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病床で3年、密通を聞かされて目覚めたら――極道令嬢、京の社交界を血で洗う! の小説カバー

病床で3年、密通を聞かされて目覚めたら――極道令嬢、京の社交界を血で洗う!

夫のため銃を捨て、七年間も献身的に尽くしてきた夏目綾華。彼女は命懸けで夫を守り、致命傷を負って昏睡状態に陥る。しかし、病床で意識だけが覚醒した彼女を待っていたのは、真の地獄だった。夫の秋山慎決と親友は、眠り続ける綾華の傍らで密通を重ね、彼女の会社を奪い、さらには「事故死」に見せかけた殺害計画を練っていたのだ。三年の月日が流れ、悪夢から目醒めたとき、従順な妻は死に、冷酷な復讐者が誕生する。正体は世界を震撼させるマフィアの正統な後継者にして、闇経済を支配する女王。かつてエプロンを結んだ手で権杖を握り、京の社交界を恐怖に陥れていく。裏切り者に情け容赦ない裁きを下す彼女の前に現れたのは、十三年間も彼女だけを想い続け、街の半分を血に染めて守り抜いた世界最強の武器商人・松平昭彦だった。跪き許しを請う元夫を冷たく突き放し、綾華は忠誠を誓う松平のネクタイを掴み、不敵に微笑む。裏切りの代償を血で洗う、極道令嬢の壮絶な復讐劇が今、幕を開ける。
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その一言は、氷の楔となって秋山慎決と佐藤恵奈の背筋に打ち込まれた。

まさか、夏目綾華は――植物状態にあった間、ずっと意識があったとでもいうのか。

だとすれば、数時間前にベッドサイドで交わした熱も、睦言も、そのすべてをこの女は聞いていた… …?

狼狽する二人を見やり、綾華は唇の端をさらに吊り上げた。 その笑みは、氷のように冷たい。

「ただ、夢を見ていたのか、それとも本当にあなたたちの声を聞いたのか、定かではないの。 植物状態になってからというもの、意識がずっと真っ白で……」

だが綾華は、そんな二人の疑念を見透かしたように、言葉を続けた。

今すぐ二人を断罪するつもりはない。 ここで暴露してしまっては、あまりにも生ぬるい。

自らの手で天国に押し上げた男だ。 ならば、この手で地獄の底へ突き落とすこととて、造作もない。

その言葉に、慎決と恵奈は強張っていた肩から、ようやく力を抜くことができた。 どうやら杞憂だったらしい。

「大丈夫だ、綾華。 そんなことは重要じゃない。 思い出せないのなら、無理に思い出す必要はない。 今の君が無事でいてくれること、それが一番なんだ」慎決は綾華を慈しむように言った。 「そ、 そうですよ! 秋山社長。

綾華様はまだお目覚めになったばかりで、 お体も万全ではございませんし、 まずはお休みいただくのがよろしいかと」 恵奈もここぞとばかりに口を挟んだ。

これ以上ここにいれば、眠っていたはずの記憶を呼び覚ましてしまいかねない。 その恐怖が、二人を逃げるように病室から追い立てた。

「愚かな者たちね」

慌てふためいて逃げ去る背中を見送り、綾華は冷たく呟いた。

「私のスマートフォンさえ奪えば、外部と連絡が取れないとでも思ったのかしら」 実に滑稽だ。

もし恵奈が今この場にいれば、綾華が手にするそれが、まさしく自分のスマートフォンであることに気づいたはずだ。

綾華はいとも容易く恵奈のスマートフォンのロックを解除すると、もう何年もかけていない番号を呼び出した。

正確に言えば、最後にこの番号にかけたのは七年前。 彼女がまだ、組織の闇に身を置いていた頃のことだ。

トゥルルル……

『何者だ?』

ワンコールで、電話は繋がった。

『羅刹、私よ。 覚えているかしら?』 どこか懐かしむような響きを声に乗せ、綾華の口元が微かに綻んだ。

『お嬢様‼』

電話の向こうで、羅刹が興奮のあまりスマートフォンを取り落としそうになる気配がした。

たった一言。

その気高く、 懐かしい呼びかけだけで、 羅刹の脳裏にただ一人の主の姿が浮かび上がった。 かつて裏社会にその名を轟かせた“お嬢様”をおいて他に、

これほどの覇気を声に宿す者がいるはずもない!

『お嬢様、七年ぶりでございます! 貴方様が七年前に忽然と姿をくらまされて以来、我々はまったくその行方を掴めず……この数年、マフィアはお嬢様の不在により統率を失い、今や白虎のような輩にまで侮られる始末でございます… …』

綾華は静かに目を伏せ、氷のような声で命じた。

『全組員に通達なさい。 私、夏目綾華が、マフィアに正式に復帰すると!』

……

自ら消息を絶ち、七年もの間、闇に潜んでいたマフィアの“お嬢様”が復帰する――。 その日のうちに、一つの報せが竜巻となって裏社会を駆け巡った。

夜、ヨーロッパ。

世界一の武器商人にして、 欧州で最も神秘的で古い一族、 松平家。 その権勢は国際社会に深く根を張り、

マフィアにさえも決して引けを取らない。

国際情勢の如何なる些細な動きも、彼らの目から逃れることはできない。

松平家当主の執務室。

軍服に包まれた、一九〇センチはあろうかという長身。 デスクの前に腰を下ろすその男は、冷徹さと奔放さという、相容れないはずの二つの空気を同時に纏っていた。

その彫りの深い顔立ちは、中世の壁画に描かれた神々の如し。

見る者の視線を絡め取り、決して離さない魔性を秘めている。

今、松平昭彦は常のごとく、一族の業務を処理していた。

「当主!吉報です、とんでもない吉報が!」 その時、部下が叩く扉の音が、昭彦の思考を遮った。

「入れ」

男は言葉を惜しむように、短く告げた。

入室するなり、部下は隠しきれない興奮を声に滲ませて報告した。 「当主、情報が入りました!夏目綾華様の行方が判明いたしました!」

昭彦の、万年筆を握る指が軋むほどに力がこもる。

男は込み上げる激情を理性で押さえつけようとするが、目元は微かに赤く滲み、薄い唇を噛みしめて、ただ一言だけを絞り出した。 「……どこだ」

「A国、江城市です」

答えを聞いた男は、胸ポケットから肌身離さず持ち歩いていた一枚の写真を、震える指で取り出した。

写真の中でひまわりのように笑う少女――その笑顔を見つめる昭彦の瞳の奥に、もはや隠しようもない激情と、昏い掠奪の色が燃え上がった。

「七年……長かった」吐息と共に、言葉が漏れる。

「綾華、やっと見つけたぞ」そして、写真の少女に誓うように、呟いた。

「今度こそ、二度と俺の側から離しはしない」

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