フォローする
共有
夫と上司の禁断の秘密 の小説カバー

夫と上司の禁断の秘密

長年の努力が実を結び、部長昇進を勝ち取ったキコ。これで家族との時間を取り戻せると確信していたが、その喜びは夫・ヒデのスマホに届いた一通の通知によって打ち砕かれる。送り主はキコの上司であり、そこには彼女の不在を狙って密会を企てる二人の生々しいやり取りが記されていた。さらに衝撃的な事実に直面する。十年もの間、深い愛情を注いで育ててきた愛娘の彩葉は、夫と上司の間に生まれた子供だったのだ。これまでの献身は踏みにじられ、自分はただ家族を養うための「ATM」として利用されていただけだったと悟る。愛も信頼もすべてが周到に仕組まれた偽りであり、夫は妻を冷遇する一方で、上司を愛称で呼び溺愛していた。全てを失い絶望の淵に立たされたキコだったが、その心には静かな怒りが宿る。自分を裏切り、人生を搾取し続けた夫と上司への壮絶な報復が幕を開ける。これは、都合のいい道具であることをやめた女性が、冷徹な意志で仕掛ける反撃の記録である。
共有

3

清水希子 POV:

私は陽介のスマホを握りしめ, リビングの隅にある小さな書斎へと向かった. 彩葉は, 私が陽介のそばを離れたことに気づき, 不安そうに私を見つめていた. 私は彼女に笑顔を向け, 人差し指を唇に当てて「シー」と促した. この子が, まだ何も知らない平和な世界にいることを, 私は心から願った.

書斎のドアを閉め, 私は陽介のスマホをテーブルに置いた. 深夜の静寂の中, 画面から放たれる光だけが, 私の心臓の鼓動に合わせて点滅しているように見えた. 寝られそうになかった. 陽介の隣で, 穏やかに眠るふりをすることなど, 今の私には不可能だった.

これまでの結婚生活が, まるで走馬灯のように頭の中を駆け巡る. 陽介はいつも私に優しかった. 私が会社でどんなに辛いことがあっても, 彼はいつも私の味方だった. 私が残業で夜遅く帰っても, 飲み会で終電を逃しても, 彼は何も言わなかった. 私はそれを, 彼が私を信頼している証だと思っていた. 彼が私を愛しているからこそ, 私の仕事に理解を示してくれているのだと.

しかし, それは全て私の思い込みだった. 彼の優しさは, 私をATMとして利用するための巧妙な罠だったのだ. 彼が私に無関心だったのは, 私がどんなに遅く帰ろうと, 誰と飲みに行こうと, 彼には関係なかったからだ. 私が働き続ければ, 彼には定期的に金が入る. それだけが, 彼の関心事だったのだ.

私がどれほど疲れていようと, どれほど体調が悪かろうと, 彼は一度として心配してくれたことはなかった. それどころか, 私が体調を崩せば, 彼が小説を書く時間が削られるとでも思っていたのだろうか. 私の献身は, ただ彼の怠惰を助長するだけだった. 私は, 彼に一度たりとも, 本当に愛されたことなどなかったのだ.

怒りが, 私の体の奥底からこみ上げてきた. 心臓が激しく脈打つ. 私は立ち上がり, 書斎の中をゆっくりと歩き始めた. この怒りをどこにぶつければいいのか, わからなかった. けれど, この感情を, 決して忘れてはいけない. 私は陽介のスマホを手に取り, チャット履歴のバックアップを開始した.

彼の隠しアカウントで, 松江役員とやり取りしているメッセージを一つ一つ丁寧に保存していく. その中には, 松江役員が陽介に送金した記録も含まれていた. 松江役員は, 陽介の生活費だけでなく, 彼の趣味に使われる高価なものまで買っていた. 私はさらに詳しく調べるため, 陽介の銀行口座の明細を確認した.

そこには, 私が知らない銀行口座があった. 私が陽介に渡していた生活費や, 彼の実家への援助金とは別に, 大金が定期的に入金されている. そして, そのお金はどこかに送金されている. 送金先は, 松江役員の口座だった. 陽介は, 松江役員から受け取ったお金を, そのまま彼女に送金していたのだ. 二人の間に, 何があったのか. なぜ, 松江役員は陽介にお金を渡し, 陽介はそれを受け取って, また彼女に送金するのだろうか.

さらに遡ると, 陽介が多額の貯蓄を持っていることが判明した. 私が稼ぎ, 彼に渡していた生活費は, ほとんど手つかずのまま彼の口座に蓄えられていたのだ. 私があれほど身を粉にして働いたのは, 一体何のためだったのだろう. 私は自分を嘲笑った. 私はただの愚かな女だった.

