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炎の中で捨てられた私、復讐の香り の小説カバー

炎の中で捨てられた私、復讐の香り

燃え盛るテントの中、絶体絶命の私と婚約者の晴斗は視線を交わした。しかし、助けを求める私を無視して彼が抱き上げたのは、浮気相手の女だった。「凛花が怖がっているから」という非情な言葉を最期に、私は炎の中に置き去りにされた。私の類まれなる調香の才能「神の鼻」を利用して自らの会社を成長させておきながら、彼は私を身勝手に見捨てたのだ。奇跡的に生還した私を見て、晴斗は安堵の表情を浮かべる。それは私を案じてのことではなく、自身の悪行が露見するのを恐れたからに過ぎない。彼は私がショックで記憶を失ったと思い込んでいるが、それは大きな間違いだ。殺されかけた恐怖も、彼らが私を嘲笑っていた事実も、すべてはこの胸に刻まれている。私は虚ろな瞳を演じながら、彼の最大の宿敵である男の名を呼んだ。「あなたは誰? 私の恋人は、古沢幸佑さんだけよ」――。記憶喪失のふりをして彼に近づき、どん底に突き落としてやる。裏切り者にふさわしい地獄を味わわせるための、壮絶な復讐劇が今幕を開ける。
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辻本藍子 POV:

「私の恋人は, 古沢幸佑さんだけよ. 」

私の言葉は, 病室に重く響いた. 両親は顔を見合わせ, 信じられないといった表情だった.

「藍子, そんなこと... 」母が言い淀んだ.

父は鞄からスマホを取り出し, 晴斗が写っている写真を見せてきた. 「ほら, 思い出せないのか? この晴斗君との写真, どれも楽しそうじゃないか. 」

私はその写真を見た. 確かに楽しそうに笑っている私がいた. しかし, 私にはそれが他人事のようにしか思えなかった. まるで別の人生の, 別の誰かの写真だ.

「この人は, 誰? 私は, この写真の中の私じゃないわ. 」私は冷たく言い放ち, スマホを父に返した. 私の脳裏に鮮明に浮かぶのは, 古沢幸佑の優しい横顔だけだった.

私が退院して間もなく, 晴斗は早くも凛花とのデートを楽しんでいた. 彼は私を病院に残したまま, もう私のことなど眼中にないかのように, 豪華なオープンカーで凛花を迎えに行った.

「晴斗さん, 藍子さんのこと, もういいんですか? 」凛花は上目遣いで晴斗に尋ねた. その声は心底心配しているようにも聞こえるが, どこか確信犯的な響きがあった.

「あんな女, 放っておけばいいんだ. 記憶喪失だなんて, どうせ俺への当てつけだろう. 」晴斗は鼻で笑い, 凛花の髪を撫でた.

彼は凛花のために, ブランドショップで数百万もするバッグやアクセサリーを次々と購入した. 凛花は一見, 遠慮がちに「こんなに高価なものは... 」と言っていたが, その瞳は喜びに輝いていた.

その夜, 晴斗と凛花は高級レストランでロマンチックなディナーを楽しんでいた. キャンドルの炎が二人の顔を照らし出し, まるで絵に描いたようなカップルだ.

「晴斗さん, これ, 本当に私にくれるんですか? こんな素敵な指輪, 初めてです. 」凛花は満面の笑みで指輪を眺めた.

「ああ, もちろんさ. 君には最高のものが似合う. 藍子なんて, もう俺には必要ない. 」晴斗はそう言って, 凛花にキスをした.

しかし, 凛花は指輪をそっと箱に戻した. 「でも, まだ藍子さんがいるのに, 私, こんな素敵なもの, 受け取れません. 」

晴斗は驚いた. 「なぜだ? 君はそんなに純粋なんだね. ますます好きになったよ. 」

凛花のその言動に, 晴斗はすっかり魅了されていた. 彼は自分だけが持っている「純粋な」女性を手に入れたとでも思っているのだろう.

その夜, 晴斗は友人たちとバーで祝杯を挙げていた.

「晴斗, やったな! あのモデル, 桜庭凛花だろ? 最高じゃん! 」友人たちは口々に晴斗を称賛した.

「あんな女に囚われてる場合じゃないぜ! もっといい女はたくさんいるんだから! 」

「だが, お前, 藍子さんとは婚約してたんだろ? 大丈夫なのか? 」親友の一人が心配そうに尋ねた. 彼の心配には, どこか呆れたような色も混じっていた.

晴斗はグラスを傾け, 嘲笑った. 「藍子? あんな女, 俺がいなきゃ何もできない. どうせすぐに泣いて戻ってくるさ. だから, 俺は先に楽しむだけだ. 」

彼の言葉に, 親友は何も言わなかった. ただ, 深い失望の表情を浮かべるだけだった.

私は退院後, すぐに古沢さんの会社「ル・レーヴ」の近くにあるバーへ向かった. 古沢さんがよく訪れるバーだと, 以前彼から聞いたことがあった. もちろん, 晴斗に隠れて. 私が「古沢幸佑」という名前を出した時から, この復讐劇は始まっている. 彼を巻き込むことは, 私の計画に不可欠だ.

バーの薄暗い照明の中, 私はカウンター席に座る古沢さんの背中を見つけた. 彼の周りには, いつも通り, どこか冷たい空気が漂っていた. でも, 私にはそれがとても心地よく感じられた.

私はゆっくりと立ち上がり, 彼の元へと向かった. 彼の背中越しに, 彼の香水の香りが微かに漂ってくる. 以前, 私が彼のために調合した, 彼のイメージにぴったりの香りだ. この香りを嗅ぐと, 胸の奥が締め付けられるような気がした.

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