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夫と上司の禁断の秘密 の小説カバー

夫と上司の禁断の秘密

長年の努力が実を結び、部長昇進を勝ち取ったキコ。これで家族との時間を取り戻せると確信していたが、その喜びは夫・ヒデのスマホに届いた一通の通知によって打ち砕かれる。送り主はキコの上司であり、そこには彼女の不在を狙って密会を企てる二人の生々しいやり取りが記されていた。さらに衝撃的な事実に直面する。十年もの間、深い愛情を注いで育ててきた愛娘の彩葉は、夫と上司の間に生まれた子供だったのだ。これまでの献身は踏みにじられ、自分はただ家族を養うための「ATM」として利用されていただけだったと悟る。愛も信頼もすべてが周到に仕組まれた偽りであり、夫は妻を冷遇する一方で、上司を愛称で呼び溺愛していた。全てを失い絶望の淵に立たされたキコだったが、その心には静かな怒りが宿る。自分を裏切り、人生を搾取し続けた夫と上司への壮絶な報復が幕を開ける。これは、都合のいい道具であることをやめた女性が、冷徹な意志で仕掛ける反撃の記録である。
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清水希子 POV:

私は陽介のスマホを握りしめ, リビングの隅にある小さな書斎へと向かった. 彩葉は, 私が陽介のそばを離れたことに気づき, 不安そうに私を見つめていた. 私は彼女に笑顔を向け, 人差し指を唇に当てて「シー」と促した. この子が, まだ何も知らない平和な世界にいることを, 私は心から願った.

書斎のドアを閉め, 私は陽介のスマホをテーブルに置いた. 深夜の静寂の中, 画面から放たれる光だけが, 私の心臓の鼓動に合わせて点滅しているように見えた. 寝られそうになかった. 陽介の隣で, 穏やかに眠るふりをすることなど, 今の私には不可能だった.

これまでの結婚生活が, まるで走馬灯のように頭の中を駆け巡る. 陽介はいつも私に優しかった. 私が会社でどんなに辛いことがあっても, 彼はいつも私の味方だった. 私が残業で夜遅く帰っても, 飲み会で終電を逃しても, 彼は何も言わなかった. 私はそれを, 彼が私を信頼している証だと思っていた. 彼が私を愛しているからこそ, 私の仕事に理解を示してくれているのだと.

しかし, それは全て私の思い込みだった. 彼の優しさは, 私をATMとして利用するための巧妙な罠だったのだ. 彼が私に無関心だったのは, 私がどんなに遅く帰ろうと, 誰と飲みに行こうと, 彼には関係なかったからだ. 私が働き続ければ, 彼には定期的に金が入る. それだけが, 彼の関心事だったのだ.

私がどれほど疲れていようと, どれほど体調が悪かろうと, 彼は一度として心配してくれたことはなかった. それどころか, 私が体調を崩せば, 彼が小説を書く時間が削られるとでも思っていたのだろうか. 私の献身は, ただ彼の怠惰を助長するだけだった. 私は, 彼に一度たりとも, 本当に愛されたことなどなかったのだ.

怒りが, 私の体の奥底からこみ上げてきた. 心臓が激しく脈打つ. 私は立ち上がり, 書斎の中をゆっくりと歩き始めた. この怒りをどこにぶつければいいのか, わからなかった. けれど, この感情を, 決して忘れてはいけない. 私は陽介のスマホを手に取り, チャット履歴のバックアップを開始した.

彼の隠しアカウントで, 松江役員とやり取りしているメッセージを一つ一つ丁寧に保存していく. その中には, 松江役員が陽介に送金した記録も含まれていた. 松江役員は, 陽介の生活費だけでなく, 彼の趣味に使われる高価なものまで買っていた. 私はさらに詳しく調べるため, 陽介の銀行口座の明細を確認した.

そこには, 私が知らない銀行口座があった. 私が陽介に渡していた生活費や, 彼の実家への援助金とは別に, 大金が定期的に入金されている. そして, そのお金はどこかに送金されている. 送金先は, 松江役員の口座だった. 陽介は, 松江役員から受け取ったお金を, そのまま彼女に送金していたのだ. 二人の間に, 何があったのか. なぜ, 松江役員は陽介にお金を渡し, 陽介はそれを受け取って, また彼女に送金するのだろうか.

さらに遡ると, 陽介が多額の貯蓄を持っていることが判明した. 私が稼ぎ, 彼に渡していた生活費は, ほとんど手つかずのまま彼の口座に蓄えられていたのだ. 私があれほど身を粉にして働いたのは, 一体何のためだったのだろう. 私は自分を嘲笑った. 私はただの愚かな女だった.

私はすべての証拠を, 私のスマホに保存した. メッセージのスクリーンショット, 銀行取引明細のデータ. これらは, 私の復讐のための武器となる.

翌朝, 私は何事もなかったかのように振る舞った. いつものように朝食を作り, 陽介と彩葉に笑顔で「おはよう」と言った. 陽介は, 私が作ってくれたオムレツを美味しそうに食べている. その顔を見て, 私の心はさらに凍りついた.

朝食を終え, 陽介がコーヒーを飲んでいる間に, 私は切り出した. 「そういえば, 陽介. あなたの親戚の件, どうなったの? あの借金, そろそろ返済してもらわないと困るわ」

陽介は, カップを置く手が止まった. 「え? いきなりどうしたんだ? 今さらそんなこと言われても…」

「今さらじゃないわ. 私, 会社で新しいプロジェクトを始めることになったの. そのためには, まとまったお金が必要なのよ. だから, あの借金, 今すぐ返済してほしいの. 具体的には, そうね, 五百万くらいかしら」. 私は冷静に, しかし揺るぎない声で言った. 陽介の顔色が一瞬で青ざめる.

私は彼の反応を待たずに, 荷物を持って立ち上がった. 「それじゃ, 会社に行ってくるわ. あなたから, あなたの親戚に話しておいてくれる? 」. 私はそう言い残し, 家を出た. 一歩外に出ると, 冷たい朝の空気が私の顔を撫でる. 私の心は, この空気のように冷え切っていた.

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