私はすべての証拠を, 私のスマホに保存した. メッセージのスクリーンショット, 銀行取引明細のデータ. これらは, 私の復讐のための武器となる.

翌朝, 私は何事もなかったかのように振る舞った. いつものように朝食を作り, 陽介と彩葉に笑顔で「おはよう」と言った. 陽介は, 私が作ってくれたオムレツを美味しそうに食べている. その顔を見て, 私の心はさらに凍りついた.

朝食を終え, 陽介がコーヒーを飲んでいる間に, 私は切り出した. 「そういえば, 陽介. あなたの親戚の件, どうなったの? あの借金, そろそろ返済してもらわないと困るわ」

陽介は, カップを置く手が止まった. 「え? いきなりどうしたんだ? 今さらそんなこと言われても…」

「今さらじゃないわ. 私, 会社で新しいプロジェクトを始めることになったの. そのためには, まとまったお金が必要なのよ. だから, あの借金, 今すぐ返済してほしいの. 具体的には, そうね, 五百万くらいかしら」. 私は冷静に, しかし揺るぎない声で言った. 陽介の顔色が一瞬で青ざめる.

私は彼の反応を待たずに, 荷物を持って立ち上がった. 「それじゃ, 会社に行ってくるわ. あなたから, あなたの親戚に話しておいてくれる? 」. 私はそう言い残し, 家を出た. 一歩外に出ると, 冷たい朝の空気が私の顔を撫でる. 私の心は, この空気のように冷え切っていた.

