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追放された令嬢、実は最強大富豪の娘でした の小説カバー

追放された令嬢、実は最強大富豪の娘でした

長谷川家の令嬢として二十年以上も何不自由なく育ってきた絵渡。しかし、血縁関係がないことが発覚した途端、真の令嬢による策略で家を追われ、世間の嘲笑の的となってしまう。行き場を失い、実の両親が待つ農村へ戻った彼女を待ち受けていたのは、予想だにしない真実だった。実は彼女の本当の父親は、国一番の大富豪だったのである。各界の頂点に君臨する天才的な兄たちに溺愛され、平穏な日々を送る絵渡だったが、彼女自身もまた、伝説のハッカーや舞踊界のカリスマといった、驚愕の裏の顔を隠し持っていた。再会したかつての家族や元恋人が彼女を見下し、貧乏人だと罵るなか、絵渡はその圧倒的な実力と財力で次々と報復を果たしていく。さらに、夜京を支配する強大な権力者が夫として現れ、彼女を全力で守り抜くことを誓う。偽りの令嬢という立場を捨てた絵渡が、真の富と才能を武器に、自分を貶めた者たちを震撼させる逆転劇が幕を開ける。華やかな社交界の裏側で、彼女の真の輝きがすべてを圧倒していく。
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「絵渡、長年うちで育ててきたのに……よくもこんな裏切りができたわね。もううちには置いておけない。出ていきなさい!」

目の前に立つ長谷川夫人は、品のある装いの裏にあからさまな嫌悪をにじませながら、絵渡を睨みつけていた。

「お母さん、違うの……私が階段から落ちたのは、自分の不注意のせいなの。お姉ちゃんは関係ないわ!」

ソファに座る少女が涙ぐみながら訴えた。膝には包帯が巻かれ、どこか儚げなその姿は、見る者の同情を誘う。

ほんの三十分前、長谷川家の本当の娘――恋夏は二階から階段を転げ落ちた。その場にいたのは絵渡ひとり。

誰もが彼女の仕業だと決めつけた。

一週間前、記者会見で「家族同然」と涙を見せていた長谷川家の人々は、今やまるで人が変わったように絵渡を責め立てている。

絵渡は俯いたまま、目の奥に嘲りの光を浮かべた。

――ついこのあいだまで、彼女は長谷川家の「たったひとりの娘」だった。 寵愛はされていなかったが、少なくとも衣食住に困ることはなかった。

だが、ある日、長谷川会長が倒れ、輸血が必要になったことで事態は一変する。家族全員が血液型の検査を受けた結果、絵渡は長谷川家の血を引いていないことが判明したのだ。 驚愕と混乱の中、長谷川会長はすぐにあらゆる人脈を使って真相を突き止め、本物の娘――恋夏を見つけ出した。

快川城でも名の知れた名家、長谷川家。だからこそ、あの騒動のことは瞬く間に広まった。もっとも、長谷川家は昔から世間体を気にする家だ。外にはこう言っていた――「これまで育ててきた娘ですから、すぐに手放すことなどできません。絵渡は、しばらくうちの娘として育てていきますよ」と。

だが実際のところは、世間の耳目が落ち着いた頃合いを見て、彼女をひっそりと元の家に戻すつもりだった。

本当の娘――恋夏が戻ってきてからは、長谷川家の空気は一変した。絵渡の存在こそが、恋夏をこれまで苦しめてきた元凶だと決めつけられたのだ。それ以来、絵渡はかつての自室を追われ、物置部屋に押し込まれた。

家事全般を一手に引き受けさせられ、掃除に洗濯、食事の支度まで。今では、使用人よりも扱いが悪い。

それでも恋夏は、絵渡の存在すら我慢ならなかった。

ここ数日、何度も罠を仕掛けては彼女を陥れようとした。

だが長谷川会長夫妻は、それを見て見ぬふり。どころか、絵渡に対する態度は日に日に冷たさを増していた。

絵渡は、この機に長谷川家の本性をはっきりと見極めた。もう黙って耐えるつもりはない。

顔を上げ、恋夏をまっすぐに見据える。「出ていくわ。でも、なにも知らないまま追い出されるなんてまっぴら。これまでずっと、あなたの代わりに汚名をかぶり続けてきたの。もう十分でしょ、恋夏!」

その鋭く冷ややかな眼差しに、恋夏の背筋がぞくりと震えた。

これがあの、いつも耐えてばかりいた絵渡……?

目の奥に、ねっとりとした陰が差す。

(この女……!)

