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婚約破棄?構わない。神木さんを骨抜きにしてみせる の小説カバー

婚約破棄?構わない。神木さんを骨抜きにしてみせる

酔った勢いで冷徹な神木に絡んだ桐谷ひなた。鋭い眼差しで「後悔するぞ」と警告されるが、婚約破棄され居場所を失った彼女は彼の家へ向かう。結婚後、義母が育てていたのは亡き想い人の子だった。彼はひなたの顔に、かつて愛した人の面影を重ねていたのだ。従順な身代わりに過ぎない。そう悟った彼女が離婚を告げると、彼は豹変して背後から抱きしめる。「……離さない」と縋るような掠れた声。自分なしではいられなくなった彼の姿に、ひなたは口角を上げ、静かに微笑む。「神木さん、私を必要とするなんて……ずるい人」愛憎と執着が交錯する、二人の歪な関係の行方は。
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桐谷ひなたが小室海斗を好きだということは、誰もが知っていた。

ただ、五年間も婚約していながら、彼が一度も彼女に触れたことがないという事実は、誰も知らなかった。

「海斗、今日は私たちの婚約五周年の記念日よ。 いつ来てくれるの?」

ホテルの最上階にある個室は、風船とバラのイルミネーションで飾り付けられていた。 ひなたは約束の七時から九時過ぎまで待ち続け、ようやく電話をかけた。

「忙しい」

「何を?」 ひなたが尋ねた途端、 電話の向こうから柔らかな女の声が聞こえてきた。

「海斗、痛いの」

ひなたの心臓が締め付けられる。 探るように尋ねた。 「もしかして、神木さやかと一緒にいるの?」

「彼女が少しトラブルに巻き込まれてね」

「彼女がトラブルに巻き込まれたからって、 どうしてあなたが処理しなきゃいけないの?」 ひなたは自分の声が震えているのを感じた。 「それとも、 彼女が私より大事だって言うの?」

「こんな時に駄々をこねるのか」

ひなたの頭の中で何かが弾けたような衝撃が走り、目が赤く染まる。 心は少しずつ沈み込み、全身に冷たい感覚が広がった。

彼女は口を開き、しばらくしてからようやく言葉を絞り出した。 「そういうことなら、婚約を解消しましょう」

せめて慰めの言葉の一つでもかけてくれると思っていた。

だが、相手は一方的に電話を切った。

ひなたは自嘲気味に笑ったが、その瞳は赤く潤んでいた。 自分は一体何を期待していたのだろう。

彼女は開封済みの赤ワインを手に取り、瓶の口から直接、勢いよく数口を呷った。

……

個室を出たのは、すでに夜の十一時を過ぎていた。

ひなたがエレベーターに乗り込み、振り返ると、外に一人の男が立っているのが見えた。

男は黒いスーツを身につけ、背が高く引き締まった体つきをしている。彫りの深い顔立ちに、伏せがちな目元が、彼のただでさえ強い存在感をより威圧的なものにしていた。

男も彼女を見つめていた。

彼女は体にフィットした黒いロングドレスを着て、頬を赤らめている。 切れ長の目に細い眉、しなやかな腰。 スカートのスリットは太ももの半ばまで入り、動くたびに白い脚のラインが覗く。

清艶さと妖艶さが入り混じった、蠱惑的な雰囲気だった。

ただ、彼女はほろ酔い気味で、頬には上気が見て取れた。男の瞳が暗く沈む。 すぐにエレベーターには入らなかった。 だが、 中の女が突然二歩前に進み、

彼のネクタイを掴んでエレベーターの中に引きずり込んだ。

次の瞬間、 熱を帯びた体が彼の胸に飛び込んできた。

この不意の行動に、男の全身の筋肉が瞬間的に緊張し、 体が硬直する。

その一瞬の隙に、腕の中の女はつま先立ちになり、彼にキスを仕掛けてきた。

彼女の唇は柔らかく、熱い。

しかし、彼女は体を支えきれず、今にも彼の腕から滑り落ちそうになる。

男はとっさに彼女の腰に腕を回し、がっしりと抱き止めた。

身体が密着し、ひなたの全身に甘い戦慄が走った。

彼女が正気を取り戻した時には、すでに男にエレベーターの壁に押し付けられていた。背中には冷たい壁、しかし目の前の男は彼女の体に火をつけるように、強引かつ支配的に唇を貪っている。

冷たさと熱さが交錯し、彼女は耐えきれず、子猫のようにか細い声を漏らす。

その声は柔らかく、艶めかしい。

エレベーターがゆっくりと下降するにつれて、彼女の体は欲望の深淵へと引きずり込まれていくようだった。

『チーン』エレベーターが一階に到着した。

キスが止まる。

ひなたの指はまだ彼のネクタイに絡まったままで、低い声で言った。 「私を連れて行って」

彼女はぐったりと彼の体に寄りかかり、吐息が彼の顔にかかる。

それはあからさまな挑発であり、誘惑だった。

男の瞳がさらに暗くなり、喉仏が軽く上下する。

大人の間では、ある種のことは視線一つで通じ合う。 ましてや、彼女がこれほどまでに積極的なのだから。

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