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初恋の身代わりを辞めたら、私にすがりつく狂犬に変貌。 の小説カバー

初恋の身代わりを辞めたら、私にすがりつく狂犬に変貌。

極秘結婚から5年。星野凛音は、夫の桐生蒼真が初恋の女性とホテルへ入る場面を目撃し、自身が単なる身代わりに過ぎなかったという残酷な真実を知る。絶望した彼女は蒼真を欺いて離婚届に署名させ、決別の言葉を突きつけた。愛に依存していた過去を捨て、自立した女性として歩み始めた凛音は、仕事で目覚ましい成功を収め、会社を上場間近まで成長させる。一方、彼女を失って初めて執着に似た愛に気づいた蒼真は、後悔に苛まれる狂犬へと変貌していた。ある祝賀パーティーの夜、別の男性と親しげにする凛音の姿に激しい嫉妬を覚えた彼は、更衣室で彼女を待ち伏せ、壁際に追い詰める。「俺は後悔している」と涙を流しながら、かつての冷徹な態度は影を潜め、強引かつ必死に再婚を請う蒼真。身代わりとしての役割を終え、一人の女性として輝き始めた凛音に対し、エリート社長による猛烈な求愛が幕を開ける。一度壊れた関係の行方と、立場が逆転した二人の愛の葛藤を描く現代ロマンス。
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3

宝条司郎は彼女を見るなり、皮肉たっぷりに言った。「専業主婦が俺たちの笑い者を見に来たのか? 悪いが忙しいんでね、構ってる暇はないんだよ」

かつて星野凛音は製品が一番売れていて最も忙しい時期に、誰の説得も聞かずに会社を辞めてしまった。

5年間、社内の誰とも一切連絡を取らなかったのだ。

司郎が彼女に向けて良い顔をするはずもなかった。

凛音は目を伏せ、ご機嫌をとるような口調で言った。 「ごめんなさい、今回は何か手伝えることがないかと思って来たの」

「なんだ、専業主婦に飽きたのか? 今度は救世主でも気取るつもりか?」

司郎は手にしていたファイルを床に叩きつけ、軽蔑の眼差しを向けた。「あいにくだが、その必要はないね。 会社はもう終わりだ、完全に終わったんだよ、これで満足か?」

凛音は心を落ち着かせ、穏やかな声で言った。「司郎、怒る気持ちは分かるけど、今は会社の危機を乗り越えることが先決でしょ」

「ふん、こっちはもう破産寸前なんだ、専業主婦のお前にこの会社が救えるとでも言うのか? 甘いこと言ってんじゃねえぞ、家事に専念しすぎてボケたのか?」

彼は彼女を無視し、さっさと荷物をまとめて出て行く準備を始めた。

凛音は口元を引き締め、複雑な感情を瞳に揺るがせながら、ついに口を開いた。

「司郎、私、離婚したの」

「何だって?」

司郎はひどく驚いた。そんな結末になっているとは思いもしなかったのだ。

「順調にいけば、まとまったお金が入るわ。 だから……」

凛音は手を差し出した。「もう一度、私たちの製品を復活させる気はない?」

***

凛音は司郎から会社の資料を大量に受け取った。

家に帰り、ドアを開けると、須藤麻衣が桐生蒼真の腕の中に倒れ込んでいるのが見えた。

しかも横たわっているのは、彼らの夫婦のベッドの上だった。

凛音は一瞬にして血の気が引き、その後、怒りのあまり呆れ笑いが出た。

蒼真はどこまで恥知らずなのかしら、不倫相手を家まで連れ込むとは。

それとも、ただスリルを味わいたかっただけなのか?

