かった。それでも彼をあきらめる機会を待ち望んでもいた。
「そのとおり」 彼は迷いなくうなずいた。 「彼女は美しく善良で、お前みたいな邪悪な女じゃない。 お前は実の妹の婚約者を奪うことすら厭わない女だ」と語った。
「いいわ。 いいわ。全部私が悪いわ。 それでいい?」 自分が何を言っているかもわからないまま、ジュリアは顔を上げ、 話し始めた。 「そうね、私があなたのワインに薬をいれたのね。 わかったわ。 テレンス、感動しない? あなたがどれほど私に冷たくしても、私まだあなたを愛しているの」
テレンスの目を見開いた。 彼は彼女のこのような姿を見たことがなかった。
彼女の目は絶望で満ちていた。
ジュリアは涙をぬぐい、彼の首に腕を回した。 「私を愛していないと言ったけど、あの晩、あなたの体は正直だったようね」彼女は妖艶にほほ笑んだ。 「さみしくなったらいつでもおいで」
彼女がほほ笑むとその目から涙が零れ落ちた。
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