続けて視聴する!
物語はいよいよ佳境へ!アプリに切り替えて続きを読む
全エピソードをロック解除
公式サイトを開く

おすすめの作品

婚約破棄、偽りの愛と真実 の小説カバー
8.4
結婚式を目前に控えた静世は、20年間連れ添った婚約者・勇輝から残酷な要求を突きつけられる。彼は重い心臓病を患う幼馴染・心穂の「最後の夢」を叶えるため、店の看板レシピを譲ると宣言したのだ。さらに勇輝は、5年前の火災で自分を救った恩人である心穂に対し、静世に無断で人工授精まで行っていた。反対する静世を「恩義を理解しない」と責め立てる勇輝。そんな中、心穂は自ら転倒して静世に突き落とされたと偽装し、勇輝はその嘘を信じて静世に謝罪を強要する。長年彼を支え続けてきた自負は打ち砕かれ、自分は彼の人生において脇役にすらなれていなかった事実に絶望した静世の心は、完全に冷め切ってしまう。彼女は迷うことなく結婚式の全予定を白紙に戻した。そして、本来であれば二人で店をオープンさせるはずだった当日。静世は裏切りに満ちた過去をすべて捨て去るため、たった一人でパリへと旅立つ飛行機に乗り込んだ。もはや彼女の瞳に、かつての愛した男の面影は残っていなかった。
妻の激怒、王朝は灰燼と化す の小説カバー
9.1
最愛の息子の命日、鎮魂のために訪れた神聖な山荘で私が目にしたのは、身重の愛人を慈しむ夫の姿だった。裏切りに打ち震える私に、夫は冷酷にも彼らの結婚披露宴への招待状を突きつける。さらに、送られてきた音声データには信じがたい事実が記録されていた。彼は、息子の死という悲劇に見舞われた私を「穢れた存在」と蔑み、自分の血筋に「純粋な」跡継ぎを迎え入れるため、私に無断で不妊手術を施していたのだ。愛した男の目的は、私を犠牲にして新たな一族の王朝を築くことだった。あまりにも身勝手で残虐な仕打ちに、私の心に宿っていた愛情は激しい復讐の炎へと変わる。すべてを奪われ、踏みにじられた妻としての尊厳を取り戻すため、私は決意を固める。彼らが幸福の絶頂に酔いしれる結婚式の当日、私はその場に乗り込み、彼が築き上げようとしている野望のすべてを灰燼に帰すことを。愛と憎しみが交錯する中、絶望の淵から立ち上がった一人の女性による、命懸けの報復劇がいま幕を開ける。
すでに別の男の妻なのでお構いなく の小説カバー
8.6
結城紗良は、相沢蓮司という男を盲目的に愛し続けてきた。蓮司の心には常に別の女性の影があり、一年の大半を海外にいる彼女に捧げ、挙句の果てにはその女性との間に子供まで授かっていた。それでも紗良は彼への想いを捨てきれず、卑屈なまでに愛を乞い、ついに結婚の約束を取り付ける。しかし、入籍当日。海外から戻った想い人のもとへ向かった蓮司は、役所に姿を現さなかった。この裏切りによって、紗良が七年間抱き続けた未練は完全に潰える。彼女は彼との連絡を断ち切り、思い出の街を去る決意をした。蓮司は「どうせすぐに泣きついて戻ってくる」と高を括っていたが、再会した紗良は、見知らぬ男性と共に婚姻届を手にしていた。形勢は逆転し、今度は傲慢だった御曹司の蓮司が、なりふり構わず彼女を追い回すようになる。「俺が愚かだった、やり直してくれ」と必死に縋り付く蓮司。だが、冷徹な視線を向ける紗良の口から出たのは、拒絶の言葉だった。「いい加減にして。私はもう、別の人の妻なの」
~政略結婚~CEOとの愛情頭脳戦 の小説カバー
8.0
周囲の目には誰もが羨む理想的なカップルとして映るメアリーとビル。しかし、その華やかな関係の裏側には、決して他人に明かせない冷徹な秘密が隠されていた。メアリーがビルの妻という立場を受け入れたのは、決して愛ゆえではない。病に苦しむ母親の莫大な医療費を工面するため、彼女は自らの自由と引き換えに、彼との「結婚契約」を交わしたのである。二人の間にあるのは愛ではなく、利害の一致のみ。そう割り切っていたはずの二人だったが、ある日を境に予期せぬ劇的な事態が巻き起こる。これを機に、冷淡な契約関係は互いの本心を読み合うスリリングな心理戦へと変貌を遂げていった。果たして、どちらが先に心の境界線を越え、この高度な愛情頭脳戦を仕掛けたのか。その真相は誰にも分からないまま、後戻りできない恋の駆け引きが幕を開ける。大富豪のCEOと契約妻が繰り広げる、プライドと情熱が火花を散らす現代ロマンス。互いの意地がぶつかり合う中、偽りの結婚生活の果てに二人が辿り着く結末とは。
結婚式で奪われた私のウェディングドレス の小説カバー
8.1
幸せの絶頂であるはずの結婚式。しかし夫の弘樹は、私のウェディングドレスを強引に奪い、心臓を患う幼馴染の女性に着せました。「彼女の最期の願いを叶えたい」という身勝手な理由で、私は祭壇に置き去りにされたのです。抗議する私を冷たく突き放したのは、実の両親と弟でした。夫の財力に依存する家族にとって、私は単なる搾取の対象でしかありません。貯金を使い込まれ、妊娠中の体さえ顧みられない絶望の雨の中、私は夫の愛が支配であり、家族との絆が偽りだったと悟ります。お腹の子との別れを決意した私は、不倫隠蔽のために軟禁される中で、復讐の牙を研ぎながら従順な妻を演じ続けました。そして迎えた、夫が自身の保身のために仕組んだ謝罪会見の生中継。全国にカメラが向けられる中、私は隠し持っていた不貞の証拠を突きつけます。これまで虐げられてきた女による、冷酷で完璧な反撃がいま始まります。裏切り者たちに慈悲などいりません。全てを失わせるための、真実の暴露が幕を開けます。
「私があなたを一生養う」と誓った相手は、世界で最もミステリアスな富豪でした の小説カバー
9.7
自身の結婚式という晴れ舞台で、神崎澄玲は妹と共に水に落ちる。しかし婚約者の藤咲修司は、澄玲を見捨てて妹だけを救い去っていった。裏切りに直面した彼女は、その場で自分を救ってくれた命の恩人と電撃結婚することを決意する。相手は無一文の自動車整備士に見えたが、澄玲は「自分が一生彼を養う」と心に誓うのだった。元婚約者は「当てつけはよせ」と復縁を迫り、妹は偽善的な言葉で嘲笑するが、澄玲は周囲の反対を押し切り夫を大切に育んでいく。誰もが彼女の選択を正気ではないと疑ったが、ある日、夫の驚愕の正体が判明する。貧しい整備士だと思われていた彼は、実は世界で最も謎に包まれた大富豪であり、名家を統べる当主だったのだ。かつて澄玲を見捨てた者たちが愕然とする中、彼は最高級のダイヤモンドを手に彼女の前で膝をつく。かつての誓いとは逆に、ミステリアスな夫は愛に満ちた瞳で「今度は俺が君を一生養う」と告げるのだった。