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その溺愛、手遅れです。 の小説カバー

その溺愛、手遅れです。

結婚から一年、理想の夫・緒方慎也は冷酷な本性を現した。妻の望月星奈が献身的に尽くす傍ら、慎也は実家に幼馴染を囲い、星奈を「商売の道具」としてしか見ていなかった。義母からも蔑まれ、孤独な「生ける未亡人」となった星奈は、ついに決別を決意。未練を断ち切り、離婚届を突きつけて家を飛び出した。専業主婦という仮面を脱ぎ捨て、ビジネスの世界へと返り咲いた彼女は、磨き抜かれた宝石のような輝きを放ち始める。その魅力に惹かれ、星奈の周囲には新たな恋の予感と求婚者たちが次々と現れるようになった。一方、失って初めて彼女の価値に気づいた慎也は、焦燥感に駆られ、かつての傲慢さを捨てて復縁を懇願する。「俺が間違っていた、戻ってきてくれ」と縋る彼に対し、星奈の瞳に宿るのは冷徹な拒絶のみ。裏切りの代償はあまりに大きく、手遅れとなった執着愛が虚しく響く。自らの足で歩み始めた星奈は、過去の因縁を振り払い、華麗なる逆転劇を繰り広げていく。
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望月星奈は冷ややかな顔で助手席のドアを開け、喉まで出かかっていた「さっさと失せろ」という言葉をぐっと飲み込んだ。

緒方慎也を愛していないとしても、あの愛人にこれ以上でかい顔をさせるわけにはいかない。

道中、慎也と2人きりになる気まずさを心配していたが、幸い彼は助手席に座るなり軽く目を閉じ、全身に疲れを滲ませていた。

星奈は無表情のまま、彼を横目で一瞥する。

(わざわざ愛人のご機嫌取りに行ってたんだから、私の前で疲れたフリなんてしなくていいのに。)

星奈はアクセルを踏み込み、どんどん加速していった。

慎也がカッとなって目を開け、声を荒らげる。「望月星奈、運転くらいまともにできないのか?」

星奈は鼻で笑った。「忘れないでよ。さっき事故を起こしたのは誰だっけ?」

慎也がムッとする様子を見て、星奈は1日中溜め込んでいた鬱憤が一気に晴れた。

月見荘に戻ると、星奈はそのまま主寝室に入り、ドアを内側から鍵をかけた。

ーーもう慎也のことなんて知ったこっちゃない!

……

パジャマに着替えてベッドに潜り込む。張り詰めていた神経が緩むと同時にめまいが襲い、星奈は意識が朦朧としたまま眠りに落ちた。

それから間もなく、悪寒が走って星奈の夢を乱した。

夢うつつの中、誰かが背後から抱きしめてくる感覚がある。相手の熱い体温が、彼女の体の冷えを追い払っていく。

新婚当初、星奈が熱を出したとき、慎也はこうして抱いて眠ってくれたものだ。

まだ寝ぼけていたせいで、2人の関係が冷え切っている事実を一瞬忘れてしまったのだろう。彼女は無意識に体を後ろへ預け、その温もりをもっと感じようとした。

「動くな」 耳の縁に羽のような軽いキスが落ちてくる。唇と舌が絡み合う間に漏れる言葉は掠れて不明瞭で、そこには懸命に抑え込まれている何かが滲んでいた。

直後、腰のあたりに硬いものが当たり、腰のくぼみに押し付けられて不快感が走る。

星奈は思わず身じろぎした。

背後で聞こえる低い息遣いが、次第に荒くなっていく。

大きな手が服の裾から忍び込み、腰を辿って這い上がると、胸の膨らみを掬うように揉みしだいた。

星奈もウブな少女ではない。下腹部に熱いものが込み上げてくるのを感じ、思わず声を漏らしてしまう。

その声を聞いた瞬間、慎也の理性を繋ぎとめていた最後の糸がぷつりと切れた。もう片方の手がズボンのゴムを越えて滑り込み、濡れた場所へと伸びる。

久しく行為から遠ざかっていた星奈にとって、不意の指の侵入は痛みでしかなかった。とっさに両足を閉じる。

カッと目を見開き、意識が一気に覚醒する。 彼女は慎也を強く突き飛ばし、ヘッドボード側へ身を引いてサイドランプをつけた。

「なんで入ってきたの?」 彼女は険しい顔で慎也を睨みつけた。頬に残っていた紅潮は、急速に怒りへと変わっていく。

慎也はベッドに手をつき、ゆっくりと上体を起こした。ゆったりしたパジャマのズボンを押し上げていた膨らみが、徐々に収まっていく。

彼は鼻で笑うと、皮肉っぽく問い返した。「ここは俺の家だぞ。俺が入ってこなきゃ、誰が来ると期待してたんだ?」

その言葉に、星奈は強烈な屈辱を感じた。反射的に振り上げた手が、重い音を立てて彼の頬を打つ。

生まれてこの方、男は彼しか知らないというのに。その言い草では、まるで自分が誰とでも寝る尻軽女みたいではないか。

このところ藤原初実と一緒に暮らしていたくせに、今度は自分のベッドに潜り込んできた。その事実を思い返すと吐き気が込み上げ、星奈は激しく言い放った。 「誰でも自分と同じだと思わないでよ!心が汚い人間には、周りも汚れて見えるのね!」

慎也は、星奈が全力で叩いたのだと悟ったのか、冷笑を浮かべた。「望月星奈、そんなに俺が価値のない男なら、なんで結婚を承諾した?」

「結婚前は細やかな気遣いをしてくれたから、私は愛情だと勘違いしたのよ。 結婚した途端に愛人を作るような男だって知っていたら、死んでも結婚なんてしなかったわ!」

「夫がいないも同然の生活なんて、もううんざりよ!」

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