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傷跡と共に失われた愛 の小説カバー

傷跡と共に失われた愛

五年前、周囲の猛反対を顧みず彼女が彼と結婚したのは、深い執着ゆえだった。しかし、彼女が愛していたのは彼という人格ではなく、その端正な顔立ち、とりわけ美しい瞳だけだった。その偏愛は凄まじく、彼が愛人を自宅に連れ込み三日三晩を過ごすという裏切りを犯しても、彼女は怒りを見せることさえなかった。友人がその異常さを指摘し詰め寄っても、彼女は「あの顔がある限り、私は永遠に許し、愛し続けることができる」と真剣に告げる。それは彼女が抱えるある種の負い目からくる誓いでもあった。だがある日、愛人と共に出かけた先で彼は交通事故に遭い、その美貌には決して消えない醜い傷跡が刻まれてしまう。すると彼女は、それまでの献身が嘘のように冷徹な態度で彼の前から姿を消した。絶望の淵で再会した際、なぜ去ったのかと問う彼に対し、彼女は傷跡をなぞりながら痛切な思いを吐露する。「あなたのせいで、彼はまた死んでしまった」。顔という依代を失ったとき、彼女が隠し続けていた残酷で悲劇的な真実が明らかになる。愛と執着、そして過去の亡霊が交錯する現代ミステリー。
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3

真っ先に我に返ったのは王黎だった。

「息子が失明の危機だというのに、あなたは傷跡のことしか頭にないの!?」

甲高い声が響く。阮清夏は彼女を一瞥すると、振り向きざま、その頬を思い切り張り飛ばした。

「少し静かになさい!」

阮清夏は嫌悪感を隠しもせずウェットティッシュを取り出すと、叩いた手を念入りに拭う。

「手術室から出てこられた。それだけで彼が無事な証拠でしょう。何をそんなに慌てる必要があるの?」

王黎は、阮清夏がいつも逆らわず従順であることに慣れきっていた。これほどの屈辱を受けたのは初めてだ。

だが、彼女が何か言い返す間もなく、その場に立っていた阮清夏は、何者かに強く突き飛ばされた。

頭を打った激痛に、阮清夏は朦朧としながら目を開け、目の前の人物を見上げた。

先ほど顧軽舟の体に覆いかぶさっていた女である。

その顔は、剥き出しの怒りに染まっていた。

「軽舟さんが意識不明なのに、そのご家族をいじめるなんて許さない!」

阮清夏は倒れたまま女を見上げ、その清純ながらも頑なな表情を見て、思わず笑みを漏らした。

「あなたが顧軽舟を病院へ? ありがとう。私は阮清夏」

女は呆然とその場に立ち尽くし、ややあって口を開いた。

「……怒らないの?」

阮清夏はどうにか体を支えて立ち上がると、首を横に振る。「ええ。あなたのことは知っているわ。白芷薇さんでしょう」

白芷薇はびくりと肩を震わせ、思わず一歩後ずさった。「何がしたいの? 阿舟とはただの友人よ。愛人なんかじゃないわ!」

阮清夏は穏やかな声で彼女の言葉を遮った。「分かっているわ。友人同士なのでしょう。説明は要らない」

結婚後の数年間、顧軽舟の傍らには常に数えきれないほどの「親密な女性」がいた。

だが、その誰もが一月と持たずに彼のもとを去っている。

それなのに、目の前のこの女は。半年近くも彼のそばに居続けていた。

阮清夏は、彼女には何かよほど人より優れたところがあるのだろうと思っていた。だが今日、間近で見てようやく理解した。

この女は、あの女によく似ている。

この何年もの間で、最も『あの人』に似ている女だ。

そこまで考え、阮清夏は冷笑を浮かべた。「残念だけど。やはり、どこか違うわね」

白芷薇は呆気に取られた。「……今、何と?」

阮清夏は首を振る。「いいえ、なんでも。服が汚れてしまったわね。あなた、私と背格好が似ているから。車のトランクに新しい着替えがあるの。人を寄越すから、下で着替えてきて」

「先生。それから、彼女の診察もお願いします。全身の精密検査を。どんな小さな問題でも私に報告してください」

「承知いたしました、顧夫人」

阮清夏の声は物柔らかだが、有無を言わせぬ響きがあった。「行きなさい。あなたが着替え終わる頃には、顧軽舟も処置室から出てくるわ」

「目元の傷の修復具合を確認するだけ。そう長くはかからないはずよ」

先ほどから不可解な視線を送っていた王黎は、ますます当惑した表情になった。

夫の愛人かもしれない女に対し、これほど優しく取り計らう妻が、いったいどこにいるというのか。

彼女は真相を問い質そうとしたが、口を開くか開かないかのうちに、顧峰に腕を引かれ、連れ去られてしまった。

廊下からは、あっという間に人影が消えた。

阮清夏は、先ほどまでの硬い鎧を脱ぎ捨てたかのように、椅子に崩れ落ちた。

やがて彼女は病室へ入り、ベッドに横たわる顧軽舟を見つめる。

「どうして、誰も彼も……事故で私のもとから去っていくの……?」

阮清夏から零れ落ちた涙が、顧軽舟の指先にぽたりと落ちた。

熱い雫に灼かれたように、彼が指をびくりと震わせる。

阮清夏ははっと我に返り、慌てて目元の涙を拭う。「……目が覚めたの?」

顧軽舟は数度瞬きをした。その瞳が茫然とした色からたちまち狼狽へと変わるまで、わずか二秒。

彼は勢いよく身を起こした。「薇薇は!? 彼女は無事なのか!」

阮清夏は答えず、黙って彼を見つめ返した。

やはり。白芷薇は、彼にとって特別な存在だったのだ。

やがて顧軽舟が状況を察し、その目に後ろめたさが浮かぶのを待って、彼女は口を開いた。

「彼女なら無事よ。少し驚いただけ。休ませるために先に帰したわ」

顧軽舟は心底安堵したように息をついた。「……そうか。二人とも無事なら、それでいい」

無事なものか。

阮清夏は、もはや限界だった。医者を呼んで夫の診察を任せると、自らは踵を返し、化粧室へと飛び込んだ。

個室のドアに背を預けて崩れ落ちる。心臓が痛いほど締め付けられ、激しく痙攣していた。

「顧軽舟。今のあなたは、本当に醜い。……醜すぎて、もう『あの人』の面影もない」

あまりの醜さに、阮清夏はその顔を前にして涙を流すことさえ、もはや困難になっていた。

「もし、あなたが元の姿に戻れないのなら。私も、もうあなたのそばにいる必要はない」

低く呟かれた声には、確固たる決意が宿っていた。

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