「桐生蒼真、女遊びもついに家まで持ち込むようになったの?」

蒼真は麻衣を抱え起こし、凛音のそばへ歩み寄った。「出かけるならどうして一言言わなかったんだ?」

凛音は険しい声で返した。「言う必要ある? 私がいようがいまいが、あなたが外の女を連れ込むことの邪魔にはならないでしょ」

蒼真は低い声で弁明した。「麻衣とは幼馴染だ、ずっと妹のように思っている」

凛音は彼を冷ややかに睨んだ。「それで、その大切な妹と一つのベッドに寝転がっていたわけ?」

蒼真の顔色が悪くなり、何か言おうとしたが、麻衣が一歩先に口を開いた。

「初めまして、須藤麻衣です。 やっと会えましたね、やっぱり、私にそっくりだわ」

彼女は蒼真をちらりと見つめ、彼をかばうように説明した。「誤解しないでくださいね、さっきは蒼真が私を助けてくれて……」

凛音は不機嫌な顔のまま、彼女と握手する気など微塵もなかった。「誤解って何? 他人の夫を押し倒したこと?」

麻衣は口をつぐみ、少し涙ぐんだような瞳で蒼真を見つめた。

蒼真は冷ややかな声で言った。「星野凛音、はっきりと説明したはずだ、物事の分別くらいわきまえろ」

「私が分別をわきまえてない? 彼女はあなたの初恋の人じゃないの?」

凛音は複雑な表情を浮かべながらも、ずっと心の底に抱えていた疑問をついに口にした。「ねえ桐生蒼真、私と結婚したのは、私が彼女に似ていたからなの?」

彼女は麻衣を指差し、蒼真を見つめた。

蒼真は目を逸らした。

彼は黙り込んだ。

凛音の心はナイフでえぐられたように痛んだ。とうに心の中で確信していた答えだったのに、わざわざ口に出して問うなんて、自ら傷を広げているようなものだった。

「分かったわ」

彼女は自嘲気味に笑った。「離婚しましょう、どうせもうやっていけないし」

蒼真は眉をひそめた。「ただの些細なことだろう、離婚なんて言い出すほどのことか? 凛音、もう少し大人になれないのか?」

彼は厳しい表情で言った。「お前が麻衣を気に入らないなら、今後は二度と連れてこない」

凛音は何も答えなかった。

離婚はすでに確定事項であり、もう彼と口論する気すら起きなかった。

「今日の話はこれまでだ、二度と離婚なんて言葉は聞きたくない」

蒼真はそう言い捨てると、麻衣を連れて出て行った。

凛音は篠原さんを呼んで別の寝室を片付けさせた。あのベッドで、彼女は二度と眠るつもりはなかった。

彼女と蒼真は交際3年、結婚して5年になる。

二人の始まりは、凛音が彼の美貌に惹かれたことがきっかけだった。

当時、蒼真は失恋したばかりで、凛音は毎日彼に付きまとっていた。

彼女は周りの誰にでも宣言していた。「私、蒼真を落としてみせる」

落とす方法といえば、毎日花を贈り、毎日手作りの朝食を渡し、そして毎日こう尋ねることだった。「私のこと、好きになった?」

あの頃の凛音は勇敢で目立ちたがり屋で、大勢の人の前でも平気で蒼真に告白していた。

蒼真はたいてい彼女を無視していた。

大学の体育倉庫で、彼女はついに二人きりになるチャンスを掴んだ。

彼女は大胆にも彼に壁ドンし、こう脅した。「これ以上私の彼氏にならないって言うなら、キスしちゃうからね」

その日、蒼真はイエスともノーとも言わず、ただ彼女を強く抱きしめた。

今思えば、彼女は彼の沈黙を肯定だと勝手に解釈していたのだ。

離婚という結末に至ったのは、蒼真からの愛が足りなかったからだ。

彼女の愛があまりにも重すぎたのに、見返りが全く得られず、次第に失望だけが募っていった。

そして、心が死んでしまった。

麻衣は単なる引き金に過ぎない。

蒼真が彼女を送り届ける道中、彼の顔色は酷く沈んでおり、麻衣はおずおずと彼の腕に抱きつこうとした。「蒼真、私……」

彼はその手を振り払った。「須藤麻衣、今日のことは二度と許さない」

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