フォローする
共有
天才と狂人、血塗られた共犯関係から始まる究極の純愛 の小説カバー

天才と狂人、血塗られた共犯関係から始まる究極の純愛

母の遺品を奪還するため、藤原美月は身代わりの花嫁として九条家へ嫁ぐ決意をする。その相手は、残忍な性格で車椅子生活を送り、余命いくばくもないと噂される御曹司・九条怜司だった。周囲は「無能な女と短命な男の無様な結婚だ」と嘲笑し、彼女がすぐに追い出されることを確信していた。しかし、美月の正体は世間を震撼させるものだった。建築デザイン界の巨匠、伝説の天才医師、さらには世界を裏から支配するダークウェブのトップ。幾多の顔を持つ彼女の真実が明かされるたび、首都圏は驚愕に包まれていく。一方、怜司もまた、冷酷な狂気を秘めた侮れない男であった。初めは水と油のように激しく反発し合い、互いの腹を探り合っていた二人だったが、共に過ごす中で次第に唯一無二の絆を育んでいく。そして全世界が生中継で見守る豪華な結婚式の最中、怜司は衆目の前で跪き、彼女に愛を誓う。「美月、君こそが私の人生を照らす唯一の光だ」。最強の裏の顔を持つ二人が織りなす、究極の相互救済と溺愛の物語が幕を開ける。
共有

1

「死にたくなければ動くな!」

首筋にナイフが突きつけられ、藤原美月は視線を上げ、たった今車のドアを開け、血まみれのまま乗り込んできて彼女を脅している男と目を合わせた。

2人が睨み合っていると、窓の外から騒々しい声が聞こえてきた。

「クソッ!どこだ? どこに逃げやがった!」

「さっき怪我を負わせたから、遠くへは行けないはずだ!車を1台ずつ探せ!」

隣の男のナイフを握る手が明らかに小刻みに震え出したのに気づき、美月は男の手首を掴むと、身を翻して彼の上に馬乗りになった。

九条怜司の目に殺意が走り、美月の首に当てたナイフに力を込めた。「死にたいのか!」

女の首にすぐさま血の跡がつき、血が流れ出した。

美月は脅されているという危機感を微塵も見せず、美しい目を伏せ、怜司のドクドクと血が吹き出している腹部を見た。「あなたが先に死ぬか、私が先に死ぬか、見ものね」

美月の喉に押し当てられたナイフがさらに食い込み、怜司は死人を見るような目で彼女を見た。「試してみるか!」

追手たちが車に近づいてくる足音を耳にし、美月は手早く自分の上着を脱ぎ、中のシャツのボタンを一気に引きちぎった。

ボタンが後部座席に散らばり、シャツが半ばはだけて肌の大半が露わになる中、美月は脚を開いて怜司の上に深く腰を下ろした。

怜司は美月の首を絞めていた手をパッと離し、彼女を凝視した。ーーこの狂った女は何をするつもりだ!?

怜司が動こうとした次の瞬間、美月は身を乗り出して彼の首に抱きつき、その唇にキスを落とした。

ーーこの忌々しい女、よくも……

怜司は瞳を揺らし、手を上げて彼女を突き飛ばそうとしたが、耳元で女の声が聞こえた。

「生きたいなら、私に合わせて」

長年生きてきて、見知らぬ女に強引にキスされるなど。たとえ重傷を負っていても、怜司は今すぐ自分の上で好き勝手しているこの女を殺してやりたかった。

美月はうつむいて彼の喉仏にそっと歯を立て、指で彼の襟元のボタンを外し、人差し指で男の胸の肌をそっとなぞる。男の震えを感じ取ると、彼女は満足げに唇の端を吊り上げた。

「くっ!」

怜司は眉をひそめてくぐもった声を漏らし、痛みと熱さで次第に呼吸が荒くなっていった。

突然!

後部座席のドアが、勢いよく開けられた!

「きゃっ!」美月はわざと慌てた様子で怜司の首にしがみつき、驚いたような目で外の数人を振り返った。「あなたたち、何なの!」

外の男たちは、美月の胸に顔を埋めている男を一瞥し、さらに服が乱れて怯えている美月を見ると、バンッと音を立ててドアを閉めた。

「チクショウ!ここは駐車場でいちゃついてるバカどもだ!あっちを探せ!」

声が遠ざかると、怜司は手を上げて美月を突き飛ばした。「どけ」

ちょうどその時、誰かが運転席のドアを開けて乗り込んできた。怜司の目つきが鋭さを増し、すぐにでも動けるようナイフを握り直した。

「美月さん!」

神谷拓真は男の上に座っている美月を見て、飛び上がるほど驚いた。「どうしたんですか? !」

美月は身を翻して怜司の上から降り、傷口を押さえてすっかり弱っている彼を一瞥して、ふっと笑った。「何でもないわ。とりあえず車を出して」

車が駐車場を出た後、怜司はスーツのポケットから黒い名刺を1枚取り出した。「助けてもらった礼だ、1つだけ、望みを叶えてやる」

血まみれの名刺を嫌そうに受け取ると、美月は傍らのガラス瓶から赤い錠剤を1つ取り出し、怜司に差し出した。「生き延びてから言って。飲んで」

怜司はしばらく美月を見つめた後、薬を手に取って飲み込んだ。

美月は眉を上げた。「毒殺されてもいいの?」

怜司が寄りかかったまま黙っているのを見て、美月は前で運転している拓真に目を向けた。「この辺の私立病院の前にでも、そいつを捨てといて」

「分かりました、美月さん」

厄介者が車を降りた後、拓真はバックミラー越しにメイクをしている美月を見た。「美月さん、あの人は大丈夫なんですか? 今回藤原家に戻るのは奥様の遺物を取り戻し、連中と縁を切るためなんですから、桜京市でトラブルは起こさないでくださいよ」

