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異世界移転した僕たちだけど僕のスキルだけファンタジー感が足りない気がする の小説カバー

異世界移転した僕たちだけど僕のスキルだけファンタジー感が足りない気がする

平凡な中学生だった宇美矢晴兎は、ある日突然、クラスメイトたちと共に未知の異世界へと召喚される事態に見舞われる。周囲の仲間たちが勇者や聖女、賢者といった、まさにファンタジーの王道とも言える強力な希少職や伝説級の能力を次々と発現させていく中、晴兎に授けられた力はそれらとは一線を画す異質なものだった。ファンタジーの世界観にはおよそ似つかわしくない、あまりにも現実的で場違いなその能力に、彼は困惑を隠せない。剣と魔法が支配する過酷な新天地において、華やかなスキルを持つ友人たちと対照的に、地味で特殊な力を手にした晴兎の運命はどう転んでいくのか。異世界召喚という非日常の渦中で、一人だけ毛色の違う能力を与えられた少年の葛藤と、その独自の力を駆使して切り拓く冒険の幕が上がる。定番の英雄譚とは一味違う、異色の異世界サバイバルが今ここに始まる。果たして彼は、ファンタジー感の欠如したそのスキルを武器に、この世界の荒波を生き抜くことができるのだろうか。
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青紫色の火の光が照らすその部屋で少年と青年が対峙している。

  そんな今まさに戦いが始まろうとしているその部屋は少年にとっては異端であった。

  冷たい黒のタイルが床に敷き詰められたその部屋全体には、巨大な魔法陣が張り巡らされ、その魔法陣の中心には闇を凝縮したような紫色に近い宝玉がはまっている。

 天窓から差し込む光は無く、外の空は紫、真紅、橙色……そんな色をごっちゃ混ぜにしたような気味の悪い色で、黒髪の少年が生まれ育った世界の青い澄み切った空とはあまりにもかけ離れていたからである。

  少年は声を絞るように、数段床から高く作られた多彩な彫刻が施された玉座の前に立っている紫と濃い赤が混ざったような色の髪の青年に言った。

「魔王ルシファー! お前さえ……お前さえ倒せば、元の世界に帰れるんだ!」

「……和解は無理か。やはり奴が言った通りの結果(うんめい)になったか。我としては……宇美矢 晴兎(うみや はると)、貴様とは友好関係をも築ける方針へと説得したかったがしょうがない」

  青年ーー魔王ルシファーは言葉を並べるが無駄だと悟り、かつてあったかもしれない友情を諦めた。

 ーーやがて表情は決意の籠った表情へと変わった。

「ーー貴様を殺す」

  その瞬間、魔王ルシファーが強力な殺気と威圧を少年ーー宇美矢晴兎へと向けた。

「ーーッ!」

 宇美矢 晴兎(彼)はそれだけで一瞬怯んだが、自身が所持する唯一の武器である鉄で作られた安物の剣を両手で構えて魔王ルシファーに思いっきり斬りかかった。

「…………」

  魔王ルシファーは何かの想いを断ち切るように抵抗も一切せずにその攻撃を受けた。

 しかし魔王ルシファーにとっては貧弱な一撃であり、かつてあったかもしれない友情を結んだその者との一撃とはあまりにもーーそれは貧弱で魔王ルシファーの僅かな想いを断ち切るには十分だった。

 魔王ルシファーは邪魔な鉄の剣をどかして宇美矢晴兎の腹部を全力で殴った。

 それを反応出来ずに受けた宇美矢晴兎は手から剣を落として数メートル後ろへ吹き飛びんだ。

 「ーーがぁっ!?」

 今の一撃で腹部や口からは血が出ている。

 今、彼は声も出せない程の激痛を感じていることだろう。

 「さらばだ、宇美矢晴兎」

 魔王ルシファーは宇美矢晴兎に近づいて至近距離で魔法を放とうとしたーーその時だった。

「ーー何!?」

 宇美矢晴兎の周囲を囲む様に

『殺意』

『絶望』

『憎悪』

『憤怒』

その四つの文字が禍々しい形で無数の数程浮かび上がる。

  魔王ルシファーはどの状況にも無い得体の知れない状況を前に、咄嗟に宇美矢晴兎から距離を取った。

 その直後、更に

『恐怖』

『怨念』

『苦痛』

『悲哀』

『無念』

その五つの文字が現れーーやがて九つの文字が集結し一つの巨大な『悪意』と言う文字が誕生した。

 そしてその『悪意』は覆い被さる様にドロドロと宇美矢晴兎の中へ溶けると既に立つ力も残っていない筈の宇美矢晴兎がいつの間にか立ち上がっていた。

 そして宇美矢晴兎が一瞬で距離を詰めると、魔王ルシファーの胴体を貫いて心臓を握り潰し、呆気なく殺した。

「これで……ようやく帰れる」

 魔王ルシファーが展開していた魔法陣は消滅し、空の色は澄み切った少年のよく知る色へと戻っていった。

 「……?」

 しかし、いくら経っても何も起こらない。

 彼(宇美矢 晴兎)の知る情報では魔王ルシファーを倒せば地球に帰れるゲートが出現すると言う話だった。そのために魔王を殺したのだ。

 しかしそれは嘘の情報らしい。

 どうやらまんまと嵌められたらしい。

「ーーくそッ!」

  地面を殴って彼はハッとする。

 何故か全身の傷が治り、それどころか力は増している。

 何故だろうか?

 そう考える間もなくその答えは明かされる。

[魔王ルシファーを殺害しました]

[魔王ルシファーの推薦により魔王に任命されました]

[レベルアップにより傷が癒えました]

[戦闘中に悪意の覚醒により新たなる能力が覚醒しました]

 数秒後に彼にしか聞こえないアナウンス、いわゆる世界の声が連続で流れ、傷が回復した原因と自身が魔王になったことを知る。

 彼は魔王になったせいか、それとも傷が癒えたせいか、どちらにせよ魔王ルシファーと戦う前よりは冷静になっていた。

 そして彼は自身のステータスを確認していると覚醒したばかりの能力を見てニヤリと口角をつり上げた。

「これならーー全てをやり直せる! 世界の全てを……根本作り替える! 〈全てを終える悪意(マリスオールコンクリュージョン)〉」

  彼が新しく得たその能力によって世界は塗り替えられーーこの世界は終焉を迎えたのだった。

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