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ゴミ扱いされた私が、実は世界的権力者だなんて言えない の小説カバー

ゴミ扱いされた私が、実は世界的権力者だなんて言えない

幼い頃に全てを奪われ、孤独の中で育った池田新奈。彼女はかつて自分から母や居場所を奪った者たちへ復讐し、本来あるべき権利を取り戻すため、再び上京市へと足を踏み入れる。しかし、世間は彼女を「落ちこぼれの不良娘」と蔑み、冷酷な視線を向けるばかりだった。そんな中、街を牛耳る権力者・横山宴之介が彼女を妻に迎えると宣言し、周囲は「正気か」と騒然となる。だが、宴之介だけは新奈の真の姿を見抜いていた。彼女は伝説の神医、世界屈指のハッカー、そして王室すら畏敬する天才調香師という、世界を揺るがす複数の顔を持つ実力者だったのだ。夫の執拗なまでの溺愛に戸惑いながらも、新奈は彼の手を借りずとも圧倒的な力で敵を追い詰めていく。会議中であっても彼女を離そうとしない宴之介の過保護ぶりに周囲が呆れる中、新奈の隠された正体が次々と暴かれていく。かつて彼女をゴミのように扱った人々は、そのあまりに強大な真実に直面し、絶望と後悔に震えながら跪くことになる。愛と復讐が交錯する中、最強の令嬢による華麗なる逆襲劇が今、幕を開ける。
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3

最終的に、池田家は新奈を家族として迎え入れることを認めた。

しかし、その決定を巡り、正徳と、現在の妻・舒乃が激しく対立し、収拾のつかない状態に陥ったということを新奈は伝え聞いていた。

その日の夕方、新奈は知里のために、一度目の献血を行った。

知里は失血が多すぎたため、今後も彼女のために複数回の献血を行う必要があった。

新奈はいつでも対応できるよう、病院のVIP病室に入院することになった。

ブブッ。スマホが突然、二度震えた。

新奈はスマホを手に取り、届いたメッセージを確認した。

想乃:「横山家の若様き当主、横山宴之介がね、今、街じゅうをあげて、ある人を探してるんだって。20歳前後で、医術の心得があって、鎖骨の上に黒い三日月形の入れ墨がある人らしいよ」

メッセージを一読し、彼女は冗談めかして返信した。「奇遇ね、全部私に当てはまる」

想乃:「ちょっと、ふざけてる場合じゃないわよ!もしかしたら、彼が探しているのはあなたかもしれないんだから」

新奈:「心当たりないんだけど。恨みを買うようなことした覚えもないし」

想乃:「もう一度よく考えてみて。彼を怒らせたとか、何かしてない?」

新奈は、彼女が心配しすぎているだけだと受け流した。

「私、どれくらいの間、上京市から離れてたと思ってるの? あり得ないわ。ただの偶然よ。気にしないで」

最後のメッセージを送ると、相手からの返信はそれきり途絶えた。

こうして、その日のやり取りはそこで終わった。

新奈はあれこれと思案した末に、やはりインターネットで調べてみることにした。

キーワードを打ち込んだ途端、画面に踊り出たのは、無機質な一行だった。

「横山宴之介、28歳」

それだけだった。

新奈:「……」

なんだか、妙に秘密めいている。

彼女は興味を掻き立てられ、スーツケースからタブレットを取り出すと、USBメモリを差し込んだ。華奢な指がキーボードの上を滑るように、目にも留まらぬ速さでコードを打ち込んでいく。