真の長谷川家の娘は自分なのに、どうしてこいつが長谷川家の栄華を享受しているのか。

絶対にこの偽物を追い出してやるんだから。

恋夏は、何食わぬ顔でか細く訴えた。「お姉ちゃん、なに言ってるのか分からない……。 私、お姉ちゃんに嫌われてるのは知ってるよ。だって、私が戻ってきてから、パパとママの愛情を奪っちゃったみたいで……だから今までずっと我慢してきたの。でも、私の脚……。 ダンスが大好きなの、知ってたよね?どうしてそんなことを……。お姉ちゃんも踊るのが好きだったなら、無理に大会の枠を奪ったりしなかったのに……」

つまり、絵渡が自分を傷つけたのは、全国ダンス協会の大会出場枠を巡ってのことだ――そう言いたいのだった。

その言葉に、長谷川夫人の目にはますます嫌悪がにじむ。「恋夏、あなたには天から授かった才能があるのよ。あんな子とは比べものにならない。 大会の枠なんて、最初からあなたのものじゃないの!それに――絵渡、荷物をまとめて、今すぐ出ていきなさい!」

(絵渡って子は……まるで死人みたいな顔して、一体誰に見せてるのかしらね)

(やっぱり恋夏の方がずっといいわ。性格は素直で聞き分けもいいし、ダンスの才能だって申し分ない。これこそ私たちの娘よ)

黙って話を聞いていた長谷川会長が、深いため息をついた。そして静かに口を開く。「絵渡、元々は世間の目が落ち着いてから改めて送るつもりだったんだが……まさか恋夏にあんな悪意を向けるとは思わなかったよ。 今日、もう連れて行くことにした」

恋夏はその言葉を聞くと、目を輝かせて喜びをあらわにした。

だが絵渡は、表情ひとつ変えずにその場を離れ、荷物をまとめに向かった。

なかなか降りてこない彼女に、恋夏は不安を覗かせる。「まさか、全部持ってくつもりじゃないでしょうね……」

ここは長谷川家。すべて自分のものだ。偽物に好き勝手されてたまるものか。

そんなとき、ちょうど絵渡が階下に現れた。彼女の背には黒いバッグひとつ。それだけで、もともと透き通るように白い肌がさらに際立ち、視線を向けるだけで、くっきりとした黒と白の対比が目を射抜く。その眼差しに射すくめられ、長谷川会長はとっさに視線を逸らした。なぜか胸の奥がざわつく。

そんな様子をよそに、長谷川夫人は眉をひそめた。(……少なすぎじゃない?) 「何を持っていくつもりなのかしら、ちょっと見せてくれる?」

「もういいわ、持っていかせなさい」長谷川会長が制した。仮にカードを持って行っても、自分が渡したものは一枚だけ、それもせいぜい200万円程度だ。

だが絵渡は無言のまま、バッグをテーブルに置き、きっぱりと言い放った。「どうぞ、調べて」

「どうせ、何か高価な物でも……」長谷川夫人は鼻で笑いながらバッグを開けたが、目に入ったのは、ノート一冊、数粒の種、そして少しばかりの現金だけだった。 カードさえ一枚も持っていっていない。悔しさと恥ずかしさをごまかすように、背筋を正して言う。「……運転手に送らせるわ」

長谷川会長は面白くなさそうに目を細め、カードを一枚差し出した。「絵渡、家に戻ったらご両親の言うことをよく聞くんだ。あの人たちは田舎で農業をしているけど、素朴で誠実な人たちだ。しっかり支えてやりなさい」

絵渡は、整った眉目を微動だにさせず、そのカードをきっぱりと断った。「人にはそれぞれの運命があります。けれど私は、曖昧なまま去るつもりはありません。恋夏、あなたはどうやって階段を下りたのか――これが最後の機会。自分で説明しなさい」

恋夏が最も嫌っているのは、どんな時でも揺らがないこの女の態度だった。まるで、生まれつき自分より高みにいるとでも言わんばかりに。

偽の令嬢のくせに。

ただの農民の娘のくせに!

「お姉ちゃん、どういう意味よ?まさか自分で落ちたって言いたいわけ? これは、私の脚よ?一番大事にしてる脚なのよ?もし本当にケガでもしたら、これからどうやって踊るのよ!」恋夏は声を張り上げて泣き出し、「うっ」と母親の胸にすがりついた。

「ガシャン!」

突然、花瓶がひとつ、鋭く彼女のすぐそばに叩きつけられた。その音に驚いた恋夏は、反射的に立ち上がってしまう。

その瞬間――部屋の全員が固まった。長谷川夫人も、長谷川会長も、目を見開いて彼女を見ていた。

……ケガして立てないんじゃなかったのか?ついさっきまで、寝たきりだって言ってたのに。

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