
天才と狂人、血塗られた共犯関係から始まる究極の純愛
章 2
藤原浩二は振り返り、リビングの端に立つ藤原美月を見た。色あせたデニムの服を着て、ボロボロの編み袋を背負い、田舎くさい三つ編みを2つ作っている彼女を見て、彼は眉をひそめて黙り込んだ。
藤原莉乃は美月を険しい目で睨みつけた。「お父様!この不細工は誰なの!」
「馬鹿なことを言うな。お前の姉だ」 浩二は不機嫌そうに言った。
莉乃は姉という言葉を聞くや否や、すぐに立ち上がった。「はっ!これが貧乏人の中で育ったっていう、私の不細工なお姉様?」
莉乃は新しくしたネイルをいじりながら、美月を指差した。「やっぱりね、貧乏で不細工で、おまけにがめつい!お父様、どうせこの女が帰ってきて、あの死に損ないに喜んで嫁ぐって言ってるんだから、行かせてやればいいじゃない」
浩二は険しい表情を浮かべた。彼がこのいまいましい娘を呼び戻したのは、美月の母親が死ぬ前に彼女に残した遺産を手に入れるためでしかないのだ!
だが、彼女を九条家に嫁がせれば、もっと割のいい取引になるかもしれない。
九条グループとの今後の提携を勝ち取れるだけでなく、彼女を桜京市に留め置き、自分の手中で操り続けられる!!
浩二は顔を上げ、計算高い視線を美月に向けた。「お前が嫁ぐというならそれでもいい。だが、お前の母親が残したものは、藤原家に置いていくんだな!」
浩二の言葉を聞いて、美月はまるで冗談でも聞いたかのように笑い出した。
彼女はリビングに入ると、浩二たちの向かいのソファに無造作に腰を下ろし、テーブルの上のコップを手に取って、遠慮するそぶりも見せずに水を飲んだ。「勘違いしてもらっちゃ困るわね。今、頼んでるのはアンタたち。条件を出すのは、こっちよ」
「この田舎者の不細工が!九条家に嫁げるだけでもありがたいと思いなさいよ!私たちに条件を出すなんて、どの口が言ってるの!」
美月は言った。「そのありがたい話、あなたにあげようか?欲しい?」
莉乃は美月の軽い一言に言葉を詰まらせ、顔をしかめて座り込むと、父親の腕を揺すった。「あんたっ!お父様!何か言ってよ!」
浩二は鼻で笑った。「九条家は桜京市で最も権力のある一族だ。お前を嫁がせるだけでも身に余る光栄だろう。それなのに、私に条件を突きつける度胸があるのか? !」
美月は眉を上げ、手にしていたコップを置いた。「話にならないわね。結構よ。それなら、そっちの可愛い娘さんにでもお嫁に行ってもらって」
莉乃はまたしても騒ぎ立てた。「お父様!あんな死に損ないに嫁ぐなんて絶対に嫌よ!」
浩二は眉間に皺を寄せ、莉乃の声を遮ると、美月に視線を向けた。「いい加減にしろ!」
この娘はみすぼらしい身なりをしていて、見た目もひどいものだが、その瞳だけは母親に瓜二つだった。
美月のその目を見つめていると、浩二はまるで10年前のあの光景を思い出したかのように、全身を震わせて勢いよく立ち上がった!
美月は背もたれに寄りかかり、わずかに視線を上げて向かいの男を見つめた。一歩も引く気はない。
浩二は美月を睨みつけた。「言ってみろ。どんな条件だ」
「簡単なことよ」
美月は指を2本立てた。「条件は2つ。1つ目は、母が藤原家に残した遺品を私に返すこと。2つ目は、藤原ホールディングスの株の30%を譲ること」
莉乃がすかさず立ち上がり、地団駄を踏んだ。「寝言は寝てから言いなさいよ!藤原の株を30も要求するなんて!貧乏で頭イカれたんじゃないの!」
浩二はしばらく美月をじっと見つめた後、口を開いた。「持参金として、藤原の株を10%やろう」
美月は笑い出し、小首を傾げて浩二を見た。「たかが20%ぽっちの株が、そんなに惜しいのかしら?」
「もちろん、私じゃなきゃダメってわけじゃないわよね。ここにもう一人、娘さんがいるんだものね?」
「わかった」
浩二は歯を食いしばって言った。「藤原ホールディングスの株の20%、今日中に名義を変更してやる」
浩二は美月を見て言った。「だが、お前の母親の遺品は、絶対に藤原家に残していくんだ!」
美月の顔から笑みがスッと 消え失せ、浩二を見つめる瞳に冷たい光が宿った。
どうやら、今日は母の遺品を取り戻せそうにない。
浩二はきっと、母の遺品を使って彼女をコントロールするつもりなのだ。
ならば、藤原家に思い知らせてやらなければならない。復讐のために戻ってきた狂人を支配しようとすれば、どれほどの代償を払うことになるのかを!
美月は口元に笑みを浮かべて言った。「いいでしょう。じゃあ、まず契約書にサインを」
契約を済ませ、株式譲渡契約書を手にした美月は、立ち上がってそれをひらひらと揺らした。「それじゃ、お邪魔したわね」
浩二が言った。「待て!九条家はそう簡単に騙せる相手じゃない。私が送って行く」
車に乗ると、浩二は美月に資料を渡した。「これは九条家に関する基本的な資料だ。しっかり頭に叩き込んでおけ。九条家に入ったら、藤原家に迷惑をかけるんじゃないぞ!」
何気なく資料をめくり、最初のページにある九条怜司の顔写真を見た瞬間、美月は妖しく口元を歪めた。
(本当に意外だわ。私たち、また会えるのね!)
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