
離婚届にサインしたら、私は元夫では手の届かない真の令嬢でした
章 3
蕭明隼人は一瞬、呆然と立ち尽くしたが、すぐに鋭い言葉を返した。 「後悔などするはずがないだろう。 だが、お前が離婚の慰謝料を受け取った以上、蕭明おばあ様への説明は、お前が引き受けるべきだ」
隼人は、おばあ様が凛を唯一の孫嫁と認めていることを知っていた。 もし二人の離婚が露見すれば、それこそ自分の足を折られかねない。
だからこそ、この厄介な「悪役」は、凛にこそ演じさせるべきなのだと、隼人は内心で冷徹に考えていた。
しかし、明石凛は顔を上げることもなく、冷ややかに言い返した。 「私は行かないわ。 三年の結婚生活で、蕭明おばあ様への恩は、もう果たし終えたわ。 蕭明隼人、 あなたは中村秋子さんのことが大好きなのでしょう? まさか、 蕭明おばあ様にそれを伝える勇気さえもないというの?」
凛は児童養護施設で育った孤児だった。 蕭明おばあ様が長年の援助で、立派に成長することができたのだ。
だから、蕭明家が結婚を必要とした時、彼女は迷うことなく嫁いだ。
隼人が盲目であることも、凛は一切気にしなかった。 文句一つ言わず、彼に尽くし、 嫁としての務めを果たし、蕭明家の人々を世話してきた。
唯一の条件は、結婚期間を三年とすること。 もし三年経っても隼人が彼女を愛せなければ、離婚するというものだった。
そして今、彼女がその重責から解放される時が来たのだ。
「真実の愛は、どんな困難さえも乗り越えるものだものね。 どうぞ、ご勝手に頑張って!」明石凛は、冷ややかな笑みを唇に浮かべ、皮肉を込めて言った。 「お二人には、どうか永遠に結ばれるといいわね!」
凛が車のキーを手に、立ち去ろうとしたその瞬間、玄関に滑り込んできた蕭 明紬希に、行く手を阻まれた。
「明石凛、お兄ちゃんがあなたと離婚するって聞いたわ!この車は蕭明家のものよ。 持って行かせないわ!」
明石凛は、フッと鼻で笑った。 「蕭明紬希、この車は私が買ったものよ。 あなた、お兄ちゃんと同じくらい、いや、それ以上に恥知らずね!」
「どうした?」物音を聞きつけ、隼人が駆けつけた。
紬希は、わざとらしく声を張り上げた。 「お兄ちゃん、明石凛が車を持って行こうとしてるの!私、ちょうど今使いたかったのに!」
蕭明隼人は眉をひそめた。 「凛、車を紬希に渡せ」
「どうして?」 明石凛はきっぱりと拒絶した。 「渡さない!」
「よくもそんな口が利けるわね! 反抗する気?」 蕭明紬希は、 怒りに任せて車のキーを奪い取ろうと手を伸ばした。
次の瞬間、古びたスーツケースが、数本の火のついた爆竹と共に車内へと投げ込まれた。
パチパチとけたたましい火花と耳をつんざく爆音、そしてむせるような濃い煙に、紬希は恐怖に顔を引きつらせ、車を捨てて悲鳴を上げた。 「きゃあ!」
「車はもういらないわ。 あなたたちにあげる。 」 明石凛は爆竹を投げ終えると、踵を返して歩き出した。
蕭明家で使ったもの、着た服は、蕭明家に置いていくべきだ。
そうでなければ、持ち出すなんて縁起が悪い!
続いて、凛は親友に電話をかけ、離婚したことを簡単に伝えた。
彼女が別荘地の門にたどり着くと、すでに洛西詩乃が、控えめな高級車、フェートンを運転して駆けつけていた。
「マジかよ!生きた明石クイーンに会えたってこと?」
洛西詩乃は、 大げさに目をこすった。 「まる三年、 あんたに会えなかったじゃないか! 電話をかければ、 いつも夫の世話で忙しいって」
「三年前のあれ、本当にあんたの結婚式だったのか、それとも葬式だったのか疑わしいわ!」
文句を言い終えると、詩乃は痩せ細った凛に駆け寄り、ぎゅっと抱きしめた。 心底心配しているようだった。 「離婚してよかった。 あんな目が見えないくせに何も見えてない男と別れて正解よ。これからは私たち姉妹で、美味しいものを食べて、好きなことをして、楽しく暮らしましょう!」
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