メイクミラーの中の自分を見つめ、美月は満足げに言った。「安心して、この姿なら誰も私だと気づかないわ」

先ほどまでの息を呑むような美女は、美月の神がかったメイク技術によって、目を背けたくなるような顔に変わっていた。

褐色のあざが美月の右顔の半分を占め、さらに無数のシミが描かれている。そこに黒縁メガネをかければ、人混みに紛れてもひどく醜く見えるだろう。

美月は上機嫌で、無意識に首元のネックレスに触れようとしたが、指先は空を切った。

彼女ははっとして首元をまさぐる。(——ない! 私のネックレスが!)

先ほど自分の首を絞めていた男を思い出し、美月の美しい瞳が冷え込んだ。「助けてやったのに、私のものをパクるなんて!」

拓真が尋ねた。「どうしました、美月さん?」

「何でもないわ」

美月は指で首元をさすった。「とりあえず藤原家に戻るわ」

使用人が美月をリビングの前に案内した時、中から言い争う声が聞こえてきた。

パシャン!

花瓶が床に叩きつけられて割れ、藤原莉乃がリビングで地団駄を踏んでいた。「嫁がないわ!お父さん!私を九条家のあのポンコツに嫁がせるくらいなら、死んだ方がマシよ!」

「何を馬鹿なことを!」藤原浩二は莉乃に腹を立てて目を剥いた。「九条家は桜京市で最も権力のある一族だ。あの九条怜司は 足は不自由でも、それでも嫁ぎたがる家は掃いて捨てるほどいるんだぞ!」

「ポンコツなだけじゃなくて、もう長くないってことも言ってよ!」 莉乃は泣き出した。「私に若後家になれっていうの?!」

バンッ!