ほどなくして、コードが乱れ飛ぶ画面に、簡素なダイアログボックスが現れた。

「もしもーし。人探し、頼める?」

「ターゲットは?」

新奈の指が素早く走る。「横山宴之介」

「了解。3日」

満足のいく返答を確認すると、彼女はコードの渦巻く画面を閉じた。

時を同じくして、南川別邸では――。

上京市でも一等地とされる場所に建つ豪邸は、煌々と明かりが灯っていた。

「何か、手がかりは見つかったか?」

広大な寝室で、横山宴之介は窓辺に身を寄せるように立っていた。

その立ち姿はどこまでも凛としていた。重傷を負っているとは思えぬほど、その佇まいは圧倒的な存在感を放っている。

指先には煙草が挟まれ、先端の火が、明滅するようにちらついている。

藤井颯太は深くうつむき、答えた。「いえ、まだ掴めておりません」

宴之介は眉間の皺をいっそう深く刻み、手にした煙草を灰皿に捻じ込むようにして火を消すと、冷ややかな声で命じた。「――探し続けろ」

「承知しました」

応じた後、颯太は懐から金箔の施された招待状を取り出し、宴之介の前に恭しく差し出した。

「若様、もう一件ご報告が」

宴之介は手にした招待状に視線を落とし、眉根を寄せて問いかけた。「どこの家だ?」

「池田家のお披露目会だそうです。池田正徳が外で作った娘を家に迎え入れられることになりまして……。池田藤幸様より、若様には「是非ともご出席を」とのことです」

「「是非とも」か……」宴之介は薄い唇の端を歪め、どこか面白がるように繰り返した。

颯太は探るように尋ねた。「お断りいたしましょうか?」

若様は滅多に宴席に顔を出されない。この程度の誘い、普段なら見向きもされないはずだ

池田家の当主が再三懇願してきたのでなければ、わざわざこの招待状を若様の前に運ぶことすらなかっただろう

宴之介は招待状を指先でつまみ上げると、その底知れぬ瞳に、真意の読み取れない色が濃く滲んでいた。

この池田家の私生の娘――大したものだ。自分ひとりのために、池田家をここまで動かすとは

彼は不意に考えを翻した。「いや、池田藤幸に伝えろ。必ず行くと」

お披露目会の当日、空は晴れ渡り、雲ひとつなかった。

新奈は病院を抜け出し、車を郊外の山へと走らせた。

険しい山道にもかかわらず、彼女は慣れた足取りで迷いなく母の墓へと辿り着いた。

ぽつんと佇む墓には墓標もなく、雑草だけが深く生い茂っていた。

この道に通じている者でなければ、簡単には辿り着けなかっただろう。

新奈は墓の前に跪くと、生い茂る雑草を一本、また一本と丁寧に抜き始めた。

その手つきは慈しむように優しく、静かだった。永い眠りについた母を、決して起こさぬように。

やがて、彼女は深く身をかがめて額ずき、冷たい土に額を押し当てたまま、しばらく身じろぎひとつしなかった。

(もうすぐよ。お母さんが手にするはずだったもの、私が全部取り戻してあげる)

もう一度静かに手を合わせると、彼女は立ち上がり、迷いのない足取りでその場を後にした。

宴は午後に予定されていた。ホテルに戻った新奈は着替えを済ませ、プロのヘアメイクを呼んで支度を整えた。

全ての支度が整う頃には、窓の外はすでに夕暮れの色に染まっていた。

約束の時間は過ぎていた。スマホの画面には正徳からの不在着信が、20件以上ずらりと並んでいた。

それでも新奈は慌てることもなく、階下で荷物を受け取ってから、ようやく出発の準備を整えた。

その頃、池田家の本邸では、この突如現れた私生の娘の到着を、誰もが待ち構えていた。

しかし、主役はいつまで経っても姿を見せず、ざわめきがあちこちで囁きへと変わっていった。

最も苛立ちを募らせていたのは、正徳の妻である舒乃だった。

彼女は普段から正徳に遠慮というものがなく、この時も忌々しげに悪態をついていた。「あの娘が日取りを決めた時から分かってたわ。わざとなのよ!よりによってあの女の命日を選ぶなんて、私たちへの当てつけじゃない!」

「どうしてこんなに都合よく、知里にあんなことがあった途端、RHマイナスの血が街から消えるのよ! あの子が戻ってきてから、ろくなことがない!これじゃあ、これからも先が思いやられるわね!」

(本当に、一体どうなってるんだ)

正徳は無言のまま俯き、こめかみに浮かんだ血管が、かすかに脈打っていた。

その時だった。玄関の方が、にわかに騒がしくなったのは。

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