浩二は机を強く叩いた。「この件にお前の意思は関係ない!」

莉乃は叫んだ。「絶対に嫌!嫁ぎたい奴が嫁げばいいでしょ!」

堂々と桜京市に残るチャンスが、向こうからやってきたじゃない。それを聞きながら、美月の瞳に微かな笑みが浮かんだ。

ホールに足を踏み入れ、美月は通る声で言った。「あなたたちが言っているそのポンコツ、私が嫁ぐわ!」

おすすめの作品

人違いから始まった、冷徹社長の身も心も溶かすような束縛愛。 の小説カバー
8.0
恋人に浮気をされた挙句、「顔が良いだけだ」と心ない言葉を投げつけられた陸田由梨。その屈辱を晴らすため、彼女は自身の美貌を武器に、自社の社長である佐伯征之と衝動的に一夜を共にしてしまう。しかし、事の重大さに気づいた由梨は、その場から逃げ出すという失態を演じた。さらに、夜の相手を社内でも有名な遊び人の三浦正俊だと思い込むという致命的な勘違いまでしてしまう。この人違いが原因で、二人の関係は複雑に絡み合い、予期せぬすれ違いが次々と巻き起こっていく。一方、由梨の思い人が自分ではなく別の男であると誤解した佐伯は、冷静沈着な仮面の裏で、激しい嫉妬の炎を燃やし始めていた。プライドを傷つけられた女性と、独占欲を募らせる冷徹な社長。人違いから始まった歪な関係は、次第に逃げ場のないほどの深く甘い束縛愛へと変貌を遂げていく。由梨の勘違いが解けるとき、冷徹な社長が隠し持っていた真実の熱情が彼女の身も心も溶かし尽くす。
元妻に跪く冷徹社長 の小説カバー
8.7
三年前、周囲の冷ややかな嘲笑を浴びながらも、彼女は植物状態に陥った彼を献身的に支える決意を固め、結婚した。しかし三年後、彼女が不治の病に侵され、苦渋の決断で中絶を余儀なくされたその時、夫は別の女性のために世間の注目を浴びるほどの巨額を投じていた。手術室から出てきた時、夫への深い愛は完全に尽き、彼女の心は死んだも同然だった。彼女は「離婚しましょう」と告げ、彼との決別を選ぶ。離婚して他人になれば、彼は華やかな女性関係を謳歌し、自分は残された人生を静かに過ごすはずだった。ところが、冷徹で高慢だったはずの元夫が、プライドをかなぐり捨てて彼女の前に跪いたのだ。「俺が悪かった、頼むから戻ってきてくれ」と懇願する彼。しかし、差し出された薔薇の花束を彼女は冷たく拒絶し、毅然とした態度で言い放つ。「もう遅すぎるわ」と。かつての献身を裏切られた女と、失って初めて後悔に苛まれる男。二人の関係は修復不可能なほどに壊れていた。
クズ夫に復讐!離婚後、世界一の大富豪と結婚!? の小説カバー
8.4
極秘結婚から三年、曽根明里は待ちに待った結婚式を目前に控えていた。しかしその前夜、長年尽くしてきた夫から放たれたのは、別の女性と結婚するという非情な宣告だった。「彼女は命の恩人なんだ。今度は僕たちが彼女を支える番だろう?」という夫の身勝手な理屈に、明里の愛は完全に冷め切ってしまう。これ以上、日陰の身として耐え忍ぶ必要はない。形だけの偽装離婚のはずが、明里にとっては未練を断ち切る真の決別となった。自由を手にした彼女の前に現れたのは、冷酷非道と恐れられる世界一の大富豪。彼は明里を力強く抱き寄せ、彼女に固執する元夫を冷徹な眼差しで見下ろす。「勘違いするな。今、明里は俺の女だ」と。一方、離婚後に初めて彼女の価値に気づいた元夫は、狂おしいほどの後悔に苛まれていた。必死に復縁を乞う元夫だったが、明里の隣にはすでに、圧倒的な権力を持つ新たな伴侶がいた。裏切りから始まった第二の人生で、彼女は真の愛と至高の幸福を掴み取っていく。
「その胸を削るくらいなら俺が頂く」~狂犬ドクターの歪んだ全肯定~ の小説カバー
8.3
類まれな美貌と豊満な肢体のせいで、幼い頃から同性には疎まれ、異性からは卑猥な視線に晒されてきた主人公。信じていた幼馴染の男にさえ都合よく扱われ、彼女は彼に愛されたい一心で、自らの体を削る胸の縮小手術を決意し美容外科を訪れます。そこで出会ったのは、高潔で禁欲的と名高い医師でした。彼は彼女を歪んだ色眼鏡で見ることなく、「恋人の身勝手な美意識は手術の理由にならない」と断言し、彼女の存在を全肯定します。周囲の嘲笑や悪意から彼女を毅然と守り抜き、危機に陥った際もいち早く駆けつけて救い出した彼。その献身的な支えによって、彼女は他人の評価に怯える日々を卒業し、本来の輝きを取り戻していきます。一方、失って初めて彼女の価値に気づいた幼馴染は、後悔に震えながら復縁を乞いますが、時すでに遅し。政財界に絶大な影響力を持つ名門の御曹司でもある医師は、彼女を独占するように抱き寄せ、冷徹に告げました。「彼女はもう、私のものだ」と。これは、孤独な女性が真実の愛によって自己を解放する、波乱に満ちたロマンスです。
彼の致死量の溺愛は、私をゆっくりと殺す毒でした の小説カバー
9.7
冷戦状態が続いて半月、私は夫のスーツから一枚の中絶手術同意書を見つけてしまう。そこには彼が慈しむ幼馴染の女の名前が記されていた。用紙をそっと元の場所に戻すと、彼はバックミラー越しに私を冷たく一瞥し、友人の付き添いで取り違えただけだと吐き捨てるように言った。冷徹な実業家として知られる彼だが、彼女の言葉だけは盲目的に信じ込んでいる。これは彼女からの明白な宣戦布告なのだ。静寂に包まれた車内、彼は高級宝石店の前で車を止めると、私の髪を優しく撫でながら囁いた。「誕生日プレゼントに指輪を選ぼう。そのついでに、来月入籍するんだ」と。かつては愛だと信じていた彼の過剰なまでの甘やかしは、今や私を蝕む毒でしかない。溢れ出す涙を手の甲に落としながら、私は静かに決意を固める。彼はまだ気づいていない。私がもう、彼との未来を待つつもりなどないということを。歪んだ愛に囚われた二人の関係は、修復不可能な破滅へと向かって加速していく。
彼の秘められた跡継ぎ、彼女の逃亡 の小説カバー
9.8
画家として念願だった初の個展。その輝かしいオープニングの夜、夫は私の隣に現れなかった。彼がどこで何をしていたのか、私は残酷な形で知ることになる。テレビのニュース画面の中で、夫は無数のフラッシュを浴びながら、別の女性を熱心に守っていたのだ。ギャラリー中の視線が突き刺さる中、私の世界は音を立てて崩壊した。追い打ちをかけるように届いたのは、「佳菜子さんが俺を必要としている。君なら一人でも大丈夫だろう」という冷酷なメッセージ。夫は数百億円規模の企業を築き上げたが、その礎が私の芸術であったことなど忘れ去り、長年私の活動を「趣味」と蔑んできた。私は彼にとって、もはや存在しないも同然だったのだ。これ以上の屈辱に耐えるつもりはない。私は弁護士に連絡し、夫の傲慢さを利用したある計画を打ち明けた。私を会社から追い出すためなら、彼は中身も見ずに書類に署名するはずだ。私は離婚届を退屈な知的財産の許諾書類に偽装し、彼に突きつける決意を固めた。静かな復讐と、自由への逃亡がここから始まる。